219 / 298
第六部~魔界争乱:来たる変化に備えて
7.紙がない!
しおりを挟む
「困ったこと?誰かが反対してるのか?」
「いや、そうではない。もっと直接的なことだ」
リンネ姫が首を横に振った。
「テツヤ、特許制度などで特に重要なことは何かわかるか?」
「特許で重要なこと…誰が何を発明したかはっきりさせておくこととか?」
「それは確かにそうだが、それを実現するために必要なのがこれなのだ」
そう言ってリンネ姫が懐から何かを取り出してテーブルの上に置いた。
「これは…紙?」
リンネ姫が置いたのは何の変哲もない一枚の紙だった。
「そう、紙だ。これこそが特許制度の要の中の要と言える」
リンネ姫が言葉を続けた。
「例えばテツヤが何かを発明したとしよう。特許権を取るためにはそれがテツヤの発明であると届出をしなくてはならない。そして当局はそれがテツヤの発明であると記録をすることになる。その時に使われる記録媒体として私は紙が最適だと考えている」
「なるほど、言われてみれば確かに記録をつけておかなくちゃいけないか」
「紙は羊皮紙や木簡と違って嵩張らない。金属板と違って文字を書くのが楽だしインクが乾けば紙が残っている限り残り続ける。薄いから束ねておくのにも最適だ。しかし問題がない訳ではない」
リンネ姫はそう言って言葉を切った。
「この国では紙はまだ貴重品なのだ」
「我が国の紙は綿と藁を使っているのだけれど、その綿もベルトラン帝国からの輸入品でね」
エリオンが後に続いた。
「綿は衣類にも使われているから紙に回せる分はごくわずかなんだ。かと言って羊皮紙を使ったんじゃ羊が何頭いても足りなくなるだろうね」
「そんなにたくさん特許が出るのかな?」
「他人事のように言うでない!お主の考えたものだけで数百の特許が作られるのは確実なのだぞ」
「そ、そうかな?」
「そうなのだ!道路に敷設するアスファルトの混合率、敷設の仕方、マットレスの構造、ばねの作り方、鉄条網、列挙したら一日では終わらぬぞ」
リンネ姫は呆れたようにため息をつくと椅子に腰を下ろした。
「ともかく、この特許制度の成否はいかに紙を安価に手に入れられるかにかかっていると言ってもいいだろう。そういう意味では手がないことはないのだが…」
「なんだ、簡単に紙を作る方法があるのか」
「簡単ではないがな。紙の繊維に綿でなく木を使う方法を以前から研究していてそれは既に目途が立っているのだ。なのだが……」
リンネ姫が言葉の途中で口を濁した。
「木を紙にするためには一旦溶かしてパルプとしなくてはならない。パルプになってしまえばむしろ綿で作った紙よりも滑らかで使いやすい紙を作れるのだが、パルプにするのが問題なのだ」
リンネ姫はそう言うと再び懐から取り出したものをテーブルに置いた。
一体どこにしまってるんだろうか?
それは一見すると何の変哲もない石ころだった。
「それは魔石だ。ただしただの魔石ではない。水と火の属性を兼ね備えた複合魔石と呼ばれるものなのだ」
手に取ってみると確かに水と火の属性を感じる。
しかし相反する属性を同時に持つことなんて可能なのか?
「本来ならありえない。生き物であれば稀に多属性持ちとなるものもいるのだがな。そこにいるお兄様のように」
そう言って横目でエリオンを見た。
エリオンは肩をすくめている。
やけに色んな魔法を使うと思っていたらやっぱり多属性持ちだったのか。
「多属性持ちは人であれば百万人に一人という超稀有な存在だが魔石となると更に希少になる。自然界で存在することはほとんどない。しかし人工的に作ることは可能なのだ」
そう言ってリンネ姫は再び懐から何かを取り出した。
一体幾つ持ってるんだ?
それは白く濁った半透明の石のようなものだった。
河原で見かける軟玉に似てないこともないけどもっと透明度があって柔らかな色合いをしている。
「これは亜晶という。亜晶は謎の多い物質でこれ自体は魔素を全く含有していないのだが一つ変わった性質を持っていてな。異なる属性の魔石を融合させることができるのだ」
そして更に懐から二つの魔石を取り出した。
もう驚かないぞ。
「これはそれぞれ火の魔石と風の魔石だ」
そう言ってリンネ姫は二つの魔石と亜晶をテーブルの上でくっつけ合わせると詠唱を開始した。
詠唱と共にテーブルが光に包まれ、やがて光が晴れた時に三つあった魔石は完全に融合して一つの魔石となっていた。
「複合魔石は従来の魔石とは全く異なる特性を持っている。そして木をパルプにするのには水と火の性質を兼ね備えた複合魔石が欠かせないのだ」
リンネ姫はそう言ってため息をついた。
「火と水の魔石は我が国でも大量に産出しているから問題ない。問題は亜晶が絶対的に少ないことなのだ」
「亜晶というのは魔石や魔晶以上に希少な存在でね。ベルトラン帝国でもわずかしか産出されず、完全に禁輸措置が取られているんだ」
エリオンが言葉を続けた。
「つまり、特許制度を作るためにか紙が欠かせず、紙を作るためには亜晶が欠かせないけどその亜晶が全然ないってことか」
その通り、とエリオンとリンネ姫が頷いた。
「亜晶はどこで、どのように生成されるのかもわかっていない謎の物質だ。しかしお主の能力ならなにかヒントが得らえるのではないかと思ってな」
「なるほどそういうわけね。だったら他に亜晶を持ってないか?ちょっと調べさせてくれ」
リンネ姫がまたも懐から亜晶を取り出した。
手に取った亜晶はほのかに温かく、まるで生きてるようだ。
いや、これは単にリンネ姫の体温が移っているだけか?
ともかく亜晶をスキャンしてみる。
「…これは、何かの魔獣の体組織だな」
「本当なのか!?」
リンネ姫が驚いたように身を乗り出した。
「ああ、詳しく調べることはできなかったけど魔獣の身体の一部が石化したものみたいだ」
「魔獣…ということはワールフィアに手がかりがあるのだろうか…?」
リンネ姫が呟くように言った。
「いや、そうではない。もっと直接的なことだ」
リンネ姫が首を横に振った。
「テツヤ、特許制度などで特に重要なことは何かわかるか?」
「特許で重要なこと…誰が何を発明したかはっきりさせておくこととか?」
「それは確かにそうだが、それを実現するために必要なのがこれなのだ」
そう言ってリンネ姫が懐から何かを取り出してテーブルの上に置いた。
「これは…紙?」
リンネ姫が置いたのは何の変哲もない一枚の紙だった。
「そう、紙だ。これこそが特許制度の要の中の要と言える」
リンネ姫が言葉を続けた。
「例えばテツヤが何かを発明したとしよう。特許権を取るためにはそれがテツヤの発明であると届出をしなくてはならない。そして当局はそれがテツヤの発明であると記録をすることになる。その時に使われる記録媒体として私は紙が最適だと考えている」
「なるほど、言われてみれば確かに記録をつけておかなくちゃいけないか」
「紙は羊皮紙や木簡と違って嵩張らない。金属板と違って文字を書くのが楽だしインクが乾けば紙が残っている限り残り続ける。薄いから束ねておくのにも最適だ。しかし問題がない訳ではない」
リンネ姫はそう言って言葉を切った。
「この国では紙はまだ貴重品なのだ」
「我が国の紙は綿と藁を使っているのだけれど、その綿もベルトラン帝国からの輸入品でね」
エリオンが後に続いた。
「綿は衣類にも使われているから紙に回せる分はごくわずかなんだ。かと言って羊皮紙を使ったんじゃ羊が何頭いても足りなくなるだろうね」
「そんなにたくさん特許が出るのかな?」
「他人事のように言うでない!お主の考えたものだけで数百の特許が作られるのは確実なのだぞ」
「そ、そうかな?」
「そうなのだ!道路に敷設するアスファルトの混合率、敷設の仕方、マットレスの構造、ばねの作り方、鉄条網、列挙したら一日では終わらぬぞ」
リンネ姫は呆れたようにため息をつくと椅子に腰を下ろした。
「ともかく、この特許制度の成否はいかに紙を安価に手に入れられるかにかかっていると言ってもいいだろう。そういう意味では手がないことはないのだが…」
「なんだ、簡単に紙を作る方法があるのか」
「簡単ではないがな。紙の繊維に綿でなく木を使う方法を以前から研究していてそれは既に目途が立っているのだ。なのだが……」
リンネ姫が言葉の途中で口を濁した。
「木を紙にするためには一旦溶かしてパルプとしなくてはならない。パルプになってしまえばむしろ綿で作った紙よりも滑らかで使いやすい紙を作れるのだが、パルプにするのが問題なのだ」
リンネ姫はそう言うと再び懐から取り出したものをテーブルに置いた。
一体どこにしまってるんだろうか?
それは一見すると何の変哲もない石ころだった。
「それは魔石だ。ただしただの魔石ではない。水と火の属性を兼ね備えた複合魔石と呼ばれるものなのだ」
手に取ってみると確かに水と火の属性を感じる。
しかし相反する属性を同時に持つことなんて可能なのか?
「本来ならありえない。生き物であれば稀に多属性持ちとなるものもいるのだがな。そこにいるお兄様のように」
そう言って横目でエリオンを見た。
エリオンは肩をすくめている。
やけに色んな魔法を使うと思っていたらやっぱり多属性持ちだったのか。
「多属性持ちは人であれば百万人に一人という超稀有な存在だが魔石となると更に希少になる。自然界で存在することはほとんどない。しかし人工的に作ることは可能なのだ」
そう言ってリンネ姫は再び懐から何かを取り出した。
一体幾つ持ってるんだ?
それは白く濁った半透明の石のようなものだった。
河原で見かける軟玉に似てないこともないけどもっと透明度があって柔らかな色合いをしている。
「これは亜晶という。亜晶は謎の多い物質でこれ自体は魔素を全く含有していないのだが一つ変わった性質を持っていてな。異なる属性の魔石を融合させることができるのだ」
そして更に懐から二つの魔石を取り出した。
もう驚かないぞ。
「これはそれぞれ火の魔石と風の魔石だ」
そう言ってリンネ姫は二つの魔石と亜晶をテーブルの上でくっつけ合わせると詠唱を開始した。
詠唱と共にテーブルが光に包まれ、やがて光が晴れた時に三つあった魔石は完全に融合して一つの魔石となっていた。
「複合魔石は従来の魔石とは全く異なる特性を持っている。そして木をパルプにするのには水と火の性質を兼ね備えた複合魔石が欠かせないのだ」
リンネ姫はそう言ってため息をついた。
「火と水の魔石は我が国でも大量に産出しているから問題ない。問題は亜晶が絶対的に少ないことなのだ」
「亜晶というのは魔石や魔晶以上に希少な存在でね。ベルトラン帝国でもわずかしか産出されず、完全に禁輸措置が取られているんだ」
エリオンが言葉を続けた。
「つまり、特許制度を作るためにか紙が欠かせず、紙を作るためには亜晶が欠かせないけどその亜晶が全然ないってことか」
その通り、とエリオンとリンネ姫が頷いた。
「亜晶はどこで、どのように生成されるのかもわかっていない謎の物質だ。しかしお主の能力ならなにかヒントが得らえるのではないかと思ってな」
「なるほどそういうわけね。だったら他に亜晶を持ってないか?ちょっと調べさせてくれ」
リンネ姫がまたも懐から亜晶を取り出した。
手に取った亜晶はほのかに温かく、まるで生きてるようだ。
いや、これは単にリンネ姫の体温が移っているだけか?
ともかく亜晶をスキャンしてみる。
「…これは、何かの魔獣の体組織だな」
「本当なのか!?」
リンネ姫が驚いたように身を乗り出した。
「ああ、詳しく調べることはできなかったけど魔獣の身体の一部が石化したものみたいだ」
「魔獣…ということはワールフィアに手がかりがあるのだろうか…?」
リンネ姫が呟くように言った。
11
あなたにおすすめの小説
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
ステータス画面がバグったのでとりあえず叩きます!!
カタナヅキ
ファンタジー
ステータ画面は防御魔法?あらゆる攻撃を画面で防ぐ異色の魔術師の物語!!
祖父の遺言で魔女が暮らす森に訪れた少年「ナオ」は一冊の魔導書を渡される。その魔導書はかつて異界から訪れたという人間が書き記した代物であり、ナオは魔導書を読み解くと視界に「ステータス画面」なる物が現れた。だが、何故か画面に表示されている文字は無茶苦茶な羅列で解読ができず、折角覚えた魔法なのに使い道に悩んだナオはある方法を思いつく。
「よし、とりあえず叩いてみよう!!」
ステータス画面を掴んでナオは悪党や魔物を相手に叩き付け、時には攻撃を防ぐ防具として利用する。世界でただ一人の「ステータス画面」の誤った使い方で彼は成り上がる。
※ステータスウィンドウで殴る、防ぐ、空を飛ぶ異色のファンタジー!!
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
美女エルフの異世界道具屋で宝石職人してます
網野ホウ
ファンタジー
小説家になろうで先行投稿してます。
異世界から飛ばされてきた美しいエルフのセレナ=ミッフィール。彼女がその先で出会った人物は、石の力を見分けることが出来る宝石職人。
宝石職人でありながら法具店の店主の役職に就いている彼の力を借りて、一緒に故郷へ帰還できた彼女は彼と一緒に自分の店を思いつく。
セレナや冒険者である客達に振り回されながらも、その力を大いに発揮して宝石職人として活躍していく物語。
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。
S級冒険者の子どもが進む道
干支猫
ファンタジー
【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。
その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。
魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。
転生ジーニアス ~最強の天才は歴史を変えられるか~
普門院 ひかる
ファンタジー
ここ神聖帝国に地球から異世界転生してきた天才チートな男がいた。
彼の名はフリードリヒ・エルデ・フォン・ツェーリンゲン。
その前世からしてケンブリッジ大学博士課程主席卒業の天才量子力学者で、無差別級格闘技をも得意とするチートな男だった彼は、転生後も持ち前のチート能力を生かし、剣術などの武術、超能力や魔法を極めると、人外を含む娘たちとハーレム冒険パーティを作り、はては軍人となり成り上がっていく。
そして歴史にも干渉し得る立場となった彼は世界をどうするのか…
インターネットで異世界無双!?
kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。
その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。
これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる