外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人

文字の大きさ
233 / 298
ワールフィア再訪

21.取引

しおりを挟む
「取引だと!?」

「ああ、そのかわりにルスドールさんへの謂れなき圧力は今後一切やめると約束してもらう」

「ふざけるな!ヒト族如きが私と取引など!…」

 傲慢に吠えかけたバルドだったが首元の短剣を見てその威勢も霧消していった。


「落ち着けよ。これはあんたにとっても悪い話じゃないんだぜ」

「なんだと?」

 バルドの顔に興味が浮かんできた。

 食いついてきたな。


「その前にこの屋敷を直させてもらおうかな」

 屋敷に意識を集中させるとバルドたちが破壊した家具が次々と元の姿に戻っていく。


「なっ…?」


 バルドも、ルスドールさえもそれを見て目を丸くしていた。





「これでようやく落ち着いて話ができるな」

 元の姿に戻った部屋の中で俺はバルドと対峙した。


 バルドの部下たちは今も拘束されたままでルスドールの従者がそれを見張っている。


「取引とはなんだ」

 椅子に座ったバルドが悔しそうに睨みながら口を開いた。


「あんたらは今獣人族と揉めてるんだろ?俺がそれを止めてやる」


「なにっ!?」


 バルドの眼が見開かれた。

 ルスドールも驚きの顔でこちらを見ている。


「テツヤ!」

「それは…」

 驚くリンネ姫やアマーリアを手で制して俺は話を続けた。


「大体のあらましは聞いてる。水利が絡んでいる以上引くことはできないだろうけどあんたたちだって余計な犠牲者は避けたいはずだ。俺がそれを解決する、そのかわりにルスドールさんからは手を引いてもらう」

「話にならんな」

 バルドが椅子に背を預けて鼻で笑った。

 こんな状況だというのに傲慢な態度が変わらないみたいだ。


「獣人相手に貴様一人で何ができ…んなあっ?」

 嘲笑するバルドの髪が一房膝に落ちた。

 俺が短剣を操作してその髪を切り落としたからだ。


「俺の力はもう見てるだろ?」

「くっ…」


 バルドが恐れと驚愕の入り混じった顔でこちらを睨みつけてきた。


「だ、だが、どうしてそれを信じられる!?そんな口約束で貴様らが逃げぬという保証がどこにある!」

「その時はルスドールさんを好きにしたらいい」

 俺はバルドを見据えた。


「だが俺たちが獣人族との交渉に行っている間に手出しをしたらその時は容赦しない。その短剣でお前の喉を斬り裂く。これは脅しじゃない、取引内容の一部だ」


 バルドの顔に恐怖が浮かぶ。

 だがやがてその顔に微かな笑みが浮かんだ。

 何かを企てているような暗い笑みだった。


「いいだろう、ただし必ず水源を我々のものにしてもらうぞ。それ以外の成果は一切認めん」

「交渉成立だな。そっちこそ約束は守ってもらうぞ」

「くどい。エルフは約束を違えぬ。例え貴様らヒト族が相手であろうとな」

 吐き捨てるように言うとバルドが立ち上がった。


「言っておくが貴様らごときヒト族が我ら崇高なるエルフ族と取引できたなどと思うな。これは言うなれば温情のようなものだ。そこの男を助けたくばせいぜい必死になることだな」


 捨て台詞を吐いてバルドたちは立ち去っていった。


「やれやれだな」

「テツヤ殿、何という無茶なことを!」

 ルスドールが悲痛な声を上げた。

「まあまあ、とりあえず危機は去ったんだし、後のことはこれから考えようよ」

「しかし!獣人族は交渉の通じる相手ではありませぬぞ!我々のためにテツヤ殿たちを危険に晒すようなことになっては…」

「ルスドールさんたちのためじゃないさ」

 俺は頭を振った。

「リンネ姫のためだ。あなたはリンネ姫の高祖父だ。俺が動く理由はそれで十分だよ」

「テツヤ…!」

 リンネ姫がひしと俺に抱きついてきた。

「それに亜晶のことを調べるためには獣人族のところに行くことになるだろうからさ。結局避けては通れないと思うんだ」

「そう…ですか」

 それでもルスドールは申し訳なさそうな顔をしている。

「それよりも獣人族のことを知ってるだけ教えてもらえないかな?こちらとしても相手のことを事前に知っておきたいからさ」




    ◆




「よろしいのですか、あのような傍若無人を許すなど」

「放っておけ」

 咎めるような部下の言葉を、しかしバルドは鼻先で笑って流した。


「ヒト族如きに獣人族を説得させるなど不可能だ。戦闘になって少しでも奴らの数を減らしてくれればそれでよい。できなくともあの小癪なヒト族共が死ぬだけでこちらに損耗はない」

 馬に乗りながらバルドは薄い笑みを浮かべた。


「獣人族共は卑怯にも傭兵を雇って手を焼いていたところだ。ヒト族と獣人族で潰し合ってくれるなら願ったりだ」

 万が一あのヒト族が交渉に成功したら労せず水源を手に入れることができる。

 ルスドールのことはそれからゆっくりと考えればいい。

 ヒト族との約束など知ったことか、今後の地位を盤石のものとするためには未だに町民から一定の支持を得ているルスドールはどうしても排除せねばならない障害だ。

「せいぜい空回りするがいい」

 森の中にバルドの高笑いが消えていった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

ステータス画面がバグったのでとりあえず叩きます!!

カタナヅキ
ファンタジー
ステータ画面は防御魔法?あらゆる攻撃を画面で防ぐ異色の魔術師の物語!! 祖父の遺言で魔女が暮らす森に訪れた少年「ナオ」は一冊の魔導書を渡される。その魔導書はかつて異界から訪れたという人間が書き記した代物であり、ナオは魔導書を読み解くと視界に「ステータス画面」なる物が現れた。だが、何故か画面に表示されている文字は無茶苦茶な羅列で解読ができず、折角覚えた魔法なのに使い道に悩んだナオはある方法を思いつく。 「よし、とりあえず叩いてみよう!!」 ステータス画面を掴んでナオは悪党や魔物を相手に叩き付け、時には攻撃を防ぐ防具として利用する。世界でただ一人の「ステータス画面」の誤った使い方で彼は成り上がる。 ※ステータスウィンドウで殴る、防ぐ、空を飛ぶ異色のファンタジー!!

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

美女エルフの異世界道具屋で宝石職人してます

網野ホウ
ファンタジー
小説家になろうで先行投稿してます。 異世界から飛ばされてきた美しいエルフのセレナ=ミッフィール。彼女がその先で出会った人物は、石の力を見分けることが出来る宝石職人。 宝石職人でありながら法具店の店主の役職に就いている彼の力を借りて、一緒に故郷へ帰還できた彼女は彼と一緒に自分の店を思いつく。 セレナや冒険者である客達に振り回されながらも、その力を大いに発揮して宝石職人として活躍していく物語。

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

転生ジーニアス ~最強の天才は歴史を変えられるか~

普門院 ひかる
ファンタジー
 ここ神聖帝国に地球から異世界転生してきた天才チートな男がいた。  彼の名はフリードリヒ・エルデ・フォン・ツェーリンゲン。  その前世からしてケンブリッジ大学博士課程主席卒業の天才量子力学者で、無差別級格闘技をも得意とするチートな男だった彼は、転生後も持ち前のチート能力を生かし、剣術などの武術、超能力や魔法を極めると、人外を含む娘たちとハーレム冒険パーティを作り、はては軍人となり成り上がっていく。  そして歴史にも干渉し得る立場となった彼は世界をどうするのか…

インターネットで異世界無双!?

kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。  その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。  これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。

処理中です...