これは報われない恋だ。

朝陽天満

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691、特別ゲストが控えてた

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「そうそう。俺らもクエストで後始末するからここに来いってなっててさ」

「ヴィデロさんがクエストって言うの聞くと、本当にプレイヤーになったんだなって実感するね」

「それにしてもヴィデロさん、言葉とか……翻訳機とか使ってる?」

「ヴィルさんならすぐに作れそうだけど」



 『高橋と愉快な仲間たち』が次々ヴィデロさんに絡んでいく。

 ヴィデロさんは微笑を浮かべながら、「そうだな」と口を開いた。



「一応、母が話せる言語はある程度は使えるから、会話なら問題ない。それに俺の身体は今、ベッドの上に転がっているぞ。ギアを被って。そして今はここの言葉の翻訳機能を切っている状態だな」

「おお! 生グランデ語! 翻訳機能って切れるんだ。知らなかった」

「設定画面で下の方にスクロールというものをすると、翻訳の有無が出てくる欄があるから、そこをオフにするといいらしい」

「どれどれ。オフ、っと。何かしゃべってもらっても?」

「ああ。そうだな。昨日は大変だったな」



 ヴィデロさんが話し始めると、翻訳機能を切ったらしいブレイブがおおお! と感激の声を上げた。



「全くわからない言葉! 俺も多少は他の国の言語を習得してるけど、さすがにわからない。ありがとうヴィデロさん」

「どういたしまして。でもこの国の言葉は、母の生まれ故郷の言葉と発音が少し似ているらしいから」

「え……ここに住んでて俺らの世界の言葉も話せたってこと……?」

「一応は」

「あ……やっぱりヴィルさんの弟だった。頭の作りは俺らとまるで違うな」

「そうだね。すごいね。欠点なしだね」



 雄太とユイが顔を近づけてひそひそと話をしている。身長差が凄い二人は、顔を近づけるとなると雄太が中腰ユイが背伸びで、見ていて微笑ましい。俺もああなるのかな。それにしても、言語。俺こっちに来る場合言語を一からだったから、なるようになれ、って気分だったけど。やっぱり話せるのと話せないのって全然違うよね。

 最初からヴィデロさんと意思疎通出来てよかった。ヴィデロさんの今までの努力のたまものなんだけど。



「ほらほら高橋たち。指定の時間に間に合わなくなるから入ろう」

「ほーい。ってかマック。お前の依頼ってどんなの?」



 ガンツさんに首根っこを掴まれながら、雄太がこっちを振り返った。



「錬金術師関係」



 と簡潔に答えると、雄太はほうほう、と引き摺られながら顎に手を当てていた。かっこつかないよそれ。他の人たち笑ってるじゃん。



「俺たちは『欠片』の暴走阻止とかいうやつ、かな。ほぼ全員内容一緒だった。もしかしたらヴィデロさんのクエストと被る?」

「似たようなものだけど、ちょっと違うな」



 そっか違うのか、と頷きながら、雄太が自分の足で立つ。ガンツさんは「ほら、行くぞ」と促しながら、店の扉をノックした。

 その音に合わせて、店のドアが開く。

 中からレガロさんが顔を出し、俺たちを招き入れてくれた。



「いらっしゃいませ」

「店主さんども。なんかクエストでここに来いってなってたから来てみました」

「ちょ、高橋その言い方」



 軽い挨拶に海里が突っ込んでいる横で、ガンツさんたちが丁寧に頭を下げる。ドレインさんは興味津々で周りを見回していて、ユーリナさんに肘で突かれている。

 レガロさんはニコニコと俺たちを見て、歓迎の言葉をくれた。この人が昨日ジャル・ガーさんと酒盛りしてたのか。と思わずまじまじと見てしまう。



「この度は魔王討伐成功おめでとうございます」

「うわ、もう情報入ってるんすか。昨日の今日なのに」



 雄太が驚いたように声を上げる。



「ええ。私は一応先見の力がありますから。その力を応用するとですね、遠くの事柄もほんのちょっと先なら見えるのです。ですから、皆様方の戦いをその力で鑑賞させてもらいました」

「え、すげえ! マジですか! ここからアレ見えたんだ!」

「冗談です」



 感激して声を出した雄太が、レガロさんのいい笑顔の「冗談」に固まる。

 その「冗談」が「冗談」なのか、本当は見てないのか、いつもの笑顔のレガロさんからは察することが出来なくて、俺はちょっと固まった。っていうか皆固まっている。

 そんな俺たちを見回して、レガロさんはくすくす笑った。



「近くで見たかったのは本当ですが、残念ながらあなた方の勇姿を見ることは出来ませんでした。さ、私に聞きたいことがあるのでしょう。奥へどうぞ。ゲストもおりますので」

「ゲスト?」



 レガロさんの言葉に首を捻りながら案内されると、奥のテーブルには勇者たち4人が集まって座っていた。皆楽しそうに笑いを堪えているのがわかる。

なんだ、既に主要人物が来てたのか。じゃあ知ってるはずだよ。



「よう弟子ども。何とも代わり映えしないメンバーだが」

「ほんとにね。ねえねえ、どんな依頼貰ったの?」



 勇者とエミリさんが目をキラキラさせながら訊いてきた。セイジさんとサラさんは楽しそうに俺たちを見ている。

 勇者が俺たちを見回して、眉を上げた。



「ヴィルフレッドがいないな。今日は一緒じゃないのか、ヴィデロ」

「ええ。兄は今日は来ていません」

「そうか。あいつに返さないといけない物があるんだが」



 あ、覇王の剣。そういえば勇者が持ったままだった。

 ちらりと椅子に座る勇者の腰を見ると、覇王の剣じゃない物がぶら下がっていた。



「そのことに関して、兄から伝言があります。その剣と共に覇王の盾も引き取ってくれないかと」

「俺が引き取る……か。考えなくもない。ヴィルフレッドにとって不利にならないのであれば、引き取ることも考えよう。そのうち辺境に来てくれと伝えてくれないか。それまでは剣は預かっておく」

「必ず伝えます」



 ヴィデロさんの返事に勇者は鷹揚に頷いた。 

 そっか。覇王の剣、勇者の元に行くなら安心だ。俺が斬られることはもうないよね。あ、でも。



「サラさんは大丈夫なんですか?」



 だって覇王の剣、錬金術師が大っ嫌いみたいだから。ってことは、もうヴィデロさんのことも斬るかもしれないってこと? 錬金スキルあるし。

 俺の疑問に、サラさんはくすっと笑って頷いた。



「私はもう現役じゃないから大丈夫よ。それにね、アルが私を傷つけるような剣をそのまま持ってるわけないじゃない。アルの手元にあれば、剣も大人しくなるわ」

「ああ。黙らせるのは任せとけ。剣の調教など簡単だ」



 にこやかなサラさんの横で、ニヤリと獰猛に笑う勇者。今、調教って言った? しつけないとダメな剣なんだやっぱり。ああ。なんか、あるべき場所に還った、って感じかな。そう思うことにしよう。ヴィルさんが持っててヴィデロさんに切りかかっていくのなんて見たくないし。

 勇者、頑張れ。あの剣の性格は勇者の手腕にかかってるから。完膚なきまでに叩き伏せて欲しいな。

 心の中で応援していると、レガロさんが俺からふいっと視線を逸らせて口元を隠した。肩震えてるよ。







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