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第56話 とある予兆
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「【ぷにぷに全身武装】!」
アケアがスライム達を集合させ、本気の戦闘態勢を取った。
魔族の力を頼ったマルムに対抗する形だ。
アケアとマルムが対峙するのは二度目。
だが、前回とは違ってアケアは本気だ。
そうして、二人は再びぶつかり合った。
「テイマーが調子に乗ってんじゃねえぞ!」
「魔族に墜ちた君には負けない!」
半壊したフォーロス家屋敷の中、両者がぶつかる度に衝撃波が飛び交う。
屋敷もすでにボロボロだが、マルムは構わず刃を向け続ける。
「殺す、殺す殺す! お前を殺す!」
「……!」
その言動は、剣を重ねる度に異常になっていく。
まるで自我を失っているかのようだ。
攻防を繰り広げる中でも、アケアも困惑を隠せない。
(一体何が君をここまでさせるんだ!)
その答えはマルムの口から飛び出した。
「お前がずっと憎かった!」
「……!」
マルムは自我を失いかけている。
この言葉は無意識に放たれた本心だろう。
こうなるきっかけは、アケアがフォーロス家に迎えられた時にさかのぼる。
────
三年前、マルムが十二歳の時。
「養子を取るだと?」
父ガロンの言葉に、マルムは顔をしかめた。
ガロンが『養子を取る』と口にしたからだ。
「そのつもりだ」
「なんでだよ! 俺だけで十分だろ!」
マルムは強く反対した。
しかし、ガロンはすでに決めた様子だ。
「お前には期待しているが、やはりギフトは運が絡むからな」
「じゃあ【祝福の儀】の結果を見てからでいいだろ!」
「そういうわけにもいかん」
すでに口は悪いが、マルムの気持ちはまだ従順だった。
端的に言えば、父に自分だけを見て欲しかったのだ。
母は他界し、それから父はより厳しくなった。
跡継ぎの責任を一身に受けたのが、マルムが歪んだ理由かもしれない。
「いらねえよ、養子なんか!」
「それは当主の私が決めることだ」
「……チッ!」
それでも、父ガロンは話を聞かず。
すると、じきにアケアがフォーロス家に迎えられることになる。
だが、この時すでにマルムは、養子をいじめることを決めていたのだろう。
月日は流れ、マルムが魔族騒動から帰還した後。
「なんだと?」
突如現れた“つなぎ”だという者に、マルムは誘われる。
実は、この男もまた魔族である。
男の上司は、アケアに【思考支配】を仕掛けた魔族──ハーティだ。
「こちらは試用ですが『強制覚醒薬』と言いまして、マルム様のさらなる力を引き出すことでしょう」
「ほう」
「これならばテイマーアケアにも勝てるかと」
「……!」
プライドが高いマルムだ。
条件は聞かずにすぐに手を出した。
「渡せ!」
「かしこまりました」
だが、この後にさらなる屈辱を味わうことになる。
数日後。
「なぜだあ!」」
マルムはアケアに敗北したのだ。
魔族騒動で活躍を奪われ、直接対決で負け、マルムのプライドはズタズタになっていた。
マルムは、隣に現れた“つなぎ”の男に八つ当たりをする。
「あれを飲んだから勝てるんじゃなかったのかよ」
「あれは試用ですので」
「じゃあさっさと本物を寄こせ!」
すると、男はニヤリとした。
「これは魔族の血を使った『強制覚醒薬』です。人間には少々毒ですが、力が溢れてきますよ」
「……! があああああああああ!」
そうして、マルムは愚かにも甘い誘惑に乗った。
それが自我を失うほど強力とも知らず。
ここまで全てハーティの思惑通りだっとは知らず──。
────
攻防の最中、マルムは突如苦しみ始める。
「ガ、ガアアアアアア!」
「……!」
体中から黒い血しぶきを吹き出し、魔力を溢れさせる。
同時に黒く染まっていく全身は、すでに人間の体を成していない。
これも『強制覚醒薬』の影響だ。
(これはもう、ほとんど魔族じゃないか!)
アケアもマルムが何を摂取したかはなんとなく察している。
だからこそ、全力で対応した。
「仕方ない!」
次の魔族を生み出さないためなのか。
マルムを助けるためなのか。
動機は自分でも定かじゃないまま、アケアの体は自然に動く。
「グオオオオオオ!」
「耐えてみせろよ!」
マルムの攻撃をぷにぷにソードで受け止め、その隙に背中からスライム達が顔を覗かせる。
ぷにぷに全身武装の真骨頂、“全方位砲撃”だ。
『『『凍っちゃえー!』』』
「ガア!?」
スライム達の氷魔法でマルムは凍結した。
動かない状態で、魔族成分を取り出すべく治癒するためだ。
しかし、マルムはすぐに動き出す。
「ガアアアアアアア!」
「……!」
氷をぶち破り、魔族の血を全身から吹き出した。
アケアも予想外の異常すぎるパワーだ。
すると、マルムの体は黒い光を放ち始める。
「グワアアアアアア!」
「こ、これは……!?」
その現象は、稀に聞く“ギフト覚醒”の予兆。
しかし、同時に空から声が聞こえてきた。
「は~い、お疲れ様っ」
「……!」
その声は、アケアに【思考支配】を仕掛けた魔族──ハーティの声だった。
アケアがスライム達を集合させ、本気の戦闘態勢を取った。
魔族の力を頼ったマルムに対抗する形だ。
アケアとマルムが対峙するのは二度目。
だが、前回とは違ってアケアは本気だ。
そうして、二人は再びぶつかり合った。
「テイマーが調子に乗ってんじゃねえぞ!」
「魔族に墜ちた君には負けない!」
半壊したフォーロス家屋敷の中、両者がぶつかる度に衝撃波が飛び交う。
屋敷もすでにボロボロだが、マルムは構わず刃を向け続ける。
「殺す、殺す殺す! お前を殺す!」
「……!」
その言動は、剣を重ねる度に異常になっていく。
まるで自我を失っているかのようだ。
攻防を繰り広げる中でも、アケアも困惑を隠せない。
(一体何が君をここまでさせるんだ!)
その答えはマルムの口から飛び出した。
「お前がずっと憎かった!」
「……!」
マルムは自我を失いかけている。
この言葉は無意識に放たれた本心だろう。
こうなるきっかけは、アケアがフォーロス家に迎えられた時にさかのぼる。
────
三年前、マルムが十二歳の時。
「養子を取るだと?」
父ガロンの言葉に、マルムは顔をしかめた。
ガロンが『養子を取る』と口にしたからだ。
「そのつもりだ」
「なんでだよ! 俺だけで十分だろ!」
マルムは強く反対した。
しかし、ガロンはすでに決めた様子だ。
「お前には期待しているが、やはりギフトは運が絡むからな」
「じゃあ【祝福の儀】の結果を見てからでいいだろ!」
「そういうわけにもいかん」
すでに口は悪いが、マルムの気持ちはまだ従順だった。
端的に言えば、父に自分だけを見て欲しかったのだ。
母は他界し、それから父はより厳しくなった。
跡継ぎの責任を一身に受けたのが、マルムが歪んだ理由かもしれない。
「いらねえよ、養子なんか!」
「それは当主の私が決めることだ」
「……チッ!」
それでも、父ガロンは話を聞かず。
すると、じきにアケアがフォーロス家に迎えられることになる。
だが、この時すでにマルムは、養子をいじめることを決めていたのだろう。
月日は流れ、マルムが魔族騒動から帰還した後。
「なんだと?」
突如現れた“つなぎ”だという者に、マルムは誘われる。
実は、この男もまた魔族である。
男の上司は、アケアに【思考支配】を仕掛けた魔族──ハーティだ。
「こちらは試用ですが『強制覚醒薬』と言いまして、マルム様のさらなる力を引き出すことでしょう」
「ほう」
「これならばテイマーアケアにも勝てるかと」
「……!」
プライドが高いマルムだ。
条件は聞かずにすぐに手を出した。
「渡せ!」
「かしこまりました」
だが、この後にさらなる屈辱を味わうことになる。
数日後。
「なぜだあ!」」
マルムはアケアに敗北したのだ。
魔族騒動で活躍を奪われ、直接対決で負け、マルムのプライドはズタズタになっていた。
マルムは、隣に現れた“つなぎ”の男に八つ当たりをする。
「あれを飲んだから勝てるんじゃなかったのかよ」
「あれは試用ですので」
「じゃあさっさと本物を寄こせ!」
すると、男はニヤリとした。
「これは魔族の血を使った『強制覚醒薬』です。人間には少々毒ですが、力が溢れてきますよ」
「……! があああああああああ!」
そうして、マルムは愚かにも甘い誘惑に乗った。
それが自我を失うほど強力とも知らず。
ここまで全てハーティの思惑通りだっとは知らず──。
────
攻防の最中、マルムは突如苦しみ始める。
「ガ、ガアアアアアア!」
「……!」
体中から黒い血しぶきを吹き出し、魔力を溢れさせる。
同時に黒く染まっていく全身は、すでに人間の体を成していない。
これも『強制覚醒薬』の影響だ。
(これはもう、ほとんど魔族じゃないか!)
アケアもマルムが何を摂取したかはなんとなく察している。
だからこそ、全力で対応した。
「仕方ない!」
次の魔族を生み出さないためなのか。
マルムを助けるためなのか。
動機は自分でも定かじゃないまま、アケアの体は自然に動く。
「グオオオオオオ!」
「耐えてみせろよ!」
マルムの攻撃をぷにぷにソードで受け止め、その隙に背中からスライム達が顔を覗かせる。
ぷにぷに全身武装の真骨頂、“全方位砲撃”だ。
『『『凍っちゃえー!』』』
「ガア!?」
スライム達の氷魔法でマルムは凍結した。
動かない状態で、魔族成分を取り出すべく治癒するためだ。
しかし、マルムはすぐに動き出す。
「ガアアアアアアア!」
「……!」
氷をぶち破り、魔族の血を全身から吹き出した。
アケアも予想外の異常すぎるパワーだ。
すると、マルムの体は黒い光を放ち始める。
「グワアアアアアア!」
「こ、これは……!?」
その現象は、稀に聞く“ギフト覚醒”の予兆。
しかし、同時に空から声が聞こえてきた。
「は~い、お疲れ様っ」
「……!」
その声は、アケアに【思考支配】を仕掛けた魔族──ハーティの声だった。
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