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罪と罰
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しおりを挟む「あーあ、失敗してしまいました」
赤い髪に赤い瞳の少女が地面に降り立つ。
「ライラ」
「どうしてバレたんでしょう? 私がこの山小屋を見張っていたことが……」
「何度も同じ手は食わないさ」
ジェラルドが口にする。
「同じ手? 貴方とは初対面ですが?」
「こっちは初対面じゃないのでね」
「意味がわかりません」
俺も、ジェラルドから説明を聞いていなければ意味がわからなかった。
ジェラルドは時間逆行という特異な魔法を使用できる。
ジェラルドによると、このラスティル王国は既に何度も滅びているらしい。
ラスティル王国の滅びから、ジェラルドは何度も時間逆行してやり直しているそうだ。
それは俺たち転生者とはまた違う、辛い道程だっただろう。
そのジェラルドから、俺たちはこのライラの罠の可能性について聞いた。
だからあらかじめ準備をしていた。
だが、ライラの魔力は桁違いだった。
…………セオドアがいてくれて正直助かった。
「ライラ、君……お兄さんも殺す気だったよね?」
両腕を刃にして構えながら柚希が言う。
「あら? 柚希さんいたんですか? 全然気づきませんでした」
「君にとってお兄さんは邪魔者ってことかな?」
「まぁ、そうですね。魔王様にとって大切な人でも、私にとっても大切な人とは限りませんもの」
ライラはクスクスと笑う。
「でも、見事に失敗してしまいましたね」
「捕らえろ、ジェラルド」
「はっ!!」
ジェラルドがライラを捕縛しようとする。
しかし、ライラはふわりと空中に浮いた。
スピルスが呟く。
「そうか、重力魔法。彼女は重力を自在に操れるんだ」
「正解です。ラスティルの大賢者様」
ライラが笑顔を浮かべる。
「とはいえ、今日はこのあたりで引かせていただきます。先程の攻撃でかなりの魔力を消費しましたもの」
「待て!!」
「これだけは覚えていて。魔王軍はいつか必ずラスティル王国に報復するわ。それが今回のような襲撃になるか、他国を動かしての戦争になるかはわからないけれど」
ライラはそう言い残すとふわりと消えた。
「俺は……利用されていたのか?」
アルビオンは顔面蒼白だ。
そんなアルビオンの背中をシルヴェスターがただ黙って撫でている。
「ジェラルド、ありがとう」
その言葉に、ジェラルドは首を横に振った。
「俺が知るのはここまで。これからは、俺の知らない物語だ」
ジェラルドは、ライラが消えた空中を見上げながら呟いた。
「今ここは、やっと辿り着いた奇跡の世界。絶対に誰にも破壊させない。絶対に」
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