二度目の人生は離脱を目指します

橋本彩里(Ayari)

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聖女と離脱

67.偽聖女

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「ここ最近毎日ですが」

 嫌だとは言わないが、さすがに頻繁すぎないかと視線で訴える。
 彼らといることで噂がさらに盛り上がり、彼らがいることで抑制されてもいて、よくわからない状態だ。

「毎日じゃダメ? 僕たち少しでもエレナちゃんと一緒にいたんだよね~」
「この時間が楽しみだからね」
「それにここ最近ろくでもない噂が流れている。さっきみたいに変なのが出没するからエレナを一人にさせられない」

 心配してくれているのはわかるが、私もただやられっぱなしでいるつもりはない。
 死に戻り前はろくに主張できなかったので、嫌なことは嫌なまま我慢する気はない。
 黙っているのは相手をする必要がないのと、言葉の責任はいずれ取ってもらおうと思っているからだ。

「言いたい人には放っておいたらいいと思います。私は私のしたいようにします。持っているスキルを使う使わないを決めるのも私です」
「ああ、なるほどね。君を非難する人は何かあったとき君のスキルに頼れないということだな。わかりやすくていいんじゃないかな」

 これくらいのことで全面的に対立するつもりはなかったのでオブラートに包んで言ったのに、ランハートが煽るように周囲を見回した。
 王族に睨まれて、彼らはさらに気まずそうにする。

「それでいいと思うよ~。悪く言うヤツを治してやる必要はないしね」
「ほかに頼れる相手がいるならエレナ嬢がわざわざ労力を払う必要はないんだし。そもそも、助けを求めておいて恩をあだで返すように噂を流すヤツ、それを信じるヤツのほうが僕は信じられないよ」

 双子が追撃する。
 それに被せるように、ベアティとシリルが蔑むように視線を向けながら断言する。

「大丈夫。エレナ様を悪く言ったヤツらは俺が覚えている。これ以上、接触させるつもりはないし、一線超えたら容赦はしない」
「価値がわからない人たちにエレナお嬢様が心も能力も使う必要はないよ」

 ありがたいけれど、やっぱりこれは煽っていないだろうか。
 彼らは私を守りたいのか、窮地へと導きたいのかどっちだろうか。

「あの、心配していただけて嬉しいのですが、私は一切スキルを悪用したことはありませんから彼らの言葉は何も響きません。これからもやりたいようにやるだけです」

 同じ土俵で喧嘩を買ってやるつもりはないが、何もしないまま奪われるつもりもない。
 私は私で汚名をそそぐし、相応の評価は取り戻すつもりだ。

 気負いない気持ちとともににこっと笑みを浮かべると、五人にもそれが伝わったのかそれぞれ笑みを返してくれた。
 死に戻り前にマリアンヌと一緒に私を追い詰めた人たちが、今は私のそばで味方であろうとしてくれる。
 そのやり方がいいかどうかは置いておいて、気持ちは伝わってくる。

 彼らの取り戻したものを考えると、私も負けていられない。
 いつでもかかってこればいいと少し気を大きくしたのがいけなかったのか、とうとう噂の元凶のマリアンヌが現れた。

「エレナさんったら、やりたいようにやるなんて随分傲慢なのね。噂もあながち外れてはいないのかしら。怖い人ね」
「噂はあくまで噂ですよ。今流れている噂が真実ではないことを私自身が知っていますし、彼らも見ていたことですから」

 私は臆せず彼女を見返す。
 マリアンヌがどういった人物であるかわかっているし、死に戻り前にやられた仕打ちは忘れてはいない。
 だからこそ、聖女スキルなんてマリアンヌの反感を買うものを使うときは状況に気をつけてきた。

 噂の対象だと思われる人物は治したが、その本人は脅されたかお金欲しさに嘘をつき、姿をくらましてしまった。
 そこから噂があれこれと広がり今に至る。

「ランハート殿下もそのような人物のそばにいては後々お困りになるかもしれませんよ」

 金の髪を片手で払い、艶やかな唇で今からでもこちらにつくほうがいいですよと誘導してくるマリアンヌに、ランハートははっと鼻で笑った。
 噂を流す意図の一つに、あわよくば彼らを私から離そうという意図があったのかもしれない。

 甘く媚びるような、それでいて王族相手に自分のほうが優位であろうという態度に辟易する。
 過剰なまでの自己評価の高さが、突拍子もないことをしそうで怖い。

「私は私の目で判断して彼女のそばにいる。心配はいらない」

 お前はお眼鏡に叶わなかったと言われ、かぁっとマリアンヌは顔を赤くした。
 反撃を食らったマリアンヌは私を睨んできたが、先にランハートに話しかけて自爆したのはそっちでしょと素知らぬ顔で見返す。

 すると、般若のように睨みつけられた。
 ランハートが私を庇ったことといい、自分好みの美形五人に囲まれ守られている私のことが心底面白くないのだろう。

 人目があるところであからさまに対立する言葉を吐かれたことはないが、直接勝負に来たということは何か策があってのことに違いない。
 ベアティとシリルが私を守るように一歩前に出ようとしたのを静止し、私はマリアンヌの前に立った。

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