罪人聖女の幸せな身請け~「死んだ」私を探し続けた彼が、妻にしたいと迎えに来ました~

八重

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第9話 公爵夫人お披露目会

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 いよいよ公爵夫人お披露目パーティーの日がやってきた。

「リン」
「はい、なんでしょうかフィーネ様」
「どうしよう、緊張する。なんか口から出そう」

 フィーネが色気のない発言をした直後、後ろから聞き慣れた声がする。

「もうっ! レディはそんなこと言わないの!!」
「大奥様っ!」

 フィーネは思わず声を上げて驚くと、エルゼがそれを聞いて嫌な表情を見せる。

「エルゼって呼んでよ~、なんかすごい年取った気分になる……」
「かしこまりました、エ、エルゼ様……」
「そうっ!! もうっ! 可愛い~!!!! フィーネちゃんのその照れた感じの顔が可愛すぎるのよぉ~!」

 またしても大きな胸を顔に当てられるようにして抱きしめられるフィーネは、なんとなくああ、自分もこんな豊満な胸だったらな~なんて思ってしまう。
 ただ、それより驚いたのはオズのほうであり、いきなり控室に入ってきたら自分の母親と妻が抱き合っているのが目に入ったのだから当たり前ではある。
 かなり胸が強調されたような格好になっていたため、オズはそっと目を逸らしながら会場の準備が整ったことを告げる。

「さあ、今日の主役はあなたよ、フィーネ! 胸張って行ってきなさい!!」
「はいっ!」

 フィーネはオズにエスコートされながら、控室を出て会場となるラウンジへと向かった──。


 会場にフィーネが姿を現すと、大きな歓声がわっと沸き上がる。
 ラウンジにある大階段をゆっくりと降りていきながら、フィーネは堂々とした様子で皆に会釈をする。

 階段下に到着すると、オズが声をあげて宣言する。

「知っての通り、彼女は元々私の婚約者でした。事情があって教会に預けられておりましたが、この度、正式に私の妻となりましたことをここで発表させていただきます」

 その言葉が会場に響き渡ると、大きな歓声と二人を祝う声がそこかしこから湧き上がってくる。
 フィーネは夫であるオズの挨拶が終わったことのと同時に、綺麗で見事なカーテシーで挨拶をした。
 二人はお互いを見合って、安心したように笑顔を浮かべた──。


「では、フィーネ様は教会でお育ちに?」
「はい、神秘力が少しだけありましたので、そちらを買われて聖女見習いとして生活しておりました」
「まあ、すごいわ!」

 オズやエルゼと話し合って、教会に住んでいた頃は「聖女見習いとして生活していた」ということにした。
 虐げられていたなどと言えば、教会を敵に回してしまうことになる。
 領民の中には教会に足しげく通って信仰深い者もいたため、配慮したのだ。
 だが、しかし隠せないことが一つ──。

「でも、フィーネ様って罪人聖女って言われてたって噂だよな」
「ああ、あの礼拝堂の火事の原因になったってやつだろ? なんでそんなやつをオスヴァルド様は妻に……」
「どーせ、色仕掛けでもしたんだろ」
「ああ、なるほどな」

 フィーネにも聞こえてくるほどの声の大きさで話されている内容は、世間の一部に広がっている噂。
 貴族たちの中でも情報収集に優れた者も多く、こうしてフィーネの悪い噂を聞きつけて非難をする者もいた。
 真実はフィーネの親友のせいであったのだが、自分の証言を言っても信じてもらえるわけないと、フィーネはワインを嗜みながら会話する貴族たちの話を唇を噛んで聞かないようにと務めた。

「私の妻を非難するのはやめていただきたい」

 他の貴族たちと会話していたオズが、フィーネの悪い噂を口にして非難する者たちにそう言いながら近寄っていく。
 その顔は当主としての威厳のある表情を浮かべながらも、目の奥では妻を侮辱された怒りが見える。

「んぐっ」

 悪口を言っていた彼らは一気に黙って、オズから目を逸らす。
 オズは彼らの前に立つと、凛とした表情と声で告げた。

「礼拝堂の火事の犯人がフィーネというのは嘘です。エルツェ公爵家の名のもとに誓いましょう」
「エルツェ卿がおっしゃるのであれば……」

 彼らは気まずそうな表情を浮かべながら会釈をして早々に去っていく。
 オズはそのまま会場中に響き渡る声で宣言する。

「この機会に申し上げます! フィーネは心の綺麗な美しい女性です。エルツェ公爵家において誓いましょう! 神に誓っても構いません! そして、私はそんな彼女の純真さに惹かれて妻になってほしいとお願いをしました! 私の全てを捧げて彼女を守りましょう」

 大勢の前での改めてのプロポーズに、フィーネは顔を真っ赤にしながら恥ずかしさで俯きながら、一歩一歩後ろに後ずさる。
 後ずさってしまうフィーネに対し、オズは彼女の肩を抱くと、ぐっと引き寄せてまわりに見せつけるように頬に唇をつけた。

「やるわね、我が息子ながら」

 そんな風に階段の上から眺めていたエルゼが呟いた──。
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