高塚くんの愛はとっても重いらしい

橋本彩里(Ayari)

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3-Love doesn't stop-

63高塚くんが必死②

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 妙な緊張とともに登校し、休み時間になるたびに高塚くんの存在を気にしていたが、結局現れることもなく放課後になった。
 もしかしたら、朝一で捕まえられるのではないか、そしたらどうやって逃げようなんて考えていた自分が恥ずかしい。

 どんな態度で顔を合わせていいのかわからず、改めて遊びだと突きつけられたらと怖かった。会いたくないのに、会いたい。知りたくないのに、知りたい。
 自分で連絡するなと言って、連絡がなかったことが悲しくて。

 今日1日で自分勝手さに嫌気がして、考えれば考えるほど、時間が経てば経つほど、すっかり高塚くんに気持ちが持って行かれていたことを自覚した。
 こんなことになるなら、もう少し高塚くんとの時間を楽しんでいたらとか、自分から引導を渡さなかったら良かったと何度か後悔して、帰る時間が近づくころには気持ちはぐちゃぐちゃだった。

 歩み寄ってくれないって言われた言葉が、好きだと自覚すればするほど莉乃の心にぐさりと突き刺さる。
 たくさん後悔もして悲しくなっていても、高塚くんにも言ったように振り回されたくないという気持ちもあって、自分でもどうしたいとかもわからなかった。

 結局は、引導を渡してしまった後だ。

 どうするも、どうしたいも、ここで高塚くんが来なければ、本気で諦めなければならない。
 今更好きだと言ったところで、気持ちがない人には響かないだろう。遊びだと思っていた人に本気になられたらうざいだけだろう。

 ただ、奇跡的に高塚くんの言葉も態度もそのままで、まだ莉乃と一緒にいたいと思ってくれているとしたら、もう少し素直に、高塚くんとちゃんと向き合いたい。
 もっと高塚くんのことを知りたいって思っている。さすがに遊ばれてもいいとは思えないから見極める時間は欲しいのだけど、また一緒に過ごしてみたいという気持ちが時間が経てば経つほど強くなっていく。

 泣きたくなるような胸の苦しさに眉をしかめ、ゆっくりと息を吐き出す。

 高塚くんに対して自分から動くにはやっぱり怖くて、受け身の気持ちのままどれくらい待つべきか、もしかしたら待ちぼうけになることも覚悟していた。

「りの」

 なのに、ホームルームが終わると同時くらいに、いつも通り高塚くんがやってきた。
 表情はにこにこと笑みを浮かべているが、漂う空気が尋常ではない。
 清涼な空気を醸し出しこれぞ見本とばかりの笑顔が、なんだか怖い。

 笑顔が完璧すぎてその姿はいつも以上に周囲を魅了してはいるのだけど、俺に誰も近づくなとばかりのオーラを放ち、普段はもっと賑やかな周りも高塚くんを見た瞬間誰もが口を噤んだ。

 扉を背に腕を組み、長い足を軽くクロスして真っ直ぐに莉乃を見据える。
 異様な静けさの中、高塚くんの声が響く。

「りの」

 再度名を呼ばれ、びくぅっと身体が跳ねた。
 迎えに来てくれたという喜びと、尋常ではない気配に緊張で口の中が乾く。

 反応しなければと思うのだけど、ただただ高塚くんを見るしかできない。いつにも増して魅力的に微笑み、切れ長の目は莉乃を捉える。
 ここ最近聞きなれた声。なのにその声を聞き、名前を呼ばれただけで、その瞳が真っ直ぐに自分を見ていると思うだけで、心臓がやばいくらいに早鐘を打った。
 返事をしなければと思うが、視線を返すだけで精一杯。

「話があるから一緒に来てくれる?」

 固まったまま動かない莉乃を見て、「りの」といい含めるように呼びながら、ふぅっと息を吐き出しゆっくりと歩きながらやってくる高塚くん。
 ちくちくとドキドキしすぎる胸の痛みを意識しないように押し込めながら、その姿を眺める。

 その間も、ずっと絡まる視線。
 高塚くんには私しか見えていないのではないかと思うほどじっと見つめられ、莉乃は囚われたようにその場を動けなかった。

 自分と高塚くん以外の物や人が見えなくなる。
 しばらくそうしていたが、高塚くんが莉乃の前に立ち覗き込むように屈むと、机の上に置いていた莉乃の手をとった。

「りぃの」
「高塚くん……」

 昨夜、振り払った手がまた莉乃を捕まえる。その大きさに、言い知れない安堵が込み上げなんだか泣きそうになった。

「俺はりのが好きだ。りのしかいらない」

 なにごとかと周囲が見守る中、高塚くんの告白。
 茶化す雰囲気でもなく、誰かがごくりと唾を飲む音が聞こえた。
 その言葉を信じたい。だけど、確かに高塚くんは好きな人がいないって言っていた。
 聞き間違いではないし、その衝撃は忘れようにも忘れられない。

「ぁ、…………っ」

 口を開こうにも、信じられないけど信じたいし、また昨日のように後悔するような言葉を言ってしまうと思うと言葉が出ない。
 口を閉じて唇を噛みしめる莉乃を見た高塚くんが、縋るような、それでいて譲らないとばかりの硬い声を出した。

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