運命の番マッチングシステムで出会ったのは、蒼い眼の英語講師でした

こたま

文字の大きさ
2 / 7

2

しおりを挟む
「今度回ってくるネイティブの英語講師ってすごいイケメンらしいよ」
「何で知ってるの?」
「ほかの学校の友達に聞いた。曜日毎にいろんな学校を回るから、もう先に行っている学校では女子が大騒ぎになったんだって」
「へえ」
「うちの学校でも女子達が色めき立ってるみたい。アメリカの大学生で日米ハーフらしいよ」
「ふうん」
「何?あんまり興味無い?」
「うん。ごめん。それよりはマッチングの事が頭を占めてるかな?」
「ああ。悠希君は18の誕生日がもうすぐだもんね。確かにイケメンが皆アルファとは限らないしなぁ」
「みのり君は12月だからまだだよね」
「うん。登録するつもりだけど、すぐに相手が見つかるかはわかんないから都会の大学に行っておこうかなと思ってるんだ」
「僕も同じ。相性の良い相手がいつ見つかるか、見つかってもすぐに番うかもわかんないよね。結婚出来なくても独りで生きて行けるように、オメガの学生寮に住んで通える大学を受験するつもり」

 悠希の通う私立高校では国の助成金でアルファクラスとオメガクラスを整備している。
 昔は一学年300人のうち2割近いアルファが在籍したこともあったが現在はアルファ30人、オメガ20人だ。

 オメガクラスの中で男子は悠希とみのりの二人だけ。オメガの女生徒の中にはアルファの同級生とお付き合いしていたり幼少から家の決めた婚約者のいるものがある。
 そのほかは皆マッチングに登録する予定を立て、既に登録した生徒もいた。方法は簡便で、本人と保護者のサイン入り申請書と頬の内側の粘膜を専用の綿棒で擦り取った検体を郵送するのみである。

「もう高三なんて、早いよね」
「うん。受験に向けて勉強しないとね」

 そんな話をしていた。4月末の誕生日に悠希は予定通り両親のサインと自分の署名、遺伝子採取した検体を郵送して小さな達成感を得た。

 その後のゴールデンウィークに悠希は発情期が当たり、学校を休まないで済んで良かったなと考えていた。

 5月の連休明け、発情期もあけたばかりの平日、オメガクラスの担任が告げた。

「来週から毎週金曜日にアメリカ人のネイティブ英語講師が登校に来校して講義をします。彼はアルファだそうです。彼も服用していますが皆も必ず抑制剤を飲んでくるように、注意してください」

「「「はい」」」

 休み時間は英語講師の噂でもちきりになった。

「アルファだって。アメリカ人のアルファ。格好良いらしいね」
「イケメン楽しみだね」
「大学生で一年間だけ日本にいるって」
「日米ハーフなんだって」
「そうなの?」
「ほかの学校の友達が言ってた」

 悠希はあまり興味は無かった。マッチングに登録した結果のお見合い相手がいつ紹介されるかのほうが喫緊の課題だったからだ。
 オメガの女子生徒達とみのりの会話をふうん、へえ、と何となく聞いていただけだった。

 抑制剤は毎日しっかり飲んでいる。また発情期が終わったばかりだ。自分にはあまり関係ない話題として認識していた。

 そして翌週。くだんの英語講師は1限から一年の英語講義を回り始めた。悠希のいる三年生のオメガクラスに現れるのは、まだ二週間先である。
 しかし彼の見目麗しさは悠希のクラスにも噂が届いており、学校中の皆からアイドル並みの人気になっていた。

「英語の先生がお昼に学食を使ったら大騒ぎになってたんだって」
「ふうん」
「皆、先生と話したがったり近くに座ろうとして。教頭先生が来て散れって怒鳴っていたらしいよ」
「そうなんだ、人気者だね」
「悠希君、僕達も見に行かない?」
「僕はいいや。みのり君、行きたいなら他の皆と行って来なよ」
「うん。わかった。ちょっと見てくるね」

 昼休みになるとオメガクラスの女子数人とみのりも学食に教師を見に行った。

「ただいま」
「おかえり、早かったね。ご飯は食べられたの?」
「ううん。混んでたからパン買って、その先生見てきた」
「そっか。早く食べちゃいな」
「うん」

 みのりは弁当を食べる悠希の前でもそもそとパンを咀嚼した。ほかの女子生徒も学食では食べられなかったのか、何か買ってきたり、弁当箱を出して教室で食べ始めた。

 パンと飲み物を急いでかきこむと

「格好良かったよ。アメリカ映画に出る俳優とか雑誌モデルみたいだった。暗めの金髪で蒼い眼だった」
「そう。見られて良かったね。先生は珍獣みたいに皆が見にきて気分を害されて無かった?」
「皆がチラチラみたり、学食の外からも見てるのには苦笑してる感じだった」
「そう。もうすぐ講義で来るし、ゆっくり食事してもらえるように静かにしておいてあげたいね」
「うん。ちょっと反省したよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

断られるのが確定してるのに、ずっと好きだった相手と見合いすることになったΩの話。

叶崎みお
BL
ΩらしくないΩは、Ωが苦手なハイスペックαに恋をした。初めて恋をした相手と見合いをすることになり浮かれるΩだったが、αは見合いを断りたい様子で──。 オメガバース設定の話ですが、作中ではヒートしてません。両片想いのハピエンです。 他サイト様にも投稿しております。

政略結婚のはずが恋して拗れて離縁を申し出る話

BL
聞いたことのない侯爵家から釣書が届いた。僕のことを求めてくれるなら政略結婚でもいいかな。そう考えた伯爵家四男のフィリベルトは『お受けします』と父へ答える。 ところがなかなか侯爵閣下とお会いすることができない。婚姻式の準備は着々と進み、数カ月後ようやく対面してみれば金髪碧眼の美丈夫。徐々に二人の距離は近づいて…いたはずなのに。『え、僕ってばやっぱり政略結婚の代用品!?』政略結婚でもいいと思っていたがいつの間にか恋してしまいやっぱり無理だから離縁しよ!とするフィリベルトの話。

【完結】好きな人の待ち受け画像は僕ではありませんでした

鳥居之イチ
BL
———————————————————— 受:久遠 酵汰《くおん こうた》 攻:金城 桜花《かねしろ おうか》 ———————————————————— あることがきっかけで好きな人である金城の待ち受け画像を見てしまった久遠。 その待ち受け画像は久遠ではなく、クラスの別の男子でした。 上北学園高等学校では、今SNSを中心に広がっているお呪いがある。 それは消しゴムに好きな人の前を書いて、使い切ると両想いになれるというお呪いの現代版。 お呪いのルールはたったの二つ。  ■待ち受けを好きな人の写真にして3ヶ月間好きな人にそのことをバレてはいけないこと。  ■待ち受けにする写真は自分しか持っていない写真であること。 つまりそれは、金城は久遠ではなく、そのクラスの別の男子のことが好きであることを意味していた。 久遠は落ち込むも、金城のためにできることを考えた結果、 金城が金城の待ち受けと付き合えるように、協力を持ちかけることになるが… ———————————————————— この作品は他サイトでも投稿しております。

昨日まで塩対応だった侯爵令息様が泣きながら求婚してくる

遠間千早
BL
憧れていたけど塩対応だった侯爵令息様が、ある日突然屋敷の玄関を破壊して押し入ってきた。 「愛してる。許してくれ」と言われて呆気にとられるものの、話を聞くと彼は最悪な未来から時を巻き戻ってきたと言う。 未来で受を失ってしまった侯爵令息様(アルファ)×ずっと塩対応されていたのに突然求婚されてぽかんとする貧乏子爵の令息(オメガ) 自分のメンタルを救済するために書いた、短い話です。 ムーンライトで突発的に出した話ですが、こちらまだだったので上げておきます。 少し長いので、分割して更新します。受け視点→攻め視点になります。

平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法

あと
BL
「よし!別れよう!」 元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子 昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。 攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。    ……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。 pixivでも投稿しています。 攻め:九條隼人 受け:田辺光希 友人:石川優希 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 また、内容もサイレント修正する時もあります。 定期的にタグ整理します。ご了承ください。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

王子と俺は国民公認のカップルらしい。

べす
BL
レダ大好きでちょっと?執着の強めの王子ロギルダと、それに抗う騎士レダが結ばれるまでのお話。

俺は完璧な君の唯一の欠点

一寸光陰
BL
進藤海斗は完璧だ。端正な顔立ち、優秀な頭脳、抜群の運動神経。皆から好かれ、敬わられている彼は性格も真っ直ぐだ。 そんな彼にも、唯一の欠点がある。 それは、平凡な俺に依存している事。 平凡な受けがスパダリ攻めに囲われて逃げられなくなっちゃうお話です。

オメガに転化したアルファ騎士は王の寵愛に戸惑う

hina
BL
国王を護るαの護衛騎士ルカは最近続く体調不良に悩まされていた。 それはビッチングによるものだった。 幼い頃から共に育ってきたαの国王イゼフといつからか身体の関係を持っていたが、それが原因とは思ってもみなかった。 国王から寵愛され戸惑うルカの行方は。 ※不定期更新になります。

処理中です...