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子宝に恵まれず、妹の子供を養子としてはや1年。1
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「とーとしゃま、はーはしゃま、おしゃんぽしましょ?」
昼食を終えてサロンにて食休みをしている私達夫婦のもとに、弾むようにぴょこぴょこと歩きながら可愛らしい笑顔で誘いに来るのは、私達の養子となった娘、リリーシェ。
この子はボンナール伯爵家へと嫁いだ妹ユリシアの子で、ある日突然、馬車での事故により両親を亡くしてしまった。
跡継ぎとその妻が亡くなり、ボンナール伯爵家は次男のガンス殿が継ぐこととなったのだが、ガンス殿は兄の娘であるリリーシェを引き取ることを拒否しているらしく、このままではボンナール伯爵家での立ち位置が悪くなりそうということで、前伯爵からの要請により引き取ることになったのだ。
そして、初日に私達の心をかっさらってしまったのがリリーシェ。
時折前伯爵も会いに来るし、父上も母上もちょくちょく会いに来るし、弟家族も毎週会いに来るし、リリーシェの可愛らしさが皆を魅了しているのがよく分かると思う。
そんな齢4つの可愛らしい幼女なのだが...少々変わっている。
「お散歩か...今日はどこまで行くんだい?」
「みなみの、あずまやまで!
みなみのくいきをたんとうするダルフじぃしゃまが、ぎっくりごしになってしまいますの!」
「そっか...それが事実ならば助けないといけないね。」
「はいですの!」
可愛い可愛い私達の娘であるリリーシェは、もしかしたら予言者なのかもしれない。
この家に来てからというもの、突然こうした予言染みたことばかり言ってはそれらが実際に起きているという不思議。
こちらとしては早めの対処が出来て助かるんだけども...まぁ、悪いことは何もしていないし、むしろ人を助けてばかりなのだし、リリーシェは本当に良い子なのだが、でも、だからこそ、可愛い娘が王宮に連れ拐われるのではと心配になるのは仕方ない筈。
まだ4歳と幼くとも予言のことが知られてしまえば、知った権力者達が早い内に予言者である幼子を囲うのは必然だろう。
こんなにも素直で可愛らしい娘を利用されるなんて、誰しも嫌に決まっている。
リリーシェの輝かしい未来のためにも、このことは隠し通さなければならないだろう...いっそ、学園に入る年齢になるまで病弱ということにして領地に籠るか?
「リリーちゃん、少し待っていてくれる?
ダルフじぃがぎっくり腰になってしまうのなら、男手も必要だし担架も持ってこさせなくちゃいけないわ。
シルヴァ、手配してくれる?」
「かしこまりました。
手配が終わり次第直ぐに向かわせますので、旦那様も奥様もリリーお嬢様も、お先に行かれて構いませんよ。」
「そうね、ダルフじぃは今も苦しんでいるかもしれませんものね...リリーちゃん、旦那様、手配はシルヴァに任せて早く行きましょう。」
「あぁ、そうしよう。」
「はーい!」
身重の妻を気遣って、手を差し出してエスコートするリリーシェ...君は娘なのだから、その作法は違うんだが?
まぁ、小さな紳士っぽくて可愛らしい......まさかとは思うが、私の真似かな?
もしもそうならばかなり嬉しいし微笑ましいが、マナーの教師をちゃんと選抜しなくてはならないな。
まだ幼いが、貴族の子供はあと1年もすれば教育が始まる。
口の堅い、ときに優しく、ときに厳しく、ご指導くださるご夫人を探さなくては!
「旦那様?行かないのですか?」
「あ...あぁ、今行くよ。」
「とーとしゃま、はやくぅー!」
少し進んだところで立ち止まり、こちらを振り返っている2人。
私の妹の子だからか髪も瞳も私と同じなのだけれども、ふとしたときにする仕草も浮かべる表情も、妻に似ているんだよなぁー。
共に過ごしたのはまだ2週間だが、私も妻も特に隠さずに愛情を注いだ自負がある。
だから、妻に似てきたのかもしれないな。
リリーシェを抱き上げ、ふっくりとしたまろい頬にキスをしてから降ろして手を繋ぎ、妻の頬にもキスをして妻の腰を支えながら南の東屋へと向かう。
楽しそうにキャアキャア笑うリリーシェに癒されつつ、アグゥッという呻き声になんだかさわさわと気持ちが急く。
「ダルフじぃしゃま!」
「ダルフじぃ、大丈夫かしら?」
「おぉーぅ、お嬢様、奥様、旦那様も...どうなされましたかな?」
痛そうに呻いてもいるが冷や汗もタラタラと流れてもいることだし、そんなに我慢しなくとも良いのに...それに、我が家の誰もダルフのことを叱ったりなどしないよ。
「ダルフ、痩せ我慢はよくないよ。
取り敢えず、この椅子に座れるかい?
医師を手配しているから、安心してくれ。」
「申し訳ありません...お手を煩わせてしまいました。」
「このくらいなら、構わないよ。
私達は君が大好きだし、庭師としても信頼してるんだから。
そもそも、君がいてくれないと、我が家の庭は無法地帯と化してしまうだろうからね。」
「ウグッ、そう言っていただけるとは、この爺史上最大の幸いですな。」
「ダルフじぃしゃま、ちゃんと、りょうようしなけりぇばなりましぇんのよ?
おいししゃまのいうことを、よーくきくんでしゅのよ?」
「はい、お嬢様、医師の忠言をちゃんとお聞きしますし、ちゃんと療養いたしますよ。
ですからどうか、安心なされませ。」
ようやっと座れたダルフの膝を撫でながら、リリーシェが言い聞かせるように語りかけながらも唇を尖らせている。
あぁ、可愛いなぁ...なんとも、孫と祖父の会話のようで和む。
*
昼食を終えてサロンにて食休みをしている私達夫婦のもとに、弾むようにぴょこぴょこと歩きながら可愛らしい笑顔で誘いに来るのは、私達の養子となった娘、リリーシェ。
この子はボンナール伯爵家へと嫁いだ妹ユリシアの子で、ある日突然、馬車での事故により両親を亡くしてしまった。
跡継ぎとその妻が亡くなり、ボンナール伯爵家は次男のガンス殿が継ぐこととなったのだが、ガンス殿は兄の娘であるリリーシェを引き取ることを拒否しているらしく、このままではボンナール伯爵家での立ち位置が悪くなりそうということで、前伯爵からの要請により引き取ることになったのだ。
そして、初日に私達の心をかっさらってしまったのがリリーシェ。
時折前伯爵も会いに来るし、父上も母上もちょくちょく会いに来るし、弟家族も毎週会いに来るし、リリーシェの可愛らしさが皆を魅了しているのがよく分かると思う。
そんな齢4つの可愛らしい幼女なのだが...少々変わっている。
「お散歩か...今日はどこまで行くんだい?」
「みなみの、あずまやまで!
みなみのくいきをたんとうするダルフじぃしゃまが、ぎっくりごしになってしまいますの!」
「そっか...それが事実ならば助けないといけないね。」
「はいですの!」
可愛い可愛い私達の娘であるリリーシェは、もしかしたら予言者なのかもしれない。
この家に来てからというもの、突然こうした予言染みたことばかり言ってはそれらが実際に起きているという不思議。
こちらとしては早めの対処が出来て助かるんだけども...まぁ、悪いことは何もしていないし、むしろ人を助けてばかりなのだし、リリーシェは本当に良い子なのだが、でも、だからこそ、可愛い娘が王宮に連れ拐われるのではと心配になるのは仕方ない筈。
まだ4歳と幼くとも予言のことが知られてしまえば、知った権力者達が早い内に予言者である幼子を囲うのは必然だろう。
こんなにも素直で可愛らしい娘を利用されるなんて、誰しも嫌に決まっている。
リリーシェの輝かしい未来のためにも、このことは隠し通さなければならないだろう...いっそ、学園に入る年齢になるまで病弱ということにして領地に籠るか?
「リリーちゃん、少し待っていてくれる?
ダルフじぃがぎっくり腰になってしまうのなら、男手も必要だし担架も持ってこさせなくちゃいけないわ。
シルヴァ、手配してくれる?」
「かしこまりました。
手配が終わり次第直ぐに向かわせますので、旦那様も奥様もリリーお嬢様も、お先に行かれて構いませんよ。」
「そうね、ダルフじぃは今も苦しんでいるかもしれませんものね...リリーちゃん、旦那様、手配はシルヴァに任せて早く行きましょう。」
「あぁ、そうしよう。」
「はーい!」
身重の妻を気遣って、手を差し出してエスコートするリリーシェ...君は娘なのだから、その作法は違うんだが?
まぁ、小さな紳士っぽくて可愛らしい......まさかとは思うが、私の真似かな?
もしもそうならばかなり嬉しいし微笑ましいが、マナーの教師をちゃんと選抜しなくてはならないな。
まだ幼いが、貴族の子供はあと1年もすれば教育が始まる。
口の堅い、ときに優しく、ときに厳しく、ご指導くださるご夫人を探さなくては!
「旦那様?行かないのですか?」
「あ...あぁ、今行くよ。」
「とーとしゃま、はやくぅー!」
少し進んだところで立ち止まり、こちらを振り返っている2人。
私の妹の子だからか髪も瞳も私と同じなのだけれども、ふとしたときにする仕草も浮かべる表情も、妻に似ているんだよなぁー。
共に過ごしたのはまだ2週間だが、私も妻も特に隠さずに愛情を注いだ自負がある。
だから、妻に似てきたのかもしれないな。
リリーシェを抱き上げ、ふっくりとしたまろい頬にキスをしてから降ろして手を繋ぎ、妻の頬にもキスをして妻の腰を支えながら南の東屋へと向かう。
楽しそうにキャアキャア笑うリリーシェに癒されつつ、アグゥッという呻き声になんだかさわさわと気持ちが急く。
「ダルフじぃしゃま!」
「ダルフじぃ、大丈夫かしら?」
「おぉーぅ、お嬢様、奥様、旦那様も...どうなされましたかな?」
痛そうに呻いてもいるが冷や汗もタラタラと流れてもいることだし、そんなに我慢しなくとも良いのに...それに、我が家の誰もダルフのことを叱ったりなどしないよ。
「ダルフ、痩せ我慢はよくないよ。
取り敢えず、この椅子に座れるかい?
医師を手配しているから、安心してくれ。」
「申し訳ありません...お手を煩わせてしまいました。」
「このくらいなら、構わないよ。
私達は君が大好きだし、庭師としても信頼してるんだから。
そもそも、君がいてくれないと、我が家の庭は無法地帯と化してしまうだろうからね。」
「ウグッ、そう言っていただけるとは、この爺史上最大の幸いですな。」
「ダルフじぃしゃま、ちゃんと、りょうようしなけりぇばなりましぇんのよ?
おいししゃまのいうことを、よーくきくんでしゅのよ?」
「はい、お嬢様、医師の忠言をちゃんとお聞きしますし、ちゃんと療養いたしますよ。
ですからどうか、安心なされませ。」
ようやっと座れたダルフの膝を撫でながら、リリーシェが言い聞かせるように語りかけながらも唇を尖らせている。
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