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ベルトランの災厄
26.ついえた野望
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「くうううっ…」
バグラヴスが憎しみのこもった眼で俺を睨んだ。
「諦めるんだな。あんたは俺たちを追うのに夢中でこの辺りの虫を全て投入したんだろ。援軍をよこすにはしばらく時間がかかるはずだ」
沈黙がその問いへの回答になっていた。
「大人しく投降しろ。嫌だと言っても手足を切り落としてでも連れていく。そしてこの虫害を終わらせるのだ」
ヘルマが曲刀をバグラヴスに突き付けた。
今この部屋にいるのは俺とヘルマ、そしてバグラヴスだけだ。
他のメンバーは全員外で虫たちの援軍に備えている。
「ハハハハハハハハハッ!!!!」
バグラヴスが突然笑い出した。
「この私が虫害を終わらせる?ベルトランのために?ハハハハハハッ!!!」
まるで気の利いたジョークでも聞いたかのように高笑いを続けている。
「貴様!何がおかしい!」
ヘルマが吠えた。
「いや、失礼。あなたがあまりにおかしなことを言うものですから」
息を整えながらバグラヴスが答えた。
「あなた、私が何故ここにいるのか知っていますか?何故シセロの如き俗物に仕えていたのか」
「他に行くあてがなかったからですよ!」
答える者がいない中、バグラヴスは滔々と語り始めた。
「あなた方も見たでしょう!私の力を!私が本気を出せば周囲の虫たちは全て私の意のままだ!これがどういう意味を持つのかあなた方にはわかっておいでか!」
「いいや、わかるわけがないでしょうね!でなければここまで私が辛酸をなめるわけがない!虫使いだというだけで蔑まれ、追い立てられ、蔑ろにされるわけがない!」
バグラヴスは眼を爛々と輝かせながら語り続けた。
その眼は既に正気を失いつつある。
「シセロにしたってそうだ!私のことを害虫処理の道具程度にしか思っていなかった!与えられる報酬なんて雀の涙程度もない!これが私に対するこの国の扱いなのですよ!」
それはもはや俺たちに聞かせるというよりも自分の心の丈をぶちまけているようだった。
「そんな国を私が救えと?これが冗談でなくて何だというのだ!いや冗談にしてもくだらなすぎる、そのくだらなさが笑えるというのですよ!」
「貴様…」
俺は掴みかかろうとするヘルマを押さえてバグラヴスの前に出た。
「言いたいことは色々あるだろうしお前さんの境遇には同情する部分もあるんだろうけどさ、嫌がろうがなんだろうが自分のやったことの責任は取ってもらうぜ。たとえ力づくになったとしてもな」
バグラヴスが窓ににじり寄った。
しかしその窓が瞬く間に石で塞がれた。
「逃げようとしても無駄だ。この周囲は俺たちの仲間が囲んでる。多少の虫じゃ突破できねえよ。諦めて観念するんだな」
投降を促すために近寄ろうとした時、不意にバグラヴスのローブに穴が開いた。
「!?」
辛うじてかわした俺の頬を何かがかすめる。
「な、なんだあっ!?」
驚いている間にもバグラヴスのローブには幾つも穴が開き、その度に小さな影が襲い掛かってきた。
「フハハハハハ、それは突鋼虫です!鉄よりも硬いその甲殻にとって鎧など薄板も同然ですよ!」
突鋼虫は不気味な羽音と共に俺たちの周りを飛び回っていた。
とんでもない速さで目で追うのがやっとだ。
塔の石材で作った盾もあっさりと貫通されてしまった。
「行けい!突鋼虫よ!こやつらを蜂の巣にするのだ!」
バグラヴスの号令と共に数十匹の突鋼虫が俺たちに向かって突進してくる。
「はあっ!!」
しかしその全てをヘルマは一息で切り伏せた。
「なっ!?」
瞬時に両断されて床に散らばる突鋼虫を見てバグラヴスが目を丸くする。
魔力を直接攻撃力とするヘルマの剣には突鋼虫の甲殻も役には立たないらしい。
とはいえそれも高速で飛び交うそれを正確に斬り落とすヘルマの剣技があってこそだけど。
ヘルマがバグラヴスの喉元に剣を突き立てた。
「殺さないでやるだけありがたいと思え。命が惜しければ今すぐ貴様が国中に放った虫共を始末しろ」
「クク、ククク…」
完全に勝敗は決したはずなのにバグラヴスは笑いを止めない。
「もう無駄ですよ。堰は切られた!この国はおしまいだ!いや、この大陸全土が滅びを迎えるのだ!」
その笑い声に背筋に冷たいものが走る。
再びバグラヴスのローブが大きく膨れ上がった。
「危ねえっ!」
咄嗟に壁を作ってヘルマを守ったのとバグラヴスの腹から不気味な虫が飛び出してきたのはほぼ同時だった。
虫が放った溶解液で俺の作った壁が瞬時に泡立ち崩れ落ちる。
「はっ!」
ヘルマが素早くその虫を両断した。
虫は床でのたうち回り、やがて動かなくなった。
こいつ、こんなものまで!
「ふっ!」
気合一閃、ヘルマの曲刀がバグラヴスのこめかみに振り下ろされた。
鈍い衝撃音と共にバグラヴスが床へ昏倒する。
「殺さなかったんだな」
「正直に言えばこの場で斬り捨てたいところだ。しかしこいつには己がしたことの後始末をしてもらわねばならぬ」
曲刀を鞘に納めながらヘルマはバグラヴスを睨みつけた。
ベルトラン帝国を憎み大陸中をその手にかけようとした虫使いの野望がついえた瞬間だった。
バグラヴスが憎しみのこもった眼で俺を睨んだ。
「諦めるんだな。あんたは俺たちを追うのに夢中でこの辺りの虫を全て投入したんだろ。援軍をよこすにはしばらく時間がかかるはずだ」
沈黙がその問いへの回答になっていた。
「大人しく投降しろ。嫌だと言っても手足を切り落としてでも連れていく。そしてこの虫害を終わらせるのだ」
ヘルマが曲刀をバグラヴスに突き付けた。
今この部屋にいるのは俺とヘルマ、そしてバグラヴスだけだ。
他のメンバーは全員外で虫たちの援軍に備えている。
「ハハハハハハハハハッ!!!!」
バグラヴスが突然笑い出した。
「この私が虫害を終わらせる?ベルトランのために?ハハハハハハッ!!!」
まるで気の利いたジョークでも聞いたかのように高笑いを続けている。
「貴様!何がおかしい!」
ヘルマが吠えた。
「いや、失礼。あなたがあまりにおかしなことを言うものですから」
息を整えながらバグラヴスが答えた。
「あなた、私が何故ここにいるのか知っていますか?何故シセロの如き俗物に仕えていたのか」
「他に行くあてがなかったからですよ!」
答える者がいない中、バグラヴスは滔々と語り始めた。
「あなた方も見たでしょう!私の力を!私が本気を出せば周囲の虫たちは全て私の意のままだ!これがどういう意味を持つのかあなた方にはわかっておいでか!」
「いいや、わかるわけがないでしょうね!でなければここまで私が辛酸をなめるわけがない!虫使いだというだけで蔑まれ、追い立てられ、蔑ろにされるわけがない!」
バグラヴスは眼を爛々と輝かせながら語り続けた。
その眼は既に正気を失いつつある。
「シセロにしたってそうだ!私のことを害虫処理の道具程度にしか思っていなかった!与えられる報酬なんて雀の涙程度もない!これが私に対するこの国の扱いなのですよ!」
それはもはや俺たちに聞かせるというよりも自分の心の丈をぶちまけているようだった。
「そんな国を私が救えと?これが冗談でなくて何だというのだ!いや冗談にしてもくだらなすぎる、そのくだらなさが笑えるというのですよ!」
「貴様…」
俺は掴みかかろうとするヘルマを押さえてバグラヴスの前に出た。
「言いたいことは色々あるだろうしお前さんの境遇には同情する部分もあるんだろうけどさ、嫌がろうがなんだろうが自分のやったことの責任は取ってもらうぜ。たとえ力づくになったとしてもな」
バグラヴスが窓ににじり寄った。
しかしその窓が瞬く間に石で塞がれた。
「逃げようとしても無駄だ。この周囲は俺たちの仲間が囲んでる。多少の虫じゃ突破できねえよ。諦めて観念するんだな」
投降を促すために近寄ろうとした時、不意にバグラヴスのローブに穴が開いた。
「!?」
辛うじてかわした俺の頬を何かがかすめる。
「な、なんだあっ!?」
驚いている間にもバグラヴスのローブには幾つも穴が開き、その度に小さな影が襲い掛かってきた。
「フハハハハハ、それは突鋼虫です!鉄よりも硬いその甲殻にとって鎧など薄板も同然ですよ!」
突鋼虫は不気味な羽音と共に俺たちの周りを飛び回っていた。
とんでもない速さで目で追うのがやっとだ。
塔の石材で作った盾もあっさりと貫通されてしまった。
「行けい!突鋼虫よ!こやつらを蜂の巣にするのだ!」
バグラヴスの号令と共に数十匹の突鋼虫が俺たちに向かって突進してくる。
「はあっ!!」
しかしその全てをヘルマは一息で切り伏せた。
「なっ!?」
瞬時に両断されて床に散らばる突鋼虫を見てバグラヴスが目を丸くする。
魔力を直接攻撃力とするヘルマの剣には突鋼虫の甲殻も役には立たないらしい。
とはいえそれも高速で飛び交うそれを正確に斬り落とすヘルマの剣技があってこそだけど。
ヘルマがバグラヴスの喉元に剣を突き立てた。
「殺さないでやるだけありがたいと思え。命が惜しければ今すぐ貴様が国中に放った虫共を始末しろ」
「クク、ククク…」
完全に勝敗は決したはずなのにバグラヴスは笑いを止めない。
「もう無駄ですよ。堰は切られた!この国はおしまいだ!いや、この大陸全土が滅びを迎えるのだ!」
その笑い声に背筋に冷たいものが走る。
再びバグラヴスのローブが大きく膨れ上がった。
「危ねえっ!」
咄嗟に壁を作ってヘルマを守ったのとバグラヴスの腹から不気味な虫が飛び出してきたのはほぼ同時だった。
虫が放った溶解液で俺の作った壁が瞬時に泡立ち崩れ落ちる。
「はっ!」
ヘルマが素早くその虫を両断した。
虫は床でのたうち回り、やがて動かなくなった。
こいつ、こんなものまで!
「ふっ!」
気合一閃、ヘルマの曲刀がバグラヴスのこめかみに振り下ろされた。
鈍い衝撃音と共にバグラヴスが床へ昏倒する。
「殺さなかったんだな」
「正直に言えばこの場で斬り捨てたいところだ。しかしこいつには己がしたことの後始末をしてもらわねばならぬ」
曲刀を鞘に納めながらヘルマはバグラヴスを睨みつけた。
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