高塚くんの愛はとっても重いらしい

橋本彩里(Ayari)

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1-something quite unexpected-

5時期外れの転校生②

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「友だちもいとこが通う学校の話だったはずなのに、芸能人のゴシップ並みに興奮してたから。なんでも、写真見てファンになったとか言ってた。あくまで外見のファンだし、情報はついでだけどいろいろネタがあって面白いってノリだった」
「有名人のゴシップネタみたい」

 莉乃がそう言うと、そこでその時のことを思い出したのか、美咲はくすくす笑う。よほど、その話で盛り上がったのだろう。

「そうそう。そんな感じかもね。身近だけど関係ない分、妄想しやすいから楽しいって言ってた。妙に迫力あるらしいから、友だちは大人の関係とかから想像して裏ではヤンチャ説までだして楽しんでたけど。
まあ、実際見たらいろいろ想像されるのわからないでもないなってくらい、とにかくすごいんだよ。一度見たら莉乃も納得すると思う」
「じゃ、そのうち見るだろうしその時の楽しみにしとく。というか、まだその人来て三日しか経ってないよね? 顔見てないのに勝手に知った気分になるくらいなんだけど?」

 どこまで真実かは知らないが、モテる人ということは十分に伝わった。
 美咲はそんなにミーハーではなかったはずだ。だが、この情報量。たまたま知り合いがいたにしても多すぎる。

「話題性に欠かない人だったみたいだし、実際この高校にきてもそうだし、昇降口すごかったでしょ? 女子率」
「まあ、何かあるのかなって思ったけど」

 あれには焦った。風邪引いて、何か大事な学校行事忘れてしまったのかと一瞬ひやっとしたから。

「莉乃はあんまり興味なさそうだね」
「なくはないけど、やっぱり遠い話に感じるかなぁ。休んでいる間にってのもあるかも。出遅れたしもういいかって。
でも、わかった。朝のあれもファン心理みたいな感じってことだね。一目でも見たい、話したいってやつ?」

 ここまで説明されれば納得だ。実際、そんな人がいるんだ? って思うけれど、芸能人が学校にきたと思えば納得の反応。

「そうそう。身近で芸能人ばりの美形見れるのってやっぱり目の保養だし楽しいよね。しかもテレビ越しではないから、あわよくばお近づきになれるチャンスだってあるから、みんな気合入ってるよ。その分、一部の男子は士気だだ下がりだけど」

 案の定、美咲も同じことを考えていたようで続けられた言葉に納得。それにしても、

「たった三日で……」
「そう。三日あれば十分ってこと」

 莉乃にとってはたった三日だったのだけれど、浦島気分だ。

「志穂も大変そうだね」

 噂の転校生と同じクラス。さぞかし落ち着かない日々だろう。休日挟んで、少しでも落ち着くといいけれど。

 それにしても、すごい人が転校してきたな。これは運動会や文化祭盛り上がりそうと、莉乃は本当に他人事のようにこの時は思っていた。
 次の週も周囲の様子でその辺りにいるんだろうなというのを何度も見かけたが、かき分けてまで見てみたいと思わなかったし、人混みめんどくさくて避けていたら、結局顔は見ないまま終わった。

 そのうちその光景にも慣れて、もう姿がどうとか見てみたいという気持ちも薄れて、ま、そのうち見るでしょっ的に集団を避けるのも当たり前になって。

 まさか、そんな相手が自分のことを探してるなんて考えるわけがない。
 自意識過剰もいいところだし、莉乃はごくごく普通の家庭で育った普通の高校生だ。

 漫画やドラマのような出会いに多少は憧れはあるけれど、そんなこと日常で簡単にあるわけがないという現実を知っている高校三年生。
 大学受験も控えたこの時期に、恋愛ばかりにうつつを抜かしているわけにもいかないわけで、夢みたいなことに妄想する時期はとうに過ぎている。

 てなわけで、早々に自分と関係はないとあっさり切り捨てた。
 それを後日、責められることになるなんて考えもしないわけで。

 風邪を引いて学校を休んだことも、出遅れて周囲ほど興味がなかったことも。私は何も悪くないはずだ。
 さらに、そのことが高塚くんのよくわからない熱をさらに上げたのなら、風邪を引いた私は運が悪かったとしかいいようがなかった。

 それとも、話を聞いた時にすぐに見に行っておけば、彼の目に留まっておけば少し違ったのかな?
 あんなに注目されることなんてなかったのかな?

 起こってしまったことは変えられなくて、もう少しああしていたらこうしてたらと思うことがありすぎて、思うだけなら簡単だ。実際に行動に移すなんて無理な話で。
 恋愛初心者にはハードルが高すぎて、日々がいっぱいいっぱいで。
 何が本当だとか、どうすればいいとかわからなくて、手を引っ張られるままついていくのがやっとで。

 その日は、少しずつ周囲も落ち着きだしていた。高塚くんが転校してきて二週目にもなると、もう日常に溶け込んだ話のネタであって自分と関わりのないことになっていた。

 まさか自分に丸ごと降りかかるなんて、微塵も考えてなかった。


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