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連載
315、神連鎖
しおりを挟む「夢の夢チームってなんだよ」
雄太の朝一の突っ込みがこれである。
俺が机にカバンを置いた瞬間、後ろから雄太が一言。
えっと、俺、昨日はちょっとパニクっていて、自分でも動揺していて何でそんなあほなことを書いたのかわからないんだ。
「詳細は誰もいないところで」
「またなんかしたのか」
「俺は何もしてないよ」
ただ、連鎖が連鎖を呼んで、あんなメンバーに落ち着いただけで。
ヴィデロさんは、一緒に行くことになったメンバーを聞いて、少しの間絶句していた。
あの国の救世主とも言える人が二人も一緒に行くってことに。ほんとは三人なんだけどね。そしてクラッシュも行くことに心配していた。優しい。好き。
でもって、ヴィルさんと共に工房に帰って来ると、ヴィルさんはドレインさんの仄かに流した情報をすでに詳細まで把握していて、盛り上がりを少しだけ心配していた。なんか、運営経由でちょっと情報操作をすることにしたらしいけど、詳細は知らない。その内公式で何かを発表するらしい。でもそれも、俺たちが一度入ってみてからだってさ。
午前中、横でずっとうずうずした気配を感じながら昼休みに突入した俺たちは、増田を誘って屋上にダッシュした。というか引き摺られて行った。
「昨日のメッセージを雄太から聞いて俺吹いちゃったよ」
「だよな。健吾らしいっちゃ健吾らしいんだけど」
そこまで弄らなくてもいいじゃん。俺、正気じゃなかったんだから。
「だってメンバーが恐ろしいことになったんだもん」
「恐ろしいことって……『夕凪』でも入ってきた……とかじゃないよな。健吾は『夕凪』と相性最悪そうだしな」
「『夕凪』の知り合いなんていないよ。元メンバーなら友達だけど。それはいいとして。だってレイドメンバー、凄いことになっちゃったんだもん」
フルメンバーの名前を上げていくと、雄太と増田は段々と驚いた顔になっていった。段階を踏んで驚いてるのが面白い。
「英雄……英雄の息子、それに賢者って……なんかの冗談としか思えねえよ」
「まあ、郷野はNPCに顔が無駄に広いし。でもそこまでヤバいメンバーがそろってるとは思わなかった」
「無駄ってなんだよ。俺も驚いたよ。最初はクラッシュだけに話したらしいんだけど、丁度エミリさんが奥にいて、勇者も参加するって言ったら私も行くわって。その後クラッシュも行きたいってなって、ついでにセイジさんも呼ぼうって」
「神連鎖だ……」
増田の呟きは、俺の心情そのままだった。
「で、どうするんだ。その上司のレベルが追っつかないと行けないだろ」
「今すっごく仕事しないでレベル上げしてるよ」
「大丈夫かよその会社……ちゃんとバイト代出てるのか?」
「出てるよ」
多分滅茶苦茶稼いでるよ、ヴィルさん。それこそ仕事なんかしないでも暮らせるくらいには。でも仕事人間だからそれはないけど。
でも、雄太たちがヴィルさんに会ったらなんていうのかな。ヴィデロさんとヴィルさんが並んでる姿って結構壮観だからなあ。でもクラッシュとエミリさんとセイジさんが並んでる姿も壮観だし、そこに勇者が入ってきたら、ヴィデロさんたちもそこまでは目立たない気がしないでもない。そして雄太は普段通りとして、増田たちもかなり美男美女アバターだし、『白金の獅子』メンバーもなかなかに美形アバターだから。
うん。俺一人、地味だね。目立たないね。目立たないのをいいことに、ヴィデロさんにくっついてようっと。誰も注目してないだろうし。
ちょっとほくそえんで、俺は残りの弁当を掻き込むのだった。
夏休みまでもう少し、ってことで、俺はアイテム製作にいそしむことにした。でも気もそぞろ。明日のバイトで、ヴィデロさんに肉じゃがを食べさせることになってるんだ。ドキドキする。
ヴィデロさんは明日、馬を使ってジャル・ガーさんの洞窟に行くらしい。
あの洞窟は、今は週に何回、何時から何時まで、みたいな感じで奥の部屋を開かないようにしてる。洞窟の前に、立札が立てられていた。ユイル愛好家たちが獣人さんたちと相談して立てたらしい。そしてこれを厳守しなければ、もう門戸は開かないとかなんとか約束したらしい。たまにユイルのスクショを上げてる人がいるから、その掲示板だけはマメに見てるんだ。ユイル可愛い。
手元には複合調薬レシピ。奥の部屋には錬金の物が出しっぱなし。こっちに疲れたら気晴らしで錬金をして、そして錬金で疲れたら今度は調薬をしてってしてるから。
たまに休んでお茶を飲んで、鎧を愛でる。ヴィデロさん、鎧を着るのかな。この間雷を放出しちゃったから、今の鎧はシン……としてるのがちょっと寂しい。俺が魔法陣魔法で雷蓄電させようかな。充電、とか言って。
増築当時ひたすら詰め込まれていた空き瓶は、既にほぼ使い切っている。
インベントリを覗くと、めんどくさい複合調薬の薬がかなりの種類詰め込まれている。これだけあれば、足りるかな。ハイパーポーションは既に辺境騎士団に三回くらい納品しても大丈夫なくらい溜まってるからさすがにこれだけあれば足りるだろ。でもそれだけをインベントリに入れればいいわけじゃないからなあ。
あとは、目潰し完成版もたくさん作りたい。錬金レシピももっと埋めて役立ちそうなものを作りたいなあ。しばらくの間ずっと錬金術師をセットしていたから、錬金素材はかなり溜まってるんだけど。
ちょっと調薬疲れたから、錬金レシピでも見て休もう。
工房から隣のキッチンに移動して、椅子に座る。茶器は既にテーブルの上に置かれているから、魔法陣を描くだけでお茶が飲めるのが便利。
聖水とかは必要になるかな。穢れた魔物はさすがに神殿には出てこないだろうけど。
どんな内容になるんだろうなあ。
青いお茶を口に含みながら、俺は目を閉じた。ああ、お茶が美味い。
錬金レシピを開いて作れそうなものを探していると、ドアがトン、と叩かれた。そしてギイ、と開く。
「ただいま」
そう言って入ってきたのは、ヴィルさん。なんか一緒に住んでるみたいで不思議な感じだった。って、ヴィルさんアバターがここにある時点で一緒に住んでるような物なんだけど。
「おかえりなさい。今日もレベル上げしてきたんですか?」
「ああ。天使が付き合ってくれるっていうから、2人でトレの森を歩いてきた。あそこは面白いな。素材の宝庫だ。大分一人で魔物も狩れるようになったし、こうなると面白いな。とことん突き詰めてみたくなる」
なんか、俺が知らない素材とかもヴィルさんなら見つけ出しそうな気がする。
今度ヴィルさんを素材採取に誘ってみようかなあ。
「森を二人で歩いていたら、弟にばったり会ったんだ。森の巡回もするらしいな。魔物に変化がないか、見て回るのも街門騎士団の仕事なんだとか。大変そうだな、騎士団というのは」
「そうですね。街の安全を守る最前線ですから。カッコいいですよね」
真顔でヴィルさんの言葉を肯定すると、ヴィルさんはくすっと笑った。
「健吾の場合、弟がかっこいい、と言いそうだな」
「言いますけど何か」
きりっと答えると、ヴィルさんは本格的に笑い始めた。
その後は一緒にお茶を飲みながら、明日の打ち合わせをした。
そして調薬と錬金を繰り返して、インベントリを埋めて満足した俺は、一日何事もなく穏やかにログアウトしたのだった。
ヴィルさんの会社の中で鍋と睨み合う。
出来上がった肉じゃがを、ひとつまみ食べてみて、首を傾げる。
美味しいかな。ヴィデロさんこの味好きかな。
考えれば考えるほど、味がわからなくなる。
唸る俺の横から佐久間さんが手を伸ばして、中の肉をひょいとつまんで口に放り込んだ。
そして、ポン、と肩を叩く。
「大丈夫。超うめえ。悩んでるならもう一回作ったらどうだ? これは俺が全部食ってやるからよ」
「ダメです! もう時間だから、そろそろヴィルさんが取りに来るんです」
そんなことを言ってる間に、ドアが開いた。
ヴィルさんがひょこっと顔を出す。
「健吾出来たか? そろそろ始めるぞ」
「出来ました!」
「健吾はそこでログインしてくれな。そして石像の間に向かってくれ」
「わかりました……!」
ヴィルさんに、指定されていた入れ物に入った肉じゃがを渡して、ドキドキしながら部屋を出る。
ヴィルさんを見送ってから、簡易ベッドを取り出して、俺専用になってるギアを被る。
佐久間さんのニヤニヤ顔に見送られながら、ログインした。
あああ、ヴィデロさんの反応がすごく、すごく気になる……!
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