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魔界へ
27.吸血族の誘い
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蛇髪人族の国から戻った俺たちは再び話し合いをすることにした。
辺りはすっかり暗くなり、夜の帳が森の中に落ちようとしている。
「ベルベルヒの話をどう思う?信用できると思うか?」
「正直言うと判断材料が少なすぎるな。なにせ吸血族のことは全て風の噂でしかないのだから」
アマーリアが腕を組んで唸った。
「私もそう思う。何が起こっているのか自分の目で見るまでは信じられないし、信じるべきではないと思う」
ソラノも同意した。
「とは言え、ツァーニックを倒さないことにはベルベルヒの同意も得られないんだよな…」
「う~~~~ん」
俺の言葉にその場の全員が唸った。
その時、背筋に冷気のようなものが伝ってきた。
誰かが近付いてきている!
「誰だ!」
俺の怒鳴り声にみんなが驚きながらも武器を構えて森の奥を睨みつけた。
闇が覆う森の奥、誰かがこちらを見つめている。
気配は隠しているが一人や二人ではない、数百人がこの森を囲んでいる。
「「ライティング!!」」
アマーリアとソラノが唱えた光の呪文が森の中を照らす。
そこには一人の男が立っていた。
年齢を感じさせない、服装も顔つきも目立たない男だった。
目立つ点といえば口の両端から飛び出した小さな牙と吸血鬼特有の黒い強膜(白目)と紅い虹彩くらいだ。
「誰だ、お前は?」
俺の言葉にその男は慇懃にお辞儀を返してきた。
「わたくしは吸血族の王、ツァーニック様の使いの者でございます。名をヘンダーソンと申します。どうぞお見知りおきを」
俺たちは顔を見合わせた。
なんで吸血族の仲間がここに?
「俺たちに何の用だ」
俺は用心深く言葉を選んだ。
この男が何故この場に来たのか分からない以上不用意な発言はできない。
特に俺たちが蛇髪女人族の依頼でレジスタンスと接触しようとしてることを知られるわけにはいかない。
「あなた方がここにドライアドの国を建国するつもりだという噂は我々の元にも届いています。ツァーニック様も興味を惹かれておりまして、是非とも話を聞きたいとのことです」
「どこでそのことを知ったんだ?」
俺の言葉にヘンダーソンはにっこりとほほ笑んだ。
「聞いたも何も、この辺一帯で噂になっておりますよ。あなた方はまず龍人国へ赴き、次に蛇髪女人国へ行ったそうですね。であれば次は我が国なのでしょう?」
ヘンダーソンの言葉に矛盾はない。
それでも何かが腑に落ちなかった。
何故俺たちがこの場にいることを知っている?
何よりも一人で来たと見せかけて森全体を包囲しているのが気に入らない。
「生憎だけど今はそうできる状況にないんだ。今日はお引き取り願えないかな?後日改めて連絡するからさ」
「それはできかねます。我が王は非常にお忙しいお方です。それに今日来ていただくように命令されておりますので」
ヘンダーソンの口調は穏やかだったが有無を言わせぬ響きを持っている。
「断る、と言ったら?」
「それは困りましたね。私としてはできるだけ穏便に済ませたいのですが」
ヘンダーソンがそう言った途端、森の中に敵意が溢れかえった。
さっきまで息を潜めていたのが今ははっきりとこちらに殺意を向けている。
この野郎、攻撃する意思を隠す気もないのかよ!
「どうでしょう?大人しく私に従っていただければ双方無駄な被害を出さずに済むのですが」
「ふざけんなよ、この位の人数でどうこうできると思ってるのか?」
俺の言葉と共に地面から周囲に岩の壁が突きだし、俺たちとヘンダーソンの周りを囲んだ。
同時に岩の槍がヘンダーソンの喉元に突き立てられる。
「無駄な被害を出すのはそっちだけだぜ?」
「確かにあなたはお強い」
俺の言葉にヘンダーソンが肩をすくめた。
「単純な力で言えばあなたの方が強いでしょうね。我々ときたら回復力があるだけで攻撃力はあってないようなものです。しかしここにいる全ての者を守り切ることができますか?例えばあちらの村で眠っている子供たちはどうですか?」
「てめ…っ!」
「これはあくまで例え話ですよ。私についてきてくれるのであればそんなことは起こりません。それでも拒否されるのであれば仕方ありません。我々も最善を尽くしたことを我が王に示さねばならないので」
相変わらず穏やかな表情だったが、その眼が冗談でも脅しでもないことを物語っていた。
こいつらは例え殺されたとしても使命を果たそうとするだろう。
「……わかった。ただし行くのは俺一人だ」
しばらくの沈黙ののちに俺はため息とともに答えた。
「テツヤ!」
「仕方ない。このままだとあいつらは間違いなく村ごと攻撃するはずだ。それだけは避けなくちゃいけない。それにどちらにせよあいつらの話を聞こうと思ってたんだ、そうだろ?」
俺は悲痛な声をあげるアマーリアたちをなだめながらヘンダーソンの方を振り返った。
「そのかわり約束は守ってもらうぞ。俺の仲間や村のみんなに怪我一つでもさせてみろ。お前らのボスも含めて全員殺す」
「もちろんですとも。我々としてはあなた方と敵対する気はないんですから」
ヘンダーソンはそう言って肩をすくめた。
同時に森を覆っていた殺気が消え去る。
「約束通り包囲を解きました。それではついてきていただけますね?」
「ああ、わかったよ。さっさと案内してくれ」
俺はヘンダーソンの方に向かう前にアマーリアに耳打ちをした。
「レジスタンスの人間が来たらこの村の全員を連れて行ってくれ」
「なにを言って…」
アマーリアはそれを聞いて怪訝な顔をしたが俺の表情を見て頷いた。
「わかった、テツヤも気を付けてくれ。絶対に生きて帰ってくるのだぞ」
「ああ、約束するよ」
俺はウィンクを返すとヘンダーソンの方へ向かっていった。
辺りはすっかり暗くなり、夜の帳が森の中に落ちようとしている。
「ベルベルヒの話をどう思う?信用できると思うか?」
「正直言うと判断材料が少なすぎるな。なにせ吸血族のことは全て風の噂でしかないのだから」
アマーリアが腕を組んで唸った。
「私もそう思う。何が起こっているのか自分の目で見るまでは信じられないし、信じるべきではないと思う」
ソラノも同意した。
「とは言え、ツァーニックを倒さないことにはベルベルヒの同意も得られないんだよな…」
「う~~~~ん」
俺の言葉にその場の全員が唸った。
その時、背筋に冷気のようなものが伝ってきた。
誰かが近付いてきている!
「誰だ!」
俺の怒鳴り声にみんなが驚きながらも武器を構えて森の奥を睨みつけた。
闇が覆う森の奥、誰かがこちらを見つめている。
気配は隠しているが一人や二人ではない、数百人がこの森を囲んでいる。
「「ライティング!!」」
アマーリアとソラノが唱えた光の呪文が森の中を照らす。
そこには一人の男が立っていた。
年齢を感じさせない、服装も顔つきも目立たない男だった。
目立つ点といえば口の両端から飛び出した小さな牙と吸血鬼特有の黒い強膜(白目)と紅い虹彩くらいだ。
「誰だ、お前は?」
俺の言葉にその男は慇懃にお辞儀を返してきた。
「わたくしは吸血族の王、ツァーニック様の使いの者でございます。名をヘンダーソンと申します。どうぞお見知りおきを」
俺たちは顔を見合わせた。
なんで吸血族の仲間がここに?
「俺たちに何の用だ」
俺は用心深く言葉を選んだ。
この男が何故この場に来たのか分からない以上不用意な発言はできない。
特に俺たちが蛇髪女人族の依頼でレジスタンスと接触しようとしてることを知られるわけにはいかない。
「あなた方がここにドライアドの国を建国するつもりだという噂は我々の元にも届いています。ツァーニック様も興味を惹かれておりまして、是非とも話を聞きたいとのことです」
「どこでそのことを知ったんだ?」
俺の言葉にヘンダーソンはにっこりとほほ笑んだ。
「聞いたも何も、この辺一帯で噂になっておりますよ。あなた方はまず龍人国へ赴き、次に蛇髪女人国へ行ったそうですね。であれば次は我が国なのでしょう?」
ヘンダーソンの言葉に矛盾はない。
それでも何かが腑に落ちなかった。
何故俺たちがこの場にいることを知っている?
何よりも一人で来たと見せかけて森全体を包囲しているのが気に入らない。
「生憎だけど今はそうできる状況にないんだ。今日はお引き取り願えないかな?後日改めて連絡するからさ」
「それはできかねます。我が王は非常にお忙しいお方です。それに今日来ていただくように命令されておりますので」
ヘンダーソンの口調は穏やかだったが有無を言わせぬ響きを持っている。
「断る、と言ったら?」
「それは困りましたね。私としてはできるだけ穏便に済ませたいのですが」
ヘンダーソンがそう言った途端、森の中に敵意が溢れかえった。
さっきまで息を潜めていたのが今ははっきりとこちらに殺意を向けている。
この野郎、攻撃する意思を隠す気もないのかよ!
「どうでしょう?大人しく私に従っていただければ双方無駄な被害を出さずに済むのですが」
「ふざけんなよ、この位の人数でどうこうできると思ってるのか?」
俺の言葉と共に地面から周囲に岩の壁が突きだし、俺たちとヘンダーソンの周りを囲んだ。
同時に岩の槍がヘンダーソンの喉元に突き立てられる。
「無駄な被害を出すのはそっちだけだぜ?」
「確かにあなたはお強い」
俺の言葉にヘンダーソンが肩をすくめた。
「単純な力で言えばあなたの方が強いでしょうね。我々ときたら回復力があるだけで攻撃力はあってないようなものです。しかしここにいる全ての者を守り切ることができますか?例えばあちらの村で眠っている子供たちはどうですか?」
「てめ…っ!」
「これはあくまで例え話ですよ。私についてきてくれるのであればそんなことは起こりません。それでも拒否されるのであれば仕方ありません。我々も最善を尽くしたことを我が王に示さねばならないので」
相変わらず穏やかな表情だったが、その眼が冗談でも脅しでもないことを物語っていた。
こいつらは例え殺されたとしても使命を果たそうとするだろう。
「……わかった。ただし行くのは俺一人だ」
しばらくの沈黙ののちに俺はため息とともに答えた。
「テツヤ!」
「仕方ない。このままだとあいつらは間違いなく村ごと攻撃するはずだ。それだけは避けなくちゃいけない。それにどちらにせよあいつらの話を聞こうと思ってたんだ、そうだろ?」
俺は悲痛な声をあげるアマーリアたちをなだめながらヘンダーソンの方を振り返った。
「そのかわり約束は守ってもらうぞ。俺の仲間や村のみんなに怪我一つでもさせてみろ。お前らのボスも含めて全員殺す」
「もちろんですとも。我々としてはあなた方と敵対する気はないんですから」
ヘンダーソンはそう言って肩をすくめた。
同時に森を覆っていた殺気が消え去る。
「約束通り包囲を解きました。それではついてきていただけますね?」
「ああ、わかったよ。さっさと案内してくれ」
俺はヘンダーソンの方に向かう前にアマーリアに耳打ちをした。
「レジスタンスの人間が来たらこの村の全員を連れて行ってくれ」
「なにを言って…」
アマーリアはそれを聞いて怪訝な顔をしたが俺の表情を見て頷いた。
「わかった、テツヤも気を付けてくれ。絶対に生きて帰ってくるのだぞ」
「ああ、約束するよ」
俺はウィンクを返すとヘンダーソンの方へ向かっていった。
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