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1-something quite unexpected-
4時期外れの転校生①
しおりを挟む5月のゴールデンウイーク明け。
高校生活三年目に入り、とても中途半端な時期に転校生が来た。
それだけなら、へぇ、そうなんだくらいの話だが、それがまたえらい美形だということで、学校全体が落ち着かない。
莉乃は休み明け速攻風邪を引いてそのまま休んでいたから、久しぶりの登校時、学校全体の空気が違ってすっごくびっくりした。
下駄箱開けるときも、いつもより女子がそわそわと昇降口付近にいるんだよ。事情知らないから、気合入った化粧だったり髪型だったりする女子生徒の姿を見て不安に駆られた。
思わず、何か大事なイベントあったっけって頭の中をさらった。幾人か知ってる同級生に挨拶を交わしたが、みんなどこか意識がそぞろっていうか。
結局、それはハイスペック転校生のせいだというのを、教室に入ってから知ったのだけど。
落ち着かない気分で自分の教室に入り、すでに来ていた隣の席の坂田くんに挨拶をする。
「おはよー」
「はよー。都築さん、風邪だったって?」
「そう。ちょっと油断した」
「治って良かったな」
「うん。ありがとう」
鞄から教科書を出しながら、軽く会話をし周囲を見渡す。
いつもならいるクラスの女子の一部がまだ来ていない。短いスカートからすらりとした足を出し、明るい色に綺麗に染めた髪に見合ったメイクは朝から決まっていて、いわゆるクラスのイケてるグループの人たち。
見た目は派手であるが余裕を持って学校に登校して、スマホをいじりながら楽しそうに話している人たちなので、結構目につくからまず彼女たちがいないのに気付いた。
「…………?」
朝の昇降口のことといい、今思えば廊下もなんとなく空気が違ったし、違和感を覚える。
首をひねっていると、少しあとに登校してきた同じクラスの美咲が莉乃のもとにやってきてさっそく教えてくれる。
「莉乃、おはよー。風邪もう大丈夫?」
「おはよー。熱下がったし、咳もでなくなったから大丈夫。それよりもなんか学校全体が変な感じなんだけど」
「ああ。それね。莉乃が休んでいる間に、1組に平壌高校から芸能人さながらの美形転校生来たんだよ」
「こんな時期に転校生? 平壌っていったら偏差値の高いとこだよね」
平壌高校は県内でトップの偏差値で、なによりお金持ちが集まるので有名な学校だ。隣町にあって、我が校も悪くはないのだけどどうしても比べると格の違いが浮き彫りになる。
平壌といえば、全国的にも有名でそこに入学できたら先も明るく、社会に出てもステータスの一つとも捉えられる。
この付近に住んでいる者なら誰もが一目置き憧れる高校。そんなところからの転校生となれば、それは話題性抜群だろう。
ランク落としてまで隣町のこの高校に通う理由ってなんだろう。
問題起こした? いや、それはないかな。この学校もそこそこなのだ。平壌が規格外なだけで、おかしな人が来るようなとこではない。
そういことも含め、話題性ってことかな。
「そうそう。なんで、この学校なんだろうね。悪くはないけど、平壌に比べたらやっぱり違うし。しかも、転校といっても高校は隣町だから距離の問題とも違うだろうし」
「なにか悪いことしたとか?」
「んー、そんなタイプには見えないって志穂は言っていたよ。私もちらっと見た程度だけど、爽やかそうって思ったし。見た目同様王子さまみたいで人当たりもいいって」
「へー」
じゃ、なにか他に理由があるのかな。想像もつかないけど。
本人見てないし、まったくどうでもいいというか他人事だ。
あまり反応のよくない莉乃に、美咲はぐっと前のめりになって続ける。
「すっごい美形だよ。莉乃も一度見てみたらいいよ。目の保養って感じ。実際、昔モデルやってたらしいよ」
「モデル?」
「あと、どこかの御曹司だとかもあった」
「なにそれ、どこの世界の人?」
聞いているだけで、住む世界が違うって感じだ。
「まあ、そうだよねー。でも、その辺は噂だけど、私の友だちのいとこが平壌通っているんだけど、そこでも常にトップの成績だったって。だから、なんで転校したのかわからないって。
しかも、向こうにファンクラブとかあったみたいだから、女子とかすっごいショックで泣いた子いるってさ。実際、その子もショックで寝込んだって」
「ファンクラブ……」
ますます、別世界の人だ。
「すごい世界だよね。そんなのあるんだって感じだけど本当らいしよ。で、それだけの人なら当然モテるでしょ?」
「まあ、話を聞くからにはモテる要素しかなさそうだよね」
「実際さっそくこれだしね。これも聞かずとも勝手に話してくれたんだけどさ、学校内の女子と付き合ったとかはなかったみたいだけど、常に外で女性の影はちらほらあったって。
学校でも友人も多く常に人に囲まれていてるけど、交友関係は年上が多くて、女性も大人な女性しか相手にしないって噂になってたみたい。一線を画すっていうのかな。同じ高校生には見えないくらい落ち着いているし。
そういうのもあって、告白も誰も受け取ってもらえなし早々校内ではファンという形に落ち着いたらしいよ。基本優しいしって」
まったく転校生のことを知らない莉乃に話すことが楽しいのか、美咲が一気に情報をぶち込んでくる。
「へえー。すごいね」
としか言いようがない。
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