無口で無表情な恋人が自分の前でだけ甘々になる話

よしゆき

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無口で無表情な恋人が自分の前でだけ甘々になる話

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千颯ちはやくんってさ、めっちゃクールだよね」

 大学内のカフェテラスでコーヒーを飲んでいた悠生ゆうは、近くの席から知った名前が聞こえて思わず耳を傾けてしまう。

「だよね。全然笑わないし。ほぼ無表情だよね」
「顔整ってるから、表情変わらないと余計にイケメンが際立つっていうか。見てるだけで拝みたくなるっていうか」
「わかるー」

 盗み聞きなんてよくないとわかっていても、二人の女子の会話が気になってしまう。スマホを弄るふりをしながら、意識は二人の会話に向けられていた。

「無視はされないけどさー、声かけても全然話してくんないし」
「そーそー。ああとか、うんとか、へーとかしか言わないよね」
「しかもめっちゃだるそうにね」
「いかにもめんどくせーって感じでね」
「他の男だったら『はあ?』ってなるけど、千颯くんは許せちゃうんだよねー」
「顔がイイからねー。寧ろあの塩対応こそが千颯くんって感じだから」

 本人のいないところで、彼女達は好き勝手に盛り上がる。

「彼女相手にも塩なんだろうねー」
「想像できちゃうよね。褒めたりしなさそー」
「好きとか可愛いとか、絶対言わなさそうだよね」
「イチャイチャするのも嫌がりそう。くっついたら
『うぜー』ってめっちゃ嫌な顔されてね」
「甘い声で愛を囁くとかムリだろうね、千颯くんは」
「オシャレして『可愛い?』って訊いても、へーとか、あっそとかそっけなくあしらわれるんだろうなー」
「千颯くんの顔面だったら許されるんだよね、ソレが」
「なんだよねー。だってこんな想像できちゃうのに全然彼女になりたいし」
「千颯くんと付き合えるなら全部我慢しちゃうよね」

 彼女達の会話に集中していた悠生は、待ち合わせの相手が現れた事に気づかなかった。

「お待たせ、悠生さん」
「ひゃっ……!?」

 背後のすぐ近くから声をかけられ、ビクッと跳び跳ねる。振り返れば、無表情にこちらを見下ろす千颯がいた。

「ビビりすぎでしょ、悠生さん」
「ご、ごめん……っ」

 噂話の当人が現れ、女子二人がきゃっきゃとはしゃいでいるのが目の端に映った。しかし千颯は彼女達には一瞥もくれず、悠生を立ち上がらせる。

「早く帰ろ」
「あ、う、うん……っ」

 急かされて、悠生は手早く準備を済ませた。彼と並んで歩き、家に帰る。
 帰り道、千颯はずっと無表情だった。悠生が声をかければ、一言、二言相槌を打つ。彼から何か話す事はない。端から見ると、仲良しとは程遠い関係に思われるのだろう。
 二人で暮らしているマンションに着く。中に入り、玄関のドアが閉まった瞬間。

「悠生さーん」
「っわ……!?」

 語尾にハートがついてそうなほど甘ったるい声で名前を呼ばれ、ぎゅうっと抱き締められた。

「はあ……悠生さん悠生さん悠生さん、可愛い大好き可愛い好き好き好き」

 ぐりぐりぐりぐり強めに頬擦りされる。
 千颯は蕩けた顔でこちらを見つめる。

「悠生さん、ただいまとおかえりのちゅーしよ、ね、ね。悠生さん、ただいま」
「ん、おかえり、千颯くん、んんっ」

 ちゅうぅっと唇にキスをされる。

「悠生さんも」
「千颯くん、ただいま」
「おかえり、悠生さん、んーっ」
「んんんぅっ」

 更に深く唇を重ねられる。そのまま、玄関でするには濃厚すぎるキスが行われる。

「んぁっ、んっ……待って、千颯く」
「まだ、もっと悠生さんとちゅーしたい」
「わかったからぁ、んっんんっ……んっんっ……待って、ここじゃなくて、部屋に入ろ? ちゃんと手洗いうがいして、それからいっぱいしよう……?」
「んー、名残惜しいけど、わかったぁ」

 千颯はベッタリとくっついたまま移動する。
 しっかりと手洗いうがいを済ませ、それからリビングのソファへ。その間、千颯はずっと悠生に触れていた。今も隣に座る悠生を抱き寄せ、すんすんと匂いを嗅いでいる。

「恥ずかしいから、あんまり嗅がないでってば……」
「だって悠生さんの匂い大好きなんだもーん。はー、めちゃくちゃいい匂い。ずっと嗅いでたい」

 そう言って、悠生の頭や首筋などに鼻を埋めてくる。
 先程、カフェで聞いた彼の噂話を思い出す。千颯の会話で盛り上がっていた彼女達は、こんな彼を知らない。語尾に「だもーん」なんて付けるなんて想像もしていない。それはあの二人だけでなく、千颯を知る者全てがそうだろう。皆、クールな無口で無表情の千颯しか知らないのだ。
 しかし彼は、人目があれば手も握らないが、二人きりになった途端、めちゃくちゃ甘えてくる。家にいる時は常にくっついていて離れようとしない。デレデレして、可愛いとか好きとか呼吸するように言ってくる。
 とにかくギャップがすごい。悠生はもう慣れたけれど。

「すーはーすーはー……。悠生さん、可愛い、好き」

 匂いを嗅ぎながら、千颯の手が悠生の服の裾から中に入ってくる。

「っあ! だめ、待って、千颯くん……!」
「なんで? 悠生さんの乳首触りたい」
「ま、待って、ちょっと待って……っ」

 ずんずん入ってくる彼の手を止めようとするけれど、悠生の力では敵わない。

「待ってってばぁ……!」
「やぁだ。悠生さんの乳首は俺のものだもん。触りたい時に触っていいんだもん」
「俺の乳首は俺のものだよ……!」

 抵抗虚しく、千颯の指が胸元に触れる。
 違和感に気づいた彼の動きがピタリと止まった。

「え? コレって……」
「わぁ!?」

 いきなりガバッと服を捲られる。
 千颯は悠生の胸をガン見する。

「悠生さん、コレ何? こんなエロい格好で外にいたの? 人前に出てたの? 俺以外のヤツの前でこんなエロい事してたの?」
「ち、違っ……別にエロくないし……っ」
「チクバンがエロくないわけないから!!」

 千颯はカッと目を見開き大声で断じる。あまりの勢いに悠生は何も言えなくなる。

「何で俺に内緒でこんなエロい事……俺に隠れてこっそり乳首に絆創膏貼る悠生さん想像したらクソほど興奮してソレだけで抜けるけどっ」

 鼻息荒くそんな報告をされても反応に困る。

「コレは別に、そういうつもりでしたわけじゃなくて……」

 決して、千颯を興奮させたくて乳首に絆創膏を貼ったわけではない。

「じゃあ何で!?」
「それはその……昨日、千颯くんが……俺の乳首、すごくいっぱい、強く吸ったり、優しく噛んだり、したから……」

 悠生は顔を赤くし、もじもじと事の次第を白状する。

「それでその……朝起きたら、じんじんして……服が少し擦れるだけでむずむずしちゃう、から……」
「むずむずして感じちゃうから? それで絆創膏貼ったの? 俺に隠れて? 俺の可愛い悠生さんの乳首に?」

 はあはあと息を荒げながら尋ねてくる千颯に頷いた。

「もー、何で俺に言ってくれないの? 悠生さんの乳首は俺のものなんだから、ちゃんと俺にケアさせてよー」
「いや、俺の乳首は俺のだし……」
「俺が優しーくお薬塗って、絆創膏貼ってあげたのにー。そういうのは俺にさせてよー」
「恥ずかしいし……千颯くんに触られたら……き、気持ちよく、なっちゃうから……」
「可愛い!!」

 ぎゅっと抱き締められる。

「もう可愛いよ悠生さんホント可愛い大好き食べちゃいたい可愛い可愛い」
「千颯くん可愛いって言い過ぎ。俺のが年上なんだからね」
「だって可愛いんだもん。悠生さんだったらマジで目に入れても痛くない気がする。寧ろ入れたい」
「怖いこと言わないでよ……っ」
「でも、じゃあ……」

 千颯の吐息が耳にかかり、悠生はピクリと肩を震わせる。
 千颯の指が、絆創膏の貼られた乳首にそっと触れた。くるくると、乳首の周りを指でなぞられる。

「今日は乳首、弄らない方がいいよね。昨日みたいにいっぱい弄ったら、悠生さんの可愛い乳首、もっとじんじんしちゃうもんね」
「や、やだぁ……」
「んー?」
「今日も、いっぱい、弄ってほしい……」
「でも、悠生さんの乳首、もっと敏感になっちゃうよ?」
「いい、から……。今日もいっぱいちゅうって吸って……優しく、噛んで……」
「っもー、悠生さん可愛すぎ!! そんな可愛い事言われたら俺悠生さんの乳首食べちゃうじゃん!!」

 服を剥ぎ取られ、胸元に頬擦りされる。

「食べちゃったらもう悠生さんの乳首可愛がれなくなっちゃうじゃん!! ぺろぺろしたりちゅうちゅうしたりかみかみしたりできなくなっちゃうじゃん!!」

 悠生をソファに押し倒しながら、千颯はアホみたいな事を本気で言ってくる。

「だから、悠生さんはあんまり可愛い事言っちゃダメ!」
「別に、可愛い事言ったつもりは……」
「もー、悠生さんはちゃんと自分の可愛さを自覚しなきゃ! じゃないと俺以外のヤツにも可愛い事言ったり可愛い事したりしちゃうかもしれないんだから! 俺以外のヤツの前で可愛いのは絶対禁止なんだからね、わかった?」

 胸の上でぷくっと頬を膨らませる千颯の方がよっぽど可愛いと思うのだが。
 そもそも自分を可愛いと思うのは千颯だけだ。悠生はそう思ったがおとなしく頷いた。ここで反論すれば千颯は悠生がいかに可愛いかを延々語り続ける事になるから。それを聞かされるのは辛い。

「えっと……気を付ける……」
「うん。悠生さんの可愛さは俺だけのものなんだからね。可愛さだけじゃなくて、悠生さんの全部俺のだけどね」

 そう言って千颯はにんまりと笑う。彼は純粋にまっすぐに、本気でそう思っている。
 その事を満更でもなく感じてしまっている自分も、彼の事を言えないくらい彼に夢中なのだろう。

「俺の可愛い悠生さんの、俺の可愛い乳首、いっぱい可愛がっちゃおう」

 わけのわからない事を言って、千颯は絆創膏の端をカリカリと引っ掻く。

「絆創膏貼ってあるのも可愛いくて興奮するけど、このままだとしっかり可愛がれないから剥がしちゃおうね」
「んっ、ゃ、かりかり、するの……擽ったい……っ」
「んふふ……悠生さんてば、これでも感じちゃうの? ホントに感じやすくて可愛いんだからー」
「違っ……擽ったいんだってば……っ」
「ウソばっかり。ほら……悠生さんの乳首、絆創膏の下で膨らんできてるよ? 絆創膏の上からでもわかるくらい、ぷくって」
「ひゃんっ」

 不意に絆創膏の上から乳首を指の腹で押し潰され、悠生は甲高い声を漏らした。

「ほらね、絆創膏越しでも、コリコリになってるのわかるよ」
「んゃっ、やだ、こりこり、しちゃ、あっ、あんっ」
「またウソついてー。悠生さん乳首コリコリされるの大好きでしょ?」
「や、やだぁっ、もう、絆創膏剥がしてっ……直接こりこりしてぇ……っ」

 もどかしい刺激に焦れ、潤んだ瞳でねだれば千颯は目を見開き息を呑む。

「!? もー!! ほらまた可愛い事言うー!! そうやってすぐ俺をメロメロにするんだからっ」
「もぉ、早くぅ……っ」
「わかったよ。すぐに直接触ってあげるからね」

 そう言って、千颯は僅かに剥がれかけていた端の部分をつまんでゆっくりと剥がしていく。

「んぁっ、あぁんっ」

 ぺりぺりと剥がれていく感覚にすら感じて悶える悠生を見て、千颯は舌舐めずりをした。

「はー、もう、絆創膏剥がすだけで感じちゃうの? 悠生さん敏感すぎでしょ。まあ、俺が悠生さんをそんな体にしたんだけどね」

 千颯はどや顔で絆創膏を剥がしていく。

「ふあぁっ」
「ああ…。悠生さんのぷっくり膨らんだエッチな乳首、出てきたよ」
「んん……っ」
「よし、剥がれた。大丈夫? 痛かったりしない? 痒みは?」
「大丈夫、だから……こっちも、早く……」

 既に悠生には自分で剥がすという発想はなく、千颯の手をまだ絆創膏の貼られた方へと導く。

「もおぉ、ホントに可愛いんだから悠生さんってば」

 でれでれと脂下がった笑みを浮かべながら、千颯はもう片方の絆創膏もゆっくり丁寧に剥がしていく。

「んふふ……こっちの乳首もエッチで可愛いねぇ」

 変態くさい発言と共に絆創膏を剥がし終える。
 ぷくっと膨らみを増した胸の突起に、千颯の情欲にまみれた視線が注がれる。見られているだけで感じて、悠生はぞくりと背中を震わせた。

「千颯く、ん……っ」
「悠生さん、早く弄ってほしくて我慢できないーって顔してる……めちゃくちゃエロくて可愛い……」
「ひぁ……っ」

 悠生の顔を凝視しながら、千颯は両方の乳首に触れた。

「悠生さんのかたぁくなった乳首、いっぱいコリコリしようね」
「あぁっ、んっ、こりこり、きもちぃっ」

 指の腹でコリコリと転がされ、悠生は甘い快楽に陶然となる。

「あは、悠生さん、顔とろとろ……かぁわいいねぇ」
「んゃあっ、すりすり、するのも、きもちいぃっ、あっあっ、千颯く、んっんっ」
「はああ、可愛い、悠生さん、キスしよ、舌出して」
「んっ……」

 体が勝手に彼の言葉に従い、悠生は言われた通りに舌を伸ばす。
 突き出した悠生の舌に千颯がむしゃぶりついた。

「んんぅっ、んっ、んん~~っ」

 乳首を弄られたままじゅるじゅると舌を吸われ、気持ちよさに頭がくらくらした。

「んふぅ、んっ、ぅ、んん……っ」
「は、ん……悠生さんも、舌絡めて……ん……もっと……」
「ぅんっ、んっ、ぁ、んっ、はぁっ……んっ」

 滴る唾液も気にせず、互いの舌を絡め合う。舌と舌の触れ合う感触に、悠生は夢中になってキスを繰り返した。

「ん゛っ、んんん゛~~っ」

 ピンッと両方の乳首を指で弾かれ、強い刺激に悠生の背中が浮く。

「んっ、んっ、んっ、ん゛~~っ」

 そのままピンピンッと連続で弾かれてガクガクと体が震えた。
 鋭い刺激を与えられ敏感になった乳頭を、今度は爪の先でカリカリと優しく引っ掻かれる。

「ん゛ん゛ん゛ぅ゛~~~~っ」

 ぶるぶるっと腰を震わせ、悠生は達した。
 下着の中がどろりと濡れるのを感じ、悠生はまた汚してしまったと頭の隅で思った。こうして自分の体液で下着を汚すのははじめてではない。そしていつも気づけば千颯がその汚れた下着を手洗いしているのだ。だから今度こそ自分で洗おう、と悠生はぼんやりそんな事を考えていた。
 ゆっくりと千颯の唇が離れていき、唾液で汚れた悠生の口元をぺろぺろ舐める。

「顔真っ赤だね。大丈夫? 苦しかった?」
「ん……大丈夫……」
「ふふ……悠生さんの乳首、赤くなってさっきよりエッチになっちゃったね」
「ひぅ……っ」

 するりと乳輪を撫でられて、悠生は過剰に反応してしまう。

「このエッチになった美味しそうな乳首、いっぱい吸っていいの?」
「ん……吸ってぇ、千颯くん……」
「あああ、可愛い……。可愛い悠生さんについてる可愛い乳首が吸い放題なんて……俺ってもしかしなくても世界一の幸せ者だよね」

 うっとりと囁きながら、千颯は乳首へと顔を近づける。はーっはーっと荒い息を吐きながら間近で乳首を凝視し、それから噛みつくような勢いでしゃぶりついた。

「ひゃぁあんっ」
「んんっ、はあっ、悠生さんの、乳首……んっんっ、はあっ、おいし……んっ」
「んあぁっ、ちゅうちゅうって、されて……あっあっ、きもちいっ、千颯くぅんっ」

 千颯はちゅぱちゅぱと音を立てて両方の乳首に交互に吸い付く。
 蕩けるような快感に腰をくねらせ戦慄いた。

「ひぁっ、あっ、ひぅんんっ」

 強く吸い上げられ、かと思ったら柔らかく歯を立てられ、そして甘やかすようにねぶられる。
 じぃん……と全身が痺れるほどに気持ちよく、悠生は涙を滲ませ快楽に酔いしれた。
 ふと、乳首をしゃぶる千颯の顔が目に映る。ちゅうちゅうと夢中になって乳首に吸い付いている。まるで赤ちゃんのようで、でも舌使いは赤ちゃんとは程遠い。
 こんな彼の姿を、誰も知らない。少なくとも先程大学で噂していた彼女達は、千颯がこんなに一生懸命恋人の乳首を吸うだなんて思ってもいないだろう。
 彼がこんな事をするという事も、彼のこんな姿も、悠生だけが知っているのだ。

「ひん……っ!?」

 不意にきゅうっと強めに乳首を噛まれ、悠生は甲高い悲鳴を上げる。
 千颯と目が合えば、彼は不貞腐れたような顔をしていた。

「悠生さん、今、考え事してたでしょ」
「え……?」
「俺に乳首吸われながら、他の事考えてたでしょ。何考えてたの。まさか俺以外の男の事考えてた? 俺に乳首吸われながら、他の男の事考えてたの?」

 疑いの目で見られ、悠生はかぶりを振って否定する。

「そ、そんなわけないよ……。考えてたのは、千颯くんの事だよ」
「俺の事?」
「さっき、大学で千颯くんの事を待ってた時、千颯くんの事を色々言っている人がいてね。えっと……千颯くんはいつも無口で、無表情で……きっと恋人にも塩対応なんだろうねって、そういう事、話してて……。でも本当は、俺と二人きりの時はいっぱい話してくれるし、ニコニコ笑ってくれるし、恋人にはいっぱい好きって言ってとびきり甘くなる……そういう千颯くんを知ってるのって俺だけなんだって思って、嬉しくなって……」

 はにかみながら伝えれば、千颯は感激したように瞳を輝かせた。

「えええ、もー、そんな可愛い事考えてたの? そんな可愛い事、思うだけじゃなくて言ってよー」

 千颯はぐりぐりと悠生の胸に頬擦りする。
 彼の頭を撫で、悠生は笑みを零す。

「ふふ……こうやって甘えてくる千颯くんも、俺しか知らないんだよね」
「うん、俺が甘えるのは悠生さんだけー」
「千颯くんはクールじゃなくてホントは可愛いって事、知ってるのも俺だけだね」
「うん」
「きっと皆知ったらビックリするだろうね」

 まあ、自分以外の誰も知る事はないけれど。

「それを言うなら悠生さんもだよね」
「俺? 何が?」
「悠生さん、外ではエロい事なんて何も知りませんって顔してるのに、俺と二人きりの時はめちゃくちゃエロ可愛くなるじゃん」
「えっ、えろ、可愛くなんて……なってないよ……」

 真顔で思わぬ事を言われて頬が引きつる。

「もー、悠生さんってばホントに無自覚小悪魔ちゃんなんだから。自分がどれだけエロ可愛いのか全くわかってないんだから」
「いや……小悪魔とか……エロ可愛いとか……さすがにそれはないから……」
「はいはい、いいですよー、悠生さんが超ド級のエロかわなのは俺だけが知っていればいい事ですからねー」

 一体千颯の目には自分がどんな風に見えているというのだ。知りたい気もするが、知るのが怖い気もする。

「じゃあ今日も、俺だけにエロ可愛いところいっぱい見せてね」
「っわ……」

 下に穿いていたものを剥かれ、全裸にされた。

「あー、悠生さんのちんぽどろどろになっちゃってる」
「んぁっ、あんっ」
「悠生さんのここも、エッチで可愛いねー」
「あっあっあっ、くちゅくちゅ、しちゃぁっ、やあぁっ」
「やーじゃないでしょ? 悠生さん、ちんぽくちゅくちゅされるの好きだよね」
「んやっ、俺だけじゃ、なくてぇっ……千颯くんも……っ」

 悠生は手を伸ばして彼の陰茎を取り出す。彼のそれも既に勃起して、固く張り詰めていた。

「千颯くんのも、一緒にくちゅくちゅする……んんっ」

 悠生は彼の陰茎に手を添えて、へこへこと腰を動かし自分のそれを擦り付ける。性器同士が擦れ合う感触に悠生は甘く濡れた嬌声を上げた。

「…………そういうとこだよ、悠生さん」

 興奮に掠れた千颯の呟きは悠生の耳には届かなかった。

「あっ、あぁっ、きもちぃっ、ちんちん、きもちいいっ」
「気持ちいいねぇ、悠生さん。悠生さんのここも、くちゅくちゅしてほしくてヒクヒク口開けちゃってるね」
「ひゃうっ」

 ぬめった指がアナルに触れ、悠生はビクリと肩を竦める。
 見ると千颯の手にはローションがあった。どこでもそういう事ができるようにと、予め部屋の至るところにローションのボトルが用意してある。

「んあぁ……っ」

 ローションに濡れた指が、ぬぷりと後孔に入ってくる。

「んふふ……悠生さんのここ、ちょっと指入れただけでちゅうちゅうって吸い付いてくるよ」
「ひっ、あっ、あっ」
「きゅんきゅん動いて自分で飲み込んでいって……俺の指、そんなに欲しかった?」
「んんっ、ゆび、うれひ、あぁっ、あああっ」
「かぁわいいなぁ。いっぱいくちゅくちゅしようねぇ」
「ひあぁっ、あっ、なか、くちゅくちゅ、きもちいぃっ、あっ、あーっ」

 ローションをたっぷり注がれ、ぬるぬるになった肉壁ををぬちゅぬちゅと擦られる。こりゅんっこりゅんっと前立腺を押し潰すように刺激され、強すぎる快感に悠生はガクガクと腰を震わせた。

「あひっ、ひっ、あっあっ、そこぉっ、そんなにしちゃ、あっひぃんっ、いくっ、いくぅっ」
「ほーら、悠生さんのその腰突き出すポーズ、めっちゃエロ可愛いよ」
「ひぉっ、んっ、いくっ、いくいくっ、んっ、~~~~~~っ」

 ぐりゅうぅっと前立腺を擦りながら強く押され、悠生ははしたなく腰を浮かせて絶頂を迎える。

「ああ、すっごいイイよ、可愛い、悠生さん……っ」
「んくぅっ、うっ、ひああっ、いってる、からぁっ、ぐりぐりしちゃ、あぁっ、あ~~っ」

 達しても千颯は指を止めずに中の膨らみを刺激し続ける。
 強烈な快感を断続的に与えられ、浮いた腰が戻らない。大きく脚を広げ、へこへこと情けなく腰を上下に振ってしまう。

「やらぁっ、あっあっ、千颯きゅ、いっかぃいっ、ゆびとめてぇっ」
「だーめ、悠生さんのエロ可愛いとこもっと見せて。ほら、指増やすからね。もっともっとくちゅくちゅして気持ちよくなろうねぇ」
「くひぃっ、ひっ、あっあっ、~~~~っ、まっ、あっひっ、んっ、ん~~~~っ」

 内腿を痙攣させ、悠生は何度も射精を伴わない絶頂を迎えた。

「はひっ、ひうぅっ、うっ、んっんっ、あ~~っ、千颯く、千颯くぅんんっ」
「あー、可愛い……可愛いね、悠生さん、大好き」

 こちらを見つめる瞳も囁く声も蕩けるように甘く、けれど快楽を与える指使いは容赦なく悠生を追い詰めていく。

「やらぁっ、あっ、もう、んぅ~~っ、や、やっ、千颯く、んうぅっ、千颯くんの、ぉっ、ちんちん、いれてぇっ」
「ええー、でも悠生さんのここ、俺の指美味しそうにしゃぶってるよ? 抜こうとすると……ほら、ぎゅーってしがみついてくる」
「らってぇ、すきっ、千颯きゅ、の、ゆびすきっ、千颯くんの、ゆびでくちゅくちゅこすられるのすきらからぁっ、なか、ぎゅうぎゅうって締めちゃうのぉっ」
「はああぁ、もおぉ、可愛すぎでしょ悠生さん」
「んああぁっ、ゆび、はげし、ひあぁっあっ、~~~~っ、はっ、ぁっ、おねが、千颯くぅんっ、千颯くんのちんちんほしいのぉっ、も、千颯くんのちんちんでこすって、いっぱいぃっ、おくまでずんずんしてぇ……っ」

 千颯の陰茎に指を絡ませ懇願する。

「大好きな悠生さんにそんなにエロ可愛くおねだりされたら、俺も我慢できなくなっちゃうよ」
「んくうぅっ」

 興奮に息を乱し、千颯が後孔から指を引き抜いた。
 悠生はガクガク震える体を起こし、ソファにうつ伏せになる。そして膝を立て、千颯に差し出すように尻を突き出した。
 ローションに濡れ、ヒクヒクと口を開ける後孔を彼の眼前に晒す。

「千颯く、いれてぇ……今度はちんちんで、俺のなか、たくさんぐちゃぐちゃにしてぇ……っ」
「っ……あーもうホント、これで自覚ないとかさぁ」
「あっ」

 後ろからぐっと腰を掴まれひくつくアナルに亀頭が押し付けられる。

「ひっ、はっ、あぁっ……────~~っ」

 先端がめり込み、それからどちゅんっと一気に剛直を埋め込まれた。
 中を満たされる快感に目の前がチカチカして、悠生は強くソファに爪を立てた。

「ひはっ、はっ、千颯く、のっ、ちんちんんっ、はいって、あっ、なか、いっぱいで、きもちいっ、あっあっ、千颯くぅ、んっ、んんんぅっ」
「はあっ……俺も気持ちいいよ。とろっとろの悠生さんの中、ちんぽに絡み付いてきて……あー、可愛くて気持ちよくてサイコーだよ、悠生さん」
「んひぃっ、あっ、ひっ、千颯くんのぉっ、ごりごりこしゅれて、きもちいぃっ、あっあっあっあっ」

 千颯が緩く腰を動かす度、ごりゅごりゅと前立腺を抉るように擦られる。あっという間に絶頂へと追い上げられた。
 ぶるぶると脚が震える。力が抜けそうになる悠生の腰はしっかり千颯に掴まれていて、そのまま腸壁を擦られ続けた。

「イッてる悠生さんの中、ホントきもちいー。腰止まんなくなる」
「あっあっあーっ、千颯きゅ、んぅっ、んっ、あっあっあっ、いくっ、んう~~っ、んっひっ、あっ、千颯くぅんっ、んっ、~~~~っ」

 気持ちいいのが終わらない。ずっと気持ちよくて、頭がくらくらした。
 ぐりゅっぐりゅっと雁で敏感な膨らみを引っ掻けるように出し入れされ、悠生は強すぎる快楽に身悶える。

「ひうっ、んっああっ、そこばっかり、しちゃぁっ、ああぁっ、らめぇっ」
「ダメじゃないでしょ。悠生さん、ここ、こうやってされるの好きでしょ。っ、ああ……俺も、すげーイイ……雁がここ、引っ掛かって……はあっ、きもちい」
「っ~~~~、ひっ、あっ、やあぁっ、おくっ、奥にもほひぃっ、あっあっ、奥もぉ、千颯きゅ、のぉ、ちんちんできもちよくしてぇっ」
「はーっ……ホント、悠生さんはおねだり上手なんだから……っ」
「んぉっ……~~~~~~っ」

 ずちゅうぅっと奥まで肉棒を捩じ込まれ、悠生は背中を反らせ達した。

「あー、中痙攣してる……奥まで突っ込まれてまたイッちゃったねぇ、悠生さん」
「いっひゃ、あっ、──~~~~っ、おくっ、きもちぃっ、ひっ、ううぅ~~~~っ」
「奥、ぐりぐりーって押されるの大好きだもんねー、悠生さん」
「すきっ、すきっ、ああっ、おくっ、おくぅっ、ふといので、ぐりぐりってぇ、きもちいいのっ」
「でも、こうして……ぐぽっぐぽって、先っぽ出し入れされるのも大好きだよね」
「ぉっ、んっ、しゅきぃっ、~~~~っ、おくぅっ、じゅぽじゅぽ、おっ、いくっ、う゛~~っ、あっあっ、きもちいいぃっ」
「はあっ……ほーんと、悠生さんは俺のちんぽ大好きなんだから」
「しゅきっ、だいすき、千颯くん、すきっ、千颯きゅ、ぅんっ、だいしゅき、しゅきぃ、っぉ、んおぉ……っ」

 強く腰を掴まれ、叩きつけるような勢いで最奥を穿たれた。

「ああ、もう、可愛い、可愛い悠生さん、俺も好き、大好き、悠生さん悠生さん悠生さん悠生さん……っ」
「ひっ、ぉっ、んっ、んっ、んぉっ、ぉ、ひぃっ」

 ごちゅっごちゅっごちゅっごちゅっと何度も奥を突き上げられ、悠生はまともな言葉も紡げず、されるがまま与えられる快感に溺れる。

「好き、好き好き、悠生さん、悠生さんっ、俺だけの可愛い悠生さん……っ」
「あひっ、ひっ、あっ、あっ、んっ、んうっ」
「あー、締まる、ああ、いくいく、出る、出すよ、悠生さんの中に出すよ」
「ぉっ、んっ、んんっ、ん゛っ、~~~~っ」
「はっ、出る……っ」

 ぐぽぉっと最奥に嵌め込まれた陰茎から大量の精液が吐き出された。

「ひはぁっ……あ、あうぅ……っ」
「はあっ……あー、気持ちい、すげー出る……っ」

 ぐっぐっと腰を押し付けられ、最後の一滴まで残らず注がれる。
 腹の奥が熱で満たされるのを感じ、悠生は酩酊したように瞳をとろかせる。
 暫く二人はそのままじっとしていたが、やがて互いの息が整うと、千颯はゆっくりと悠生の体を引き起こした。

「んんぅ……っ」

 体を繋げたまま、彼に後ろから抱っこされる形でソファに座る。
 体に回る千颯の手は悠生の肌を労る優しく撫で、かと思うと性感を引き出すように乳首やぺニスに触れてくる。埋め込まれたままの彼の欲望は既に再び熱を取り戻していた。
 悠生は彼の手を拒まず、好きなようにさせる。
 ぴったりと千颯に背中を預け、悠生は首を彼の方へ向けた。

「千颯くん……キスしたい……」
「! うんっ」

 悠生がねだれば嬉しそうに目を輝かせ、嬉々として唇を重ねてくる。

「悠生さん、可愛い……好き……大好き……悠生さん……」

 合間に甘い言葉を吐きながら、何度も何度も悠生の唇を貪る。
 塩対応なんてとんでもない。言葉だけでなく態度でも、これでもかというほどに気持ちを伝えてくるのだから。イチャイチャベタベタするのが大好きで、手料理をたくさん褒めて美味しそうに食べてくれるし、オシャレなんてしてなくても可愛いって何度も言ってくる。

「千颯くん……もっとしよ……?」
「! うん! うん、いっぱいしよう、悠生さんっ」

 後孔をきゅんと締め付けて誘えば、千颯は頬を紅潮させて抱きついてくる。
 こんな彼を知っているのは自分だけ。自分だけに向けられる彼の気持ちを、自慢したくなる。自分だけしか知らない彼を見せびらかしたくなる。
 矛盾しているけれど、ふとそんな考えが浮かぶ事があるのだ。
 もちろん誰にも教えるつもりはないけれど。これまでもこれからも、彼の全部を独り占めしたいから。





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