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序章-something quite unexpected-
2降ってわいた高塚くん②
しおりを挟む「つづきりの。りの。りの。名前も可愛いな。りのはこれから時間空いてる?」
初っ端から呼び捨てなんだ?
別に悪意さえなければ、どう呼ばれようがいいけど。どっちかというと、心なしか名前を呼ばれる声のトーンが甘く感じるのは気のせいかな。
なんか、むずむずする。これはモテ男子ならではのテクニックというやつか。
「友だちと、」
「俺、ずっとりのに会いたかった」
遊ぶ約束をしていると話そうとしたら、眼前でにっこり笑みを浮かべながら言葉を遮られた。
ああ、うん。タイミング悪かったかな。なら、もう一度。
「えっと、友だちと、」
「今すぐ、一緒に話したいのだけどダメ?」
今度は眉根を下げて悲しそうに言われた。これ、絶対言わせないようにしてるよね。
今すぐってどれだけ急用なんだ。
なんか、圧が……。でも、約束してたし莉乃の中でそれを反故してまで相手に合わせる気はない。だって知らないし。
でも言わせてもらえないから、援護をと志穂たちのほうをチラチラ見ると、また左右からぶんぶんと首を振られた。
「莉乃、えっ、あぁっと、私お母さんにお使い頼まれてたの思い出した。だから、ごめんね。また今度遊ぼう。それに高塚くんが話があるみたいだから、ここじゃあれだしゆっくり話してみたら?」
「そうそう。私も、えっと、そう、私もお使い頼まれたから。だから、また今度で」
二人同時にお使い? えっ? お使いなんて今まで遊んでて初めて聞いたんだけど?
「えっ?」
「だって。ならいいよね?」
「えっ??」
「りのは彼女たちと約束してたけど、それがなくなった。これから時間が空いたってことだよね? なら、俺と過ごせるよね?」
「……えっ????」
「二人とも、りのは俺が預かるから」
ついていけない。なぜか高塚くんが勝手に志穂たちに宣言した。
そのまま志穂と美咲は、申し訳なさそうに眉根を下げて、「ごめんねー」と莉乃に謝りながら二人は昇降口に向かって歩いていく。
えっ??????
「……志穂、美咲、ま、待って」
「莉乃、本当にごめん。あとでメールするから」
「私も。ほんと、ごめーん」
顔の前に両手で謝るように合わされたあと、ぶんぶんと手を振られ、仕方なく手を振り返す。
えっ? なんで?
一人にされても困る。
えっ? これからどうしたら?
ちろりとうかがうように見上げると、じっと莉乃を見ていたらしい高塚くんと視線が合う。
「鞄貸して」
「えっ、鞄? …………自分で、持ちます」
なぜ見知らぬ人に鞄を預けねばならないのか。当然断ると、んっ? と軽く首を傾げ、高塚くんはすぅっと目を細めた。
「貸して」
「あっ、はい」
にっこり笑顔で言われ、思わず差し出す。なんか、美形圧っていうのかな。逆らいにくい空気感じて思わず渡しちゃった。
「はい。こっちは手な」
「…………?」
右手に二人分の鞄を持つと、左手をひらひらと差し出した。
思わず、その手をじっと見つめる。鞄を奪われたからには、彼に付き合わないといけない。鞄の中にはスマホと財布が入っている。
そう考えると、貴重品を知らない人に預けているのが不安になってきた。やっぱり、今からでも返してもらおう。
軽々と二つ分持っている彼の右手に視線をやって口を開きかけた時、今度は無表情の彼が同じ言葉を繰り返す。
「りの。だから、手」
「手……?」
手は手ということはわかっているのだ。まあ、手を差し出されたら手を乗せろということなのかなと、二度も言われたら察せはするのだけど初対面の男性と手を繋ぐ意味がわからない。
ただ、見つめるだけで動かない莉乃に焦れた高塚くんが、大きな左手でぐいっと莉乃の右手を掴んできた。
「じゃ、行こうか」
「………………どこに?」
というか、手はなぜ繋がないといけない?
周囲の女子がキャーキャー言っているのは聞こえていないのか?
なんだんだこの人は。
「二人きりになれるとこ」
そう言った高塚くんは、きゅっと繋いだ手を握るとぐいぐいと引っ張っていく。
靴を履き替える時も、手を離してくれない。
周囲の女生徒の嫉妬がつらい。モテる人って大変だけど、そんな人と一緒にいる人も苦労するのだなと改めて思い知る。
「だから、どこに?」
「どこでもいい。とにかく、りのと二人きりになりたい」
と、言われましても。
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