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第35話 マルム・フォーロス
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<三人称視点>
その日の夕方。
「おい、この俺が野宿だと?」
とある地点にて、怒りの目を向ける者がいた。
フォーロス家の実子マルムだ。
「ふざけんのも大概しろよ! なあ!?」
「す、すみません!」
マルムがあたっているのは、フォーロス家の領土から派遣された冒険者だ。
今回はマルムの護衛と協力を兼ねる。
「襲撃は明日だろ? なんで前夜からいなきゃならねんだよ」
「ま、万が一ということもありますし……」
「万が一で俺を汚えとこで寝かすのかよ! ああ!?」
「ぐっ!」
怒り心頭のマルムは、男をドカっと蹴る。
それには近くの少女が駆け寄った。
「だ、大丈夫ですか!」
「ああ、ありがとう……」
だが、マルムの視界に入った少女は、次の標的となる。
「おい、なんだお前は」
「わ、私も同行させていただく冒険者“フィル”です!」
地毛の茶髪ショートカットに、小柄な体型。
装備も軽く動きやすさを重視している。
それでも、キッとマルムに向ける視線は強気だ。
「ほお」
そんな強気な表情に、マルムは少し目をかける。
手始めに質問から始めたのだ。
「で、ギフトはなんだよ」
「それは……」
「どうした、早く言え」
「ちゅ、【中級テイマー】です」
だが、途端マルムはぶっと吹き出した。
「アッハッハッハ! テイマーかよ! とんだ不遇ギフトじゃねえか!」
「……っ!」
「それで冒険者やってんのか!? 逆に尊敬するわ!」
「そ、そんな言い方!」
ニヤリとしたマルムは、いじわるそうにたずねる。
「なに、お金ないの?」
「……!」
マルムの言う事は当たっていた。
母子家庭で育ったフィルだが、半年前に母が倒れてしまったのだ。
そこで今の仕事に加えて、副業として精一杯冒険者もやっている。
不遇職テイマーにもかかわらず、自分にできることをしようと。
今回の作戦に参加したのも、報酬が弾むと聞いたからだ。
そんな事情も知らずにバカにするマルムに、フィルは返した。
「そうですよ! 私にはお金が必要なんです!」
「そうかそうか、だったら稼ぐ方法ならあるぜ?」
「な、なんですか?」
「俺の奴隷になれ。幸い顔と体は良いからな。言う通りにしたら毎日お賃金くれてやるぜ?」
マルムは下種な顔で舌なめずりをする。
ぞっとしたフィルは、とっさに拒否した。
「そ、そんなの……!」
「ま、嫌なら無理は言わねえぜ? 優しいだろ? アッハッハッハ!」
「……っ!」
マルムの態度に屈辱を受け、フィルは口に出してしまう。
「どうして……」
「あん?」
「どうして、そんなひどいことを言えるのですか……」
すると、マルムは小ばかにした顔で答える。
「お前みたいな無能を見てると吐き気がすんだよ。テイマーのくせに、何かをしようとすんのがな」
「……」
「分かったら失せろ。そこのどんくせえ男も連れてけ」
「……は、はい」
そうしてフィルは、マルムに蹴られた男を連れて引いた。
「ったく。どいつもこいつも」
夕食後、マルムは馬車で横になっていた。
すると、合流したエスガルドの冒険者が近くで話しているのが聞こえる。
「最近すげえ新人が現れたらしいぜ」
「ああ、あのシルリアさんに勝ったんだろ?」
「俺も見てたけどすごかったぞ」
(なんの話だ?)
暇だったマルムは、馬車を下りて尋ねた。
「詳しく聞かせろ」
「これはマルム・フォーロス様! 詳しくとは、新人のことでしょうか!」
「ああ、それだ」
「名前はたしか“アケア”と言いまして」
「……は?」
すると、途端にマルムは顔をしかめる。
「おい、そりゃどういう──」
「ご報告です!」
「あん?」
だが、続きを聞こうとした中で、見張りが戻ってきた。
「マルム様! B地点にて魔族が現れたとのことです!」
「向こうのエリアか」
「はい! マルム様も大至急で備えるように──」
「そんなものいらん」
「え?」
マルムはニヤリとした。
「全員に伝えろ。今からそこへ向かうとな」
「ですが持ち場を離れることに……」
「あ? 俺の言う事が聞けねえのか」
「か、かしこまりました!」
しかし、駆けつけたフィルは反対する。
「マルム様! それではこの地点に現れた時にどうされるのですか!」
「知るか。そもそも来るか分からねえんだ。だったら俺は一体でも多く魔族を殺すんだよ。じゃねえと来た意味がねえ」
「そんな……!」
(このお坊ちゃまが……!)
ギリっと唇とかむフィルに、マルムは上から口にした。
「それとも一人で置き去りにされるか? オーディアに戻った時には、命令違反した愚図だと肩書きを背負うことになるぜ?」
「……従います」
「フン、それでいい」
こうして、ついに魔族との王都を賭けた戦いが始まった。
その日の夕方。
「おい、この俺が野宿だと?」
とある地点にて、怒りの目を向ける者がいた。
フォーロス家の実子マルムだ。
「ふざけんのも大概しろよ! なあ!?」
「す、すみません!」
マルムがあたっているのは、フォーロス家の領土から派遣された冒険者だ。
今回はマルムの護衛と協力を兼ねる。
「襲撃は明日だろ? なんで前夜からいなきゃならねんだよ」
「ま、万が一ということもありますし……」
「万が一で俺を汚えとこで寝かすのかよ! ああ!?」
「ぐっ!」
怒り心頭のマルムは、男をドカっと蹴る。
それには近くの少女が駆け寄った。
「だ、大丈夫ですか!」
「ああ、ありがとう……」
だが、マルムの視界に入った少女は、次の標的となる。
「おい、なんだお前は」
「わ、私も同行させていただく冒険者“フィル”です!」
地毛の茶髪ショートカットに、小柄な体型。
装備も軽く動きやすさを重視している。
それでも、キッとマルムに向ける視線は強気だ。
「ほお」
そんな強気な表情に、マルムは少し目をかける。
手始めに質問から始めたのだ。
「で、ギフトはなんだよ」
「それは……」
「どうした、早く言え」
「ちゅ、【中級テイマー】です」
だが、途端マルムはぶっと吹き出した。
「アッハッハッハ! テイマーかよ! とんだ不遇ギフトじゃねえか!」
「……っ!」
「それで冒険者やってんのか!? 逆に尊敬するわ!」
「そ、そんな言い方!」
ニヤリとしたマルムは、いじわるそうにたずねる。
「なに、お金ないの?」
「……!」
マルムの言う事は当たっていた。
母子家庭で育ったフィルだが、半年前に母が倒れてしまったのだ。
そこで今の仕事に加えて、副業として精一杯冒険者もやっている。
不遇職テイマーにもかかわらず、自分にできることをしようと。
今回の作戦に参加したのも、報酬が弾むと聞いたからだ。
そんな事情も知らずにバカにするマルムに、フィルは返した。
「そうですよ! 私にはお金が必要なんです!」
「そうかそうか、だったら稼ぐ方法ならあるぜ?」
「な、なんですか?」
「俺の奴隷になれ。幸い顔と体は良いからな。言う通りにしたら毎日お賃金くれてやるぜ?」
マルムは下種な顔で舌なめずりをする。
ぞっとしたフィルは、とっさに拒否した。
「そ、そんなの……!」
「ま、嫌なら無理は言わねえぜ? 優しいだろ? アッハッハッハ!」
「……っ!」
マルムの態度に屈辱を受け、フィルは口に出してしまう。
「どうして……」
「あん?」
「どうして、そんなひどいことを言えるのですか……」
すると、マルムは小ばかにした顔で答える。
「お前みたいな無能を見てると吐き気がすんだよ。テイマーのくせに、何かをしようとすんのがな」
「……」
「分かったら失せろ。そこのどんくせえ男も連れてけ」
「……は、はい」
そうしてフィルは、マルムに蹴られた男を連れて引いた。
「ったく。どいつもこいつも」
夕食後、マルムは馬車で横になっていた。
すると、合流したエスガルドの冒険者が近くで話しているのが聞こえる。
「最近すげえ新人が現れたらしいぜ」
「ああ、あのシルリアさんに勝ったんだろ?」
「俺も見てたけどすごかったぞ」
(なんの話だ?)
暇だったマルムは、馬車を下りて尋ねた。
「詳しく聞かせろ」
「これはマルム・フォーロス様! 詳しくとは、新人のことでしょうか!」
「ああ、それだ」
「名前はたしか“アケア”と言いまして」
「……は?」
すると、途端にマルムは顔をしかめる。
「おい、そりゃどういう──」
「ご報告です!」
「あん?」
だが、続きを聞こうとした中で、見張りが戻ってきた。
「マルム様! B地点にて魔族が現れたとのことです!」
「向こうのエリアか」
「はい! マルム様も大至急で備えるように──」
「そんなものいらん」
「え?」
マルムはニヤリとした。
「全員に伝えろ。今からそこへ向かうとな」
「ですが持ち場を離れることに……」
「あ? 俺の言う事が聞けねえのか」
「か、かしこまりました!」
しかし、駆けつけたフィルは反対する。
「マルム様! それではこの地点に現れた時にどうされるのですか!」
「知るか。そもそも来るか分からねえんだ。だったら俺は一体でも多く魔族を殺すんだよ。じゃねえと来た意味がねえ」
「そんな……!」
(このお坊ちゃまが……!)
ギリっと唇とかむフィルに、マルムは上から口にした。
「それとも一人で置き去りにされるか? オーディアに戻った時には、命令違反した愚図だと肩書きを背負うことになるぜ?」
「……従います」
「フン、それでいい」
こうして、ついに魔族との王都を賭けた戦いが始まった。
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