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1、メアリという悪女
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第一王女、メアリ・ブラントには役割があった。
「……失礼いたします」
一言を告げて、メアリは王宮の執務室に足を踏み入れる。
すると、奥の執務机で動きがあった。
机に向き合っていた壮年の男性が、メアリに笑みを向けてくる。
「おぉ、メアリか。たびたびすまんな」
彼は父だった。
デグ・ブラント。
この王宮の主でもあれば、ブラント王国の主でもある。
メアリは頭を下げることで国王への礼儀を示し……同時に、深く息を吐くことで呼吸を整える。
(今日も……ですよね)
彼からの自分への用事などは決まっていた。
そうで無ければ良いと願いつつも、メアリは諦めと共に父に尋ねかける。
「本日はどのようなご用件でしょうか?」
「いつもの通りだ。どうにも、街道の橋の修繕について決裁を願う書類があったようでなぁ」
もはやこれで全てが理解出来たのだった。
「……無くされましたか?」
「ははは。それが嫌なら金粉でもまぶして目立たせておけという話だろうにな? まぁ、そういうことだ。それで地元の土民どもに商人どもまでが騒いでいるが……いつも通りにだ。頼んだぞ」
メアリは再び頭を下げるのだった。
「……はい。承知しました」
「うむ。それで良い」
部屋を退出すれば、メアリはいつも通りに城下へと向かう。
城下の散策が趣味。
世間ではそういうことになっているメアリだが、実際に城下へ向かう目的は違った。
10人ばかりの侍女、侍従たちを引き連れて進む。
王宮を囲む深い水堀。
そこにある石橋を渡ればすぐだった。
目的の光景が目に入ってくる。
衛兵たちに押し留められている人々の群れ。
誰もが血走った目つきをしているが、彼らこそがメアリの目的だった。
そして、彼らにしても目的はメアリだった。
怒声が爆発する。
「あ、あの話は!? あの話は本当なのですかっ!?」
「橋の修繕を妨害していたというのはっ!?」
似たような怒声が続く中で、メアリはこれまたいつも通りだ。
いつも通りに笑みを作って見せる。
「……そうよ? 何か文句でもある?」
すると、途端にだった。
疑惑の怒声は、罵声の物へと変わった。
「あ、悪女めっ!! また何ということをっ!!」
「国民を苦しめて何が楽しいのだっ!! 悪女がっ!! 恥を知れっ!!」
悪女。悪女。悪女。
そのそしりの嵐の中でメアリは笑みを浮かべ続ける。
見下す笑みに見えるようにと、胸中の震えを隠して振る舞い続ける。
これが役割だった。
王家における、メアリ・ブラントの役割だった。
「……失礼いたします」
一言を告げて、メアリは王宮の執務室に足を踏み入れる。
すると、奥の執務机で動きがあった。
机に向き合っていた壮年の男性が、メアリに笑みを向けてくる。
「おぉ、メアリか。たびたびすまんな」
彼は父だった。
デグ・ブラント。
この王宮の主でもあれば、ブラント王国の主でもある。
メアリは頭を下げることで国王への礼儀を示し……同時に、深く息を吐くことで呼吸を整える。
(今日も……ですよね)
彼からの自分への用事などは決まっていた。
そうで無ければ良いと願いつつも、メアリは諦めと共に父に尋ねかける。
「本日はどのようなご用件でしょうか?」
「いつもの通りだ。どうにも、街道の橋の修繕について決裁を願う書類があったようでなぁ」
もはやこれで全てが理解出来たのだった。
「……無くされましたか?」
「ははは。それが嫌なら金粉でもまぶして目立たせておけという話だろうにな? まぁ、そういうことだ。それで地元の土民どもに商人どもまでが騒いでいるが……いつも通りにだ。頼んだぞ」
メアリは再び頭を下げるのだった。
「……はい。承知しました」
「うむ。それで良い」
部屋を退出すれば、メアリはいつも通りに城下へと向かう。
城下の散策が趣味。
世間ではそういうことになっているメアリだが、実際に城下へ向かう目的は違った。
10人ばかりの侍女、侍従たちを引き連れて進む。
王宮を囲む深い水堀。
そこにある石橋を渡ればすぐだった。
目的の光景が目に入ってくる。
衛兵たちに押し留められている人々の群れ。
誰もが血走った目つきをしているが、彼らこそがメアリの目的だった。
そして、彼らにしても目的はメアリだった。
怒声が爆発する。
「あ、あの話は!? あの話は本当なのですかっ!?」
「橋の修繕を妨害していたというのはっ!?」
似たような怒声が続く中で、メアリはこれまたいつも通りだ。
いつも通りに笑みを作って見せる。
「……そうよ? 何か文句でもある?」
すると、途端にだった。
疑惑の怒声は、罵声の物へと変わった。
「あ、悪女めっ!! また何ということをっ!!」
「国民を苦しめて何が楽しいのだっ!! 悪女がっ!! 恥を知れっ!!」
悪女。悪女。悪女。
そのそしりの嵐の中でメアリは笑みを浮かべ続ける。
見下す笑みに見えるようにと、胸中の震えを隠して振る舞い続ける。
これが役割だった。
王家における、メアリ・ブラントの役割だった。
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