二度目の人生は離脱を目指します

橋本彩里(Ayari)

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聖女と離脱

60.現状と対策

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 先に着いていたランハートに横に座るように促され、私の反対側はベアティが座る。その横にシリル、ミイルズ、アベラルドと机を囲んだ。

「では、さっそくここ最近の状況報告を」

 ランハートが口を開くと、ミイルズが手を上げた。

「は~い。僕たちから話すね。マリアンヌちゃんは相変わらず取り巻きたちと好き勝手してるよ~。これまでは慈善活動もしていたし、言動も気を遣っていたからかそこまで思わなかったけど、学園に入ってからは活動も少なくなったし派手さが目立つようになったかな~」
「精力的に取り巻きを増やそうとしているようだけど、今は停滞中だね。そのため、最近僕たちに話しかけてくるのが増えたな」
「そうそう。エレナちゃんのところに行くなという圧が強いよね」
「ランハート殿下がエレナ嬢のほうに行ったから、僕たちへの拘束が強くなってきた」

 げんなりと告げる双子に、ランハートが肩を竦める。

「私にもアプローチはすごいな。もともとしつこかったが、対象が私だけではなくなったため前より避けやすくなったが」

 ランハートの言う対象とは、ベアティとシリルだろう。隙あらばマリアンヌはベアティたちに話しかけ触れようとしている。
 ベアティが精神支配されていた時も、スタレット侯爵と思われる男に触れられていたことから、精神干渉したい相手は触れなければならないのだろうと推測している。

 ベアティの囚われていた時の記憶、特に男との接触した際は熱に浮かされたようにおぼろげだ。
 一度、遠くからスタレット侯爵を確認できる機会があった。
 その時に、侯爵がそうだと断言できないが、なんとなく嫌な気分になると言っていた。

 そのため、ベアティたちをひどい目に遭わせた黒幕もスタレット侯爵であると仮定して対策を立てているところだ。
 そして、スタレット侯爵、マリアンヌともに、直接触れられる事態は避けることは絶対だとの認識となった。

「それでシリルの両親だけど、来月行われる奴隷の競売に同行するみたいだよ」
「誕生日のお祝いに気に入った奴隷を買ってもらえると言っていたし、その時に侯爵のお気に入りの二人も連れていくと言ってたから」
「直接奴隷とは言わなかったけれど、そんなニュアンスだったよね。調べたら来月はお得意様限定で競売が開かれるみたいだ。そこでは自身の奴隷を見せびらかす習慣もあるようだから、特別なお気に入りなら連れていく可能性は高い」

 双子にはマリアンヌとこれまで通り接触して、情報を収集してもらっていた。
 私はそこでシリルを見た。
 口を引き結び必死に感情を出さないようにしているが、落ち着かなそうに身体が揺れている。

 あれからさらに情報を収集し、スタレット侯爵のもとにいる奴隷はシリルの両親であることがわかった。
 これに関してはランハートがもたらした情報で確定し、改めてランハートの情報収集力がすごいことを実感した。

「それは合法? 違法でしょうか?」
「表向きのものを開催しつつ、裏で非合法の奴隷の売買を行っている」
「非合法、ですか」

 そこでシリルの両親のように、希少性で狙われ攫われ奴隷にされた人たちが売買されているのだろう。
 また悲しむ人が増える。シリルの両親もそこにいる。ならば、することは決まっている。

「私たちはそこで動きます」

 シリルが大きな目をこちらに向けたが、ぐっと唇を噛み締め頷いた。

「具体的にどうやって?」

 ランハートが探るようにすっと視線を向けてくる。

「会場を襲撃します。混乱の際にシリルの両親の救出、可能ならば違法に囚われた奴隷の解放を。その為の人員は十分確保できます」

 領地を発展させていくにつれて集まってきた優秀で協力的な人材はたくさんいるので、それなりに動けるくらいの規模になってきた。
 ベアティを見ると、こくりと頷いた。

「いつでも動かせる」

 しかも、ベアティが冒険者として仲間を募り動いてくれていた。そのため、かなり戦力強化が見込まれる。
 その上、ベアティが動くと冒険者も獣人もものすごく協力的になる。
 何か発しているのではというほど従順で怖いくらいなのだが、作戦を実行する場合統率は必要なので、この件はベアティに任せていた。

 そういったベアティの姿を見るたびに不思議になるが、両親もベアティが統率することに特に何も言わない。
 なんなら事情を知っているようで、その上で両親が黙るならばそれなりの理由があるのだろうとこちらからは聞いていない。

 地位が高い者を相手にするためには、圧倒的な実力で迎え撃つしかない。
 逆にいえば、強者がルールなところがあるため、この件に関して動くなら絶対こちらの持てる最強の布陣で一気に片付けなければいけない。

 それに今回はこちら側にランハート、そして国王がついている。
 むしろ、ここで動かずいつ動くのかと、私はシリルの固い表情を見つめた。

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