これは報われない恋だ。

朝陽天満

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489、二組においわい

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『婚姻の儀を受けて来た。ユイが泣いて手が付けられなくなった』

『婚姻の儀を受けて来たわ。すごく厳かで素敵だった』



 工房に帰ると同時くらいに、雄太と海里からチャットメッセージが届いた。

 そっか。行ってきたんだ。ユイ感極まって泣いちゃったんだろうなあ。実際の結婚式でも号泣しそうだなあ。友人枠で呼んでくれないかな。

 ほっこりしながら二人におめでとうと返すと、すぐに海里から返信が来た。



『私もユイと一緒に泣いちゃった。ほんとにブレイブがかっこよくて、こんな人が私の旦那様なんて、本当に夢じゃないのかしらって。勇者もとうとう身を固めたのかって王女様と二人で今夜お祝いしてくれるっていうから余計に嬉しくて。騎士団の人たちって結婚するとだいたい勇者が家に招いてお祝いしてくれるんですって。嬉しい。今日は王女様の手作りのご飯でお祝いよ』

「海里って……増田だよな?」



 海里のメッセージを読んで、俺は本気で実は増田は女の子なんじゃないかと思ってしまった。でもちゃんと男子トイレに入るよな。立って用を足してるよな……。

 中身が乙女なのかな? どう見ても女の子にしか思えなくなってきた。神秘だ。

 首を傾げつつも、お祝いは何が欲しいのか訊いてみることにした。ちゃんと一人一人に聞いてみると、とても面白い答えが返ってきた。



『お祝いなんて貰ったらまた泣いちゃいそうだから気持ちだけね。ありがとう』

『えっちい下着は自分で買ってるから、マックお手製の大人アイテムランクSが欲しいわ』

『金一封か蘇生薬セット』

『海里は大人アイテムって言いそうだから、海里に贈れる系錬金アイテムを』



 ごめんなさい。増田はちゃんと年頃の男の子並みの性欲でした。ってか雄太の答え、まんまだよね。

 笑いながら了解の意を伝えてチャット欄を閉じると、早速錬金レシピを開いた。

 色々な『謎素材』が大量にあるから、きっとたくさん増えてるかも、と気合を入れてページをめくると、素材欄だけが埋まっているページが大量にあった。



「やった! 片っ端から作ろう!」



 っていうかギルドからまた謎素材を受け取ってお金とポーション各種を置いてこないといけないんだよな。足りてるかな。

 明日ギルドに行くことにして、とにかく錬金を開始する。作った物の中にブレイブの眼鏡にかなう物もあるかもしれないしね。



 ログアウト時間までひたすらMPを回復しつつ錬金した俺の周りには、新しい錬金アイテムが20種類ほど出来ていた。ほとんどが魔物に対するデバフ系か攻撃系なんだけど、中には自分自身の感覚を研ぎ澄ますっていうアイテムもあって、もしかしたらブレイブと海里にはこれがいいかも、と顔をにやけさせた。取り敢えず素材がある限りそのアイテム『神経研磨薬シャーペンドラッグ』を作り続けた。効能は、『飲むと一時的に視覚聴覚嗅覚触覚味覚知覚が上昇する』ってなっている。知覚ってなんだ。人体は通常第五感で生きているんじゃなかったのか。シックスセンスもこの薬で上がるってことかな。怖いドラッグを作ってしまった。しかも使いすぎると副作用があるのはいつものこと。錬金物ってどうして副作用があるんだろう。ポーションじゃなくてドラッグってついてるのもなんかすごい。うん、人族が手を出しちゃいけない臭がプンプンするね。



「よし。明日ギルドに行ったときについでに雄太たちに送ってもらうか、自分で跳んで持って行くか……学校に行って二人に声を掛けよう。もしかしたら寝不足かもしれないしね。大人な事情で」



 もちろんユイは気持ちだけと言ってたけど、しっかりと気持ちのこもったマジックハイパーポーションを大量に用意してみた。

 ガンガン打てばストレス発散とかにもなって、雄太と喧嘩とかもしなそうだよな。ってかあの4人は喧嘩しなそうだけど。したらしたで大惨事になりそうで怖い気がする。



 品物を包んで錬金釜をしまい込む。

 魔物の動きを鈍くするアイテムとか目くらまし系アイテムとかすごく役立ちそうだから自分用に持っておこう。

 それにしても短剣スキルが。それも明日調べてみよう。もしかしてあの本を貰ったから? それともこれも伴侶補正なのかな。

 雄太たちはどうだったのか訊いてみよう。



 頭の中に明日やることをリストアップしてから、俺は寝室に向かった。









「今日は伴侶補正を確認するため壁向こうに行く予定」



 今日行っていいか聞いてみると、雄太はそんな答えを返して来た。

 二人ともバッチリ伴侶補正が付いたらしい。



「俺、魔力が結構上がってたな。前にお前に扇風機って言われてた風魔法、魔物を吹き飛ばせるくらいになってなかなか爽快」

「俺は命中補正が付いたよ。なんとなく弱点が見えるようになったっていうか。ブレイブってこんな感じで矢を射てたのかと思うと感慨深いよね」

「そっか。二人ともおめでとう。こっちでの結婚式はいつ頃?」

「大学卒業後」



 二人が同時に声を合わせてそう言った。

 あはい。幸せそうでいいですね。それまでに喧嘩とかしないでね。



「なんかスキルの方にも補正が付いてた。風魔法が何個かすでに覚えた状態になっててびっくりした。俺が魔法とか、似合わねえ」

「ユイも短剣が使えるって喜んでたよ。今まで魔法と杖系のスキルしかあげて来なかったから、ここに来て物理攻撃が出来るのが嬉しいみたい」

「ユイどこまで突き進むんだ。前衛の魔導士って手に負えなくないかな」

「あははは、ユイは一番肝が据わってるからね。女の子って強いよ」



 そんなことを言って大笑いした増田、というか海里もブレイブが持ってる鷹の目系のスキルを使えるようになったとか。そしてブレイブも海里の持っているサーチ系のが使えるようになったって。



「鷹の目とサーチってどう違うの? 俺はサーチから感知になったけど、他にも探索系って結構ある?」

「あるよ。鷹の目っていうのは部屋全体図がヴィジョンとして脳裏に浮かぶから、どこに隠れてどこから矢を射ればいいかがはっきりわかるんだって。障害物とかもわかるから、広いフロアだとすっごく便利だよ。俺のサーチ上位スキルの『把握グラスプ』っていうのは感知とは違って、魔物の距離を把握できるやつかな。郷野のがどんな感じかはわからないけど、俺は魔物が来たら魔物の距離がわかるようになるから、目測誤った、なんてことが絶対になくなるんだ」

「俺の感知は、こっちにデカい魔物がいるみたいなレベル違いすぎてマップに表示されないようなのが先にいるのがわかるやつだよ」

「じゃあ結構違うんだね。サーチ系で言ったら、多分ヴィルさんが類を見ないくらい持ってると思うよ。あの人の視野と感覚っておかしいもん」



 おかしい、の言葉に思わず吹きそうになった俺。きっとクラッシュもそう思ってる筈。だって本当にヴィルさんの感覚っておかしい。

 こっちに何かありそうだって思うと大抵そこに何か重要なものがあるって。ある意味人間離れしてるよ。



「なるほど。だから俺も短剣スキルが使えるようになってたのか。使わないけど」

「使わないんだ」

「使ったら俺の短剣レベルダウンしちゃうもん。闇々しい魔物だったらご飯になるかもしれないけど、攻撃すると弱体化しちゃうから」

「難儀な短剣だね。郷野みたい」



 増田の言葉に、雄太が吹いた。俺、攻撃しても弱体化しないから。

 そう突っ込むと、雄太が「物理で戦う健吾を見たら、絶対負けるわこれ、って気になるんだよ」と肩を震わせた。どうせ剣技覚えられなかったよ。いいもん、俺、生産組だもん。



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