魔境の森に捨てられたけど、最強のテイマーになって生還した~外れギフト【スライムテイム】でスライムを無限に仲間にして成り上がり無双~

むらくも航

文字の大きさ
57 / 71

第57話 マッチポンプ

しおりを挟む
 アケアとマルムが戦っていた頃、フォーロス領の市街地。

「ぷよ! ぷよよ!」

 アケアのスライムがぴょんぴょんと跳ねる。
 何やら慌てた様子だ。
 その近くにはフィルが待機していた。

「スライム君、異常があったの!?」
「ぷよ!」

 スライムはうんっとうなずく。

 このスライムは伝達係だ。
 『ソコソコ平原』に散らばったスライム偵察ていさつ隊から情報を受け取り、フィルや他の冒険者たちへ伝えるための。

「じゃあ本当に魔物が街に向かって!?」

 前日、アケアはフィルに「街を守る準備をしてほしい」と頼んでいた。
 もし想定する最悪の事態が起きれば、アケアが屋敷にいる間に街が襲われると考えたからだ。
 つまり、アケアの言っていた“万が一”が当たってしまった。

 それでも、フィルは冒険者たちと出来る限りの準備をした。

「通達! 冒険者は街を守るように包囲網を!」
『『『了解!』』』

 通信機器を使い、フィルは全冒険者に指示を出す。
 一斉に攻めてきたとしても、『ソコソコ平原』レベルの魔物なら対処できると考えてのことだ。

 加えて、アケアのスライムもそれなりにいる。
 これで準備は万端のはず・・だった。

 その時、フィルの近くの二匹がとある方向を目がけて吠える。

「くぅん!」
「ぎゃう!」
「え、どうしたの!?」

 子犬のシロロン(昨日命名)と、ドラゴンのドランだ。

「くぅん……」
「ぎゃう……」

 その目は、まだ見ぬ強敵の気配を感じ取っているようだった。

 



 再び、フォーロス家の屋敷。

「グアアアアアアア!」

 マルムが悲鳴にも聞こえる大声を上げ、黒い光を放ち始める。

 その姿は、アケアがエスガルドの王都で聞いた“とある話”に似ていた。
 ギフトはごく稀に覚醒・・することがあると。

「まさか覚醒するのか!?」
「グアアアアアアアアア!」

 ギフト覚醒とは、大いなる力を持つ者のみが到達できる領域。
 覚醒条件はギフトによって違うが、共通する条件は『ギフトの最大限の力を引き出している』こと。
 つまり、ギフトの潜在能力を究極まで引き出した者のみが限界突破をするのだ。
 
 そんな覚醒ギフトの保持者には、さらなる力が与えられる。
 身体能力・魔法において、通常ギフトとは一線を画すものが授けられるのだ。

「グアアアアアア!」
「なんて威圧感だ!」

 現に、覚醒している最中のマルムですら、凄まじい威圧感だ。
 アケアはその力を身に染みて感じている。

「グアアッ!」
「……!」

 そして、マルムの黒い光が収まる。
 すると、一瞬マルムが冷静に戻った──のもつかの間、空から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「は~い、お疲れ様っ」
「……!?」
 
 アケアが振り向いた先にいたのは、ハーティだ。
 玄関で【思考支配マインド・コントロール】を仕掛けた、メイドの格好の魔族である。

「無事に覚醒できたわね。じゃ回収~」
「グアア!?」

 ハーティはマルムへ手を向けると、彼の体が吸収されていく
 ほとんど魔族のマルムは、体が魔力で構成されている。
 すると、マルムはそのままハーティの手の中へ消えた。

「な、何をしたんだ!?」
「うふふっ、私の狙いは最初から“覚醒ギフト”なの」
「……!」

 今の行動により、ハーティはマルムの覚醒した【剣聖】を奪ったようだ。

 ギフトを授かるのは人間のみ。
 ギフトを覚醒させられるのもまた人間のみだ。

 そこでハーティは、色々と仕掛けてマルムのギフトを育てた。
 覚醒させた後に自分のものにするために。
 魔族にさせたのも吸収しやすいからである。

 つまり、ハーティは初めから、覚醒後のギフトを奪うつもりでマルムに近づいたのだ。
 
「マルムのふくしゅう心を利用したのか」
「そうよぉ。人間って簡単よねぇ、復讐のためならころっと騙されちゃうもの」
「……っ」

 所詮しょせんマルムは前座でしかなかった。
 魔族の思惑はどこまでも上をいく。
 
「でも、マルム君にはもうちょっと頑張ってほしかったなぁ」
「なに?」
「本当はもう一つ・・・・覚醒したギフトがほしかったから」

 ハーティは妖艶ようえんな表情をアケアに向ける。
 
「あなたの【スライムテイム】もほしいの。もちろん覚醒させた上でねっ」
「……!」
「マルム君が頑張ったら、戦いの中で覚醒すると思ったのにぃ」

 どこまでも狡猾こうかつなハーティである。
 マルムとアケアの因縁の知り、全てを計算した上でマッチポンプしていたのだ。
 アケアはギリっと歯を噛みしめる。

「その力でどうするつもりだ!」
「どうするも何も、これが趣味なの」
「趣味?」
「そ。人をもてあそんで、培ったものを全て奪って。これ以上楽しいことはないわっ」

 それを聞けば、アケアは陰謀いんぼうを止めるしかない。

「じゃあ僕が相手になる!」
「も~、ちょっと待ちなさいよ」

 すると、ハーティは体をくねくねさせて恍惚こうこつとした表情を浮かべる。

「あーん、来た来た♡」
「?」
「マルム君のが馴染なじんできたみたい」

 それから、抑えていた魔力を爆発させる。

「お姉さんも結構強いんだからっ」
「……!?」

 アケアですら感じた事のない魔力量だ。
 以前の子爵級魔族グラヴィルとも比較にならない。
 だが、アケアは何か違和感を覚えた。

「まさか……」
「その通りよん」

 マルムの【剣聖】以外の威圧感を感じたのだ。
 すると、ハーティは舌を出しながら答える。

「私は三つの覚醒ギフトを持ってる」
「……!!」

ーーーーー
ハーティ

所持ギフト:【覚醒・魔女】【覚醒・上級治癒士】【覚醒・剣聖】(←New!)
ーーーーー

 幻の存在である“覚醒ギフト”を、ハーティは三つも所持している。
 そのどれもが最上位と呼ばれるギフトばかりだ。
 今回の顛末てんまつと同じような手段を使って、手に入れたのだろう。

「では改めまして」

 うふんっとセクシーポーズを取りながら、ハーティは自己紹介をした。

はくしゃく級魔族のハーティですっ」
「……!」

 アケアにさらなる敵が立ちはだかる──。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~

かくろう
ファンタジー
【ためて・放つ】という地味スキルを一生に一度の儀式で授かってしまった主人公セージ。  そのせいで家から追放され、挙げ句に異母弟から殺されかけてしまう。  しかしあらゆるものを【ためる】でパワフルにできるこのスキルは、最高ランクの冒険者すらかすんでしまうほどのぶっ壊れ能力だった!  命からがら魔物の強襲から脱したセージは、この力を駆使して成り上がっていく事を決意する。  そして命の危機に瀕していた少女リンカニアと出会い、絆を深めていくうちに自分のスキルを共有できる事に気が付いた。 ――これは、世界で類を見ない最強に成り上がっていく主人公と、彼の元へ集まってくる仲間達との物語である。

散々利用されてから勇者パーティーを追い出された…が、元勇者パーティーは僕の本当の能力を知らない。

アノマロカリス
ファンタジー
僕こと…ディスト・ランゼウスは、経験値を倍増させてパーティーの成長を急成長させるスキルを持っていた。 それにあやかった剣士ディランは、僕と共にパーティーを集めて成長して行き…数々の魔王軍の配下を討伐して行き、なんと勇者の称号を得る事になった。 するとディランは、勇者の称号を得てからというもの…態度が横柄になり、更にはパーティーメンバー達も調子付いて行った。 それからと言うもの、調子付いた勇者ディランとパーティーメンバー達は、レベルの上がらないサポート役の僕を邪険にし始めていき… 遂には、役立たずは不要と言って僕を追い出したのだった。 ……とまぁ、ここまでは良くある話。 僕が抜けた勇者ディランとパーティーメンバー達は、その後も活躍し続けていき… 遂には、大魔王ドゥルガディスが収める魔大陸を攻略すると言う話になっていた。 「おやおや…もう魔大陸に上陸すると言う話になったのか、ならば…そろそろ僕の本来のスキルを発動するとしますか!」 それから数日後に、ディランとパーティーメンバー達が魔大陸に侵攻し始めたという話を聞いた。 なので、それと同時に…僕の本来のスキルを発動すると…? 2月11日にHOTランキング男性向けで1位になりました。 皆様お陰です、有り難う御座います。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し
ファンタジー
 突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。  自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。  もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。  だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。  グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。  人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ
ファンタジー
 誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。  そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。  しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。  身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。  そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。  姿は美しい白髪の少女に。  伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。  最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。 ーーーーーー ーーー 閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります! ※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

処理中です...