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俺様王太子がウザい!!
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(彼女が悪役令嬢のプリシラで間違いないみたいなのよね……)
入学して数日。
アイラは違うクラスに同姓同名、正真正銘の悪役令嬢が居るのではないかと、探してみた。
しかし、プリシラ・グランフィートという生徒は学園内で彼女しかいないという事実が分かっただけだった。
(全く悪役令嬢に見えない)
アイラだけでなく、他の生徒にもにこやかに接する彼女は、どこから見ても悪役に見えるはずがなかった。
(可愛い……天使だわ)
プリシラが居るだけで、その場が清浄な空気になる。
実際、初日は遠巻きにされていたアイラだったが、プリシラと一緒に話をしていると、普通にクラスメイトが話しかけて来るようになった。「プリシラ様と仲がよろしいってことは、悪い子じゃなさそうね」という評価なのだ。
隣の席なので、プリシラとアイラは休憩時間に会話を交わす仲になった。仲が良いと評されて良いのかは、まだ微妙な距離感だが、クラスの中では一番一緒に居る時間が多い。
「アイラさん、ボーッとしてどうしたんですの?」
考え事をするアイラに、プリシラが心配そうに尋ねる。
「いえ、プリシラ様は可愛いなぁって考えていたところですよ」
アイラは自分の感情はダイレクトに伝える性格だったため、思ったままをプリシラに伝えた。
「そんな、可愛いだなんて!アイラさんこそ、とてもキレイな方ですのに……それに様つけはやめて下さい。その……お友だちでしょう?」
透き通る白い頬を薄桃色に染め、プリシラはいう。最後の「お友だちでしょう?」の部分は、少し不安そうな声音なところが、また庇護欲を誘った。
(ほんっと可愛いわ!)
「友達……私と友達になってくれるんですか?嬉しいです!」
友達認定されていたことは、とても嬉しかった。
「じゃあ、私のことはアイラと呼んで下さい。プリシラさん」
「……さん?」
さん付けも気に入らないみたいで、プリシラが首を小さく横に傾ける。
「……プリシラ?」
仮にも公爵令嬢を呼び捨てにしても良いのか迷いながら、名前を呼んでみると「はい」と、とても嬉しそうに応えられた。
あまりの可愛さに、アイラの胸がキュンッと高鳴った。
(何だろうこの気持ち。恋愛感情じゃないんだけど、すごく胸がドキドキする……ずっと愛でていたいこの気持ち……あ、分かった、「推し」に対する感情だわ、これ)
自分の感情の種類を理解し、アイラは納得した。
(推しが隣の席に居る学園生活って、天国じゃないかしら?しかも、友達っていって貰えたし、これからが楽しみだわ)
『推しは推せるときに推せ』が前世で学んだ教訓である。
「おい、俺の婚約者に馴れ馴れしくしすぎだ」
プリシラに友達認定され、嬉しい気持ちに浸っていると、突然背後からイライラとした声に話しかけられた。
「ジュディアン様」
「王太子殿下」
アイラに話しかけてきたのは、王太子ジュディアンだった。そう、小説ではアイラと恋愛関係になる王太子だ。そして、プリシラの婚約者でもある。
「私たちは今、友情を深め合っているところなので、殿下は近づかないで下さい」
入学初日から、プリシラと話をしていると、王太子が何かと突っかかって来て、アイラもイライラしていた。
初めは王太子だからと遠慮していたが、校則で「学園では爵位に関係なく皆平等である」と謳われているのだ。遠慮して、プリシラとの時間を割かれるより、図々しく生きることに決めた。
(不敬だと言われても、校則を持ち出せば良いもの)
実際、先日ジュディアンに「不敬だぞ」と言われ、「王太子殿下は学園の校則をご存じないのですか?」と反撃し、返り討ちにした。とても悔しそうにしていたのが印象的だった。
「殿下とプリシラは婚約者ですし、学園の外でも会えるじゃないですか……私は、ここでしかプリシラを愛で……プリシラとお話出来ないんですよ。少しくらい多目に見てください」
危うく「愛でる」というところだった。
寂しそうな雰囲気を出しながら言えば、王太子は「うっ」と押し黙る。嘘は言ってない。プリシラの可愛さを堪能したいのは事実だ。
「アイラ……そうだわ、今度の休日は一緒に街に行ってみませんか?」
アイラの寂しそうな様子に反応したのは王太子だけではなかった。プリシラが、嬉しい提案をしてくれる。
「え、良いのですか?」
「駄目だ!」
アイラの返事と、王太子の言葉が重なった。
「街になんて行って、俺の可愛いプリシラが拐われたらどうするんだ!」
(分かるけど……「俺の」は余計……)
「ジュディアン様、護衛も一緒ですので大丈夫ですわ」
「護衛が付いていても心配だ……行くなら、俺も一緒に行くからな!」
「そんな……ジュディアン様の手間を取らせるわけにはいきませんわ。それに今度の休日は、宰相様の講義があるのでは?」
「うっ、そうだった……そうだ、王宮に来れば良い!それなら安全だ。プリシラは見慣れているかもしれないが、アイラ・ライトンは見たことがないだろう?」
確かにアイラは王宮の外観しかみたことがないし、王宮内に入る機会はそうないだろう。友達との休日デートの場所をジュディアンに指定されたことは釈然としないが、王宮の内部が気にならないかと言われれば、気になるに決まっている。
そんな流れで、次の休日はプリシラと王宮に行く流れになった。
その後、アイラが一人の時を狙って、ジュディアンが話しかけてきた。
「さっきも言ったが、プリシラと馴れ馴れしくしすぎだぞ」
苦虫を潰したような表情とはこんな感じだろうか。しかし、元が美形なので、そんな表情も様になっているのが腹立たしい。
「男の嫉妬は醜いですよ殿下」
フンッと鼻をならし目を反らすということは、自分でも自覚があるようだ。
アイラは一つ気になっていたことを、ジュディアンに聞いてみることにした。
「プリシラは昔から、あのように可愛らしい天使のような女の子でしたの?」
「ああ、妖精のように可愛らしかったぞ」
間髪入れずに返された。打てばなる鐘のような速さだった。
「そうですか、昔から……」
「なんだ?何か気になることでもあるのか?」
「いえ、幼い頃のプリシラは、さぞかし可愛いの極みでしたでしょうね」
今でも可愛いの化身なのだ。
その後、いかに幼い頃のプリシラが可愛らしく妖精で天使だったのかと、延々とジュディアンが語ってくれた。
(プリシラが可愛くて自慢したくなる気持ちは大いに分かりますが、時々自慢が混じってくるのがウザいですね……)
多少ジュディアンがウザいと思いながらも、今度幼いころの絵姿を見せてくれると約束してくれたので、それでチャラにすることにした。
入学して数日。
アイラは違うクラスに同姓同名、正真正銘の悪役令嬢が居るのではないかと、探してみた。
しかし、プリシラ・グランフィートという生徒は学園内で彼女しかいないという事実が分かっただけだった。
(全く悪役令嬢に見えない)
アイラだけでなく、他の生徒にもにこやかに接する彼女は、どこから見ても悪役に見えるはずがなかった。
(可愛い……天使だわ)
プリシラが居るだけで、その場が清浄な空気になる。
実際、初日は遠巻きにされていたアイラだったが、プリシラと一緒に話をしていると、普通にクラスメイトが話しかけて来るようになった。「プリシラ様と仲がよろしいってことは、悪い子じゃなさそうね」という評価なのだ。
隣の席なので、プリシラとアイラは休憩時間に会話を交わす仲になった。仲が良いと評されて良いのかは、まだ微妙な距離感だが、クラスの中では一番一緒に居る時間が多い。
「アイラさん、ボーッとしてどうしたんですの?」
考え事をするアイラに、プリシラが心配そうに尋ねる。
「いえ、プリシラ様は可愛いなぁって考えていたところですよ」
アイラは自分の感情はダイレクトに伝える性格だったため、思ったままをプリシラに伝えた。
「そんな、可愛いだなんて!アイラさんこそ、とてもキレイな方ですのに……それに様つけはやめて下さい。その……お友だちでしょう?」
透き通る白い頬を薄桃色に染め、プリシラはいう。最後の「お友だちでしょう?」の部分は、少し不安そうな声音なところが、また庇護欲を誘った。
(ほんっと可愛いわ!)
「友達……私と友達になってくれるんですか?嬉しいです!」
友達認定されていたことは、とても嬉しかった。
「じゃあ、私のことはアイラと呼んで下さい。プリシラさん」
「……さん?」
さん付けも気に入らないみたいで、プリシラが首を小さく横に傾ける。
「……プリシラ?」
仮にも公爵令嬢を呼び捨てにしても良いのか迷いながら、名前を呼んでみると「はい」と、とても嬉しそうに応えられた。
あまりの可愛さに、アイラの胸がキュンッと高鳴った。
(何だろうこの気持ち。恋愛感情じゃないんだけど、すごく胸がドキドキする……ずっと愛でていたいこの気持ち……あ、分かった、「推し」に対する感情だわ、これ)
自分の感情の種類を理解し、アイラは納得した。
(推しが隣の席に居る学園生活って、天国じゃないかしら?しかも、友達っていって貰えたし、これからが楽しみだわ)
『推しは推せるときに推せ』が前世で学んだ教訓である。
「おい、俺の婚約者に馴れ馴れしくしすぎだ」
プリシラに友達認定され、嬉しい気持ちに浸っていると、突然背後からイライラとした声に話しかけられた。
「ジュディアン様」
「王太子殿下」
アイラに話しかけてきたのは、王太子ジュディアンだった。そう、小説ではアイラと恋愛関係になる王太子だ。そして、プリシラの婚約者でもある。
「私たちは今、友情を深め合っているところなので、殿下は近づかないで下さい」
入学初日から、プリシラと話をしていると、王太子が何かと突っかかって来て、アイラもイライラしていた。
初めは王太子だからと遠慮していたが、校則で「学園では爵位に関係なく皆平等である」と謳われているのだ。遠慮して、プリシラとの時間を割かれるより、図々しく生きることに決めた。
(不敬だと言われても、校則を持ち出せば良いもの)
実際、先日ジュディアンに「不敬だぞ」と言われ、「王太子殿下は学園の校則をご存じないのですか?」と反撃し、返り討ちにした。とても悔しそうにしていたのが印象的だった。
「殿下とプリシラは婚約者ですし、学園の外でも会えるじゃないですか……私は、ここでしかプリシラを愛で……プリシラとお話出来ないんですよ。少しくらい多目に見てください」
危うく「愛でる」というところだった。
寂しそうな雰囲気を出しながら言えば、王太子は「うっ」と押し黙る。嘘は言ってない。プリシラの可愛さを堪能したいのは事実だ。
「アイラ……そうだわ、今度の休日は一緒に街に行ってみませんか?」
アイラの寂しそうな様子に反応したのは王太子だけではなかった。プリシラが、嬉しい提案をしてくれる。
「え、良いのですか?」
「駄目だ!」
アイラの返事と、王太子の言葉が重なった。
「街になんて行って、俺の可愛いプリシラが拐われたらどうするんだ!」
(分かるけど……「俺の」は余計……)
「ジュディアン様、護衛も一緒ですので大丈夫ですわ」
「護衛が付いていても心配だ……行くなら、俺も一緒に行くからな!」
「そんな……ジュディアン様の手間を取らせるわけにはいきませんわ。それに今度の休日は、宰相様の講義があるのでは?」
「うっ、そうだった……そうだ、王宮に来れば良い!それなら安全だ。プリシラは見慣れているかもしれないが、アイラ・ライトンは見たことがないだろう?」
確かにアイラは王宮の外観しかみたことがないし、王宮内に入る機会はそうないだろう。友達との休日デートの場所をジュディアンに指定されたことは釈然としないが、王宮の内部が気にならないかと言われれば、気になるに決まっている。
そんな流れで、次の休日はプリシラと王宮に行く流れになった。
その後、アイラが一人の時を狙って、ジュディアンが話しかけてきた。
「さっきも言ったが、プリシラと馴れ馴れしくしすぎだぞ」
苦虫を潰したような表情とはこんな感じだろうか。しかし、元が美形なので、そんな表情も様になっているのが腹立たしい。
「男の嫉妬は醜いですよ殿下」
フンッと鼻をならし目を反らすということは、自分でも自覚があるようだ。
アイラは一つ気になっていたことを、ジュディアンに聞いてみることにした。
「プリシラは昔から、あのように可愛らしい天使のような女の子でしたの?」
「ああ、妖精のように可愛らしかったぞ」
間髪入れずに返された。打てばなる鐘のような速さだった。
「そうですか、昔から……」
「なんだ?何か気になることでもあるのか?」
「いえ、幼い頃のプリシラは、さぞかし可愛いの極みでしたでしょうね」
今でも可愛いの化身なのだ。
その後、いかに幼い頃のプリシラが可愛らしく妖精で天使だったのかと、延々とジュディアンが語ってくれた。
(プリシラが可愛くて自慢したくなる気持ちは大いに分かりますが、時々自慢が混じってくるのがウザいですね……)
多少ジュディアンがウザいと思いながらも、今度幼いころの絵姿を見せてくれると約束してくれたので、それでチャラにすることにした。
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