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ユリウス視点 2
しおりを挟むユリウスははじめてマリナの泣き顔を見た。
その美しい涙が、自分以外の男のせいで流されたものだと気づいたとき。
ユリウスの中で抑えていたものが、ぷつりと音を立てて切れた。
マリナを自分だけのものにしたいと、そう強く思った。
ユリウスはパーティーの主催者に声をかけ、適当な理由をつけて常備されている睡眠薬を分けてもらった。
薬を手に、ユリウスはマリナを捜す。泣き顔のままパーティー会場には戻らないだろう。控え室や化粧室に続く廊下を歩いていたら、マリナの声が聞こえた。
足を止め、様子を窺うと、マリナがシルヴィエに詰め寄っていた。
「どうしてラドヴァン様を好きになったのですかっ?」
「ど、どうしてって……」
「なんでユリウスを選ばなかったのですかっ?」
「ユリウス様……?」
「どうしてユリウスじゃないのっ? どうしてユリウスを好きにならなかったのっ?」
「マリナ様……」
「楽しそうに、話していたのにっ……。二人とも、楽しそうに笑い合って……それなのに、どうして……っ」
そんな会話が聞こえてきた。
マリナは酷く興奮していた。それほどまでに、ラドヴァンとシルヴィエのことがショックだったのだろう。つまり、それだけ彼女はラドヴァンのことを強く思っていたということだ。
まるで、シルヴィエをユリウスに押し付けようとしているように見えた。シルヴィエをラドヴァンから引き離したくて、あんなに必死になっているのだと思えた。
ユリウスの気持ちも知らずに。
残酷な現実を突きつけられ、けれどユリウスが取り乱すことはなかった。寧ろどんどん冷静になっていく。
マリナがどれだけ足掻こうと、ラドヴァンは彼女のものにはならない。
マリナは、ユリウスのものになるのだから。
ユリウスは迷いのない足取りでマリナに近づいた。
薬でマリナを眠らせ別荘へと運び、そこの一室に彼女を閉じ込めた。
両親にはマリナは体調を崩したので別荘で療養させると伝えた。蛇に咬まれたときもそうだったが、両親は全く彼女に関心を示さない。医者は手配し、ちゃんとした治療は受けさせても、彼らは一度も様子を見に訪れることがなかった。
以前はマリナを心配する素振りも見せない両親に苛立ちを感じていたが、今はそれがありがたかった。お見舞いになど来ることがないから。
だからユリウスは心置きなくマリナを閉じ込め、自分だけのものにすることができた。
ずっと恋い焦がれ続けていたマリナが、自分の腕の中にいる。
そう。確かにユリウスはマリナに恋心を抱いていた。
いつからかは、明確にはわからない。
けれどきっと、ずっと前から。
マリナだけを思い、マリナだけに執着してきた。
純粋ではない。歪んだ思いかもしれないが、ユリウスは確かにマリナを愛していた。
この先、笑顔を向けられることがなくてもいい。
心が手に入らなくてもいい。
恨まれても、憎まれても。
自分以外の誰かのものになってしまう前に、彼女を自分だけのものにしたかった。
体だけでもいいと思っていたから、マリナに好きだと言われてもすぐには信じられなかった。
都合のいい夢を見ているようで、まるで現実感がない。
でも、今、彼女は確かにユリウスの腕の中で笑っている。
マリナに思いを告げられてから数日経ったが、ユリウスは未だに彼女を閉じ込め部屋の中から出さなかった。
怖かったのだ。ここを出たら、全てがなかったことになりそうで。マリナはユリウスの手を離れ、自分の傍からいなくなってしまうのではないかと。
そんな不安がつきまとい、部屋から出せなくなってしまった。
けれどマリナは一言も文句を言わなかった。不満一つ口にせず、軟禁生活を送っている。
しかも、幸せそうに微笑みながら。
そのマリナの笑顔があまりにも美しく、ユリウスはますます彼女を外へ出したくなくなった。この笑顔を誰にも見せたくない。
彼女の心を手に入れたら、ユリウスの執着は一層増していった。
マリナが可愛いのだから仕方がない。
「ふぁっ、あぁんっ、ユリウスぅっ」
飽きもせず、毎日のようにユリウスはマリナと睦み合う。
今日もまた、朝食を済ませてベッドでイチャイチャしていると自然と淫靡な空気が流れ、気づけば互いに裸になっていた。
ベッドに寝そべるユリウスに跨がる形で、マリナはそそり立つ男根を蜜壷に迎え入れている。
蜜液で満たされた内部はとろとろに蕩け、絡み付き、ユリウスに目も眩むような快楽をもたらした。
「あぁっ、きもちいぃっ、ユリウスぅっ、あっ、はぁんんっ」
瞳をとろんと潤ませ、甘く喘ぎながら、ユリウスの上で艶かしく身を捩るマリナから片時も目を離さない。紅潮する頬も、小さくてぽってりした唇も、ぷるぷる揺れる乳房も、なにもかもが美味しそうだ。
マリナはユリウスの視線に恥ずかしそうに目を伏せ、けれど膣内は悦ぶように蠢動する。
恥ずかしくて、けれどその恥ずかしさが快感となり、それが更に羞恥を煽り、体はますます火照っていく。
マリナのその様子を瞬きも惜しんで見つめた。
「あっ、ユリウス、んんっ、私、わたしぃ……っ」
マリナはぽろぽろと涙を零す。
「どうしたの、マリナ?」
快楽によるものとは違う涙を流すマリナを見て、ユリウスは気遣うように声をかけた。
「辛かった? やめようか?」
マリナはふるふるとかぶりを振る。
「違うの……。私、どんどん、い……いやらしく、なって……」
顔を真っ赤に染め、消え入りそうな震える声で言う。
「ユリウスに、触られると、すぐ……気持ちよくなって……おかしくなっちゃいそうな、くらい、すごく……感じちゃって……いっぱい、はしたないこと、言ったり、したり、しちゃって……」
マリナは涙で潤んだ瞳でユリウスを見つめる。
「我慢しようとしても、できなくて……。いやらしい、私のこと、き、嫌いにならないで……」
彼女の視線に、表情に、言葉に、ぐっと心臓を鷲掴みにされる。
「マリナ……っ」
「きゃぅ……!?」
衝動に衝き動かされるまま、がばりと上体を起こし、彼女を抱き締める。貪るように唇を重ねた。
「はんっ、んんっ、ふぁ……ぅんっ」
「はっ……ん……マリナ……っ」
マリナの口の中の粘膜を舐め回し、味わい、しゃぶりつくす。息苦しさにもがくマリナの体をきつく抱き締め、思う様口腔内を蹂躙する。
呼吸さえ奪うほどのキスに、唇を離す頃には、マリナはまともに言葉も紡げなくなっていた。
そんな彼女が愛おしくて堪らない。
「可愛いマリナ……そんな可愛いことを言って僕を惑わせて……めちゃくちゃにされたいの? 僕のものを嵌めっぱなしにされて、お腹の中、僕の精液でどろどろにされたいの?」
「そ、そんな……私は、そんなつもりじゃ……」
「我慢なんてする必要はないよ。寧ろもっといやらしく乱れてくれていいよ。僕なしじゃいられない体になって。おかしくなっていい、いっぱい感じて気持ちよくなって、僕のことしか考えられなくなって」
マリナの細い肩に噛みつきながら、腰を揺すって子宮口をごりごりと抉る。マリナが甲高い悲鳴を上げるのと同時に膣内が収縮し、陰茎をきつく締め上げられ、ユリウスは小さく呻いた。
荒い息を吐くユリウスの唇に、マリナの柔らかな唇が押し当てられる。
「っマリナ……?」
「んっ……そんなの……私、もうとっくに、ユリウスのことしか考えられなくなってます……」
こちらの理性を根こそぎ奪うような可愛いことを言われ、ユリウスは今度こそ本当に止まれなくなった。
「ひああぁっ、あぁっ、あっ、ああぁっ」
小さな体を腕に閉じ込め逃げられないようにして、激しく中を突き上げる。
絡み付く肉襞を何度も擦り上げ、ぐちゅぐちゅと掻き回した。
「はひっ、あぁっ、ユリウスぅっ、んあっ、あっ」
「マリナ、好きだよ、愛してる」
彼女を縛り付ける呪文のように愛の言葉を何度も耳に囁く。
嬌声に混じって、マリナは懸命にそれに応えてくれた。
「ひぅっ、んんっ、すき、すきっ、私も、あっ、あぁっ、ユリウス、大好きぃっ」
ユリウスは余計に止まれなくなり、一層激しく最奥を穿った。
可愛くて、愛しくて、いっそこの手で壊してしまいたくなる。
快楽に泣き喘ぐマリナを、何度も抱き続けた。
声も掠れ、くたくたのマリナを、それでもまだユリウスはしっかりと腕の中に囲ったまま、離せずにいた。
マリナは嫌がらず、寧ろ安心した様子で身を任せている。
しっとりと汗ばんだ彼女の体を抱き締め、赤く色づく頬を撫でた。マリナは可愛がられる猫のようにうっとりと目を細める。
色気と愛らしさを兼ね備えたマリナにまた欲情しかけて、寸でのところで耐えた。
マリナはユリウスを見つめ、微笑む。とても幸せそうに。
こんな窮屈な生活を強いているというのに、彼女の纏う空気は幸福に満ちている。
だが、いつまでも軟禁生活が続けば、きっといずれ嫌になるだろう。自由になりたいと願うようになるだろう。
わかっているのに、離せない。
「外に出たい、マリナ……?」
彼女の頬を撫でながら、囁くように尋ねた。
マリナはじっとユリウスを見つめ、それから小さく首を横に振った。
「外に出ても、出れなくても、どちらでもいいの。ユリウスの傍にいられるなら」
「マリナ……」
「私は、ずっとこのままでも構いません。ユリウスがいてくれるなら、他の誰にも会えなくてもいい」
「…………」
「閉じ込められるの、全然嫌じゃない……ユリウスに独り占めされてるみたいで、すごく嬉しいから……」
頬を染め、はにかみながらそんなことを言ってくる。
ユリウスは自分が歪んでいる自覚はある。だが、歪んだのは間違いなくマリナのせいだ。
彼女が愛しくて堪らない。マリナがユリウスの心を掴んで離さない。
きっとこの先もずっと、ユリウスは彼女の虜なのだろう。
そう確信しながら、笑みを浮かべる唇にキスをした。
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読んでくださってありがとうございます。
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