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389、連携魔法
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驚きながら白の宝珠をインベントリから取り出すと、ニコロさんがそれを見て目を見開いていた。
「それは……もしかして、『オーブ』と呼ばれるものでは……」
「ホワイトオーブだ……マックもしかしてセイジと一緒にシークレットダンジョンに入ったか?」
俺はユキヒラに首を振ると、このオーブの入手した経緯を説明した。
そう言えばシークレットダンジョンに入った時、同じような物で魔法を覚えたんだった。
ってことは。
「シークレットダンジョンじゃなくてもオーブって手に入るものだったんだ……」
ユキヒラが呆然と呟く。
もしシークレットダンジョンにあるオーブと同じような物だったら、確かに激レア物だ。だってシークレットダンジョンじゃない場所からゲットしたから。
俺もそれに気付くと、自分の手の中の白の宝玉をうわあああっていう気持ちで見下ろした。
「これに魔法が入ってるんだよ。しかも使用回数二分のゼロってなってるんだ。もしかして、もう一人の使用者って、ユキヒラ? 高橋は使えないって言ってたから」
「ちょっと貸してもらってもいいか?」
俺は頷くとユキヒラに白の宝玉を渡した。
すると、出たらしい。「使う」欄が。
これ、もしかして聖剣持ち限定オーブとかだったりして。まさかね。
「とりあえず使ってみようか」
「ああ」
ユキヒラから白の宝玉を返してもらって、とりあえず使ってみることにする。
使うの欄をタップすると、魔法欄にびっくりマークが出たので、今度はそこをタップしてみる。
「あ、新しい魔法覚えた。『融和聖杯』だって。ええと……範囲内のすべての者の体力回復、状態異常解除、魔力回復、仮死状態復活する。一度の戦闘に一回しか使えない。エンカウントが途切れたところでリセット、だって。うわああああ、ヤバいこれ。ユキヒラはい」
なんかヤバい魔法を覚えてしまった。
でも文字は灰色。ここでは使えないってことかな。
そのまま白のオーブをユキヒラに渡すと、ユキヒラはごくりと喉を鳴らした。
使うのを躊躇ってる感じだったので、俺はヨシューさんから貰った本を開いて、今覚えた魔法がないか探してみた。
結果、なかった。嘘でしょ。
ユキヒラは躊躇った末に「ほんとに俺が使っていいのかよ。シークレットダンジョンをクリアしたわけじゃねえのに」とブツブツ言いながら「使う」をタップ。ユキヒラの手の中の宝玉は光になって宙に散っていった。そこもシークレットダンジョン産のオーブと同じだよね。そしてユキヒラも無事『融和聖杯』を覚えたらしい。でもやっぱり文字は灰色。前に連携魔法を覚えるっていうのがあったから、これだと思ったのに。違ったのかな。
せっかく覚えても使えないんじゃどうしようもないよね、と溜め息を吐きながら聖短剣をしまおうと持ち上げる。
ユキヒラも、灰色文字を何回かタップしてダメだったらしく、諦めて聖剣を手にした。
瞬間。
ユキヒラが「うわ、使える!」と声を上げた。
慌てて魔法欄を開くと、確かにさっきまでは灰色だった文字が白くなっていた。
「ほんとだ! え、何で?!」
使ってみようと短剣をテーブルに置くと、シュン……と文字が灰色に戻る。
「なんでだよ!」というユキヒラの怒声を浴びながら、俺も全く同じ気持ちで灰色の文字をタップした。
ふとユキヒラが俺の聖短剣を見下ろして、ハッとした様な顔をする。
「ちょ、マックそれもう一回持ち上げてみてくれ。お前、聖魔法それを持ってないと使えないって言ってただろ」
「あ! 確かに!」
ユキヒラに言われて慌てて短剣を拾うと、無事文字は白くなった。
「2人そろっててマックは短剣を持ってないと発動しないとか。どんな条件付けだよめんどくせえ……」
ユキヒラのボヤキに頷き、ふと思い立ってユキヒラにも聖剣をしまってみるように促す。
すると、やっぱり文字は灰色になって、ようやく発動条件がわかってきた。
「二人とも聖剣を装備してないと使えないってことだね。これが連携魔法……」
「連携魔法……ってこれが?」
「うん多分。エンカウントが途切れるとリセットってあるから、今使ったらリセットされるってことかな」
「そもそも俺ら戦闘してないぞ」
「あ、そうか。でも文字は白いから使ってみたい……」
「ああ」
二人でウズウズしながら視線を動かすと、ニコロさんが俺たちを見て、手を祈りの形に組んでいた。
ぶつぶつ何かを唱えていたので耳を澄ますと、神様に何か感謝の気持ちを伝えていたらしい。
「ニコロさん?」
「導師?」
ユキヒラとほぼ同時くらいにニコロさんを呼ぶと、ニコロさんは大きく息を吐いて、ゆっくりと組んでいた手を解いた。
そして、俺たちを見て、静かに口を開いた。
「……我々の失われた聖典の中に、とある一節がありました。
昔神々が魔の物と戦ったという記憶です。魔の者は強大で、共に戦っていた同胞たちが次々と魔の物によって討たれていきました。倒れ伏す同胞の姿に涙した戦いの神と慈愛の神は、とても悲しみ、苦しみ、涙を流し歯を食いしばりながらもう犠牲を増やさないようにと最後の力を振り絞って魔の物と戦ったそうです。
その時の涙が慈愛の神の持っていた聖杯に溜まり、溢れ、そこから聖なる光が溢れ出し、その光は倒れ伏した同胞たちを包み込み、傷を癒したといいます。魔の物に討たれたはずの同胞は光によって回復し、湧き上がる力によって、とうとう最後には魔の物を消し去ったと、聖典では言い伝えられています。
お二人の覚えた魔法は、もしかしてその二人の神が起こした奇跡ではないでしょうか。そうだとしたら、なんと尊い……」
感極まって顔を覆ってしまったニコロさんに、俺たちはただただ呆然とするしかなかった。
待って、聖典の中に書かれてた奇跡の魔法って。それって滅茶苦茶大事おおごとだよね?!
頭が理解した瞬間、俺とユキヒラは顔を見合わせて、「えええええ?!」と声を上げていた。
「今使っても効果は全くわからないってことか。どうするマック」
「どうしよう。でもこれは一度使ってみないと使いどころがわからない。消費MPとか、使い勝手とか、いきなり本番で使うってのは難しいから」
「だな。一戦闘に一回っきりだろ。これ、引っ切り無しに魔物が出てきたらリセットされないってことなんじゃねえの?」
「そうかも。どうしよう」
「じゃあとりあえずここで一発使ってみるか」
「だから、ここじゃ効果はわからないって最初に言ったのはユキヒラじゃん!」
それでも好奇心には勝てず、俺たちは同時に魔法欄の『融和聖杯』をタップした。
出てきた呪文を口に乗せる。
「我は求む。この世を慈しみ、愛し、護り抜いた者を。この剣、胸、心、すべての力を持ちて、復活のエールを叫ぼう。『融和聖杯』!」
二人で呪文を唱え終えた瞬間、聖剣の共鳴がさらに大きくなり、その共鳴と共に聖剣から発する光が目の前を焼いた。
一瞬世界が真っ白になり、ゆっくりと光が収まっていく。
あまりにも眩しくて目を閉じていた俺は、瞼越しにも確認できた光が収まったのを見計らって目をゆっくり開けた。
「うわあ……これ、マジで最終兵器だわ……」
身体の力が抜けてふらっとしながらユキヒラの独り言を聴く。
立っていられなくてその場にしゃがみ込みながらふとステータス欄を見て、確かに、と思う。
さすがすべての力。
HP、MP、スタミナすべてが残り「1」。確かに最終手段だ。
俺はやけに重い腕を動かしながら、各種ポーション類を二人分取り出した。
ここは戦闘中じゃないからこんな風にゆっくり回復できるけど、戦闘中安易に使ったらその場で死に戻るやつだよこれ。周りが復活して俺たちをガードしてくれたらその間に回復もできるけど、ほんと使いどころが難しい。
ごくごくとハイパーポーションを飲みながらそんなことを考えていると、ユキヒラも俺特製ハイパーポーションを飲んで盛大に溜め息を吐いていた。
「やべえなこれ。使えねえ。俺らだけが残って他の奴らが倒れてる状態で使えば効果抜群だろうけど、まずそんな状態ありえねえしな。まあ、本気で保険とだけ思っておくか」
「うん。まず何より俺が消されるだろうしね。俺が最後まで生き残るってことはあり得ないし」
戦闘をしていないせいか、二人とも聖剣を手にしているのに魔法の文字は灰色になっている。一度の戦闘で一度きりってほんとに使いどころを間違うと詰む。
聖短剣を腰の鞘にしまって、ちょっと落ち着こうとお茶に手を伸ばし、ふとニコロさんの顔が目に入った。
「あ、クマがなくなってる」
目の下にあった黒いクマが、綺麗さっぱりなくなっていた。
範囲内にいたから、ニコロさん完全復活したってことか。
「なんだか身体がものすごく軽くなりました。感謝します……」
いやいや、俺たちを拝まないでください。ただ俺たちは魔法を試してただけだから。
でもニコロさんが完全復活しただけでも良かった良かった。
温くなったお茶を啜っていると、頭の中に『マック今どこ?』というクラッシュの声が聞こえてきた。
これで答えたらクラッシュに声が届くのかな。
「今王宮内の教会にいるよ」
『何でそんな所に』
「ちょっと依頼を受けて。でも依頼は達成したから、あとは報酬を受け取るだけ」
『遊ぼうって言った日まで仕事しないの!』
「仕事じゃないよ」
『依頼ってのは仕事でしょ! マック働きすぎだよ! 早く城下に来なってば。俺、王宮とかいい印象ないから行きたくないんだよ』
「クラッシュは遊んでていいんだよ」
『一人で遊んでもつまらないんだってわかる?』
わかる? とか聞かれても。わかるけど。
と溜め息を吐くと、ニコロさんとユキヒラが怪訝な顔でこっちを見ていることに気付いた。
クラッシュの声、俺にしか聞こえてなかったのかな。
そうだったら、俺、独り言を言う変人じゃん。
「マック、誰と話してるんだ?」
「クラッシュだよ。今城下街にいるんだ。早く戻って来いって急かされちゃった」
「どうやって話とかしてるんだよ」
「クラッシュが念話の魔法陣を覚えてるから、それで、かな。ところで戻らないといけなくなっちゃったから、ユキヒラ、クエストクリアの報酬の件なんだけど」
ユキヒラに向かって口を開くと、ユキヒラの眉の間に皺が寄った。
「何がいいんだ? 出来る限りのことはするけど、流石にとんでもなく無茶な要求は勘弁してほしい」
じっと俺を見つめて来るユキヒラに、俺は真顔で対峙した。
何も考えてなかったよ。何を請求しよう。悩む。
「それは……もしかして、『オーブ』と呼ばれるものでは……」
「ホワイトオーブだ……マックもしかしてセイジと一緒にシークレットダンジョンに入ったか?」
俺はユキヒラに首を振ると、このオーブの入手した経緯を説明した。
そう言えばシークレットダンジョンに入った時、同じような物で魔法を覚えたんだった。
ってことは。
「シークレットダンジョンじゃなくてもオーブって手に入るものだったんだ……」
ユキヒラが呆然と呟く。
もしシークレットダンジョンにあるオーブと同じような物だったら、確かに激レア物だ。だってシークレットダンジョンじゃない場所からゲットしたから。
俺もそれに気付くと、自分の手の中の白の宝玉をうわあああっていう気持ちで見下ろした。
「これに魔法が入ってるんだよ。しかも使用回数二分のゼロってなってるんだ。もしかして、もう一人の使用者って、ユキヒラ? 高橋は使えないって言ってたから」
「ちょっと貸してもらってもいいか?」
俺は頷くとユキヒラに白の宝玉を渡した。
すると、出たらしい。「使う」欄が。
これ、もしかして聖剣持ち限定オーブとかだったりして。まさかね。
「とりあえず使ってみようか」
「ああ」
ユキヒラから白の宝玉を返してもらって、とりあえず使ってみることにする。
使うの欄をタップすると、魔法欄にびっくりマークが出たので、今度はそこをタップしてみる。
「あ、新しい魔法覚えた。『融和聖杯』だって。ええと……範囲内のすべての者の体力回復、状態異常解除、魔力回復、仮死状態復活する。一度の戦闘に一回しか使えない。エンカウントが途切れたところでリセット、だって。うわああああ、ヤバいこれ。ユキヒラはい」
なんかヤバい魔法を覚えてしまった。
でも文字は灰色。ここでは使えないってことかな。
そのまま白のオーブをユキヒラに渡すと、ユキヒラはごくりと喉を鳴らした。
使うのを躊躇ってる感じだったので、俺はヨシューさんから貰った本を開いて、今覚えた魔法がないか探してみた。
結果、なかった。嘘でしょ。
ユキヒラは躊躇った末に「ほんとに俺が使っていいのかよ。シークレットダンジョンをクリアしたわけじゃねえのに」とブツブツ言いながら「使う」をタップ。ユキヒラの手の中の宝玉は光になって宙に散っていった。そこもシークレットダンジョン産のオーブと同じだよね。そしてユキヒラも無事『融和聖杯』を覚えたらしい。でもやっぱり文字は灰色。前に連携魔法を覚えるっていうのがあったから、これだと思ったのに。違ったのかな。
せっかく覚えても使えないんじゃどうしようもないよね、と溜め息を吐きながら聖短剣をしまおうと持ち上げる。
ユキヒラも、灰色文字を何回かタップしてダメだったらしく、諦めて聖剣を手にした。
瞬間。
ユキヒラが「うわ、使える!」と声を上げた。
慌てて魔法欄を開くと、確かにさっきまでは灰色だった文字が白くなっていた。
「ほんとだ! え、何で?!」
使ってみようと短剣をテーブルに置くと、シュン……と文字が灰色に戻る。
「なんでだよ!」というユキヒラの怒声を浴びながら、俺も全く同じ気持ちで灰色の文字をタップした。
ふとユキヒラが俺の聖短剣を見下ろして、ハッとした様な顔をする。
「ちょ、マックそれもう一回持ち上げてみてくれ。お前、聖魔法それを持ってないと使えないって言ってただろ」
「あ! 確かに!」
ユキヒラに言われて慌てて短剣を拾うと、無事文字は白くなった。
「2人そろっててマックは短剣を持ってないと発動しないとか。どんな条件付けだよめんどくせえ……」
ユキヒラのボヤキに頷き、ふと思い立ってユキヒラにも聖剣をしまってみるように促す。
すると、やっぱり文字は灰色になって、ようやく発動条件がわかってきた。
「二人とも聖剣を装備してないと使えないってことだね。これが連携魔法……」
「連携魔法……ってこれが?」
「うん多分。エンカウントが途切れるとリセットってあるから、今使ったらリセットされるってことかな」
「そもそも俺ら戦闘してないぞ」
「あ、そうか。でも文字は白いから使ってみたい……」
「ああ」
二人でウズウズしながら視線を動かすと、ニコロさんが俺たちを見て、手を祈りの形に組んでいた。
ぶつぶつ何かを唱えていたので耳を澄ますと、神様に何か感謝の気持ちを伝えていたらしい。
「ニコロさん?」
「導師?」
ユキヒラとほぼ同時くらいにニコロさんを呼ぶと、ニコロさんは大きく息を吐いて、ゆっくりと組んでいた手を解いた。
そして、俺たちを見て、静かに口を開いた。
「……我々の失われた聖典の中に、とある一節がありました。
昔神々が魔の物と戦ったという記憶です。魔の者は強大で、共に戦っていた同胞たちが次々と魔の物によって討たれていきました。倒れ伏す同胞の姿に涙した戦いの神と慈愛の神は、とても悲しみ、苦しみ、涙を流し歯を食いしばりながらもう犠牲を増やさないようにと最後の力を振り絞って魔の物と戦ったそうです。
その時の涙が慈愛の神の持っていた聖杯に溜まり、溢れ、そこから聖なる光が溢れ出し、その光は倒れ伏した同胞たちを包み込み、傷を癒したといいます。魔の物に討たれたはずの同胞は光によって回復し、湧き上がる力によって、とうとう最後には魔の物を消し去ったと、聖典では言い伝えられています。
お二人の覚えた魔法は、もしかしてその二人の神が起こした奇跡ではないでしょうか。そうだとしたら、なんと尊い……」
感極まって顔を覆ってしまったニコロさんに、俺たちはただただ呆然とするしかなかった。
待って、聖典の中に書かれてた奇跡の魔法って。それって滅茶苦茶大事おおごとだよね?!
頭が理解した瞬間、俺とユキヒラは顔を見合わせて、「えええええ?!」と声を上げていた。
「今使っても効果は全くわからないってことか。どうするマック」
「どうしよう。でもこれは一度使ってみないと使いどころがわからない。消費MPとか、使い勝手とか、いきなり本番で使うってのは難しいから」
「だな。一戦闘に一回っきりだろ。これ、引っ切り無しに魔物が出てきたらリセットされないってことなんじゃねえの?」
「そうかも。どうしよう」
「じゃあとりあえずここで一発使ってみるか」
「だから、ここじゃ効果はわからないって最初に言ったのはユキヒラじゃん!」
それでも好奇心には勝てず、俺たちは同時に魔法欄の『融和聖杯』をタップした。
出てきた呪文を口に乗せる。
「我は求む。この世を慈しみ、愛し、護り抜いた者を。この剣、胸、心、すべての力を持ちて、復活のエールを叫ぼう。『融和聖杯』!」
二人で呪文を唱え終えた瞬間、聖剣の共鳴がさらに大きくなり、その共鳴と共に聖剣から発する光が目の前を焼いた。
一瞬世界が真っ白になり、ゆっくりと光が収まっていく。
あまりにも眩しくて目を閉じていた俺は、瞼越しにも確認できた光が収まったのを見計らって目をゆっくり開けた。
「うわあ……これ、マジで最終兵器だわ……」
身体の力が抜けてふらっとしながらユキヒラの独り言を聴く。
立っていられなくてその場にしゃがみ込みながらふとステータス欄を見て、確かに、と思う。
さすがすべての力。
HP、MP、スタミナすべてが残り「1」。確かに最終手段だ。
俺はやけに重い腕を動かしながら、各種ポーション類を二人分取り出した。
ここは戦闘中じゃないからこんな風にゆっくり回復できるけど、戦闘中安易に使ったらその場で死に戻るやつだよこれ。周りが復活して俺たちをガードしてくれたらその間に回復もできるけど、ほんと使いどころが難しい。
ごくごくとハイパーポーションを飲みながらそんなことを考えていると、ユキヒラも俺特製ハイパーポーションを飲んで盛大に溜め息を吐いていた。
「やべえなこれ。使えねえ。俺らだけが残って他の奴らが倒れてる状態で使えば効果抜群だろうけど、まずそんな状態ありえねえしな。まあ、本気で保険とだけ思っておくか」
「うん。まず何より俺が消されるだろうしね。俺が最後まで生き残るってことはあり得ないし」
戦闘をしていないせいか、二人とも聖剣を手にしているのに魔法の文字は灰色になっている。一度の戦闘で一度きりってほんとに使いどころを間違うと詰む。
聖短剣を腰の鞘にしまって、ちょっと落ち着こうとお茶に手を伸ばし、ふとニコロさんの顔が目に入った。
「あ、クマがなくなってる」
目の下にあった黒いクマが、綺麗さっぱりなくなっていた。
範囲内にいたから、ニコロさん完全復活したってことか。
「なんだか身体がものすごく軽くなりました。感謝します……」
いやいや、俺たちを拝まないでください。ただ俺たちは魔法を試してただけだから。
でもニコロさんが完全復活しただけでも良かった良かった。
温くなったお茶を啜っていると、頭の中に『マック今どこ?』というクラッシュの声が聞こえてきた。
これで答えたらクラッシュに声が届くのかな。
「今王宮内の教会にいるよ」
『何でそんな所に』
「ちょっと依頼を受けて。でも依頼は達成したから、あとは報酬を受け取るだけ」
『遊ぼうって言った日まで仕事しないの!』
「仕事じゃないよ」
『依頼ってのは仕事でしょ! マック働きすぎだよ! 早く城下に来なってば。俺、王宮とかいい印象ないから行きたくないんだよ』
「クラッシュは遊んでていいんだよ」
『一人で遊んでもつまらないんだってわかる?』
わかる? とか聞かれても。わかるけど。
と溜め息を吐くと、ニコロさんとユキヒラが怪訝な顔でこっちを見ていることに気付いた。
クラッシュの声、俺にしか聞こえてなかったのかな。
そうだったら、俺、独り言を言う変人じゃん。
「マック、誰と話してるんだ?」
「クラッシュだよ。今城下街にいるんだ。早く戻って来いって急かされちゃった」
「どうやって話とかしてるんだよ」
「クラッシュが念話の魔法陣を覚えてるから、それで、かな。ところで戻らないといけなくなっちゃったから、ユキヒラ、クエストクリアの報酬の件なんだけど」
ユキヒラに向かって口を開くと、ユキヒラの眉の間に皺が寄った。
「何がいいんだ? 出来る限りのことはするけど、流石にとんでもなく無茶な要求は勘弁してほしい」
じっと俺を見つめて来るユキヒラに、俺は真顔で対峙した。
何も考えてなかったよ。何を請求しよう。悩む。
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