これは報われない恋だ。

朝陽天満

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766、意外なゲスト

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 鳥は水を飲んで満足すると、パタパタと翼をはためかせて飛び立ち、ちょこんとヴィデロさんの肩に乗った。

 すごく人に慣れてるのが可愛い。

 ヴィルさんも見たことあるみたいだし。でもすごく距離のあるあの神社からここまで来るのって大変じゃなかった? どうやって来たんだろう。

 それとも魔素ポイントなら好きに来れるってことかな。でもまた抜け出たってことは、卵の方はどうなってるんだろう。大丈夫なのかな。ヴィデロさんの水で回復してるならいいけど。

 ヴィデロさんの肩に乗った鳥を指で撫でると、母さんと父さんが驚いたような顔をしていた。



「すごく懐っこい鳥ねえ。綺麗な色。なんていう鳥かしら」

「青い鳥って言ったら『ルリビタキ』だろう。目もくりくりしていて可愛いなあ」



 俺たちも触っていいかな、と父さんが手を伸ばすと、鳥がピィ、と鳴いて、そっとヴィデロさんの首の方に寄り添った。ちょっと怖がってるのかな。はじめましてだもんね。





 巫女さんが「よろしいでしょうか」と俺たちを促してきたので、慌てて父さんと母さんが未だハンカチを握りしめているアリッサさんの手を取って外に向かい、皆が出そろったところで、俺たちも白鼻緒の雪駄に足を通した。







 石畳に沿って、参列してくれた皆がずらっと並んでいる。

 奥の方には正装していない人もいたりするのが目に入るので、その他の人も見に来たんだろうなと思うとちょっと気恥ずかしい。

 おめでとうの声を浴びせられながら、ゆっくりとヴィデロさんと共に進んでいく。

 ふと、ヴィデロさんの肩に止まっていた鳥が、何かに気付いたようにぴ、と鳴いた。

 バサッと羽根を広げて、飛び立っていく。

 上空を一度旋回すると、もう一度降りてきた。列の中の一人の元に。

 目で追っていると、鳥が下りたのは、高校の担任の先生の肩の上だった。

 先生は驚いたような顔をして、肩の鳥を見ている。その手には可愛い赤ちゃんが抱っこされていた。

 鳥は一生懸命先生にピィピィ声を掛けていて、傍から見て喋っているように見える。皆携帯端末でその様子を動画で取ってるみたいだけど、俺も手元にあったら是非撮りたかった。

 先生はフッと目を細めて鳥を見ると、そのまま赤ちゃんを抱き直して俺の方に視線を向けた。



「本当に年上の美人だったな、郷野。おめでとう。高橋から今日の良き日のことを聞いて、散歩がてら見に来てみたんだ」

「ありがとうございます。先生の子、可愛い」

「おー。サンキュ。それにしても……」



 先生はじっとヴィデロさんを見て、何かを言いかけたあと、何も言わずに口を閉じて苦笑した。



「この度はおめでとうございます。今日の良き日にお会いすることが出来てよかったです。ささやかですが、受け取ってください」



 先生はヴィデロさんにそう言うと、肩から下げた大きめのカバンから、ご祝儀袋を取り出して、ヴィデロさんに渡した。

 ヴィデロさんは微笑しながらその袋を受け取った。

 鳥は先生の肩でじっと俺たちを見ている。

 ヴィルさんの時はあんなに楽しそうに攻撃していたのに、今はすごく大人しい。

 鳥と目が合うと、鳥はピィ、と一声鳴いて、俺の肩に飛んできた。そして、頬にその羽根を摺り寄せた。う、可愛い。

 思わずデレっとすると、鳥は可愛い声でピィピィと何かを俺に話しかけるようにして鳴いてから、羽根を広げた。

 旋回する様によく晴れた空を飛び、そして、はるか上空に飛んで行ってしまった。



「それにしても……世の中面白いな」



 ぽつり、と先生が呟く。



「先生やっぱ来たんじゃん。っつうかかっわいい! 先生の子? 生まれたばっか? 女の子だよな? おー先生に似なくてよかったな。奥さんの美人さが赤ちゃん見てるとわかるぜ」

「高橋。お前もスーツがなかなか様になってるな。どうだ、郷野に先を越された気分は」

「目出度い一択だろ」



 豪快だな、と先生は声を出して笑った。

 そして、俺の肩にポンと手を置いた。



「……色々大変なことがあるかもしれないが、郷野だったら笑顔で乗り切れると確信してる。遠くから応援することしかできないが……頑張れよ」

「はい。ありがとうございます」

「おう。んじゃ、俺はそろそろ帰るかな。かみさんが心配してるから」

「わざわざありがとうございました」

「あくまで散歩のついでだよ」



 先生は、雄太に記念撮影をせがまれて、俺たちと共に写真を撮ってから帰っていった。









 神社の鳥居近くまで歩くと、最後のほうは私服姿の人たちがまばらに立っていて、俺たちに視線を向けてお祝いを口にしてくれた。初めて見る顔なので、きっとご近所の人とか参拝の人たちだと思う。ありがとう、と笑顔を返していると、目の前に可愛らしい色合いのブーケが差し出された。



『おめでとうございます』



 ブーケを差し出してくれたのは、とても上品な感じの老婦人だった。その一歩後ろにはいかにも外国紳士って感じの老人が立っていて、俺たちをじっと見ていた。

 老婦人の口から聞こえてきたのは、流暢な外国語。英語じゃないっぽいニュアンスが、どこの国かいまいちわからない。

 戸惑っていると、隣からヴィデロさんがやっぱり流暢な言葉でお礼らしき言葉を返してくれた。

 ちょっとホッとしていると、『ママン!?』『おばあ様!?』というアリッサさんとヴィルさんの驚いたような声が聞こえてきた。

 俺たちの横に二人が慌ててやってくると、老婦人は口元を緩めて、腕を広げた。



『あなたったら、ようやく生きて戻って来たと思ったら、単なるメールだけで済ますんですもの。こんな薄情な娘を持った覚えはないわ』

『ママン、ごめんなさい。どうしてもやりたいことがあったの。顔を見せなくてごめんなさい。そして、ヴィルフレッドをありがとう。とても素敵な紳士に育ったわ』

『当たり前でしょう。私の可愛い孫ですもの。立派な紳士になるよう手は抜いてないわ。ヴィルフレッドも。久しぶりね。全然顔を見せなくなって、本当に薄情な孫。でも、便りがないのは元気な証拠、ってこの国では言うのでしょう。あなたのことはあまり心配はしていなかったわ』

『ははは、そう言ってもらえると誇らしいよ。久しぶり、おばあ様』



 二人が老婦人に交互にハグしているのを見ながら、俺とヴィデロさんは顔を見合わせた。

 挨拶を終えた老婦人は、微笑みを浮かべたままヴィデロさんに視線を向けると、じっと見上げた。

 そして、『私があなたの祖母よ』と両手を広げた。

 ヴィデロさんは戸惑いながら、そっと老婦人にハグし、アリッサさんとヴィルさんに視線を彷徨わせた。



「祖母ってことは、母さんの?」

「そうよ、私の母よ。海外から跳んできてくれたみたい。最近身体の調子が良くないって言ってたのに無理するんだから」



 上品な老婦人は、アリッサさんのお母さんだったらしい。後ろに立っているのは、アリッサさんのお父さん。ヴィルさんを育てた人たちでもあるらしく、ヴィルさんもアリッサさんもとても気安い態度を取っていた。って、ヴィデロさんの身内ってことになるのか。

 ドキドキしながらたどたどしい英語で挨拶をすると、お祖母さんはにこやかに英語で返してくれた。流暢すぎて聞き取り難しいんだけど。

 うちの両親も揃って皆の紹介が終わると、ずっと口を閉じていたヴィデロさんのお祖父さんがお祖母さんを支えるようにして横に立って、深々と頭を下げた。

 そしてやっぱり聞き取れない外国語で挨拶をして、俺とヴィデロさんに交互にハグをした。こんな紳士なおじいさんにハグとか、慣れなすぎて緊張でドキドキするんだけど。

 お祖父さんは満足そうにヴィデロさんと俺を見ると、視線をヴィルさんに移した。



『打診されていた話、丁度わしらも来たことだし、今日のうちに話し合おうか、ヴィルフレッド』

『おお! お祖父様、とうとう乗り気に! ぜひ話し合いましょう。形だけは少しずつ整えているんですよ』

『どこまで進めたかによるが……そうだな、ヴィルフレッドの手腕次第、というところかな』

『これは手厳しい』



 ヴィデロさんがそっと通訳してくれて、二人で何かをしようとしているってことを教えてもらったんだけど。

 もしかしてヴィルさん、今やってることをお祖父さんを巻き込んでやろうとしてるのかな。段々と大事になってない? 

 ちらりとヴィデロさんを見上げると、目が合う。ヴィデロさんもわけが分からないという様に、肩を竦めた
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