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獣人族
25.先代頭領リオイ
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「私がパンシーラ氏族の先代頭領リオイ・パンシーラじゃ。遠方よりよくぞ来てくださったな、ヒト族の客人よ」
リオイはそう言って頭を下げて俺たちに席を勧めてきた。
体の動きはゆっくりだけどその立ち居振る舞いは堂々としていて頭領としての威厳を感じる。
「私の顔に何かついているのかね?」
自己紹介が終わってぼんやりと見つめていた俺にリオイが尋ねてきた。
「あ、いや、すいません。現頭領の父親と聞いていたからもっと若い人かと想像していたもので…あ、す、すいません!失言でした」
謝る俺にリオイはいいのですよと言ってカラカラと笑った。
「あれは私が年を取ってからできた息子でしてな。本来ならもう少し大人の獅子人族として成長してから家督を譲りたかったのじゃが、数年前から体の言うことが効かなくなっておってな、やむを得ず頭領を継いだという次第なのじゃ」
そう言ってリオイはため息をついた。
「もう少し落ち着いてくれるといいのだが…なにぶんまだ若いゆえに頭領としての振る舞いを分かっておらぬようで、グラン殿にもご迷惑をおかけしております」
「まったくだぜ。あいつは一度誰かにガツンとやってもらった方が身のためだぞ」
「返す言葉もございませぬ。まったくあ奴ときたら…」
「ちょ、ちょっと待った。頭領のことは置いておいてとりあえず争いの元になった川を見せてもらえないかな。結局水源の問題が解決するなら争いだってなくなるはず、そうだろ?」
リオイの愚痴が延々と続きそうだったから話の方向を変えることにした。
「そうさのう、まずは元凶を見てもらうのが一番か。チャイタ、チャイタはおらぬか」
「ここですわ、おじ様」
軽やかな足音と共に二階から降りてくる足音が聞こえた。
それは女性の獅子人だった。
たてがみこそないものの、きりりとしたなかなかの美形だ。
「この娘の名前はチャイタ。ローベンとは幼馴染でな。今はこうして私の身の回りの世話をしてもらっておるのじゃ」
「初めまして、わたくしの名前はチャイタと申します。お見知りおきを」
チャイタが優雅に挨拶をした。
「チャイタよ、竜車を出してくれるか。この方々をパンシーラ川へ案内したいのだ」
竜車に乗って向かったのは町から更に外れた荒野だった。
「これがパンシーラ川じゃ」
リオイが指差した先にあるのは…ほぼ干上がりかけた川床だった。
「これは…思った以上だな…」
元は広大な川だったのだろうけど、今はか細い水がチョロチョロと流れているだけだ。
これでは共有するどころか満足に水源にすることすらできそうにない。
「見ての通り、ここ数年の間に水量が激減してしまって我々ですら水に事欠く有様なのじゃよ。エルフ族と共有するどころではないのが現実なのだ」
地中をスキャンしてみても水脈らしい水脈が見つからない。
どうやら本当にこの川がこの地域一帯で唯一の水源となっているみたいだ。
「アマーリア、どうにかして川の水を元に戻せないかな?」
「難しいな。この川は他に支流もないようだし水源が枯れると水量を元に戻すことはできなさそうだ」
アマーリアが厳しそうな顔で答えた。
「…そうか。だとすると水源がどうなっているのかを確かめた方が良いのかな」
俺は川が流れてくる先に目をやった。
その遥か向こうに青くかすむ山が見える。
おそらくこの川の水源はあの山にあるのだろう。
「リオイさん、ちょっと竜車を借りてもいいかな?水源まで行ってみたいんだ」
「そ、それは構わぬが、あの山、寝巴蛇山まではかなりあるぞ。竜車と言えども行って帰ってくるのに丸一日はかかるはず」
「ああ、それなら大丈夫。リオイさんとチャイタさんもどう?夕飯までには帰ってこられるはずだからさ」
俺は走竜から竜車を外すと宙に浮かせた。
「な、なんと!」
「まあ!」
リオイとチャイタが驚きの声をあげた。
「さあさあ乗った乗った、これならあの山まで一っ飛びだよ」
「こ、これは凄い…長く生きてきたが空を飛ぶ竜車に乗るのは初めてじゃ」
宙を飛ぶ竜車に乗りながらリオイが感心したように息をついた。
「あ、あなたは一体何者なんですか?見たところ普通のヒト族のようにしか見えないのだけど…」
チャイタもお化けでも見るようにこちらを見ている。
「俺は土属性使いでね。こういうことは得意なんだ」
「土属性使いにこのようなことが可能だったとは…ワールフィアでもここまでの使い手は見たことがないぞ」
リオイはそう言ってほっとしたようにため息を吐きだした。
「あなたが話の分かる方で良かった。でなければ我々パンシーラ氏族など翌日の太陽を待たずに討ち倒されていたでしょう」
「おいおいリオイの爺さんよ、そうならないために俺を呼んだんじゃねえのかよ」
リオイの言葉にグランが牙をむいてきた。
「話をまぜっかえすなって。俺は争いをしないで問題を解決出来たらそれでいいんだからさ」
そんなことを話しながら竜車は滑るように空を飛び、あっという間に寝巴蛇山へと近づいていった。
「こ、これは…」
上空から寝巴蛇山を見た俺は驚きで言葉を失った。
か細い水源だと思っていた寝巴蛇山は中央に満々と水をたたえた湖を抱いていたからだ。
リオイはそう言って頭を下げて俺たちに席を勧めてきた。
体の動きはゆっくりだけどその立ち居振る舞いは堂々としていて頭領としての威厳を感じる。
「私の顔に何かついているのかね?」
自己紹介が終わってぼんやりと見つめていた俺にリオイが尋ねてきた。
「あ、いや、すいません。現頭領の父親と聞いていたからもっと若い人かと想像していたもので…あ、す、すいません!失言でした」
謝る俺にリオイはいいのですよと言ってカラカラと笑った。
「あれは私が年を取ってからできた息子でしてな。本来ならもう少し大人の獅子人族として成長してから家督を譲りたかったのじゃが、数年前から体の言うことが効かなくなっておってな、やむを得ず頭領を継いだという次第なのじゃ」
そう言ってリオイはため息をついた。
「もう少し落ち着いてくれるといいのだが…なにぶんまだ若いゆえに頭領としての振る舞いを分かっておらぬようで、グラン殿にもご迷惑をおかけしております」
「まったくだぜ。あいつは一度誰かにガツンとやってもらった方が身のためだぞ」
「返す言葉もございませぬ。まったくあ奴ときたら…」
「ちょ、ちょっと待った。頭領のことは置いておいてとりあえず争いの元になった川を見せてもらえないかな。結局水源の問題が解決するなら争いだってなくなるはず、そうだろ?」
リオイの愚痴が延々と続きそうだったから話の方向を変えることにした。
「そうさのう、まずは元凶を見てもらうのが一番か。チャイタ、チャイタはおらぬか」
「ここですわ、おじ様」
軽やかな足音と共に二階から降りてくる足音が聞こえた。
それは女性の獅子人だった。
たてがみこそないものの、きりりとしたなかなかの美形だ。
「この娘の名前はチャイタ。ローベンとは幼馴染でな。今はこうして私の身の回りの世話をしてもらっておるのじゃ」
「初めまして、わたくしの名前はチャイタと申します。お見知りおきを」
チャイタが優雅に挨拶をした。
「チャイタよ、竜車を出してくれるか。この方々をパンシーラ川へ案内したいのだ」
竜車に乗って向かったのは町から更に外れた荒野だった。
「これがパンシーラ川じゃ」
リオイが指差した先にあるのは…ほぼ干上がりかけた川床だった。
「これは…思った以上だな…」
元は広大な川だったのだろうけど、今はか細い水がチョロチョロと流れているだけだ。
これでは共有するどころか満足に水源にすることすらできそうにない。
「見ての通り、ここ数年の間に水量が激減してしまって我々ですら水に事欠く有様なのじゃよ。エルフ族と共有するどころではないのが現実なのだ」
地中をスキャンしてみても水脈らしい水脈が見つからない。
どうやら本当にこの川がこの地域一帯で唯一の水源となっているみたいだ。
「アマーリア、どうにかして川の水を元に戻せないかな?」
「難しいな。この川は他に支流もないようだし水源が枯れると水量を元に戻すことはできなさそうだ」
アマーリアが厳しそうな顔で答えた。
「…そうか。だとすると水源がどうなっているのかを確かめた方が良いのかな」
俺は川が流れてくる先に目をやった。
その遥か向こうに青くかすむ山が見える。
おそらくこの川の水源はあの山にあるのだろう。
「リオイさん、ちょっと竜車を借りてもいいかな?水源まで行ってみたいんだ」
「そ、それは構わぬが、あの山、寝巴蛇山まではかなりあるぞ。竜車と言えども行って帰ってくるのに丸一日はかかるはず」
「ああ、それなら大丈夫。リオイさんとチャイタさんもどう?夕飯までには帰ってこられるはずだからさ」
俺は走竜から竜車を外すと宙に浮かせた。
「な、なんと!」
「まあ!」
リオイとチャイタが驚きの声をあげた。
「さあさあ乗った乗った、これならあの山まで一っ飛びだよ」
「こ、これは凄い…長く生きてきたが空を飛ぶ竜車に乗るのは初めてじゃ」
宙を飛ぶ竜車に乗りながらリオイが感心したように息をついた。
「あ、あなたは一体何者なんですか?見たところ普通のヒト族のようにしか見えないのだけど…」
チャイタもお化けでも見るようにこちらを見ている。
「俺は土属性使いでね。こういうことは得意なんだ」
「土属性使いにこのようなことが可能だったとは…ワールフィアでもここまでの使い手は見たことがないぞ」
リオイはそう言ってほっとしたようにため息を吐きだした。
「あなたが話の分かる方で良かった。でなければ我々パンシーラ氏族など翌日の太陽を待たずに討ち倒されていたでしょう」
「おいおいリオイの爺さんよ、そうならないために俺を呼んだんじゃねえのかよ」
リオイの言葉にグランが牙をむいてきた。
「話をまぜっかえすなって。俺は争いをしないで問題を解決出来たらそれでいいんだからさ」
そんなことを話しながら竜車は滑るように空を飛び、あっという間に寝巴蛇山へと近づいていった。
「こ、これは…」
上空から寝巴蛇山を見た俺は驚きで言葉を失った。
か細い水源だと思っていた寝巴蛇山は中央に満々と水をたたえた湖を抱いていたからだ。
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