陛下を捨てた理由

甘糖むい

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これまでずっとセオドールはジェニエルとってよき夫だった。
幼い頃から一緒にいるお陰で燃えあがるような愛情ではなかったが、お互いに信頼し国の顔として君臨する辛さを理解し合えるよき戦友のような関係だった。
ベッドを共にし、生まれた子供がどちらに似ているのか想像して喧嘩するときもあった。

「陛下は今日もご一緒されないんですね」

エレナに言われてジェニエルは静かにカトラリーを置いて外を見た。
セオドールがオリヴィアを拾ってから少しずつ歯車がかみ合わなくなってきていた。

結婚をしてからジェニエルはセオドールと3つの約束をしていた。
1つ目は、セオドールが城に居る間は一緒に食事をとる事。
2つ目は、お互いを高め合うよき友である事。
3つ目は―――

その中で1つ目の、3年間破られることがなかったセオドールと食事を食べるという約束はセオドールがオリヴィアを連れて帰って来てからは1度も果たされることがなかった。

「陛下はお忙しいお方です。そのような言い方はおやめなさい、エレナ」
「……はい!皇后陛下」

ジェニエルはエレナに答えると食事を再開した。
本来なら、答えるべきではない問いだとはわかってはいたが、二人から離れて沢山の従者が聞き耳を立てている以上返答せずにはいられなかった。
ジェニエルにとって王宮は常に監視の目がある気の休まらない場所だった。
少しでもおかしな行動をとればすぐに何処からともなく噂となって世間を飛び回ってしまう厄介な鳥が紛れ込んでいて、捕らえようと躍起になればなるほどその数は増える一方。
セオドールと結婚してから完璧な皇后として振舞い続ける事で、ジェニエルは根も葉もない噂を根が張る前に枯らして体裁を保っていた。

こそこそと、そこかしこで聞こえる囁きを無視してジェニエルは一人食事を終わらせると直ぐに席を立った。
ここで何か動じたり、様子を変えてしまえば餌食になってしまう。
だからこそ、ジェニエルは誰にも悟られないように表情を取り繕って皇后であろうとしていた。

(信じていいのよねセオドール……)

食後すぐに行われる貴族達との会合に向かいながら、ジェニエルは祈るような気持ちで窓の外を見る。
そこにはこれから仕事が始まるというのに、未だにオリヴィアと親し気に話をしているセオドールが笑っていた。
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