外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人

文字の大きさ
282 / 298
ベルトランの災厄

26.ついえた野望

しおりを挟む
「くうううっ…」

 バグラヴスが憎しみのこもった眼で俺を睨んだ。

「諦めるんだな。あんたは俺たちを追うのに夢中でこの辺りの虫を全て投入したんだろ。援軍をよこすにはしばらく時間がかかるはずだ」

 沈黙がその問いへの回答になっていた。


「大人しく投降しろ。嫌だと言っても手足を切り落としてでも連れていく。そしてこの虫害を終わらせるのだ」

 ヘルマが曲刀をバグラヴスに突き付けた。

 今この部屋にいるのは俺とヘルマ、そしてバグラヴスだけだ。

 他のメンバーは全員外で虫たちの援軍に備えている。


「ハハハハハハハハハッ!!!!」

 バグラヴスが突然笑い出した。

「この私が虫害を終わらせる?ベルトランのために?ハハハハハハッ!!!」

 まるで気の利いたジョークでも聞いたかのように高笑いを続けている。


「貴様!何がおかしい!」

 ヘルマが吠えた。

「いや、失礼。あなたがあまりにおかしなことを言うものですから」

 息を整えながらバグラヴスが答えた。

「あなた、私が何故ここにいるのか知っていますか?何故シセロの如き俗物に仕えていたのか」



「他に行くあてがなかったからですよ!」

 答える者がいない中、バグラヴスは滔々と語り始めた。

「あなた方も見たでしょう!私の力を!私が本気を出せば周囲の虫たちは全て私の意のままだ!これがどういう意味を持つのかあなた方にはわかっておいでか!」

「いいや、わかるわけがないでしょうね!でなければここまで私が辛酸をなめるわけがない!虫使いだというだけで蔑まれ、追い立てられ、蔑ろにされるわけがない!」

 バグラヴスは眼を爛々と輝かせながら語り続けた。

 その眼は既に正気を失いつつある。


「シセロにしたってそうだ!私のことを害虫処理の道具程度にしか思っていなかった!与えられる報酬なんて雀の涙程度もない!これが私に対するこの国の扱いなのですよ!」

 それはもはや俺たちに聞かせるというよりも自分の心の丈をぶちまけているようだった。

「そんな国を私が救えと?これが冗談でなくて何だというのだ!いや冗談にしてもくだらなすぎる、そのくだらなさが笑えるというのですよ!」

「貴様…」

 俺は掴みかかろうとするヘルマを押さえてバグラヴスの前に出た。

「言いたいことは色々あるだろうしお前さんの境遇には同情する部分もあるんだろうけどさ、嫌がろうがなんだろうが自分のやったことの責任は取ってもらうぜ。たとえ力づくになったとしてもな」


 バグラヴスが窓ににじり寄った。

 しかしその窓が瞬く間に石で塞がれた。

「逃げようとしても無駄だ。この周囲は俺たちの仲間が囲んでる。多少の虫じゃ突破できねえよ。諦めて観念するんだな」


 投降を促すために近寄ろうとした時、不意にバグラヴスのローブに穴が開いた。


「!?」

 辛うじてかわした俺の頬を何かがかすめる。


「な、なんだあっ!?」


 驚いている間にもバグラヴスのローブには幾つも穴が開き、その度に小さな影が襲い掛かってきた。

「フハハハハハ、それは突鋼虫です!鉄よりも硬いその甲殻にとって鎧など薄板も同然ですよ!」


 突鋼虫は不気味な羽音と共に俺たちの周りを飛び回っていた。

 とんでもない速さで目で追うのがやっとだ。

 塔の石材で作った盾もあっさりと貫通されてしまった。


「行けい!突鋼虫よ!こやつらを蜂の巣にするのだ!」


 バグラヴスの号令と共に数十匹の突鋼虫が俺たちに向かって突進してくる。


「はあっ!!」

 しかしその全てをヘルマは一息で切り伏せた。


「なっ!?」

 瞬時に両断されて床に散らばる突鋼虫を見てバグラヴスが目を丸くする。

 魔力を直接攻撃力とするヘルマの剣には突鋼虫の甲殻も役には立たないらしい。

 とはいえそれも高速で飛び交うそれを正確に斬り落とすヘルマの剣技があってこそだけど。

 ヘルマがバグラヴスの喉元に剣を突き立てた。

「殺さないでやるだけありがたいと思え。命が惜しければ今すぐ貴様が国中に放った虫共を始末しろ」



「クク、ククク…」


 完全に勝敗は決したはずなのにバグラヴスは笑いを止めない。



「もう無駄ですよ。堰は切られた!この国はおしまいだ!いや、この大陸全土が滅びを迎えるのだ!」

 その笑い声に背筋に冷たいものが走る。

 再びバグラヴスのローブが大きく膨れ上がった。

「危ねえっ!」

 咄嗟に壁を作ってヘルマを守ったのとバグラヴスの腹から不気味な虫が飛び出してきたのはほぼ同時だった。

 虫が放った溶解液で俺の作った壁が瞬時に泡立ち崩れ落ちる。


「はっ!」

 ヘルマが素早くその虫を両断した。

 虫は床でのたうち回り、やがて動かなくなった。

 こいつ、こんなものまで!

「ふっ!」

 気合一閃、ヘルマの曲刀がバグラヴスのこめかみに振り下ろされた。

 鈍い衝撃音と共にバグラヴスが床へ昏倒する。


「殺さなかったんだな」

「正直に言えばこの場で斬り捨てたいところだ。しかしこいつには己がしたことの後始末をしてもらわねばならぬ」

 曲刀を鞘に納めながらヘルマはバグラヴスを睨みつけた。

 ベルトラン帝国を憎み大陸中をその手にかけようとした虫使いの野望がついえた瞬間だった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

美女エルフの異世界道具屋で宝石職人してます

網野ホウ
ファンタジー
小説家になろうで先行投稿してます。 異世界から飛ばされてきた美しいエルフのセレナ=ミッフィール。彼女がその先で出会った人物は、石の力を見分けることが出来る宝石職人。 宝石職人でありながら法具店の店主の役職に就いている彼の力を借りて、一緒に故郷へ帰還できた彼女は彼と一緒に自分の店を思いつく。 セレナや冒険者である客達に振り回されながらも、その力を大いに発揮して宝石職人として活躍していく物語。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

元天才貴族、今やリモートで最強冒険者!

しらかめこう
ファンタジー
魔法技術が発展した異世界。 そんな世界にあるシャルトルーズ王国という国に冒険者ギルドがあった。 強者ぞろいの冒険者が数多く所属するそのギルドで現在唯一、最高ランクであるSSランクに到達している冒険者がいた。 ───彼の名は「オルタナ」 漆黒のコートに仮面をつけた謎多き冒険者である。彼の素顔を見た者は誰もおらず、どういった人物なのかも知る者は少ない。 だがしかし彼は誰もが認める圧倒的な力を有しており、冒険者になって僅か4年で勇者や英雄レベルのSSランクに到達していた。 そんな彼だが、実は・・・ 『前世の知識を持っている元貴族だった?!」 とある事情で貴族の地位を失い、母親とともに命を狙われることとなった彼。そんな彼は生活費と魔法の研究開発資金を稼ぐため冒険者をしようとするが、自分の正体が周囲に知られてはいけないので自身で開発した特殊な遠隔操作が出来るゴーレムを使って自宅からリモートで冒険者をすることに! そんな最強リモート冒険者が行く、異世界でのリモート冒険物語!! 毎日20時30分更新予定です!!

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

チートツール×フールライフ!~女神から貰った能力で勇者選抜されたので頑張ってラスダン前まで来たら勇者にパーティ追放されたので復讐します~

黒片大豆
ファンタジー
「お前、追放な。田舎に帰ってゆっくりしてろ」 女神の信託を受け、勇者のひとりとして迎えられた『アイサック=ベルキッド』。 この日、勇者リーダーにより追放が宣告され、そのゴシップニュースは箝口令解除を待って、世界中にバラまかれることとなった。 『勇者道化師ベルキッド、追放される』 『サック』は田舎への帰り道、野党に襲われる少女『二オーレ』を助け、お礼に施しを受ける。しかしその家族には大きな秘密があり、サックの今後の運命を左右することとなった。二オーレとの出会いにより、新たに『女神への復讐』の選択肢が生まれたサックは、女神へのコンタクト方法を探る旅に目的を変更し、その道中、ゴシップ記事を飛ばした記者や、暗殺者の少女、元勇者の同僚との出会いを重ね、魔王との決戦時に女神が現れることを知る。そして一度は追放された身でありながら、彼は元仲間たちの元へむかう。本気で女神を一発ぶん殴る──ただそれだけのために。

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

処理中です...