義妹に婚約者を奪われ追放された私。実は国を支えていたと気づいても遅いです。隣国で能力を開花させたので、今さら泣きつかないで。

瀬戸 ゆら

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第4話:帝国中に響く、再生の光

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同じ頃、ウェンディを追い出した王国では、目に見える形で崩壊の足音が響いていた。

「……っ、どうして! 魔力は、私の方がずっと多いはずなのに!」 王太子の執務室で、エリスが悲鳴のような声を上げた。

彼女が魔力を注ぎ込んだ高級魔導具たちは、その|荒々しいに耐えきれず、次々と火花を散らして沈黙していく。 繊細な回路を焼き切られた基盤からは、嫌な焦げ跡と異臭が立ち込めていた。

「エリス、早くしろ! 国境の結界が薄くなったせいで、魔物の遠吠えが王都まで聞こえ始めているんだぞ!」 ジュリアンの焦燥はピークに達していた。

「わかってますわよ! でも、この魔導具たちが不良品なんですもの! お姉様が、嫌がらせで壊してから出て行ったに違いありませんわ!」 自分たちの無能を棚に上げ、エリスは泥だらけで追放された姉を呪った。

対照的に、帝国の朝は希望に満ちていた。 私は皇帝シリウスに連れられ、帝国最高峰の技術が集結する「魔導工房」を訪れていた。

「陛下、本気ですか。このような、歩くのもやっとのような小娘に、我が工房の何を見せようというのです」 出迎えたのは、白髪混じりの髭を蓄えた筋骨逞しい男、工房長の|ガゼルだった。

彼は帝国一の技術者としての自負があるのか、私を「王国の捨て石」と呼び、隠そうともしない不快感を露わにする。 私はその威圧感に身を縮め、シリウスの影に隠れるように俯いた。

「ガゼル、言葉に気をつけろ。この娘の腕は、貴様の想像を絶するぞ」 「ふん。ならば、これが直せたら認めてやりましょう。帝国が百年かけても起動させられなかった、呪いの遺物です」

ガゼルが差し出したのは、どす黒く変色した『壊れた聖杯アーティファクト』だった。 複雑怪奇に絡まり合った回路は、もはや何が正解かもわからないほど無残に捩じ切れているように見える。

だが、私の目には違って見えた。 「……壊れて、いないわ」 「なんだと?」

私は吸い寄せられるように、その聖杯へ手を伸ばした。 「ただ、糸が解けなくて……苦しくて、泣いているだけ」

ガゼルの制止を聞かず、私は指先をそっと冷たい銀の表面に触れさせた。 そして、極限まで純化させた魔力の糸を、迷いなくその深淵へと滑り込ませた。

――カチリ。 脳内に、心地よい歯車の噛み合う音が響いた。

次の瞬間。 百年もの間、死んでいたはずの聖杯から、濁流のような|純白のが溢れ出した。

「なっ……光った!? 馬鹿な、あの死の遺物が……!?」 ガゼルが目を見開き、たじろぐ。

光は工房全体を優しく包み込み、重苦しかった空気さえも一瞬で清浄なものへと書き換えていく。 聖杯の表面にあった黒ずみは剥がれ落ち、内側から黄金の輝きが満ちていく。

それは、単なる修理ではなかった。 持ち主さえ忘れていた、魔導具本来の「魂」を呼び覚ますような、圧倒的な編纂へんさんだった。

「信じられん……。回路の負荷を一切かけずに、これほど精密に……」 ガゼルは震える手で、再生した聖杯に触れた。

そして彼は、先ほどまでの傲慢な態度をどこへやら、その場に膝をついた。 「……失礼を、……いや、無礼の数々をお許しください! これこそが真の魔導編纂。お嬢様……いえ、師匠と呼ばせてください!」

その様子を、シリウスは満足げに、そして独占欲を隠さない黄金の瞳で見つめていた。 「言っただろう。これは、俺が拾い上げた世界一の宝だと」

帝国の中心で放たれた再生の光は、やがて帝国中に私の名を知らしめる序曲となった。 一方、結界の消えた王国では、ついに最初の魔物がその牙を剥こうとしていた――。
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