【完結】王妃を廃した、その後は……

かずきりり

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「わぁあ! 綺麗! 素敵!」

 受け取ったパウラは、すぐさま自分の首へとペンダントをつけて、両親の前で嬉しそうにくるりと回る。
 それを微笑ましく拍手しながら、可愛いわ、似合う等と褒める両親。……私の時にはなかったのに。

「そんなに似合うなら、もうパウラのものだよね! お父様とお母様は、お姉様に似合うなんて言ってなかったもの!」

 ピシリと、空気が凍ったような空間。
 両親は焦って、視線が泳ぎ、挙動不審となった。

「いや、しかし……」
「似合う方がつけるべきでしょ」
「そうね。パウラの方が似合うわ」

 口ごもるお父様と違って、お母様は即答してパウラの頭を撫でる。
 そしてパウラはラウラの方へと向かうと、不敵な笑みを浮かべた。

「これは似合う私が貰うわね」
「駄目よ!!」
「うわぁあああん!」

 誰も言わないのならば私がと、ラウラが声を張り上げれば、パウラは号泣する。
 それを必死にあやす父親と母親の姿に、ラウラの心臓が不安で高鳴る。
 絶対に渡したくない……渡したくないのに!

「妹を泣かせるんじゃありません!」

 母親はラウラに叱咤し、パウラを抱きしめる。
 最後の砦とばかりに、ラウラは父親の方へと視線を向けるが、父親はその視線から逃れるように目線を外した。

「……婚約の話は進めるから良いだろう!」

 後ろめたいと言わんばかりに、父の声には怒気が孕んだ。

 ――何を言っているの。

 王太子が直に渡した物を妹に譲った事なんて言えるの?
 しかもそれは王太子妃となる物に渡し、持つ物だ。
 王家に対して反逆的な意味で捉えられてもおかしくないのに……。
 絶望でぐらつく思考と心。
 この人達は、どこまでいってもパウラが大事なのかと、幼い心ながらに悟ってしまう。

「私が王太子の婚約者になりたい!」
「それは難しいな」

 婚約者をも欲しいと言うのか。
 父が冗談気に笑って流したけれど、パウラの厳しい恨み籠った目つきが自分に向けられた事を、ラウラは分かっていた。
 けれど……ラウラを望んでくれた王太子を信じ、愛する事がラウラを気丈に立たせ、ラウラの希望となっていたのだ。

 ――ただ愛して、盲目的に信じるラウラが出来上がったのは、この時だった。

 家族からの愛や自分の存在意義すら見失っていたラウラにとって、勇敢である、そのままの自分で良いと受け入れてもらえたのは、それだけラウラの心を動かしたのだ。





 ◇◆◇





「どけ! 王命だ!」
「!?」

 漁師の話を聞いて、過去へと思いを馳せていたホセはナバーロ侯爵邸の門兵を怒鳴りつけた。
 王命と言われれば、いくら侯爵家の私兵とはいえ、従うしかない。門兵達は門の前から自分の体をどかした。
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