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8月25日 月曜日
第2話 委員長の緊急招集
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その後私たちはそれぞれ教室に戻ってきたけれど、やっぱりどこもかしこも合唱祭中止の話でもちきりだった。
無理もないと思う。だって、「中止が決定している」ということ以外には何の説明もなかったのだから。
いったいいつ、誰の判断で中止になったのかはもちろん、なぜ中止になったのかすら、私たちは一切知らされなかった。
(ちょっと待ってよ、一体どういうことなの……なんで中止なの……?)
うちの学校では、合唱祭は体育祭や文化祭と並んで三大行事と称される一大イベントなのだ。相応の理由もなく中止になるなんて、正直考えられない。
だから私を含め、ほとんどの生徒は何かしらの説明を期待していたと思う。それなのに、始業式での篠田先生だけでなく、担任の本田昭二先生も合唱祭についてはまったく触れようとはしなかった。
ひょっとしたら、こちらから訊いてみるべきだったのかもしれない。
でも誰もそうしなかったのは、なんとなく訊いてはいけないような雰囲気を感じたからだろう。あるいは、訊いたとしてもたぶん答えてもらえないのだろうな、という予感というべきか。
「──おい、木崎。ちょっと」
斜め後ろの席から小声で名前を呼ばれる。
振り返ると、声の主である乾暁良がかすかに険しい表情でこちらを見ていた。
「これ、どういうことだと思う?」
「どういうこと、って言われても……」
私に訊かれても困る。
もちろん、彼が合唱祭の中止のことを言っているのはすぐにわかった。けれど私だって、彼と同じようにさっき初めて聞かされたのだ。
それでも、私に声をかけずにはいられなかった彼の気持ちはわからないでもない──というのも、私たちは同じ立場の人間なのだ。それも「合唱祭実行委員会」の委員という、極めて厄介な立場の。
私は「わからない」の意を込めて首を振った。
「……執行部は事情、何か知ってる?」
乾は早々とこちらに背を向け、今度は庄司幸宏くん──生徒会執行部の現副会長に話しかけている。例年、合唱祭の運営には生徒会執行部も関わっているのだ。あくまで主体となるのは合唱祭実行委員会だけれど、それでも運営側であることには違いない。
私は淡い期待を胸に庄司くんの反応を見守る。けれど、彼もまた静かに首を振っただけだった。
ホームルームが終わってから、私は改めて乾に声をかけた。
「ねえ、どうする? とりあえず集まる……よね?」
合唱祭実行委員会はその名の通り合唱祭の運営委員会で、基本的に二・三年生を中心とした有志で構成される。その合唱祭実行委員会において、乾と私は委員長でこそないものの、中枢メンバーに数えられる立場にいるのだった。三年生である以上、自然なことではあるのだけれど。
「そうだな……まずはあいつに──あ」
(まずはあいつに、何?)と思ったけれど、追及はいったん保留にする。というのも、制服のポケットが同時にふるえたのだ。私たちはとっさに顔を見合わせ、すぐにそれぞれスマホを取り出して確認する。
《各位
今日の放課後、緊急会議を行います。
会議室として中校舎三階の少人数教室Aをおさえました。
急なことで申し訳ないですが、都合のつく限り参加してもらえると幸いです》
「あいつの方が早かったな」
画面を突き合わせて確かめるまでもなく、同じ文面を見ているのがわかる。
たった今私たちが受信したのは、メッセージアプリのグループ「合唱祭実行委員会」に流されたメッセージだった。その送り主こそ、乾の言った「あいつ」──合唱祭実行委員会の委員長こと新垣優也くんだ。
年度初めの顔合わせで連絡先を交換して以来、委員会関係の連絡は基本的にスマホのメッセージアプリで行うことにしていたのだけれど、今回のような緊急の招集には本当に便利だな、と改めて思う。
そして、乾の言うとおり新垣くんの行動の早さはさすがだった。
一応、この後には学期始め恒例の学力テストが控えているため、下校時間までは余裕がある。それでも連絡は早いに越したことはない。それに──。
「場所までしっかり確保してるあたり、抜かりないというかなんというか……」
私たちは再び顔を見合わせ、どちらからともなく肩をすくめた。
無理もないと思う。だって、「中止が決定している」ということ以外には何の説明もなかったのだから。
いったいいつ、誰の判断で中止になったのかはもちろん、なぜ中止になったのかすら、私たちは一切知らされなかった。
(ちょっと待ってよ、一体どういうことなの……なんで中止なの……?)
うちの学校では、合唱祭は体育祭や文化祭と並んで三大行事と称される一大イベントなのだ。相応の理由もなく中止になるなんて、正直考えられない。
だから私を含め、ほとんどの生徒は何かしらの説明を期待していたと思う。それなのに、始業式での篠田先生だけでなく、担任の本田昭二先生も合唱祭についてはまったく触れようとはしなかった。
ひょっとしたら、こちらから訊いてみるべきだったのかもしれない。
でも誰もそうしなかったのは、なんとなく訊いてはいけないような雰囲気を感じたからだろう。あるいは、訊いたとしてもたぶん答えてもらえないのだろうな、という予感というべきか。
「──おい、木崎。ちょっと」
斜め後ろの席から小声で名前を呼ばれる。
振り返ると、声の主である乾暁良がかすかに険しい表情でこちらを見ていた。
「これ、どういうことだと思う?」
「どういうこと、って言われても……」
私に訊かれても困る。
もちろん、彼が合唱祭の中止のことを言っているのはすぐにわかった。けれど私だって、彼と同じようにさっき初めて聞かされたのだ。
それでも、私に声をかけずにはいられなかった彼の気持ちはわからないでもない──というのも、私たちは同じ立場の人間なのだ。それも「合唱祭実行委員会」の委員という、極めて厄介な立場の。
私は「わからない」の意を込めて首を振った。
「……執行部は事情、何か知ってる?」
乾は早々とこちらに背を向け、今度は庄司幸宏くん──生徒会執行部の現副会長に話しかけている。例年、合唱祭の運営には生徒会執行部も関わっているのだ。あくまで主体となるのは合唱祭実行委員会だけれど、それでも運営側であることには違いない。
私は淡い期待を胸に庄司くんの反応を見守る。けれど、彼もまた静かに首を振っただけだった。
ホームルームが終わってから、私は改めて乾に声をかけた。
「ねえ、どうする? とりあえず集まる……よね?」
合唱祭実行委員会はその名の通り合唱祭の運営委員会で、基本的に二・三年生を中心とした有志で構成される。その合唱祭実行委員会において、乾と私は委員長でこそないものの、中枢メンバーに数えられる立場にいるのだった。三年生である以上、自然なことではあるのだけれど。
「そうだな……まずはあいつに──あ」
(まずはあいつに、何?)と思ったけれど、追及はいったん保留にする。というのも、制服のポケットが同時にふるえたのだ。私たちはとっさに顔を見合わせ、すぐにそれぞれスマホを取り出して確認する。
《各位
今日の放課後、緊急会議を行います。
会議室として中校舎三階の少人数教室Aをおさえました。
急なことで申し訳ないですが、都合のつく限り参加してもらえると幸いです》
「あいつの方が早かったな」
画面を突き合わせて確かめるまでもなく、同じ文面を見ているのがわかる。
たった今私たちが受信したのは、メッセージアプリのグループ「合唱祭実行委員会」に流されたメッセージだった。その送り主こそ、乾の言った「あいつ」──合唱祭実行委員会の委員長こと新垣優也くんだ。
年度初めの顔合わせで連絡先を交換して以来、委員会関係の連絡は基本的にスマホのメッセージアプリで行うことにしていたのだけれど、今回のような緊急の招集には本当に便利だな、と改めて思う。
そして、乾の言うとおり新垣くんの行動の早さはさすがだった。
一応、この後には学期始め恒例の学力テストが控えているため、下校時間までは余裕がある。それでも連絡は早いに越したことはない。それに──。
「場所までしっかり確保してるあたり、抜かりないというかなんというか……」
私たちは再び顔を見合わせ、どちらからともなく肩をすくめた。
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