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第四部~魔界(ワールフィア):冬と共に来た女
1.プロローグ ~ ベルトラン帝国
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「フィルドの密偵から報告がありました」
ヘルマの元に部下のファウェイズがやってきた。
「あのリュエシェという男はとんでもない人物だったようです」
ファウェイズは持ってきた羊皮紙を読みながら信じられないという顔をした。
「続けろ」
「はっ、まずリュエシェ・タウソンというのは偽名でした。本名はテツヤ・アラカワ、変わった名前ですがこれは彼が帰還者だからだそうです」
”帰還者”の言葉にヘルマの眉がぴくりと動いた、がそれ以上動じることはなく目配せでファウェイズに続きを促した。
「帰還者となることで彼は土属性の力を手に入れたらしく、その能力はSクラスを超えるとも言われているようです」
だろうな、とヘルマは頷いた。
でなければあそこまで容易く鉱殻竜をあしらえるわけがない。
「彼がいつこちらの世界に戻ってきたのかは不明ですが、この報告で最も古い記録は今年の初春、テナイト村というフィルド王国の寒村にて山賊討伐を行ったとあります」
ファウェイズは羊皮紙の束をめくりながら話を続けた。
「彼はその後フィルド王国調査隊長アマーリア・ハウエルを後見人とし、フィルド王国の王都ゴルドでランメルス・ベルグという領主が起こした反乱の鎮圧に貢献したそうです」
ヘルマもその事件は耳にしていた。
フィルド王国の一領主が無謀にも王国に対して反旗を翻したらしい。
一時は国王を人質に取るところまでいったがその後すぐに殺されたと聞く。
リュー、ではなくテツヤはあの事件に絡んでいたのか。
「彼はその後この功績によりトロブ地方の領主に任命されています。帰還者とは言えいきなり領主に召し上げられるということは相当な功績をあげたと思われます」
ファウェイズが報告を続けた。
確かにたかだか山賊討伐をした程度の男が功績をあげたからと言って領主になるというのはただごとではない。
それこそ首謀者であるランメルスの首級を上げる位の功績でない限りは。
しかしテツヤならばそれもあり得るだろう。
あの男ならばそれくらいできるはずだ。
「ご存じと思いますがトロブ地方は我が国とフィルド王国、そして魔界の接点となる要所です。そんな土地を任せられること自体が驚きなのですが…その後が更に…」
ファウェイズが言葉を濁した。
「どうした、続けるのだ」
「は、し、しかしこの報告はどうにも信じがたいのですが…彼はその後時を置かずにランメルス・ベルグを陰で支援していたと言われるリード・カドモイン辺境伯討伐にも貢献したそうです」
その報告には流石にヘルムも表情を変えた。
カドモイン辺境伯と言えばベルトラン帝国にも名前が知られているフィルド王国の要人だ。
ヘルマ自身も式典で何度か目にしたことがある。
カドモイン辺境伯は何らかの事故に遭って死亡したと聞いていたのだが、まさかあの反乱に一枚噛んでおり、しかも討伐されていたとは。
「その後カドモイン領の一部を封ぜられているところを見るに彼がこの件でも何らかの働きをしたのは間違いがないようです。しかも…」
ファウェイズは緊張しているように唾を呑み込んだ。
「彼が新たに治めることになった土地は我が国の国境と接している部分です」
「ほう」
ヘルマの眼が細くなった。
まるでネコ科の猛獣が狩りがいのある獲物を見つけた時のような眼だった。
「ここまでくると彼がシエイ鉱山にやってきたのはただの偶然とは思えません。何らかの意図があったと考えるべきです」
「早まるな」
ファウェイズの進言をヘルマはたしなめた。
「前にも言ったが判断は我々の仕事ではない。それは陛下が行うべきことだ。それよりも他にはないのか?」
「は、テツヤに関する報告は以上ですが、二、三気になることがございます。まずシエイ鉱山を襲った連中ですが、彼らはヨコシン・ベンズというフィルド王国の商人と関係があったようです」
ファウェイズは更に羊皮紙をめくって話を続けた。
「このヨコシン・ベンズという男は先の反乱を起こしたランメルスの支援者でもあり、今まで行方をくらませていたそうですが先日アクダルモという領主に匿われていたところを逮捕されたそうです」
「彼がこの件に関わっていたかどうかは不明です」
ヘルマが尋ねるよりも早くファウェイズが補足した。
ふむ、とヘルマは唸り、しばらく考え込んだ後に形のいい唇を開いた。
「つまり、テツヤはまずランメルスという領主の反乱の鎮圧に加わり、その後黒幕であるカドモイン辺境伯討伐にも加わっていた。そして彼らに協力していたそのベンズという商人が占領を企てていた我が国のシエイ鉱山に現れたと」
「そういうことになります」
「そしてその後そのベンズは逮捕されたという訳か」
そう言ってヘルマは再び考え込んだ。
「いかがいたしますか?彼が我が国にとって危険であるならばシエイ鉱山に対するベンズの件と身分を偽って我が国に入国してきた件がある以上、こちらへ身柄を要求することも可能と思われますが」
「まあそう急くな」
再びヘルマはファウェイズをたしなめたが今回はその口調にかすかに愉快そうな響きが含まれていた。
「確かにテツヤの力は脅威となり得るかもしれないが今の時点では何とも言えん。少なくともシエイ鉱山では敵意があるようには見えなかったしな」
そう言うとヘルマは立ち上がった。
「隊長はいかがなさるおつもりですか?」
「どうもこうもない。まずはこのことを陛下に報告する。その後は…そうだな、休暇でも取るかな。ここしばらく取っていなかったからな」
そう話すヘルマの顔を見てファウェイズは驚いた。
隊長が笑顔を見せたのはいつ以来だろう。
「たまには温泉で羽を伸ばすのも悪くないだろう。確かトロブ地方には良い温泉が出るという話だったな」
ヘルマの元に部下のファウェイズがやってきた。
「あのリュエシェという男はとんでもない人物だったようです」
ファウェイズは持ってきた羊皮紙を読みながら信じられないという顔をした。
「続けろ」
「はっ、まずリュエシェ・タウソンというのは偽名でした。本名はテツヤ・アラカワ、変わった名前ですがこれは彼が帰還者だからだそうです」
”帰還者”の言葉にヘルマの眉がぴくりと動いた、がそれ以上動じることはなく目配せでファウェイズに続きを促した。
「帰還者となることで彼は土属性の力を手に入れたらしく、その能力はSクラスを超えるとも言われているようです」
だろうな、とヘルマは頷いた。
でなければあそこまで容易く鉱殻竜をあしらえるわけがない。
「彼がいつこちらの世界に戻ってきたのかは不明ですが、この報告で最も古い記録は今年の初春、テナイト村というフィルド王国の寒村にて山賊討伐を行ったとあります」
ファウェイズは羊皮紙の束をめくりながら話を続けた。
「彼はその後フィルド王国調査隊長アマーリア・ハウエルを後見人とし、フィルド王国の王都ゴルドでランメルス・ベルグという領主が起こした反乱の鎮圧に貢献したそうです」
ヘルマもその事件は耳にしていた。
フィルド王国の一領主が無謀にも王国に対して反旗を翻したらしい。
一時は国王を人質に取るところまでいったがその後すぐに殺されたと聞く。
リュー、ではなくテツヤはあの事件に絡んでいたのか。
「彼はその後この功績によりトロブ地方の領主に任命されています。帰還者とは言えいきなり領主に召し上げられるということは相当な功績をあげたと思われます」
ファウェイズが報告を続けた。
確かにたかだか山賊討伐をした程度の男が功績をあげたからと言って領主になるというのはただごとではない。
それこそ首謀者であるランメルスの首級を上げる位の功績でない限りは。
しかしテツヤならばそれもあり得るだろう。
あの男ならばそれくらいできるはずだ。
「ご存じと思いますがトロブ地方は我が国とフィルド王国、そして魔界の接点となる要所です。そんな土地を任せられること自体が驚きなのですが…その後が更に…」
ファウェイズが言葉を濁した。
「どうした、続けるのだ」
「は、し、しかしこの報告はどうにも信じがたいのですが…彼はその後時を置かずにランメルス・ベルグを陰で支援していたと言われるリード・カドモイン辺境伯討伐にも貢献したそうです」
その報告には流石にヘルムも表情を変えた。
カドモイン辺境伯と言えばベルトラン帝国にも名前が知られているフィルド王国の要人だ。
ヘルマ自身も式典で何度か目にしたことがある。
カドモイン辺境伯は何らかの事故に遭って死亡したと聞いていたのだが、まさかあの反乱に一枚噛んでおり、しかも討伐されていたとは。
「その後カドモイン領の一部を封ぜられているところを見るに彼がこの件でも何らかの働きをしたのは間違いがないようです。しかも…」
ファウェイズは緊張しているように唾を呑み込んだ。
「彼が新たに治めることになった土地は我が国の国境と接している部分です」
「ほう」
ヘルマの眼が細くなった。
まるでネコ科の猛獣が狩りがいのある獲物を見つけた時のような眼だった。
「ここまでくると彼がシエイ鉱山にやってきたのはただの偶然とは思えません。何らかの意図があったと考えるべきです」
「早まるな」
ファウェイズの進言をヘルマはたしなめた。
「前にも言ったが判断は我々の仕事ではない。それは陛下が行うべきことだ。それよりも他にはないのか?」
「は、テツヤに関する報告は以上ですが、二、三気になることがございます。まずシエイ鉱山を襲った連中ですが、彼らはヨコシン・ベンズというフィルド王国の商人と関係があったようです」
ファウェイズは更に羊皮紙をめくって話を続けた。
「このヨコシン・ベンズという男は先の反乱を起こしたランメルスの支援者でもあり、今まで行方をくらませていたそうですが先日アクダルモという領主に匿われていたところを逮捕されたそうです」
「彼がこの件に関わっていたかどうかは不明です」
ヘルマが尋ねるよりも早くファウェイズが補足した。
ふむ、とヘルマは唸り、しばらく考え込んだ後に形のいい唇を開いた。
「つまり、テツヤはまずランメルスという領主の反乱の鎮圧に加わり、その後黒幕であるカドモイン辺境伯討伐にも加わっていた。そして彼らに協力していたそのベンズという商人が占領を企てていた我が国のシエイ鉱山に現れたと」
「そういうことになります」
「そしてその後そのベンズは逮捕されたという訳か」
そう言ってヘルマは再び考え込んだ。
「いかがいたしますか?彼が我が国にとって危険であるならばシエイ鉱山に対するベンズの件と身分を偽って我が国に入国してきた件がある以上、こちらへ身柄を要求することも可能と思われますが」
「まあそう急くな」
再びヘルマはファウェイズをたしなめたが今回はその口調にかすかに愉快そうな響きが含まれていた。
「確かにテツヤの力は脅威となり得るかもしれないが今の時点では何とも言えん。少なくともシエイ鉱山では敵意があるようには見えなかったしな」
そう言うとヘルマは立ち上がった。
「隊長はいかがなさるおつもりですか?」
「どうもこうもない。まずはこのことを陛下に報告する。その後は…そうだな、休暇でも取るかな。ここしばらく取っていなかったからな」
そう話すヘルマの顔を見てファウェイズは驚いた。
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