転生した新人獣医師オメガは獣人国王に愛される

こたま

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「おはよう。食事にいこう」
「うん。おはよう」

 毎朝起床して準備をするとアルが迎えに来て手を繋ぐ。たまには抱っこして僕を運びたがる。手を繋ぐときには手の甲にキスをしたり、僕を抱きしめたり、頭に唇をつけたり、薫りを確認したり。
 結婚式をしてから、ますます僕と密にスキンシップを取っている。夜にも、部屋を訪れて話をしたり、キスをしたり。もふもふさせてくれたりもする。
 僕もアルとくっつくと安心感があり、薫りに酔いそうになることもあって、好きだなあと思う瞬間が増えている。

「「頂きます」」

 すっかり僕の習慣にあわせて、両手を合わせ頂きますの声を出してくれる。パンも御飯も僕好みで出してくれ、アルもそれを気に入った様子だ。

「今日は、ハルは部屋にいた方が良い」
「どうして?」
「薫りが強くなっている。発情期が近いんだろう」
「そうなの?初めてで良くわからないけど…」
「おそらく近い。元気なうちに栄養を蓄えておいて欲しい。料理長、ハルが食べられそうなら多めに」
「かしこまりました」

 いつもより少し多めに頂いて、部屋に戻った。本を読んでいるとだんだん熱っぽい感じで頭がぼーっとしてきた。
 水を飲んで、ソファーに横たわって休んでいたが、一向に楽になる兆しはなく、むしろ熱がこもってより悪化している感じがする。咳や関節痛のないインフルエンザみたいだな。と思った。

「リノさん。体調が悪いから、寝巻きに着替えて横にならせてもらいますね」
「大丈夫ですか?何かお持ち致しましょうか?」
「後でお茶を置いてくださいますか?」
「かしこまりました。殿下にもご報告申し上げます」
「うん。お願いします」

 新しい寝巻きを出してくれるのでそれを着てベッドに潜り込んだ。風邪を引いたのか、発情期の始まりか。…経験が無いと判断つかないな。


 しばらくうとうとして眠っていたのか。気付くと汗が出てより熱くぼーっと頭が霞みがかるようだ。
 枕元に冷めたお茶が入っているポットとカップがあったので少し飲んだ。

「リノさん。もう一度着替えて良いですか?」

 隣室に控えていたリノさんがやって来てくれて、新しい寝巻きを出してくれた。

「洗濯物が増えてすみません」
「何をおっしゃいますか。いくらでもお持ちします。先程陛下が見えられまして、後程またお越しになると仰せでした」
「そうですか。アルに悪いな」
「宜しいんですよ。発情期に入られたのだろうと珍しく微笑んでおいででした。とてもお喜びになっているんです」
「そう…これが発情期なんだね」

 ふらふらと着替えてまた横になる。喉が乾いて入れ直してくれたお茶を飲む。確かに無性にアルが恋しく、徐々に欲が増してくる感じがした。


「ハルト。ハル。…どうだ?体調は?」
「アル。これが発情期か。熱くてぼーっとして苦しい」
「そうか。苦しませてすまない。ハル。選んで欲しい。私と過ごすか一人になりたいか。私と過ごせば発散は出来ようが、私はきっと貴方を噛んで番ってしまうことだろう。そして、孕ませたいという欲望に勝てなくなると思う。しかし一人だとおそらく苦しい時間を過ごすことになる。リノには、水分やフルーツを運んで貰ったりリネンの交換は頼むが…どうしたい?」
「うん…そうだね。取り敢えず一人でどんなものか様子をみたい。苦しくなったら、アルを呼んで貰っても良い?」
「ああ。何時でも。直ぐに飛んでこよう」
「うん。よろしくね」

 アルを遠ざけて置いて、呼んでしまう事になるのは申しわけないが。初めての事だから、一人で過ごせるものか経験してみたい。

 リノさんが枕元に水を置いて、またしばらくするとアルの寝巻きとシーツを抱えて来た。

「発情期には番のフェロモンを欲すると言います。わたくしは解りませんが、そのように聞きましたのでお持ち致しました。隣室におりますので何かございましたらお声がけください」

 ベッドの中に引っ張り混んだシーツと寝巻きを抱えて、自分で欲をおさめるべく前を擦って出した。
 普段はあまり頻繁にしなくても気にならないのに、一度出してもまだ収まらない。アルの薫りを嗅ぐともっと近くにいて欲しい。どうして居ないの?と自分で断っておきながら勝手な思いに侵略される。
 前を触ってもどうにも足りない。後ろにも欲しいし、中を満たして溢れさせて欲しい。初めての感覚にどうしたら良いか訳が解らなくなる。
 すごいな。発情ってこんなに現実的に渇望に駆られるのか。ああ。もっと濃い薫りを、濃厚な接触を。僕の本能が暴走している。

 もうダメだ。我慢できない。なんてあっけない…

「リノさん、リノさん…」
「はい。お呼びですか?」
「アルを…呼んで…」
「承知しました」
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