ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばす 規格外ダンジョンに住んでいるので、無自覚に最強でした

むらくも航

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第三章 秘匿ダンジョン

第89話 高天原へ

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<ホシ視点>

「こんにちはー」

 休日のお昼過ぎ。
 ヤマダさんとの戦闘から一日経ち、俺は配信を開始する。
 
《こんにちは~!》
《連日の配信で嬉しい》
《今日も早めだな!》
《ヤマダの所でキャンプしたんだっけ》

「そうなんです。あと……なんか道が開かれました」

 俺はぐいっとカメラを前方へと向ける。
 そこには半透明に光る巨大な階段が出現していた。
 ヤマダさんが住む山から、天へと昇るように。

《ほわっ!?》
《なんじゃありゃあ!?》
《昨日なかったよな!?》
《おかしいおかしいww》
《キャンプで何があったんだよwww》
《なんでダンジョンなのに上に登るんだ……》

 予想通り、コメント欄には動揺が広がる。
 俺はふぅと一息つき、回答した。

「それは……俺にも分かりません!」

《分かんねえのかよwww》
《やかましいわw》
《ホシ君が分かるはずなかった》
《知ってました》

 俺にも分からないのは事実。
 でも、一つだけ得た情報を共有した。

「あの先には“高天原たかまがはら”があるそうです。俺も行ったことはありません」

《高天原だと!?》
《ガチで天界だな》
《とことん日本神話だ》
《やっぱりここが神話の舞台で合ってます?》
《てか家の中で行ったことないってなんだよw》

 最後のコメントには激しく同意だ。
 なんで俺んちでここまで苦労してるのかは、本当に分からない。
 でも、行きたい気持ちには変わりなかった。

「あそこにはじいちゃんが残した試練があるみたいです。今日は高天原あそこにいきます」
 
 俺が視線を逸らすと、共に行くメンバーがカメラの画角に入る。

 一緒に行くのは、ペット三匹と姉さん。
 流転くんはげっそりしていたから帰ってもらった。
 ここからは、この五人でおじいちゃんの真実を探りに行く。

「それでは行ってみましょ~!」

 天界への階段は、一段が巨大で半透明に光っている。
 落っこちるのが心配なぐらいだ。
 でも、ペット達は勢いよく昇っていく。

「きゅいっ、きゅいっ!」
「ぼおっ! ぼおっ!」
「わふーっ!」

 めろんといちごはそもそも飛んでいるので、問題ない。
 二匹をわたあめが必死に追いかけている形だ。
 ゆっくり上がる俺なんかよりよっぽど先に行って、高天原をワクワクしているように見える。

《かわいい~!》
《二匹はどこまでも飛べるもんなあw》
《わたあめがんばれ~》
《癒しの空間》
《新しいとこが嬉しいのかな》
《ペットたち張り切ってるね笑》

 そうして雑談を交えたりする内に、かなり階段を上ってきた。

「段々高くなってきましたねー」

 下を見れば、地面からの距離がうかがえる。
 昔連れてってもらった電波塔のガラス床みたいだ。
 地下三階の雲は本来のそれより低い位置にあるので、雲の方が近づいてきていた。

《ダンジョンって不思議だよなあ》
《こんなの意味わからねえもんな》
《いやこれはホシ君ちが異常だろww》
《まじで『魔境』で草》
《色んな種族いたな》
《地下三階も最奥か?》

 そんなこんなで、地下三階の雲の下までくる。
 
「行くよ、姉さん」
「ええ」

 雲を超えれば、そこは高天原らしい。
 エリカ姉さんに確認を取り、俺はペット達と足並みをそろえて踏み入れた。
 すると見えてきたのは──神々こうごうしい場所。

「なんだこれえーーー!?」

 視界一面に広がる、美しい自然だ。
 雲には実体があり、辺りにはそれぞれの季節の色を宿す山々があった。
 春の山は桜、秋の山は紅葉など、季節に関係なく綺麗な花が実っていた。

 地上では考えられない、幻想的な景色だ。

《はいいいいいいい!?》
《やばすぎるだろおお!?》
《どうなってんだ!?》
《すっげえええええ!!》
《季節とか関係ないの???》
《雲の上に景色があるのかよ!!》
《雲って立てるんでしたっけ?笑》
《ダメだ頭おかしくなりそう》
《エグすぎて笑っちまうwww》
 
 これには俺も驚きだ。
 家の中にまだこんな場所があったなんて。
 それに、細かく眺めてみると、山々だけじゃないことが分かる。

「あれって魔素水かな?」

 春の山の前には、巨大な湖。
 おそらく魔素水の色だと思うけど、いつもより濃い・・
 俺はふらふら~っと近づくと、上から声が聞こえてきた。

「春は生命が芽吹く季節。ゆえにこれは魔素水の源流ですよ」
「え!?」

 俺はとっさに見上げると、ピカーッとまぶしい女性が降りてきた。

 ひたいには日の紋を宿して、体が光り輝いている。
 優しく微笑む様は、まるで女神のようだ。
 白の和装をまといながら、扇を揺らして口を開いた。

「はじめまして。私はアマテラス」
「アマテ……ええ!?」

 さすがの俺でも聞いたことがある。
 驚いたばかりに思わず口に出してしまった。

「あの閉じこもっちゃった人ですか?」
「…………」

《ホシ君www》
《印象それかよwww》
天岩戸あまのいわと伝説な》
《初対面でそれはひどくて草》
《せっかくすごい登場だったのにwww》
《アマテラス様にはそれはないだろ笑》
《物怖じしないホシ君》
《神の前でもホシ君は変わらない》
《家主なんだからいいだろww》

 しまった、学校で習ったからつい聞いてしまった。
 さすがに失礼だったかもしれない。
 アマテラスさんはコホンと一息つくと、ジト目を向けてくる。

「……あ、あれはあくまで伝説です」
「そうなんですね」
「はい、私は断じて引きこもりではありません。むしろ陽キャです。太陽だけに」
「ふーん」
「途中で放り出すのやめてくださいね!?」

 アマテラスさんは扇を向けてくる。

《アマテラスさんwww》
《せっかくノってくれたのに笑》
《すでにホシ君のペースで草》
《かわいいじゃん》
《アマテラス様でも掴めないのかw》
《ホシ君には敵わないw》

 アマテラスさんはため息をつく。

「まったく、あなたは本当に……」
「がた?」
「あなたのおじいちゃんのことです」

 すると、ようやく本題に入ったみたいだ。

「伝言は預かっております。そこで資格があるかお試しいたします」
「えと?」
「最終試験よ、ホシ君」
「姉さん!?」

 姉さんは口を挟むと、アマテラスの横に並んだ。
 見届けるつもりなのかもしれない。
 姉さんにうなずいたアマテラスさんは、両手を掲げる。

 すると、どこからともなく鏡が顕現けんげんした。

八咫やたのかがみ

 楕円形の巨大な鏡だ。
 こちらを向くと、俺やペット達を映している。
 でも、すぐに鏡面がぐにゃりと変な景色になっていく。

「これはあなたにとって脅威を感じる者を映し出します。今から現れる虚像きょぞうを倒すことができれば、試練は突破といたしましょう」
「脅威……?」

《ホシ君より強い奴……?》
《そんなのいるか?w》
《でもホシ君は思ってる人はいるかも》
《いねえだろ》
《たぶん深く考えてないからな》
《それは言えてる》

「ひ、ひどい……」
 
 コメント欄からバカにされてるけど、アマテラスさんは違ったみたい。

「いいえ、一人いるみたいですよ」
「え?」
「脅威とは感じていなくても、“憧れ”という似た感情を持った人物が」
「……!」

 鏡から何かが浮かび上がる中、アマテラスさんは続ける。

「憧れは自分より上の者にしか抱きません。あなたは深層心理で、この人物を脅威に感じているのです」
「ま、まさか……!」

 そうして、鏡から虚像が浮かび上がった。
 思った通りのシルエットだ。

「わしじゃよ」
「お、おじいちゃん!?」
 
 浮かび上がったのは、おじいちゃん──彦根ギンガだ。
 加えて、もう三匹・・

「そして、彼らにも」
「「「……!」」」

 出てきたのは、おじいちゃんの世代のペット達。
 めろん達がよく遊んでいた三匹だ。
 
 アマテラスさんは再び上に昇っていく。

「これはあなた方の記憶にあるままの姿。すなわち四年前の姿です」
「……!」
「彦根ホシ、そして同世代のペット達よ」

 そうして、扇を広げて口にした。

「その力を示してください」
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