1 / 55
8月25日 月曜日
第1話 始業式は青天の霹靂
しおりを挟む
八月二十五日。晴れ。予想最高気温は三十二度。
暑い盛りは過ぎたものの、夏の気配はまだまだ色濃く残っている。
きっと外より蒸しているに違いない体育館に詰め込まれた私たちは、それぞれあくびをかみ殺しながら始業式をやり過ごしていた。
そう、今日から二学期が始まるのだ。
(あーもう、退屈。あとどれくらい続くの……?)
私は正面の壁に埋め込まれている時計を見上げた。九時五十分──あと十分か、十五分もすれば解放されるだろうか。そう思いながらまた、こみ上げてきたあくびを我慢する。
特に寝不足というわけでもないはずなのに、式だの集会だの、とにかく一カ所に集められてひたすら話を聞くだけの時間は、どうしてこうも猛烈な眠気を誘うのだろう。
まあ、今日に関していえば始業式なので、ただの休みぼけが原因という可能性も否定しきれないけれど。
いずれにしても、今日という一日はこのどこか気だるげな雰囲気のまま終わる。そして、本格的に授業が始まる明日になって初めて、私たちは夏休みが終わってしまったという現実を痛感するのだ。それが毎度お決まりのパターンなのである。
「……えー、なお、今年の合唱祭については、えー、中止することが決まっておりますので、えー、例年のような時間割の変更はなく、えー、午後も普段通りの授業が、えー、あります」
ここがもし小学校だったら、絶対に男子たちに「えー」の数をカウントされているだろうな、なんてくだらないことを考えていた私は、教務の篠田直保先生が口にしたとんでもないニュースを危うく聞き流すところだった。
(──え?)
もともと静かだったはずの体育館が更にしん、とした。
生徒たち──特に二、三年生だ──は互いに顔を見合わせ、そして思い出したようにざわめきだす。私だって、隣前後に親しい友達がいたら同じことをしたと思う。だって──合唱祭が中止?
「はい、静かに。教務連絡は、えー、以上です」
篠田先生が注意したことで、ざわめきは一応静まった。それでも生徒たちの間には何とも言えない違和感が漂い続けている。
ついさっきまで私をあんなにも支配していた眠気でさえ、すっかり霧消してしまっていた。
暑い盛りは過ぎたものの、夏の気配はまだまだ色濃く残っている。
きっと外より蒸しているに違いない体育館に詰め込まれた私たちは、それぞれあくびをかみ殺しながら始業式をやり過ごしていた。
そう、今日から二学期が始まるのだ。
(あーもう、退屈。あとどれくらい続くの……?)
私は正面の壁に埋め込まれている時計を見上げた。九時五十分──あと十分か、十五分もすれば解放されるだろうか。そう思いながらまた、こみ上げてきたあくびを我慢する。
特に寝不足というわけでもないはずなのに、式だの集会だの、とにかく一カ所に集められてひたすら話を聞くだけの時間は、どうしてこうも猛烈な眠気を誘うのだろう。
まあ、今日に関していえば始業式なので、ただの休みぼけが原因という可能性も否定しきれないけれど。
いずれにしても、今日という一日はこのどこか気だるげな雰囲気のまま終わる。そして、本格的に授業が始まる明日になって初めて、私たちは夏休みが終わってしまったという現実を痛感するのだ。それが毎度お決まりのパターンなのである。
「……えー、なお、今年の合唱祭については、えー、中止することが決まっておりますので、えー、例年のような時間割の変更はなく、えー、午後も普段通りの授業が、えー、あります」
ここがもし小学校だったら、絶対に男子たちに「えー」の数をカウントされているだろうな、なんてくだらないことを考えていた私は、教務の篠田直保先生が口にしたとんでもないニュースを危うく聞き流すところだった。
(──え?)
もともと静かだったはずの体育館が更にしん、とした。
生徒たち──特に二、三年生だ──は互いに顔を見合わせ、そして思い出したようにざわめきだす。私だって、隣前後に親しい友達がいたら同じことをしたと思う。だって──合唱祭が中止?
「はい、静かに。教務連絡は、えー、以上です」
篠田先生が注意したことで、ざわめきは一応静まった。それでも生徒たちの間には何とも言えない違和感が漂い続けている。
ついさっきまで私をあんなにも支配していた眠気でさえ、すっかり霧消してしまっていた。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
あまりさんののっぴきならない事情
菱沼あゆ
キャラ文芸
強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。
充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。
「何故、こんなところに居る? 南条あまり」
「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」
「それ、俺だろ」
そーですね……。
カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。
椿の国の後宮のはなし
犬噛 クロ
キャラ文芸
架空の国の後宮物語。
若き皇帝と、彼に囚われた娘の話です。
有力政治家の娘・羽村 雪樹(はねむら せつじゅ)は「男子」だと性別を間違われたまま、自国の皇帝・蓮と固い絆で結ばれていた。
しかしとうとう少女であることを気づかれてしまった雪樹は、蓮に乱暴された挙句、後宮に幽閉されてしまう。
幼なじみとして慕っていた青年からの裏切りに、雪樹は混乱し、蓮に憎しみを抱き、そして……?
あまり暗くなり過ぎない後宮物語。
雪樹と蓮、ふたりの関係がどう変化していくのか見守っていただければ嬉しいです。
※2017年完結作品をタイトルとカテゴリを変更+全面改稿しております。
学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。
たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】
『み、見えるの?』
「見えるかと言われると……ギリ見えない……」
『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』
◆◆◆
仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。
劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。
ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。
後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。
尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。
また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。
尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……
霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。
3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。
愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー!
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる