外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人

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ベルトラン帝国潜入

23.シエイ鉱山攻防戦

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 鉱殻竜を討伐した日の夜、俺たち三人はシエイ鉱山の事務所を見下ろす丘の上にいた。

 今は地中のケイ素から作り上げたレンズで即席の望遠鏡を作って事務所を監視している最中だ。

 キツネの言葉が真実なら事務所を見張るより他ない。


「何故貴様がここにいる」

 その時背後で声がした。

 ぎょっとして距離をとりつつ振り返るとそこにはヘルマとその一行がいた。


「そっちこそ、何故こんな所に?帰ったんじゃなかったのか?」

 余裕そうな言葉を吐いたけど内心は心臓が飛び出しかけていた。

 全く気配を感じなかったぞ。

 ベルトラン帝国最強と言う二つ名は伊達ではないってことか。


「私の質問に答えるのが先だ」

 ヘルマは既に曲刀を抜き、全身から殺気をみなぎらせている。

 どうやらごまかすことは出来そうにないか。


「ある情報筋からこの鉱山が狙われてると聞いたんだ。だから見張ってたんだよ」

「何のためにだ」

「そりゃフィルド王国との石灰取引を無事再開させたいからだよ。邪魔が入ったんじゃたまらないだろ」

 ヘルマの眼が射るように俺を見ている。

 …

 ……

 …………


 ヘルマの持っていた剣先が下がった。


「ふん、今はその言葉を信じよう」

 ようやく周囲から緊張の空気がなくなった。


「あんたたちも同じ情報を持っていたのか?この鉱山が狙われているって」

 俺の言葉にヘルマが軽く頷いた。


「元々そのために来ていたのだ。鉱殻竜はそのついでだ」

 あの大物をついでって…


「ヘルマ様、鉱山に動きがあるようです!」

 その時探査役のマッチョが声を上げた。

 望遠鏡を向けると確かに月明かりの中で冒険者を装った暴徒が事務所を襲おうとしているところだった。


「よし、行くぞ!」

 その声を合図にヘルマ一行が坂を駆け降りていく。

 俺たちも後に続いた。


「フラム、キリ、可能な限り殺しはなしだ。ベルトラン帝国内でフィルド王国の俺たちが殺しをしたら厄介なことになるからな」

「わかった!」

「…了解」


 俺たちが到着した時、事務所周辺は既に戦闘状態になっていた。

 犯罪者たちの数はおよそ百人、しかしヘルマたちの敵ではないようでバタバタと倒されている。


「俺たちは事務所の中にいくぞ!」

 外はヘルマに任せて俺たちは事務所内で人質に取られた人がいないか確認することにした。

 事務所の中に滑り込んで内部をスキャンすると案の定所長室は既に占拠されているみたいだ。


 しかしこの程度では大した障害にはならない。

 俺は素早く手近の金属をリボンに変えると所長室に滑り込ませて敵を拘束した。

 所長室に飛び込むとそこには俺の作ったリボンで拘束された暴漢三人と部屋の隅で震える所長がいた。


 どうやらこいつらが今回の首謀者か。

 武器を取り上げようとした時、俺はあることに気付いた。

 こいつらの武器…ベンズが流してたやつじゃないのか?

 間違いない、これはルビキュラの森で山賊たちが使っていたものと全く同じだ。

 ベンズの奴、こんな所にまで武器を流してやがったのか。

 いや、ひょっとして香木の違法伐採も今回の鉱山占拠も裏にベンズがいるんじゃないのか?


 どうする?こいつらを利用したらベンズの居場所を突き止められるんじゃないのか?


 一瞬こいつらに追跡用の魔晶を付けて逃がすことを考えたけどすぐにそれを否定した。

 相手はあのヘルマだ、俺が逃がしたことなどすぐに気付くだろう。

 そうなったら今以上に面倒なことになってしまう。



 結局鉱山の占拠しようとした暴徒はものの一時間ほどで完全に制圧されてしまった。


「ありがとうございます!一時はどうなることかと…あなた方は命の恩人だ!」

 所長が嬉し涙をあふれさせながらすがりついてきた。


「何でもおっしゃってください!私にできることがあれば何でも致しますぞ」

「何でもって言ってもなあ…あ、じゃあさ、フィルド王国への石灰取引に便宜を図ってもらえないかな?」

「フィルド王国…にですか?」

 所長が狐につままれたような顔をした。


「ああ、俺はフィルド王国の請負で来てるからここの石灰取引が再開したら俺の報酬が増えるんだよ。お礼をするというならそうしてもらえないかな」

「それはまあ…元々鉱山を再開次第取引も再開する予定でしたから構いませんが」

「ま、値段の方もよろしく頼むよ」

 そう言って俺は所長の肩を叩くと外に出た。

 とりあえずこれで石灰の件は一件落着だ。



「世話になったな」

 外に出るとヘルマがいた。

「別に大したことはしてないよ。ほとんどの敵はあんたらが倒したわけだし」

「そうは言うが貴様らの働きには助けられた。その礼だけは言っておこうと思ってな」


「…だったらさ、あんたたちがどうやって今回の件を知ったのか教えてもらえないかな」

 俺の言葉にヘルマの眼がすっと細くなった。

 これは賭けだ。


 あの連中を利用できない以上ヘルマたちが何らかの繋がりを知っていないか教えてもらうしかない。



「何故貴様がそれを知りたがる。貴様は本当に冒険者なのか?」

 周囲の空気が数度低くなった気がした。

 虎の尾を踏んでしまったか?

 だが虎児を得るには虎穴に入るしかない。


ただの冒険者さ。俺に今回の件を教えてくれた人が言ってたんだ、情報は冒険者にとって財産だと。だから知っておけることがあるなら知っておきたくてね」

 …

 ……

 …………


「まあいいだろう、貴様には世話になったしな」

 永遠とも思える時間の後でヘルマから殺気が消えた。


「生憎と情報源は教えられないが我々はこの情報をアンシャラザードという交易都市で手に入れた。教えられるのはこれだけだ」

「ありがとう、それで十分だよ」

「これで借りは返したからな」

 そう言ってヘルマは立ち去った。


「俺たちも帰るか」

 俺はフラムとキリにそう告げた。

 いつの間にか東の空が白々と明けようとしていた。
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