高塚くんの愛はとっても重いらしい

橋本彩里(Ayari)

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序章-something quite unexpected-

3降ってわいた高塚くん③

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 覗き込むように屈んで、高塚くんはぎゅっと唇を閉じる。そのまま、探るように莉乃の瞳を覗き込み、こちらの反応をつぶさに観察された。
 思わず身体が下がりそうになるが、それを高塚くんが許さない。手を引っ張り、身体を寄せて距離を取ろうとするのを阻止された。

「あっ、と……」
「りの。お願い」

 見られても困る。懇願されても困る。
 基本、笑顔を向けられるのだが、ふとさっきみたいに高塚くんは感情を乗せない無表情になる。
 今も、無表情に見えるほど真剣で、断ってもいいのか、頷いてもいいのか。

 整っている分無機物みたいでちょっと怖い。何を考えているのかわからない。
 一瞬だけだけど、その無表情と笑顔の行き来が一層目の前の人物が何を考えているのかわからなくさせる。

 あと、これだけ美形だと、勝手だけど劣等感が湧いてくる。相手が優越感を得たいがために私に絡んでるわけではないのはわかっているのだけど、なんでこんな美形が私なんかにって。
 そこそこ男子だったら、もっとそれなりの反応ができたと思うんだ。超がつくほどの美形を前に戸惑っている時点で、私も女子なんだなぁって思ったり思わなかったり。

「…………」
「……だめ?」
「………………だめじゃない、けど」

 どうせ逃げられないし。くいくいっと外そうと引っ張っても緩められない手とか? 鞄の中の貴重品とか?

 うーん。二人きりかぁ。
 正直、乗り気ではない。困る。

 こんな美形に急接近されてのぼせるどころか、恐縮してしまう。180センチは明らかに超えているだろう長身に、モデル並みの容姿。
 自分と世界が違うっていう感じかな。現実味が湧かない。

 本当、なんで手掴まれてるんだろう……。

「りの、ありがとう」

 高塚くんは、ほっと息を吐き嬉しそうにそう言った。
 よくわからない。強引なのに、こっちが了承することで安堵するとか。

「……手、離して」

 もう、ついていくのは仕方がない。話があるようだし、お願いされたし。こんな美形に話があるだなんて言われて、ここで聞かずに帰ったら結局なんだったんだろうって気になるだろうし。
 でも、手はね。やっぱり繋ぐ必要はないわけで。

「ん? どうして離さないといけないの」

 そ、そうくるのか。

「えっ? 手を繋ぐ必要こそなくない?」

 あなたと私、初対面。しょーたーいーめーんー。
 なんの関係もない異性と手をナチュラルに繋ぐとか私は無理。お付き合いとかもしたことないのに、急にこんなことされて対応の仕方もわからない。

 莉乃としては当たり前のことを言ったつもりだったのだけど、睨まれた。
 ちろっと上から見られただけなのだけど、綺麗な顔してる分本当に怖いんだ。彫刻の角度によって見えかた違うみたいに、妙に迫力ある。

「…………りの、繋ぐの嫌なの?」
「嫌というか、それ以前の問題で」
「何が問題? 嫌じゃないならいいよね」
「だから、」
「いいよね?」
「あっ、はい」

 やっぱりこの人たまに怖い。綺麗な顔で睨まれて押し切られると、もう無理だ。美形圧やばい。

「なら、行こうか。二人きりになれるところ」
「……………」

 外に出ると太陽が高い位置にあって、まだまだ時間はこれからだとばかりに主張している。
 ああー、さっきまでこの天気も楽しみのうちだったのになぁ。
 手を引かれながら、ぼんやりと思う。

「りの。ペース早い?」
「いえ。大丈夫です」
「そ。何か違ったら言って」
「……ありがとう?」

 思わずお礼を言ってしまったが、疑問符が残る。
 コンパスの差を気にしてくれる前に、手だよ。手!!
 手繋いでいること事態が違うんじゃないかってそう言いたいが、さっきのやり取りを思い出し我慢する。ここで立ち止まる方が注目を浴びるってことぐらいわかっている。

 素直に引っ張られるまま校門を出ると、吹き抜けた風にのって、抱きしめられた時に感じた高塚くんの匂いがした。あの、爽やかでいて上品な香り。
 長い腕と自分より大きな手、そして匂い。
 莉乃が年頃になって、異性としてこんなに近くで意識したのは初めてだった。
 

 * * *

 
 この日から私と高塚くんとのよくわからない関係が始まった。
 あの時、圧に負けて頷かなければよかったと何度思ったことか。

 慣れないことは、変化は、不安が伴い疲れる。それでも、好かれている、嫌われてはいないのだろう行動は、迷惑だと思いながらも振りきれなくて、絆されてはきていたのだ。

 わからないことは多くて、普段何をしているのか知らないことの方が多くて、強引なのに言葉が足りなくて、何を考えているのかわかなくて。
 知っている風だったのに、探していたといったのに、莉乃の名前を知らなかった高塚くん。

 だからこそ、気になった。

 何を考えているの?
 探してたってどういうこと?
 どうして、大切な恋人みたいにかまってくるの?
 男女の友だちって、こんなに近いものなの?

 莉乃にはわからない。友情と恋情の違い、男女の関係って知らない。なにが普通なのか、判断の基準なんてない。
 自分たちの関係を明確に表す言葉をかけられたことなんてない。
 だから、どうしていいのかわからなかった。

 さっぱり何を考えているのかわからなかったけど、普段から向けられる感情の中には確かに自分への思いみたいなものを感じてはいて、それを信じようと、信じたいと思っていたのだ。



 あの言葉を聞くまでは────────。
 


✽.。.:*·゚ ✽.。.:*·゚ ✽.。.:*·゚ ✽.。.:*·゚ ✽.

作品を見つけていただき、お読みいただきありがとうございます。

二月開催の第15回恋愛小説大賞に『自由気ままな貧乏伯爵令嬢は、腹黒王子にやたらと攻められてます』とともにエントリーします。
高塚くんの方はある程度ストックがあるので、見直しながら毎日2、3話ほど更新予定です。
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よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

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