陛下を捨てた理由

甘糖むい

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自分の手を引くゼツィオードの背中を見つめながらジェニエルは、この手がセオドールであればいいのにと思った。

オリヴィアへの熱量を見ればセオドールがジェニエルへの関心を失っている事は理解できた。
恋人としては不十分であると理解していたからこそ、それはジェニエルがどう足掻いても叶うはずのない場所だった。
オリヴィアに向けられた熱のこもった眼差し、それに応えるように無邪気に笑う彼女の姿。
その光景を見ているだけで、ジェニエルにははっきりと分かった。
セオドールの中で、自分はもう終わっているのだと。
関心の対象ですらないのだと。

恋人として不十分なことは分かっていた。
何一つ、求められる形で応えられたことなどなかった。
だからこそ、あの場所は最初からジェニエルには手の届かない場所だったのだ。
そう納得すればよかったはずだった。

それなのに。

――私はいつの間にか貴方を愛していた。

喉を締め付けられるような苦しみを感じて漸くジェニエルは、自分の気持ちを自覚した。
同情に似た友情は、いつからか愛情に変わっていた。
幼い頃から共に友人として傍に居たいという願いが、いつの間にか変わっていたのだと気が付いた時には全てが遅かった。

どんな話でも対等に言い合える相手として、肩を並べて歩ける存在として、気楽な距離を保っていたはずだった。
下らない冗談に声を上げて笑う彼の横顔が好きだった。
誰よりも自分を信頼してくれると、そう言ってくれた時のあの真っ直ぐな眼差しが嬉しかった。

でも本当は、誰よりも大切で、誰よりも近くにいたいと願っていた。
気持ちを打ち明けて、もし拒まれたら。
関係が破綻することに怯えて、残ったのは臆病な自分の小さな背中だった。

「ジェニエル……」

呼びかけられて、ジェニエルは自分を見降ろして難しい顔をしているゼツィオードを見上げた。
苦しそうな表情でジェニエルを見降ろすゼツィオードが珍しくて、目を瞬かせるとゼツィオードは、そっとジェニエルの頬に手を伸ばした。
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