50 / 55
10月3日 金曜日
第50話 近づく終わり
しおりを挟む
ほとんど我を忘れて聞き惚れている間に、「旅路」が終わってしまった。
曲の余韻が会場からゆっくりと消えていく。名残惜しいけれど、今日はいかんせん時間がないのだ。私は気持ちを切り替えてマイクの準備をする。
次を含めてあと三曲紹介すれば、司会は後半を担当する輝にバトンタッチだ。そこからはきっと、自分の出番まであっという間だろう。
三曲目はバラード調だった。優しく染み渡るような女声パートが聴く者の感傷を誘い、一方重厚感のある男声パートが曲を引き締めている。「想いよ永遠に」というタイトルに名前負けしない、印象的な一曲だ。
そんな大人っぽい雰囲気とはうって変わって、四曲目ははっと目が覚めるようなはつらつとした歌い出しの曲だった。アップテンポなメロディーと朗らかな歌詞が、エネルギーに満ちあふれた高校生にぴったりだと思う。
(……うん。なかなか飽きさせない構成になっている気がする)
選曲組であれこれ考えながら決めた曲順とはいえ、それが功を奏するかはそのときになってみなければわからない。
でも今のところは、贔屓目かもしれないけれどうまくいっているように思える。
私は頃合いを見てマイクのスイッチを入れた。
「続きまして、『蜃気楼の果てに』」
例によって作詞者と作曲者、指揮者と伴奏者を紹介して壁際へと退く。そして、待っていた輝にマイクと司会原稿を手渡した。
「ありがと。あとはまかせて」
そう囁いてきゅっと口角を上げた輝に、私は黙って頷く。正念場はこれからだ。
一曲、また一曲と進むたびに、私たちは終わりへと近づいていく。
私が選んだ曲──最後に控えている「夢の翼」は、合唱祭の終わりへの始まりだ。
今年の合唱祭を締めくくるのはどんな合唱だろう、と注目されるだろうか。それとも、連続で九曲も聴いた後では、みんな合唱そのものに飽きてしまっているだろうか。
参加者だって大半はステージを終え、プレッシャーや緊張から解放されているのだ。聴衆がどんな状態になっているかはわからない。
それでも私たちは歌うだけだ。メロディーに、歌声に、歌詞にメッセージを乗せて、ただ歌うだけだ。
曲の余韻が会場からゆっくりと消えていく。名残惜しいけれど、今日はいかんせん時間がないのだ。私は気持ちを切り替えてマイクの準備をする。
次を含めてあと三曲紹介すれば、司会は後半を担当する輝にバトンタッチだ。そこからはきっと、自分の出番まであっという間だろう。
三曲目はバラード調だった。優しく染み渡るような女声パートが聴く者の感傷を誘い、一方重厚感のある男声パートが曲を引き締めている。「想いよ永遠に」というタイトルに名前負けしない、印象的な一曲だ。
そんな大人っぽい雰囲気とはうって変わって、四曲目ははっと目が覚めるようなはつらつとした歌い出しの曲だった。アップテンポなメロディーと朗らかな歌詞が、エネルギーに満ちあふれた高校生にぴったりだと思う。
(……うん。なかなか飽きさせない構成になっている気がする)
選曲組であれこれ考えながら決めた曲順とはいえ、それが功を奏するかはそのときになってみなければわからない。
でも今のところは、贔屓目かもしれないけれどうまくいっているように思える。
私は頃合いを見てマイクのスイッチを入れた。
「続きまして、『蜃気楼の果てに』」
例によって作詞者と作曲者、指揮者と伴奏者を紹介して壁際へと退く。そして、待っていた輝にマイクと司会原稿を手渡した。
「ありがと。あとはまかせて」
そう囁いてきゅっと口角を上げた輝に、私は黙って頷く。正念場はこれからだ。
一曲、また一曲と進むたびに、私たちは終わりへと近づいていく。
私が選んだ曲──最後に控えている「夢の翼」は、合唱祭の終わりへの始まりだ。
今年の合唱祭を締めくくるのはどんな合唱だろう、と注目されるだろうか。それとも、連続で九曲も聴いた後では、みんな合唱そのものに飽きてしまっているだろうか。
参加者だって大半はステージを終え、プレッシャーや緊張から解放されているのだ。聴衆がどんな状態になっているかはわからない。
それでも私たちは歌うだけだ。メロディーに、歌声に、歌詞にメッセージを乗せて、ただ歌うだけだ。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
椿の国の後宮のはなし
犬噛 クロ
キャラ文芸
架空の国の後宮物語。
若き皇帝と、彼に囚われた娘の話です。
有力政治家の娘・羽村 雪樹(はねむら せつじゅ)は「男子」だと性別を間違われたまま、自国の皇帝・蓮と固い絆で結ばれていた。
しかしとうとう少女であることを気づかれてしまった雪樹は、蓮に乱暴された挙句、後宮に幽閉されてしまう。
幼なじみとして慕っていた青年からの裏切りに、雪樹は混乱し、蓮に憎しみを抱き、そして……?
あまり暗くなり過ぎない後宮物語。
雪樹と蓮、ふたりの関係がどう変化していくのか見守っていただければ嬉しいです。
※2017年完結作品をタイトルとカテゴリを変更+全面改稿しております。
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。
たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】
『み、見えるの?』
「見えるかと言われると……ギリ見えない……」
『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』
◆◆◆
仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。
劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。
ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。
後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。
尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。
また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。
尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……
霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。
3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。
愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー!
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる