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「お嬢様!!」
アンナの叫びに目を覚ます。
周囲を見渡すと、メイドと護衛が取り囲んでおり、マーシャは広間の外に出てきていることを知った。
一緒に戦ったメンバー二人はすでにおらず、Aランク冒険者三名が冷めた表情をして立っていた。
身体を起こし、痛みがないことを確認したが、また沼に落ちたのだろう、濡れて汚れた己の姿に顔を顰めた。
「…ひどい…」
「ああ、お嬢様。おいたわしい…!浄化魔法は使えますか?」
「…ええ…」
浄化魔法はDランク魔法であった。
メイドや侍女の中でも使える者は数少ない。
ここにいるメイドで使える者はいない為、マーシャを濡れたままにしておくしかなかったようだ。
浄化魔法を使い、風魔法で乾かす。
Aランク冒険者は浄化魔法を使えるのだから、綺麗にしてくれてもいいじゃないか、とマーシャが思って見上げれば、彼らがこちらへと近づいてきた。
「言うまでもないことだが、Cランクたる資格なしと判断し、剥奪となる」
それに楯突いたのは、アンナだった。
「メンバーが悪かったのです!お嬢様を置いて真っ先に逃げ出すなんて、冒険者の風上にも置けません!」
「正直な感想を言えば、君は冒険者すら向いてない」
「な…!言うに事欠いて、なんてことをおっしゃるのです!お嬢様は十歳の頃から冒険者として頑張って来られたのですよ…!」
だがリーダー格の男はアンナを見ることもせず、無表情でマーシャを見下ろしていた。
「被弾して自己回復すらできない、何度もこのボスとは戦っているはずなのにタイミングを見て回復も出来ない、ヘイトも読めない、メンバーの実力も読めない、自分の実力も知らない。…十歳から冒険者をやっていてその程度か」
「な、なんですって…!?」
聞き捨てならず、マーシャが怒りで震える声を上げるが、男はため息をついて首を振る。
「筆頭侯爵家のご令嬢だったな。そりゃそうか。大事にしてもらってるんだもんな」
「…そ、そうですわ。皆、わたくしと苦楽を共にしてくれている仲間ですわ」
「お嬢様…」
アンナが感動したように呟いているが、Aランク冒険者三名は冷めた瞳をしていた。
「あっそう。正直あんたはDランクも怪しいところだ。関係のない冒険者に迷惑をかけない為にも、ボスに挑戦するのはやめておいてくれや」
「は…!?どういう意味ですの…?」
「そのままの意味だが、わからないのか」
冷めた上に、哀れむような色を乗せられ、マーシャは不快に眉を顰める。
「わたくしに実力がないとおっしゃりたいの?」
「それ以外に聞こえるようなら、耳がおかしい」
「無礼な…!」
アンナが睨みつけるが、男は見もしない。
「今日のことはそのまま、冒険者ギルドに報告をする。お疲れさん」
「お待ち下さい!」
帰ろうとする三人に、アンナが吼えるように叫びを上げた。
さすがに不快げな顔をしながらも、三人はアンナを見る。
「なんだ」
「実力を問題視するのであれば、お嬢様ではなく、別の娘がいるではありませんか!」
「…はあ?」
「アンナ?」
アンナを見れば、使命感に燃える瞳をして、男を睨みつけていた。
「王太子殿下の覚えめでたく、優秀な兄にくっついているだけの、実力の伴わない娘です!」
「…アンナ」
ああ、ヒロインのことか、とマーシャは思った。
いい気味だ、と思ってしまった。
口を閉ざし、アンナを見守る。
「それは、誰のことだ?」
「名誉騎士の娘です!お嬢様と同い年で、つい最近までお嬢様のお声掛けのおかげでランクを上げて来られた分際のくせに、いつの間にやら今度は兄にくっついてランクを上げている娘ですわ!あの娘は兄の力を利用して、不正をしているのです!」
「…そりゃ確かか?証拠は?」
男の声音に真剣味が増し、アンナは得意げにふんぞり返った。
「証拠など、あの娘のランクを見れば明らかではありませんか!」
「ランクはいくつだって?」
「Bランクと伺っております」
「へぇ、そりゃすごい」
男は仲間二人と顔を見合わせ、感心したように呟いていた。
「すぐに調査をすべきです!」
「そうか。ではその旨合わせて報告しておこう。解散」
「待っ…!」
止める間もなく、三人は帰還の呪符で帰って行った。
「なんて失礼な連中なのでしょうか!あんなのがAランクとは、冒険者ギルドも地に墜ちたものですね!」
アンナが憤慨し、他の者達も頷いている。
「…サラの不正も、明らかになるといいわね」
「全くです。男爵家如きが、お嬢様の意に逆らうなど許されません。…お嬢様、大丈夫ですか?お疲れでしょう」
「ええ…。それにしてもどうして皆、わたくしを放って逃げるのかしら?一緒に逃げてくれたらいいのにね…」
「お嬢様…!」
「おかげでいつもわたくし一人が痛い目に遭ってしまうの。あのAランク冒険者達、わたくしが攻撃されているのに傍観していたのよ」
疲れたようにため息をつけば、アンナが悲しげな瞳をしてマーシャの肩に縋った。
「おいたわしい…!早く帰宅し、ゆっくり致しましょう。お忘れになるのが一番です」
「そうね…疲れてしまったわ」
被弾したら自己回復、と言っていたが、痛みでそれどころではないのだ。
侯爵令嬢である自分は、平民と違って打たれ弱いのだ。そんなこともわからないとは、Aランク冒険者のくせに配慮が足りないと思う。
ゲームではパーティーメンバーのステータスを常に確認できたが、現実ではそんな便利な機能はない。
なのに実力が読めないだのと、失礼極まりなかった。
Aランクになる頃にはわかるようになるのかもしれないが、そんなものを要求されても知ったことではない。
自分はできることをやっている。
王太子殿下の目に留まる為、スタンピードでメンバーに選ばれる為、そして万が一、断罪されて国外追放になっても生きていけるように、冒険者になったのだ。
冒険者に向いていないと言われようが、辞めるつもりはないのだった。
今回ランクが剥奪されたとしても、またほとぼりが冷めた頃に、今度は情報が漏れないように、しっかり契約書を交わして口止めをすれば大丈夫だろう、と思う。
今回は監視があったが、次回はないだろう。
そうやって今までもランクを上げた者がいるのだから、問題はないはずだった。
弟のせいで面倒なことになったが、もうバレるようなことはしない。
アンナも協力してくれる。
それに、あのサラもランクを剥奪されるのであればざまあ、であった。
「一時の屈辱を甘受しても、最後には勝てばいいのよ」
マーシャは呟き、アンナはそれに頷いた。
次の日から、グレゴリー侯爵家は弟に続いて姉までCランクを剥奪されたという噂が学園中に回っていた。
試験期間の為、午前中で学園は終了するのだが、登校してから下校するまで、ひそひそとその噂で持ちきりであった。
当の侯爵令嬢は平然と試験を受けており、誰とも会話することなく終了後にはすぐに下校していった。
ジャックは難しい顔をしながらサラの元へとやって来て、「災難だな」と話しかけた。
「…どういう意味?」
「ああ…すぐに話が行くと思うけど、冒険者ギルドの総意じゃないからな。俺達皆、親父だって疑っちゃいない。だから気にすんなよ?」
「…?どうしたの?何かあるの?」
サラが首を傾げて問うと、ジャックは慌てたように手を振った。
「ごめん、俺からは言えない。ていうか、言うべきじゃなかったごめん!忘れてくれ」
「うん?そうなの?」
「何の話ですの?」
アイラが話しかけてきて、ミリアムやジャン、リチャード、エリザベス、ミラまでやって来た。
「ああごめん、何でもない。あのご令嬢の面の皮すげーなって話」
「…ああ…」
皆は納得したように頷いた。
「実力が伴わないのに不正して、あの方に何のメリットがあるのかしら」
エリザベスが首を傾げ、皆も「そうだよな」と首を傾げる。
「そもそも冒険者のランクは実力の証なのに、冒険者自体の評判を落としたいんだろうか」
「ランク詐欺は許せないな」
「そうだよな」
サラは冒険者に対する考え方が相容れない侯爵令嬢とは仲良くなれないと思っているが、それでも堂々としている姿は立派だと思う。
まるで恥じる所など欠片もないのだと言わんばかりだ。
…それこそが相容れないと思う理由であるのだが。
目の前にいる皆は、そうではなくて良かったと心から思うのだった。
「皆様は、期末試験が終わったらどうされるんですか?ダンジョン攻略を進めるんですか?」
サラが問えば、四人は顔を見合わせ、頷いた。
「領地にも帰らねばならないのですが、せっかくの休みですもの。八月の後半に、早めに帰って来て進めようかと話しておりますの」
「エリザベス嬢は野営は無理だから、攻略とレベル上げをできるところまで、って感じかな。サラ嬢に教えてもらった方法で、こつこつ頑張ろうと思ってるよ。時間はかかるかもしれないが、卒業までにBランクになれたらいいなってことで」
「素晴らしいと思います」
「Bランクなら僕もリチャード君も、騎士団入りするのに十分過ぎる程だし、きっと入ってから楽ができるよ。それが今から楽しみでね」
「世襲じゃなく、実力で騎士団総長になってみせるよ」
「頑張って下さい!」
貴族はほとんどが領地を持っており、夏や冬の休暇になると普段は管理人に任せている運営状況を確認し、領地の様子を直接見て、遠戚関係の付き合いや、社交もしなければならないのだということだった。
古くからの貴族は大変だな、とサラは思い、狭いながらも領地を賜った我が家も、休暇に入ったら領地の見回りはやることリストに入っているので、もはや他人事ではなかった。
今週一週間はテスト期間で午前中までであり、来週テスト結果の貼り出しと、成績表をもらって、休暇の始まりである。
Aランクへの昇級試験は八月中旬と決まった。
それまで、時間があれば兄とリアムと共にひたすらダンジョン六十階までを駆け抜け、レベル上げをしながらも時間を縮める、という作業に邁進する予定だった。
日帰りはどうしても無理そうなので、一日目で出来る限り進み、二日目で余裕を持ってボスとの戦闘時間に当てることが目的である。
足を引っ張ることはしたくない。
しっかりと準備をして、後悔しないようにしたかった。
アンナの叫びに目を覚ます。
周囲を見渡すと、メイドと護衛が取り囲んでおり、マーシャは広間の外に出てきていることを知った。
一緒に戦ったメンバー二人はすでにおらず、Aランク冒険者三名が冷めた表情をして立っていた。
身体を起こし、痛みがないことを確認したが、また沼に落ちたのだろう、濡れて汚れた己の姿に顔を顰めた。
「…ひどい…」
「ああ、お嬢様。おいたわしい…!浄化魔法は使えますか?」
「…ええ…」
浄化魔法はDランク魔法であった。
メイドや侍女の中でも使える者は数少ない。
ここにいるメイドで使える者はいない為、マーシャを濡れたままにしておくしかなかったようだ。
浄化魔法を使い、風魔法で乾かす。
Aランク冒険者は浄化魔法を使えるのだから、綺麗にしてくれてもいいじゃないか、とマーシャが思って見上げれば、彼らがこちらへと近づいてきた。
「言うまでもないことだが、Cランクたる資格なしと判断し、剥奪となる」
それに楯突いたのは、アンナだった。
「メンバーが悪かったのです!お嬢様を置いて真っ先に逃げ出すなんて、冒険者の風上にも置けません!」
「正直な感想を言えば、君は冒険者すら向いてない」
「な…!言うに事欠いて、なんてことをおっしゃるのです!お嬢様は十歳の頃から冒険者として頑張って来られたのですよ…!」
だがリーダー格の男はアンナを見ることもせず、無表情でマーシャを見下ろしていた。
「被弾して自己回復すらできない、何度もこのボスとは戦っているはずなのにタイミングを見て回復も出来ない、ヘイトも読めない、メンバーの実力も読めない、自分の実力も知らない。…十歳から冒険者をやっていてその程度か」
「な、なんですって…!?」
聞き捨てならず、マーシャが怒りで震える声を上げるが、男はため息をついて首を振る。
「筆頭侯爵家のご令嬢だったな。そりゃそうか。大事にしてもらってるんだもんな」
「…そ、そうですわ。皆、わたくしと苦楽を共にしてくれている仲間ですわ」
「お嬢様…」
アンナが感動したように呟いているが、Aランク冒険者三名は冷めた瞳をしていた。
「あっそう。正直あんたはDランクも怪しいところだ。関係のない冒険者に迷惑をかけない為にも、ボスに挑戦するのはやめておいてくれや」
「は…!?どういう意味ですの…?」
「そのままの意味だが、わからないのか」
冷めた上に、哀れむような色を乗せられ、マーシャは不快に眉を顰める。
「わたくしに実力がないとおっしゃりたいの?」
「それ以外に聞こえるようなら、耳がおかしい」
「無礼な…!」
アンナが睨みつけるが、男は見もしない。
「今日のことはそのまま、冒険者ギルドに報告をする。お疲れさん」
「お待ち下さい!」
帰ろうとする三人に、アンナが吼えるように叫びを上げた。
さすがに不快げな顔をしながらも、三人はアンナを見る。
「なんだ」
「実力を問題視するのであれば、お嬢様ではなく、別の娘がいるではありませんか!」
「…はあ?」
「アンナ?」
アンナを見れば、使命感に燃える瞳をして、男を睨みつけていた。
「王太子殿下の覚えめでたく、優秀な兄にくっついているだけの、実力の伴わない娘です!」
「…アンナ」
ああ、ヒロインのことか、とマーシャは思った。
いい気味だ、と思ってしまった。
口を閉ざし、アンナを見守る。
「それは、誰のことだ?」
「名誉騎士の娘です!お嬢様と同い年で、つい最近までお嬢様のお声掛けのおかげでランクを上げて来られた分際のくせに、いつの間にやら今度は兄にくっついてランクを上げている娘ですわ!あの娘は兄の力を利用して、不正をしているのです!」
「…そりゃ確かか?証拠は?」
男の声音に真剣味が増し、アンナは得意げにふんぞり返った。
「証拠など、あの娘のランクを見れば明らかではありませんか!」
「ランクはいくつだって?」
「Bランクと伺っております」
「へぇ、そりゃすごい」
男は仲間二人と顔を見合わせ、感心したように呟いていた。
「すぐに調査をすべきです!」
「そうか。ではその旨合わせて報告しておこう。解散」
「待っ…!」
止める間もなく、三人は帰還の呪符で帰って行った。
「なんて失礼な連中なのでしょうか!あんなのがAランクとは、冒険者ギルドも地に墜ちたものですね!」
アンナが憤慨し、他の者達も頷いている。
「…サラの不正も、明らかになるといいわね」
「全くです。男爵家如きが、お嬢様の意に逆らうなど許されません。…お嬢様、大丈夫ですか?お疲れでしょう」
「ええ…。それにしてもどうして皆、わたくしを放って逃げるのかしら?一緒に逃げてくれたらいいのにね…」
「お嬢様…!」
「おかげでいつもわたくし一人が痛い目に遭ってしまうの。あのAランク冒険者達、わたくしが攻撃されているのに傍観していたのよ」
疲れたようにため息をつけば、アンナが悲しげな瞳をしてマーシャの肩に縋った。
「おいたわしい…!早く帰宅し、ゆっくり致しましょう。お忘れになるのが一番です」
「そうね…疲れてしまったわ」
被弾したら自己回復、と言っていたが、痛みでそれどころではないのだ。
侯爵令嬢である自分は、平民と違って打たれ弱いのだ。そんなこともわからないとは、Aランク冒険者のくせに配慮が足りないと思う。
ゲームではパーティーメンバーのステータスを常に確認できたが、現実ではそんな便利な機能はない。
なのに実力が読めないだのと、失礼極まりなかった。
Aランクになる頃にはわかるようになるのかもしれないが、そんなものを要求されても知ったことではない。
自分はできることをやっている。
王太子殿下の目に留まる為、スタンピードでメンバーに選ばれる為、そして万が一、断罪されて国外追放になっても生きていけるように、冒険者になったのだ。
冒険者に向いていないと言われようが、辞めるつもりはないのだった。
今回ランクが剥奪されたとしても、またほとぼりが冷めた頃に、今度は情報が漏れないように、しっかり契約書を交わして口止めをすれば大丈夫だろう、と思う。
今回は監視があったが、次回はないだろう。
そうやって今までもランクを上げた者がいるのだから、問題はないはずだった。
弟のせいで面倒なことになったが、もうバレるようなことはしない。
アンナも協力してくれる。
それに、あのサラもランクを剥奪されるのであればざまあ、であった。
「一時の屈辱を甘受しても、最後には勝てばいいのよ」
マーシャは呟き、アンナはそれに頷いた。
次の日から、グレゴリー侯爵家は弟に続いて姉までCランクを剥奪されたという噂が学園中に回っていた。
試験期間の為、午前中で学園は終了するのだが、登校してから下校するまで、ひそひそとその噂で持ちきりであった。
当の侯爵令嬢は平然と試験を受けており、誰とも会話することなく終了後にはすぐに下校していった。
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「…どういう意味?」
「ああ…すぐに話が行くと思うけど、冒険者ギルドの総意じゃないからな。俺達皆、親父だって疑っちゃいない。だから気にすんなよ?」
「…?どうしたの?何かあるの?」
サラが首を傾げて問うと、ジャックは慌てたように手を振った。
「ごめん、俺からは言えない。ていうか、言うべきじゃなかったごめん!忘れてくれ」
「うん?そうなの?」
「何の話ですの?」
アイラが話しかけてきて、ミリアムやジャン、リチャード、エリザベス、ミラまでやって来た。
「ああごめん、何でもない。あのご令嬢の面の皮すげーなって話」
「…ああ…」
皆は納得したように頷いた。
「実力が伴わないのに不正して、あの方に何のメリットがあるのかしら」
エリザベスが首を傾げ、皆も「そうだよな」と首を傾げる。
「そもそも冒険者のランクは実力の証なのに、冒険者自体の評判を落としたいんだろうか」
「ランク詐欺は許せないな」
「そうだよな」
サラは冒険者に対する考え方が相容れない侯爵令嬢とは仲良くなれないと思っているが、それでも堂々としている姿は立派だと思う。
まるで恥じる所など欠片もないのだと言わんばかりだ。
…それこそが相容れないと思う理由であるのだが。
目の前にいる皆は、そうではなくて良かったと心から思うのだった。
「皆様は、期末試験が終わったらどうされるんですか?ダンジョン攻略を進めるんですか?」
サラが問えば、四人は顔を見合わせ、頷いた。
「領地にも帰らねばならないのですが、せっかくの休みですもの。八月の後半に、早めに帰って来て進めようかと話しておりますの」
「エリザベス嬢は野営は無理だから、攻略とレベル上げをできるところまで、って感じかな。サラ嬢に教えてもらった方法で、こつこつ頑張ろうと思ってるよ。時間はかかるかもしれないが、卒業までにBランクになれたらいいなってことで」
「素晴らしいと思います」
「Bランクなら僕もリチャード君も、騎士団入りするのに十分過ぎる程だし、きっと入ってから楽ができるよ。それが今から楽しみでね」
「世襲じゃなく、実力で騎士団総長になってみせるよ」
「頑張って下さい!」
貴族はほとんどが領地を持っており、夏や冬の休暇になると普段は管理人に任せている運営状況を確認し、領地の様子を直接見て、遠戚関係の付き合いや、社交もしなければならないのだということだった。
古くからの貴族は大変だな、とサラは思い、狭いながらも領地を賜った我が家も、休暇に入ったら領地の見回りはやることリストに入っているので、もはや他人事ではなかった。
今週一週間はテスト期間で午前中までであり、来週テスト結果の貼り出しと、成績表をもらって、休暇の始まりである。
Aランクへの昇級試験は八月中旬と決まった。
それまで、時間があれば兄とリアムと共にひたすらダンジョン六十階までを駆け抜け、レベル上げをしながらも時間を縮める、という作業に邁進する予定だった。
日帰りはどうしても無理そうなので、一日目で出来る限り進み、二日目で余裕を持ってボスとの戦闘時間に当てることが目的である。
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しっかりと準備をして、後悔しないようにしたかった。
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