ヤンデレ伯爵様から逃げられない〜狂愛系TL小説の世界で殺されるだけの悪役令嬢に転生?死亡フラグを回避します!

ムギ・オブ・アレキサンドリア

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ヤンデレ伯爵様VSドSアウトロー牧師!?

第4話(挿絵有)

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 今日は私の護衛という名の監視をしている元女騎士のアンナが娘を連れて伯爵邸にやって来た。
 いつもは実家の母親に預けてから伯爵邸に来ているそうだが、今日は母親が風邪を引いていて預けることができず一緒に連れて来たそうだ。

「申し訳ございません、奥様……」

「気にしないで。むしろ毎日ここに連れて来てもいいのに~!わぁ~アンナにそっくりね!」

 もうすぐ2歳らしい。愛嬌のある可愛らしい女の子で、ずっとニコニコしてて人見知りもしない。

「名前はなんていうの?」

「ミラよ」

「ミラちゃん~」

 やっぱり子供は可愛い。
 ついつい顔が緩んでしまう。

「やあ、ママに似ず可愛い子だね」

 書斎に籠ってたはずの伯爵様が居間にやって来た。
 朗らかな表情で接しているのに、ミラは伯爵様が気に入らない様子でむすっとした顔をした。
 それには伯爵様も困ってる。

「私に似てオスワルドが嫌いなんだよ、なあ」

 アンナは鼻で笑うとミラを優しく抱きしめた。
 私は苦笑するしかなかった。

 しかし伯爵様は依然優しい顔をしてミラを見つめていた。

「僕達もそろそろ子供が欲しいね?」

「そうね……」

 そういえば、伯爵様と子供の話をするなんて初めてかもしれない。

「僕ね、あんまり父や母、実家に良い思い出がないんだ。この屋敷にいるのも苦痛で、逃げるように家を出て騎士団に入ったり……。だから、自分が結婚して親になって子供がいるイメージがイマイチ湧かなかったんだけどーーディアとなら、幸せな家族が作れそうだ」

「そうねーー私もそう思うわ」

 突然振り向かれて無邪気に笑い掛けられて思わずドキドキした。
 伯爵様は伝え聞く話では、かなり複雑な家庭環境の中 幼少期を過ごしていたようだ。
 その過程で色々と性格が歪んでしまったのかもしれないが、性根はピュアな人なんだと私は思う。

 私たちの幸せな未来のために、絶対に運命に抗ってみせる!
 私は強く決心した。


「この捻くれ者のオスワルドがそんな事をいうようになるとは感慨深いな。奥様の影響かな」

 アンナはフッと笑った。
 私は照れて困ったように笑い返した。

 *

 伯爵邸の使用人は最低限数しかいない。
 伯爵様は自宅に他人を不用意に入れたくないタイプのようで、屋敷の管理は妻である私が行っていた。

 今日はアンナと彼女の娘ミラ、飼い犬のバイオレットを連れて街の植木屋さんを訪れていた。

 居間が南向きで、日中は日差しが強いので庭に木でも植えようかと考えていたのだ。
 植木屋さんには鉢植えの観葉植物や花、植物の苗が売られていた。

「おや、アンナさん」

 店内にいた老紳士がアンナに声を掛けた。

「ああ、ヘレン男爵。奇遇ですね」

「ミラも大きくなったなあ、今日はどうしたんだい?そちらの綺麗なお嬢さんは?」

「オスワルド伯爵夫人のクローディア様ですよ」

「え?」

 ヘレン男爵という老紳士は酷く驚いていた。
 私は首を傾げた。

「オスワルド伯爵の奥様ですか?……最近 城の晩餐会で会った時に伯爵自身から紹介してもらった奥様は金髪碧眼の小柄なレディーでしたが……?アッ……(察し)」

「え!?」

「いえいえ、多分私の見当違いでございましょう!奥様、どうかお気になさらず!女遊びも男の嗜みでございますよ!どうか奥様、少しくらいは広いお心でお受け止めに~」

「なんですって!?」

 老紳士は伯爵様が不倫してる前提で話を進めちゃってる、私は思わず鬼の形相で声を凄めてしまった。
 すぐに冷静になってお淑やかに愛想笑いをしたが、老紳士は顔を真っ青にしてアワアワと狼狽えながら退散してしまった。

「奥様……」

 アンナは私の顔を伺う。
 私はニッコリと笑った。

「わかってる。オスワルド様が不倫とかあり得ないわよ」

 毎晩のように飽きずに私の身体を求めてくるし、1日朝昼晩1回はキザな愛の言葉を述べるのがノルマみたいなマメな男。出不精な伯爵様は仕事以外ではほとんど屋敷に篭ってて、四六時中一緒にいるから、不倫は無いと思う。

 お城の晩餐会ーーやっぱり夫婦での出席が必須なんだろう。
 結婚したばかりなのに妻不在って社交界でどんな噂が立つか……、だから誰かを雇って同伴してもらったの?
 私が貴族出身じゃないから?マナーや教養がなくて恥ずかしいとか?

 モヤモヤしながら植木屋を出ると、目の前を貴族の馬車が横切った。
 中に乗っていたのは伯爵様とーーその隣には金髪の女性……。

「ーーオスワルド様!」

 噂をすればなんとやら。
 今日は知人と食事会があるって朝早くに出掛けていたはず。

(まさか……本当に不倫とか?)

 私はモヤモヤが吹っ飛んで、頭に血が昇ってしまった。
 顔を真っ赤にさせながら馬車を追うことにした。

「奥様!」

 アンナが叫ぶ声が聞こえるが、私は振り返らず一直線に馬車が過ぎ去った方向へ走った。
 バイオレットは私に並走している。

 二台の馬車は高級レストランの前に停まっていた。
 伯爵邸の馬車じゃない。前方の馬車からは知らない貴族の青年が、中年男性と共に降りてきた。
 後方の馬車からは伯爵様と、淡いブルーの華やかなワンピースを着た金髪の女性。

 伯爵様は彼女を慣れた手付きでかっこよくエスコートしていた。
 馬車を降りた女性は伯爵様の腕を取り、ぴったりと彼の隣に寄り添った。
 伯爵様はとてもリラックスしたような顔でニッコリと彼女に微笑みかけている。

 その親密さと言ったら……。

「オスワルド様っ」

 私が伯爵様に向かって名前を叫ぶと、そこにいた人達が全員私を見た。
 見知らぬ貴族らはキョトンとしている。



(思わず声を掛けちゃったけど……)

「ディア?」

 伯爵様もビックリしてる。
 私がここにいるなんて思いもしなかったようだ。
 あの金髪の女性は慌てた様子で伯爵様の背中に身を隠した。

「オスワルド伯爵……そちらの方は?」

 見知らぬ貴族の青年は私を指し、不思議そうな顔で尋ねる。
 伯爵様はヘラっと困ったように笑いながら答えた。

「ーー妹ですよ」

「へえ、オスワルド伯爵、妹さんがいたんですか~」

 伯爵様は呆然と立っていた私の肩を抱き寄せて笑った。

(は……っ、ハァァ!?私が伯爵様の妹!?)

 叫んだつもりだったが、呆気にとられて声が出ない。

 先にレストランへ入っていった貴族らや金髪の女性、私と伯爵様だけがその場に取り残されていた。

「で、ディア……」

「一体どういうつもりなの!?どうして私がオスワルド様の妹なのよ?それにあの女性は誰!?」

 マシンガンのように怒鳴りながら問い詰めた。
 伯爵様は後退り、苦笑していた。

「まさか浮気でもしてるんですか!?」

 激怒する私を伯爵様は必死でなだめた。

「違う!違うんだ、ディア……」

「何が違うんですか?」

「それは……」

「わ、私を妻だと紹介するのが恥ずかしいの……っ?」

「違う!ディア、……そうじゃなくて」

「家に閉じ込めているのも私が奥さんだって知られたくないからなんでしょ!?」

「違うよ……」

「じゃあ、どうして?」

「………」

 腹立たしいし悲しい。
 泣くつもりなんてないのに勝手にボロボロと涙が溢れた。

 びっくりしたような顔をした伯爵様が慌てて私に手を差し伸べるが、私はそれを払った。
 そして涙を流しながら伯爵様をギロリと睨むと、走り出した。

「ディア!」

 伯爵様が私を呼ぶ。
 けど、私は走った。

 私の後をバイオレットが追いかけてくる。
 しかし、伯爵様は追っては来ない。それがまた悲しくて涙が溢れた。

 *

 公園の噴水の前で私は膝を抱えて泣いた。
 私に追いついたバイオレットは心配そうに私の横顔を見つめ、ぺろぺろと手の甲を舐めてきた。

「ごめんね、バイオレット………大丈夫よ」

 やっぱり伯爵様は追いかけてこない。
 寄り添ってくれているバイオレットの背中を優しく撫でた。

「ワン!」

 突然バイオレットが鳴いた。
 バイオレットの視線の先には子犬がいた、首輪とリードを着けられた豆柴の子犬が一匹でうろついていた。

 バイオレットは走って子犬に駆け寄る。

「バイオレット!」

 バイオレットは子犬の周りを一周した。
 喧嘩しちゃうのかと心配したけど二匹ともおとなしい。

「飼い犬ね。迷子かしら?」

 人懐こい犬だ。
 私におとなしく撫でられているし、抱っこもさせてくれた。

 子犬を抱いて呆然と立っていると、木立の中から人影が現れた。

「………あ、」

「え?」

 私の目の前に現れたのはーークリオスだ。

「え?なんでっ……!」

 どうしてこうも都合良くエンカウントしちゃうんだろう?
 向こうも目を見開いて驚いている。

「その犬、私の犬だ。散歩をさせていたら逃げちゃってね」

「あ…そう。はい、飼い主が見つかってよかったわ、じゃああ!」

 私は子犬を彼に手渡すと、早急にこの場を立ち去ろうと彼に背を向けた。

「クローディア義姉さん、どうかしたの?泣いてる」

「なんでもないわっ、気にしないで」

 足早に去ろうとした私の腕を彼は掴んだ。

「義姉さん、コーヒーでもどうですか?向こうで移動販売しているよ。おごります」

「……いえ、私は」

「そこで待ってて」

 クリオスは私に子犬を渡すと、公園の片隅で紅茶やコーヒーを販売している小さな店へ向かって走り出した。

「え?ちょっと……!」

 子犬を預かったままでは勝手に帰れないし、私はハァとため息をつきながらベンチに座って彼を待つことにした。
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