外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人

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火神教騒乱

40.さらばベルトラン帝国

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 ガルバジアに戻ってから数日後、今回の事件解決を讃える式典が行われた。

 大陸最大の帝国の王があわや誘拐されかけたのを防いだということもあって国を挙げての祝賀となり、フィルド王国から国王も招かれることになった。

 できればひっそりと行ってほしかったのだけどそれはきっぱりと断られてしまった。


「テツヤ、これでお主も名声から逃げられなくなったな」

 リンネ姫がおかしそうに言っていたけど俺としてはご免こうむりたいぞ。

 そんなこんなで更に一週間ほど滞在した後にようやくフィルド王国に帰る日がやってきた。


「テツヤ、今回は本当に世話になった。このお礼はいずれ必ずさせてもらおう」

 帰る準備をしているとヘルマがやってきた。


「いいってそんなこと。こっちだってずいぶん世話になってきたんだ」

 いいや、とヘルマは首を横に振った。

「貴様は陛下を殺すように操られた私を救ってくれた。あの時テツヤがいなければいずれ私は陛下に刃を向けていただろう。私は貴様に命を懸けるべき借りができた。陛下に仇なさぬ限り今後何かあれば必ず貴様を助けると剣にかけて誓おう」

「どこまでいっても陛下第一だな。そこはぶれないよな」

 当然だ、とヘルマが微笑んだ。


「しかしテツヤ、貴様は陛下の次だ」

 そう言ってヘルマの指が俺の顎を軽くつまんだと思うと唇が重なってきた。

 常に冷静なヘルマとは裏腹に燃えるように熱いキスだった。


「ベルトランに来たくなったらいつでも来てくれ。歓待するぞ」

「あ、ああ…」

 突然の出来事に何を言ったらいいのか分からないでいるとゼファーがやってきた。


「いよいよお別れだな。主との旅はなかなかに楽しかったぞ」

「はん、俺はもう御免だよ。面倒ごとが多すぎだっての」

「ふ、貴様も言うようになったな。それはそうと前に余が渡した免状はまだ持っているか?」

「ああ、これだろ?」

 俺は懐から前にゼファーに書いてもらった免状を取り出した。

 ゼファーはそれを取り上げるとさらさらと書き足し、再び俺に返してきた。



「これは主が持っておくといい。いずれ何かの役に立つだろう」

「そうか?それじゃあ遠慮なく」

 俺は再びその免状をしまった。


「な、なな……」

 俺の隣でそれを横見していたエリオンが目を丸くしている。


「それではまた会うこともあるだろうがしばしのお別れだ。達者でな!」

「ああ、そっちもな!」

 俺たちは別れを告げ、竜車に乗ってガルバジアを後にした。







「おいテツヤ」

 王城が視界から消えるが早いかリンネ姫が食ってかかってきた。


「さっきのあれはどういうことだ!貴様とあのヘルマに何があったのだ!」

「そうだぞ、あの冷血剣姫とも呼ばれるヘルマがあれほどの情愛を見せるとは、どういうことなのだ」

「その通りだ!説明せよ」

 アマーリアやソラノまでリンネ姫に加勢してきた。

 そういえば燼滅じんめつ教団の神殿で起きたことはまだ詳しく言ってなかったっけ。


「話せば長くなるんだけど…」

 俺は何があったのか説明を始めた。




「そんなことが…」

 俺が説明を終えると皆一様にため息をついた。

「あの異様な強さはそういうことだったのか。しかし古代の邪法を蘇らせていたとは…」

「ああ、俺がアスタルさんにしてもらった力の開放と似たようなことを人為的に行っていたらしい」

「そのような魔導知識がベルトラン帝国にあったとは…ますます油断ができぬな」

 リンネ姫はそう言って眉をひそめていた。

「ま、まあそういうわけで向こうは俺に恩義を感じてるみたいなんだよ」

「まあいいわ。テツヤが私の側にいる限り細かなことは言うつもりもないしな」

 リンネ姫が俺と腕を組んできた。

「無理やり協定の担当官に任命させられたのは癪だがこれも外交だと思って我慢するとしよう」




「これは…とんでもないものをもらったものだね」

 その時、竜車に入るなり俺の免状を食い入るように見ていたエリオンが大きく息を吐きながら語りだした。

 な、なんだ?何か変なことが書いてあったのか?


「大まかには今回の陛下の誘拐とその後の出奔にフィルド王国は関りがないこと、テツヤのベルトラン帝国内での行動に制限を設けないようにという陛下からの王命が書かれている。これ自体でも異例なことなんだけど、その後が問題なんだ」

 エリオン王子は首を振って話を続けた。

「この免状の最後に…テツヤに月桂樹の位を授けると書き加えられてる」

 その言葉に車内が静まりかえった。

 なに?それなにか凄いことなの?


「凄いというか…家紋に月桂樹を頂くことができる月桂樹の位はベルトラン帝国の血統貴族の中でも最高位なんだ。つまりテツヤは今後ベルトラン帝国内で陛下に次ぐ権力を有することになる」

「ふ、ざ、け、る、なああああ~~~~っ!!!!!」

 リンネ姫が絶叫した。

「あの男、言うに事欠いてテツヤに貴族位を授けるだとお!?こっちでだってまだだってのに!ふざけるな!あ奴に先を越されてたまるか!テツヤ、国に帰ったらすぐに貴族になるのだ!向こうが月桂樹ならこっちは大公だ!」


「無茶なことを…」

 エリオンが苦笑した。

「ともかく、これはベルトラン帝国内でテツヤが受ける制約がほぼなくなったことを意味してる。家を建てることも、商売をすることも、私軍を持つことや魔法を使うことすら自由だよ」

「そうは言ってもなあ」

 俺はエリオンから免状を受け取って眺めた。

「いきなり貴族だと言われてもピンと来ないぞ」

「今はそうだろうね。これは言ってみれば陛下からの口説き文句だね。ベルトラン帝国に来たらこれだけの特権が得られるぞ、という」

「そうやってテツヤを取り込むことが奴の目的なのだ!テツヤは絶対に渡さないからな!」

 リンネ姫の絶叫を残しつつ竜車はフィルド王国への帰路を急ぐのだった。
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