20 / 21
番外編2 鞘に恋
3
しおりを挟む
ストヴァルが生き返る瞬間をリーディアは鮮明に覚えている。
敵の気配を追い、馬を走らせていた時。
道に転がる馬車から少し離れた場所で生きる事を諦めないレインと出会ったストヴァルが息を吹き返す瞬間をリーディアは偶然にも見ていた。
全ては一瞬の出来事だった。
目が見えないからこそ動けなかったと後に話すレインが放った一言は、曇天の空を射る一本の矢だった。
たった一瞬。
リーディアが瞬きをひとつしたその1秒にも満たない間に、ストヴァルは息を吹き返した。
あれだけストヴァルの身体から香っていた死の香りが散り散りになり、泥臭い土を纏ったストヴァルは瞬きすら忘れてレインを見つめていた。
まるで初めて世界が色を持っていると知ったようなそんな表情だった。
「殺すなら一思いに殺しなさい」
言葉とは違い、レインの眼は真っ直ぐとストヴァルの方を向いて光り輝いていた。
目が見えなかったとは思えないほど強い眼差しだった。
それなのに恐怖からか震えている身体が痛々しくて、リーディアは一歩レインに近づいた。
リーディアの足音で賊が追ってきたと勘違いしたレインは、ストヴァルに向ける視線を微動だにさせずに懇願した。
生きようともがくレインの腕の中には、すでに事切れている男の身体があった。
御者だとわかる服装の男の頭を抱いていたレインは、自分が狙われている事を知っていたのだろう。
せめて男だけは救おうとするレインは健気だった。
どうか、この人だけは見逃して下さいと必死なレインの様子に彼女は目が見えないのだと、リーディアはすぐに察することが出来た。
「賊は捕まえたよ、私たちは近くの街の軍人なんだ。信用しろとは言わないから手当てだけでもさせてくれない?」
リーディアはできるだけ優しい声でレインに話しかけた。
「私はリーディア、こっちの貴方の危険を察知した人はストヴァル……様で領主様だよ」
何か安心させるものはないかと考えて口をうごしていると、レインは信用してくれたらしい。
緊張をほぐそうと話は続けたまま、リーディアはレインが抱いていた男を引き取り、震える身体に自分の上着を被せた。
本来なら様子がおかしい事に一番に気がつき、動いたストヴァルがレインに声をかけるべきな事はわかっていたが、生憎とストヴァルは息を吹き返したばかりで使い物にならなかった。
敵の気配を追い、馬を走らせていた時。
道に転がる馬車から少し離れた場所で生きる事を諦めないレインと出会ったストヴァルが息を吹き返す瞬間をリーディアは偶然にも見ていた。
全ては一瞬の出来事だった。
目が見えないからこそ動けなかったと後に話すレインが放った一言は、曇天の空を射る一本の矢だった。
たった一瞬。
リーディアが瞬きをひとつしたその1秒にも満たない間に、ストヴァルは息を吹き返した。
あれだけストヴァルの身体から香っていた死の香りが散り散りになり、泥臭い土を纏ったストヴァルは瞬きすら忘れてレインを見つめていた。
まるで初めて世界が色を持っていると知ったようなそんな表情だった。
「殺すなら一思いに殺しなさい」
言葉とは違い、レインの眼は真っ直ぐとストヴァルの方を向いて光り輝いていた。
目が見えなかったとは思えないほど強い眼差しだった。
それなのに恐怖からか震えている身体が痛々しくて、リーディアは一歩レインに近づいた。
リーディアの足音で賊が追ってきたと勘違いしたレインは、ストヴァルに向ける視線を微動だにさせずに懇願した。
生きようともがくレインの腕の中には、すでに事切れている男の身体があった。
御者だとわかる服装の男の頭を抱いていたレインは、自分が狙われている事を知っていたのだろう。
せめて男だけは救おうとするレインは健気だった。
どうか、この人だけは見逃して下さいと必死なレインの様子に彼女は目が見えないのだと、リーディアはすぐに察することが出来た。
「賊は捕まえたよ、私たちは近くの街の軍人なんだ。信用しろとは言わないから手当てだけでもさせてくれない?」
リーディアはできるだけ優しい声でレインに話しかけた。
「私はリーディア、こっちの貴方の危険を察知した人はストヴァル……様で領主様だよ」
何か安心させるものはないかと考えて口をうごしていると、レインは信用してくれたらしい。
緊張をほぐそうと話は続けたまま、リーディアはレインが抱いていた男を引き取り、震える身体に自分の上着を被せた。
本来なら様子がおかしい事に一番に気がつき、動いたストヴァルがレインに声をかけるべきな事はわかっていたが、生憎とストヴァルは息を吹き返したばかりで使い物にならなかった。
664
あなたにおすすめの小説
お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。
婚約者を想うのをやめました
かぐや
恋愛
女性を侍らしてばかりの婚約者に私は宣言した。
「もうあなたを愛するのをやめますので、どうぞご自由に」
最初は婚約者も頷くが、彼女が自分の側にいることがなくなってから初めて色々なことに気づき始める。
*書籍化しました。応援してくださった読者様、ありがとうございます。
彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。
ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。
ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。
対面した婚約者は、
「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」
……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。
「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」
今の私はあなたを愛していません。
気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。
☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。
☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)
離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。
しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。
私たち夫婦には娘が1人。
愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。
だけど娘が選んだのは夫の方だった。
失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。
事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。
再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。
陛下を捨てた理由
甘糖むい
恋愛
美しく才能あふれる侯爵令嬢ジェニエルは、幼い頃から王子セオドールの婚約者として約束され、完璧な王妃教育を受けてきた。20歳で結婚した二人だったが、3年経っても子供に恵まれず、彼女には「問題がある」という噂が広がりはじめる始末。
そんな中、セオドールが「オリヴィア」という女性を王宮に連れてきたことで、夫婦の関係は一変し始める。
※改定、追加や修正を予告なくする場合がございます。ご了承ください。
貴方が側妃を望んだのです
cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。
「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。
誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。
※2022年6月12日。一部書き足しました。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。
表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。
※更新していくうえでタグは幾つか増えます。
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
記憶が戻ったのは婚約が解消された後でした。
しゃーりん
恋愛
王太子殿下と婚約している公爵令嬢ダイアナは目を覚ますと自分がどこにいるのかわからなかった。
眠る前と部屋の雰囲気が違ったからだ。
侍女とも話が噛み合わず、どうやら丸一年間の記憶がダイアナにはなかった。
ダイアナが記憶にないその一年の間に、王太子殿下との婚約は解消されており、別の男性と先日婚約したばかりだった。
彼が好きになったのは記憶のないダイアナであるため、ダイアナは婚約を解消しようとするお話です。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。