外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人

文字の大きさ
260 / 298
第七部~砂漠の雨:夏の禍

4.蚊遣り花

しおりを挟む
 ハウエルに案内してもらったのはボーハルトの町から少し離れたところにある開けた平野だった。

 辺り一面に真っ白な花が咲き、まるで雪が積もっているようにすら見える。

 それだけで幻想的な光景だったけど俺の注意は全く別の場所にあった。

「間違いない、これは除虫菊だ」


 正式名称はシロバナムシヨケギク、殺虫成分のピレスロイドを豊富に含むために日本では蚊取り線香に使われていた花だ。


 ドライアド国のフェリエに確かめてもらった方が確実だろうけど、とりあえず効果があるか試してみる方が手っ取り早そうだ。


 俺は蚊遣り花を一抱えほど刈り取るとすぐにトロブへと引き返した。


「フラム、こいつを乾燥させてくれないか?」

 蚊遣り草の花の部分だけを摘み取ってフラムの力で乾燥状態にしてもらう。

 それを乳鉢と乳棒でついて粉末にする。

 これを固めるのには本来タブノキという木の粉を使うのだけれどとりあえず固められれば何でもいいから今回はでんぷんを使うことにする。


「テツヤは一体何をしているのだ?」

 俺が作業をしているとみんなが不思議そうな顔で見に来た。


「まあ見てなって。こいつにはきっと驚くぞ」

 蚊遣り花とでんぷん、水を混ぜ合わせてひものような形にし、それをくるくると巻いて渦状にする。

「よし、じゃあこいつを乾かしてくれないか?」

 形が出来上がったら再びフラムに乾燥してもらって自作蚊取り線香の出来上がりだ。


 庭の土で作った即席の蚊やり豚の中に蚊取り線香を仕込んで火を点ける。


 やがて豚の口と鼻からゆっくりと煙が立ち上ってきた。


「お香を作っていたのか?」

「しかしこれはまた、えらくきついお香だな。目に染みるぞ」


 初めての蚊取り線香にみんな顔をしかめている。


「まあまあ、最初は慣れないかもしれないけどこいつは凄いんだぜ」

 俺はそう言うと窓の網戸を開け放した。


「な、なにをしているのだ!そんなことをしたら蚊が入ってくるではないか!」

 アマーリアが抗議の声をあげたけどもう遅い、俺が目視できただけでも五、六匹の蚊が部屋の中に入ってきた。

「これではまた蚊に刺されてしまうではないか…って、刺されない?」

 しばらく経っても全く蚊に刺されないことにアマーリアが驚きの声をあげた。


「これがそのお香の力なんだ。これは蚊取り線香といって殺虫成分が豊富に含まれているからこのお香の煙を浴びた蚊は死んでしまうんだ」

 床を見てみると確かに死んだ蚊が何匹も転がっていた。

 間違いなく効果があるみたいだ。


「…これは凄いものだな。ぜひ私の部屋にも欲しいぞ!」

 アマーリアが感心したように驚きの声をあげた。

「キリも欲しい!」

「私はいいかな。この煙は慣れそうにないし蚊には困ってないからな」

「私もいい。でも村のみんなは欲しがると思う」


 魔法の力で蚊を寄せ付けないソラノとフラムには必要ないようだけど需要は間違いなくあるみたいだ。

「よし!とりあえず幾つか作ってトロブで試験的に使ってみるか!」



 こうして俺たちは総出で蚊取り線香を作り、トロブの町やグランの村に配り回った。

 そしてその効果は絶大でその日のうちに大量の追加注文が舞い込んできた。

 中には商売用に大量発注できないかという問い合わせまであった始末だ。


「不味いな。このままだと蚊取り線香屋として夏を終えることになってしまうぞ」

 夜通しで蚊取り線香を作りながら俺はため息をついた。


「やっぱりここはボーハルトとリンネ姫に力を貸してもらうしかないか」


 その翌日、俺は網戸の試作と蚊取り線香を持ってゴルドに向かった。

 行き先は当然リンネ姫のところだ。

「これがこの前言っていた網戸だよ。これを窓に嵌めれば蚊の侵入を防ぐことができる。蚊帳と違って家の中全体を守ることができるから便利なんだけど、それぞれの家に合わせて作らなくちゃいけないからちょっと手間だと思う」

 まずは網戸を見せ、それから蚊取り線香を取り出した。

「それでこっちが蚊取り線香。殺虫効果のあるお香でこれを焚いておけば蚊を殺すことができる。これは実際に実演した方が良いだろうな」


 俺はそう言ってリンネ姫を中庭に連れ出した。

 王城とはいえ池や藪のある中庭は蚊の天国になっているから実証にはもってこいだ。

 中庭のベンチで蚊取り線香に火を点けるとたなびく煙が中庭へと広がっていく。


「ふむ、何やら変わった匂いのするお香だな。それに…確かに蚊が寄ってこないようだ」
 その煙をリンネ姫は好奇心のこもった眼で見ていた。


「これの効果を確かめるのは夜寝てる時が一番なんだよな。だから今夜はこの蚊取り線香を点けて寝てみてくれないか?ちょっと喉が痛くなるかもしれないけど効果はあると思う」

「…よかろう、最も説得力を持つ言葉は体験だ、という言葉もあるしな。それならば今夜は低層階にて蚊帳を付けずに確かめてみようではないか」

 リンネ姫は力強く頷くとこちらを見た。

「テツヤも一緒に効果を確認してみるか?」

「いやそれはいいって!」

「なんだつまらぬ。私の部屋はいつでもお主のために開けてあるのだぞ」

 リンネ姫が口を尖らせた。

 確かにちょっと後ろ髪引かれるけど。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

ステータス画面がバグったのでとりあえず叩きます!!

カタナヅキ
ファンタジー
ステータ画面は防御魔法?あらゆる攻撃を画面で防ぐ異色の魔術師の物語!! 祖父の遺言で魔女が暮らす森に訪れた少年「ナオ」は一冊の魔導書を渡される。その魔導書はかつて異界から訪れたという人間が書き記した代物であり、ナオは魔導書を読み解くと視界に「ステータス画面」なる物が現れた。だが、何故か画面に表示されている文字は無茶苦茶な羅列で解読ができず、折角覚えた魔法なのに使い道に悩んだナオはある方法を思いつく。 「よし、とりあえず叩いてみよう!!」 ステータス画面を掴んでナオは悪党や魔物を相手に叩き付け、時には攻撃を防ぐ防具として利用する。世界でただ一人の「ステータス画面」の誤った使い方で彼は成り上がる。 ※ステータスウィンドウで殴る、防ぐ、空を飛ぶ異色のファンタジー!!

美女エルフの異世界道具屋で宝石職人してます

網野ホウ
ファンタジー
小説家になろうで先行投稿してます。 異世界から飛ばされてきた美しいエルフのセレナ=ミッフィール。彼女がその先で出会った人物は、石の力を見分けることが出来る宝石職人。 宝石職人でありながら法具店の店主の役職に就いている彼の力を借りて、一緒に故郷へ帰還できた彼女は彼と一緒に自分の店を思いつく。 セレナや冒険者である客達に振り回されながらも、その力を大いに発揮して宝石職人として活躍していく物語。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

転生ジーニアス ~最強の天才は歴史を変えられるか~

普門院 ひかる
ファンタジー
 ここ神聖帝国に地球から異世界転生してきた天才チートな男がいた。  彼の名はフリードリヒ・エルデ・フォン・ツェーリンゲン。  その前世からしてケンブリッジ大学博士課程主席卒業の天才量子力学者で、無差別級格闘技をも得意とするチートな男だった彼は、転生後も持ち前のチート能力を生かし、剣術などの武術、超能力や魔法を極めると、人外を含む娘たちとハーレム冒険パーティを作り、はては軍人となり成り上がっていく。  そして歴史にも干渉し得る立場となった彼は世界をどうするのか…

元天才貴族、今やリモートで最強冒険者!

しらかめこう
ファンタジー
魔法技術が発展した異世界。 そんな世界にあるシャルトルーズ王国という国に冒険者ギルドがあった。 強者ぞろいの冒険者が数多く所属するそのギルドで現在唯一、最高ランクであるSSランクに到達している冒険者がいた。 ───彼の名は「オルタナ」 漆黒のコートに仮面をつけた謎多き冒険者である。彼の素顔を見た者は誰もおらず、どういった人物なのかも知る者は少ない。 だがしかし彼は誰もが認める圧倒的な力を有しており、冒険者になって僅か4年で勇者や英雄レベルのSSランクに到達していた。 そんな彼だが、実は・・・ 『前世の知識を持っている元貴族だった?!」 とある事情で貴族の地位を失い、母親とともに命を狙われることとなった彼。そんな彼は生活費と魔法の研究開発資金を稼ぐため冒険者をしようとするが、自分の正体が周囲に知られてはいけないので自身で開発した特殊な遠隔操作が出来るゴーレムを使って自宅からリモートで冒険者をすることに! そんな最強リモート冒険者が行く、異世界でのリモート冒険物語!! 毎日20時30分更新予定です!!

処理中です...