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悪役令嬢がやっぱり可愛い!!
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アイラは気になっていたことがあった。
(「アイラ」の性格が変わったのは、私が前世の記憶を思い出したから……じゃあ、プリシラはの性格が小説と違うのはどうして?)
はじめは、プリシラの性格が小説と全く違うのも、アイラが前世を思い出した影響なのかと思っていた。
しかし、ジュディアンはプリシラのことを「幼い頃から妖精で天使だった」と言っていた。だからか、二人の仲は良好──というより、ジュディアンがプリシラのことを気持ち悪いくらい溺愛している。以前からそうだったことを考えると、アイラが前世を思い出した影響とは考えにくいのだ。
(もしかしてプリシラは……)
アイラは一つの仮説を思い浮かべた。
そして休日。
ジュディアンの提案通り、アイラとプリシラは王宮を訪れていた。
アイラは王宮に着ていくようなドレスを持っていない。
プリシラが自分のドレスを貸すと言ってくれたが、公爵令嬢のドレスなんて絶対に高価に決まっている。もし汚したり破いたりしたら大変だ。「気にしなくて良いですのに」とプリシラは言ってくれたが、着ている間、絶対に落ち着かないだろう。
押し問答していると、ジュディアンが「制服で来れば良い」と助言?してくれたので、ありがたく制服で行くことにしたのだ。
(私に合わせてプリシラも制服にしてくれて……なんて、良い子なの)
休日を王宮で過ごす選択は、結果的に楽しかった。
王宮は一般公開されている場所もあり(といっても、訪れるのは貴族ばかりだが)、博物館や図書館も併設されているため、一日では足りないくらいだった。
王宮で過ごすことを提案したジュディアンには、王宮に着いてすぐに挨拶に行ったが、プリシラが言っていたように忙しそうにしていた。
(王宮を提案してきた時は、プリシラを独占したいためだと思っていたけど、本当に彼女の身を案じて提案したのね。確かに拐われかねないくらい、可愛いもの)
「アイラに見せたいところがあるの」
プリシラにそう案内されたのは、美しい庭園だった。
「王宮に来たときは、いつもここに立ち寄るのよ。とてもキレイでしょう?」
微笑むプリシラは、花の妖精のようだった。
──やはり悪役令嬢には見えない。
「ねえ、プリシラは前世の記憶って信じる?」
ふと気になっていたことが、アイラの口から零れていた。その問いに、プリシラの表情が少し強張る。
プリシラの表情を見て、彼女もアイラと同じ転生者だと確信した。
「ここが小説の世界だって、プリシラはいつ気がついたの?」
それも、アイラよりもずっと昔に前世を思い出している可能性が高い。そう考えると、小説のプリシラと性格が違うことの説明が簡単につくのだ。
しばらくアイラとプリシラは無言で見つめ合っていたが、先に目線を逸らせたのはプリシラだった。
「……ジュディアン様の婚約者に決まった時に気がついたの」
ぽつりと、プリシラは呟くように自分が転生者であることを認めた。
「私が悪役令嬢で、将来ジュディアン様と婚約破棄されてしまうって知って、とても悲しかった。だって私、ジュディアン様の事を好きになってしまっていたから……嫌われたくなかったの」
そう訴えるプリシラは、泣きそうな表情になっていた。
ジュディアンの事が本当に好きで、彼に嫌われないように、婚約破棄されないようにと、プリシラは努力してきたのだ。
「ごめんなさいプリシラ、そんな悲しそうな顔をさせるつもりはなかったの」
プリシラにそんな表情にさせてしまったことに胸が痛み、アイラはプリシラを抱き締めた。
アイラはただ、事実を知りたかっただけなのだ。
「お願いアイラ、ジュディアン様を好きにならないで」
小さく懇願する声は震えていた。
(小説では、プリシラはアイラの恋路を邪魔する悪役として書かれていたけど、角度を変えてみれば、アイラの方が二人の関係を壊す原因なのよね。どちらが悪役なのよって話よ)
「大丈夫よプリシラ。貴女から殿下を奪おうだなんて、これっぽっちも思っていないから」
本当に微塵も思っていない。
ジュディアンの事は、別に嫌いではないが、多少ウザい男だと思っている。恋愛感情は全くない。
「本当に?」
「ええ。それに殿下はプリシラ以外見向きもしないわよ」
ウザいくらいプリシラを溺愛しているのだ。
「それに、話の流れで気がついていると思うけれど、私も転生者なの。記憶を思い出したのはつい最近なのだけど……小説のアイラとは性格がまるで違うでしょう?」
プリシラが小さく頷く。
「だから、小説のように『ジュディアンの心を奪う』こともないし『プリシラが婚約破棄される』こともないわ」
悪役令嬢もヒロインも小説とは性格が違っているのだ。寧ろ真逆になっているといっても良い。この世界は既に『小説と同じ名前の者がいるだけの別の世界』になっているのだ。
「じゃあ、私はジュディアンさまを諦めなくても良いし、アイラともこれからも仲良くできる?」
ウルウルとした瞳でプリシラに問いかけられ、アイラの庇護欲が爆発しそうになる。
(ああ、なんて可愛らしいの!殿下の事だけじゃなくて、私ともこれからも仲良くしたいって思ってくれるのね)
「勿論!!」
返事に思わず力が入ってしまった。
「良かった……」
安堵で表情をフニャッと綻ばせたプリシラは、本物の天使のようだった。
しばらくして、落ち着いたプリシラと一緒に庭園で過ごす。
今、プリシラは「ジュディアンさまに渡すの」と小さな花を集めて花冠を作ろうと集中している。
(可憐な花に囲まれるプリシラ……ここは、天国かしら?)
アイラは花冠を作るプリシラを飽きることなく眺めていた。
足音がしたため顔をあげると、ジュディアンが庭園を訪れていた。宰相の講義が終わり、プリシラの様子を見に来たのだろう。
「「やっぱり、プリシラは可愛い……」」
アイラとジュディアンの声がハモった。
「殿下、私は同担大歓迎ですので」
「『どうたん』?」
前世のオタク用語は、やはりジュディアンには通じなかった。
「可愛らしいプリシラを一緒に愛でるのは大歓迎って意味ですよ」
「俺はプリシラを一人で愛でたい」
「心が狭い……」
ジュディアンは同担拒否側の人間だったかと少し残念に思ったところで「でも」と付け加えられた。
「アイラ・ライトンと一緒に居るプリシラは、とても楽しそうだから……仕方ないから許す」
本当に悔しそうに言うので、アイラは笑ってしまった。
プリシラに言ったとおり、ジュディアンに対して恋愛感情など微塵もないが、『プリシラを愛でる同士』として彼とは仲良くできる気がした。
~fin~
(「アイラ」の性格が変わったのは、私が前世の記憶を思い出したから……じゃあ、プリシラはの性格が小説と違うのはどうして?)
はじめは、プリシラの性格が小説と全く違うのも、アイラが前世を思い出した影響なのかと思っていた。
しかし、ジュディアンはプリシラのことを「幼い頃から妖精で天使だった」と言っていた。だからか、二人の仲は良好──というより、ジュディアンがプリシラのことを気持ち悪いくらい溺愛している。以前からそうだったことを考えると、アイラが前世を思い出した影響とは考えにくいのだ。
(もしかしてプリシラは……)
アイラは一つの仮説を思い浮かべた。
そして休日。
ジュディアンの提案通り、アイラとプリシラは王宮を訪れていた。
アイラは王宮に着ていくようなドレスを持っていない。
プリシラが自分のドレスを貸すと言ってくれたが、公爵令嬢のドレスなんて絶対に高価に決まっている。もし汚したり破いたりしたら大変だ。「気にしなくて良いですのに」とプリシラは言ってくれたが、着ている間、絶対に落ち着かないだろう。
押し問答していると、ジュディアンが「制服で来れば良い」と助言?してくれたので、ありがたく制服で行くことにしたのだ。
(私に合わせてプリシラも制服にしてくれて……なんて、良い子なの)
休日を王宮で過ごす選択は、結果的に楽しかった。
王宮は一般公開されている場所もあり(といっても、訪れるのは貴族ばかりだが)、博物館や図書館も併設されているため、一日では足りないくらいだった。
王宮で過ごすことを提案したジュディアンには、王宮に着いてすぐに挨拶に行ったが、プリシラが言っていたように忙しそうにしていた。
(王宮を提案してきた時は、プリシラを独占したいためだと思っていたけど、本当に彼女の身を案じて提案したのね。確かに拐われかねないくらい、可愛いもの)
「アイラに見せたいところがあるの」
プリシラにそう案内されたのは、美しい庭園だった。
「王宮に来たときは、いつもここに立ち寄るのよ。とてもキレイでしょう?」
微笑むプリシラは、花の妖精のようだった。
──やはり悪役令嬢には見えない。
「ねえ、プリシラは前世の記憶って信じる?」
ふと気になっていたことが、アイラの口から零れていた。その問いに、プリシラの表情が少し強張る。
プリシラの表情を見て、彼女もアイラと同じ転生者だと確信した。
「ここが小説の世界だって、プリシラはいつ気がついたの?」
それも、アイラよりもずっと昔に前世を思い出している可能性が高い。そう考えると、小説のプリシラと性格が違うことの説明が簡単につくのだ。
しばらくアイラとプリシラは無言で見つめ合っていたが、先に目線を逸らせたのはプリシラだった。
「……ジュディアン様の婚約者に決まった時に気がついたの」
ぽつりと、プリシラは呟くように自分が転生者であることを認めた。
「私が悪役令嬢で、将来ジュディアン様と婚約破棄されてしまうって知って、とても悲しかった。だって私、ジュディアン様の事を好きになってしまっていたから……嫌われたくなかったの」
そう訴えるプリシラは、泣きそうな表情になっていた。
ジュディアンの事が本当に好きで、彼に嫌われないように、婚約破棄されないようにと、プリシラは努力してきたのだ。
「ごめんなさいプリシラ、そんな悲しそうな顔をさせるつもりはなかったの」
プリシラにそんな表情にさせてしまったことに胸が痛み、アイラはプリシラを抱き締めた。
アイラはただ、事実を知りたかっただけなのだ。
「お願いアイラ、ジュディアン様を好きにならないで」
小さく懇願する声は震えていた。
(小説では、プリシラはアイラの恋路を邪魔する悪役として書かれていたけど、角度を変えてみれば、アイラの方が二人の関係を壊す原因なのよね。どちらが悪役なのよって話よ)
「大丈夫よプリシラ。貴女から殿下を奪おうだなんて、これっぽっちも思っていないから」
本当に微塵も思っていない。
ジュディアンの事は、別に嫌いではないが、多少ウザい男だと思っている。恋愛感情は全くない。
「本当に?」
「ええ。それに殿下はプリシラ以外見向きもしないわよ」
ウザいくらいプリシラを溺愛しているのだ。
「それに、話の流れで気がついていると思うけれど、私も転生者なの。記憶を思い出したのはつい最近なのだけど……小説のアイラとは性格がまるで違うでしょう?」
プリシラが小さく頷く。
「だから、小説のように『ジュディアンの心を奪う』こともないし『プリシラが婚約破棄される』こともないわ」
悪役令嬢もヒロインも小説とは性格が違っているのだ。寧ろ真逆になっているといっても良い。この世界は既に『小説と同じ名前の者がいるだけの別の世界』になっているのだ。
「じゃあ、私はジュディアンさまを諦めなくても良いし、アイラともこれからも仲良くできる?」
ウルウルとした瞳でプリシラに問いかけられ、アイラの庇護欲が爆発しそうになる。
(ああ、なんて可愛らしいの!殿下の事だけじゃなくて、私ともこれからも仲良くしたいって思ってくれるのね)
「勿論!!」
返事に思わず力が入ってしまった。
「良かった……」
安堵で表情をフニャッと綻ばせたプリシラは、本物の天使のようだった。
しばらくして、落ち着いたプリシラと一緒に庭園で過ごす。
今、プリシラは「ジュディアンさまに渡すの」と小さな花を集めて花冠を作ろうと集中している。
(可憐な花に囲まれるプリシラ……ここは、天国かしら?)
アイラは花冠を作るプリシラを飽きることなく眺めていた。
足音がしたため顔をあげると、ジュディアンが庭園を訪れていた。宰相の講義が終わり、プリシラの様子を見に来たのだろう。
「「やっぱり、プリシラは可愛い……」」
アイラとジュディアンの声がハモった。
「殿下、私は同担大歓迎ですので」
「『どうたん』?」
前世のオタク用語は、やはりジュディアンには通じなかった。
「可愛らしいプリシラを一緒に愛でるのは大歓迎って意味ですよ」
「俺はプリシラを一人で愛でたい」
「心が狭い……」
ジュディアンは同担拒否側の人間だったかと少し残念に思ったところで「でも」と付け加えられた。
「アイラ・ライトンと一緒に居るプリシラは、とても楽しそうだから……仕方ないから許す」
本当に悔しそうに言うので、アイラは笑ってしまった。
プリシラに言ったとおり、ジュディアンに対して恋愛感情など微塵もないが、『プリシラを愛でる同士』として彼とは仲良くできる気がした。
~fin~
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