683 / 744
連載
766、意外なゲスト
しおりを挟む鳥は水を飲んで満足すると、パタパタと翼をはためかせて飛び立ち、ちょこんとヴィデロさんの肩に乗った。
すごく人に慣れてるのが可愛い。
ヴィルさんも見たことあるみたいだし。でもすごく距離のあるあの神社からここまで来るのって大変じゃなかった? どうやって来たんだろう。
それとも魔素ポイントなら好きに来れるってことかな。でもまた抜け出たってことは、卵の方はどうなってるんだろう。大丈夫なのかな。ヴィデロさんの水で回復してるならいいけど。
ヴィデロさんの肩に乗った鳥を指で撫でると、母さんと父さんが驚いたような顔をしていた。
「すごく懐っこい鳥ねえ。綺麗な色。なんていう鳥かしら」
「青い鳥って言ったら『ルリビタキ』だろう。目もくりくりしていて可愛いなあ」
俺たちも触っていいかな、と父さんが手を伸ばすと、鳥がピィ、と鳴いて、そっとヴィデロさんの首の方に寄り添った。ちょっと怖がってるのかな。はじめましてだもんね。
巫女さんが「よろしいでしょうか」と俺たちを促してきたので、慌てて父さんと母さんが未だハンカチを握りしめているアリッサさんの手を取って外に向かい、皆が出そろったところで、俺たちも白鼻緒の雪駄に足を通した。
石畳に沿って、参列してくれた皆がずらっと並んでいる。
奥の方には正装していない人もいたりするのが目に入るので、その他の人も見に来たんだろうなと思うとちょっと気恥ずかしい。
おめでとうの声を浴びせられながら、ゆっくりとヴィデロさんと共に進んでいく。
ふと、ヴィデロさんの肩に止まっていた鳥が、何かに気付いたようにぴ、と鳴いた。
バサッと羽根を広げて、飛び立っていく。
上空を一度旋回すると、もう一度降りてきた。列の中の一人の元に。
目で追っていると、鳥が下りたのは、高校の担任の先生の肩の上だった。
先生は驚いたような顔をして、肩の鳥を見ている。その手には可愛い赤ちゃんが抱っこされていた。
鳥は一生懸命先生にピィピィ声を掛けていて、傍から見て喋っているように見える。皆携帯端末でその様子を動画で取ってるみたいだけど、俺も手元にあったら是非撮りたかった。
先生はフッと目を細めて鳥を見ると、そのまま赤ちゃんを抱き直して俺の方に視線を向けた。
「本当に年上の美人だったな、郷野。おめでとう。高橋から今日の良き日のことを聞いて、散歩がてら見に来てみたんだ」
「ありがとうございます。先生の子、可愛い」
「おー。サンキュ。それにしても……」
先生はじっとヴィデロさんを見て、何かを言いかけたあと、何も言わずに口を閉じて苦笑した。
「この度はおめでとうございます。今日の良き日にお会いすることが出来てよかったです。ささやかですが、受け取ってください」
先生はヴィデロさんにそう言うと、肩から下げた大きめのカバンから、ご祝儀袋を取り出して、ヴィデロさんに渡した。
ヴィデロさんは微笑しながらその袋を受け取った。
鳥は先生の肩でじっと俺たちを見ている。
ヴィルさんの時はあんなに楽しそうに攻撃していたのに、今はすごく大人しい。
鳥と目が合うと、鳥はピィ、と一声鳴いて、俺の肩に飛んできた。そして、頬にその羽根を摺り寄せた。う、可愛い。
思わずデレっとすると、鳥は可愛い声でピィピィと何かを俺に話しかけるようにして鳴いてから、羽根を広げた。
旋回する様によく晴れた空を飛び、そして、はるか上空に飛んで行ってしまった。
「それにしても……世の中面白いな」
ぽつり、と先生が呟く。
「先生やっぱ来たんじゃん。っつうかかっわいい! 先生の子? 生まれたばっか? 女の子だよな? おー先生に似なくてよかったな。奥さんの美人さが赤ちゃん見てるとわかるぜ」
「高橋。お前もスーツがなかなか様になってるな。どうだ、郷野に先を越された気分は」
「目出度い一択だろ」
豪快だな、と先生は声を出して笑った。
そして、俺の肩にポンと手を置いた。
「……色々大変なことがあるかもしれないが、郷野だったら笑顔で乗り切れると確信してる。遠くから応援することしかできないが……頑張れよ」
「はい。ありがとうございます」
「おう。んじゃ、俺はそろそろ帰るかな。かみさんが心配してるから」
「わざわざありがとうございました」
「あくまで散歩のついでだよ」
先生は、雄太に記念撮影をせがまれて、俺たちと共に写真を撮ってから帰っていった。
神社の鳥居近くまで歩くと、最後のほうは私服姿の人たちがまばらに立っていて、俺たちに視線を向けてお祝いを口にしてくれた。初めて見る顔なので、きっとご近所の人とか参拝の人たちだと思う。ありがとう、と笑顔を返していると、目の前に可愛らしい色合いのブーケが差し出された。
『おめでとうございます』
ブーケを差し出してくれたのは、とても上品な感じの老婦人だった。その一歩後ろにはいかにも外国紳士って感じの老人が立っていて、俺たちをじっと見ていた。
老婦人の口から聞こえてきたのは、流暢な外国語。英語じゃないっぽいニュアンスが、どこの国かいまいちわからない。
戸惑っていると、隣からヴィデロさんがやっぱり流暢な言葉でお礼らしき言葉を返してくれた。
ちょっとホッとしていると、『ママン!?』『おばあ様!?』というアリッサさんとヴィルさんの驚いたような声が聞こえてきた。
俺たちの横に二人が慌ててやってくると、老婦人は口元を緩めて、腕を広げた。
『あなたったら、ようやく生きて戻って来たと思ったら、単なるメールだけで済ますんですもの。こんな薄情な娘を持った覚えはないわ』
『ママン、ごめんなさい。どうしてもやりたいことがあったの。顔を見せなくてごめんなさい。そして、ヴィルフレッドをありがとう。とても素敵な紳士に育ったわ』
『当たり前でしょう。私の可愛い孫ですもの。立派な紳士になるよう手は抜いてないわ。ヴィルフレッドも。久しぶりね。全然顔を見せなくなって、本当に薄情な孫。でも、便りがないのは元気な証拠、ってこの国では言うのでしょう。あなたのことはあまり心配はしていなかったわ』
『ははは、そう言ってもらえると誇らしいよ。久しぶり、おばあ様』
二人が老婦人に交互にハグしているのを見ながら、俺とヴィデロさんは顔を見合わせた。
挨拶を終えた老婦人は、微笑みを浮かべたままヴィデロさんに視線を向けると、じっと見上げた。
そして、『私があなたの祖母よ』と両手を広げた。
ヴィデロさんは戸惑いながら、そっと老婦人にハグし、アリッサさんとヴィルさんに視線を彷徨わせた。
「祖母ってことは、母さんの?」
「そうよ、私の母よ。海外から跳んできてくれたみたい。最近身体の調子が良くないって言ってたのに無理するんだから」
上品な老婦人は、アリッサさんのお母さんだったらしい。後ろに立っているのは、アリッサさんのお父さん。ヴィルさんを育てた人たちでもあるらしく、ヴィルさんもアリッサさんもとても気安い態度を取っていた。って、ヴィデロさんの身内ってことになるのか。
ドキドキしながらたどたどしい英語で挨拶をすると、お祖母さんはにこやかに英語で返してくれた。流暢すぎて聞き取り難しいんだけど。
うちの両親も揃って皆の紹介が終わると、ずっと口を閉じていたヴィデロさんのお祖父さんがお祖母さんを支えるようにして横に立って、深々と頭を下げた。
そしてやっぱり聞き取れない外国語で挨拶をして、俺とヴィデロさんに交互にハグをした。こんな紳士なおじいさんにハグとか、慣れなすぎて緊張でドキドキするんだけど。
お祖父さんは満足そうにヴィデロさんと俺を見ると、視線をヴィルさんに移した。
『打診されていた話、丁度わしらも来たことだし、今日のうちに話し合おうか、ヴィルフレッド』
『おお! お祖父様、とうとう乗り気に! ぜひ話し合いましょう。形だけは少しずつ整えているんですよ』
『どこまで進めたかによるが……そうだな、ヴィルフレッドの手腕次第、というところかな』
『これは手厳しい』
ヴィデロさんがそっと通訳してくれて、二人で何かをしようとしているってことを教えてもらったんだけど。
もしかしてヴィルさん、今やってることをお祖父さんを巻き込んでやろうとしてるのかな。段々と大事になってない?
ちらりとヴィデロさんを見上げると、目が合う。ヴィデロさんもわけが分からないという様に、肩を竦めた
2,394
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。
藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。
妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、
彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。
だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、
なぜかアラン本人に興味を持ち始める。
「君は、なぜそこまで必死なんだ?」
「妹のためです!」
……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。
妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。
ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。
そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。
断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。
誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新!
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
売れ残りオメガの従僕なる日々
灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才)
※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!
ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。
無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。