神様に愛された少女 ~生贄に捧げられましたが、なぜか溺愛されてます~

朝露ココア

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失望

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 家に怒鳴り込んできたクレースに、村長は何事かと眉をひそめる。

 「村長! どういうことか説明してもらおう!」
 「なんだ、いきなり。騒々しいぞ」
 「黙れ……! なぜフレーナを迫害した!」

 フレーナ。
 その名が出た瞬間、村長は強張った。

 村長に殴りかかろうとしたクレース。
 しかし、彼は再びアイネロの魔術によって引き留められる。
 冷静なアイネロの到来に、少し村長の心は安らぐ。

 だが、彼の後に入ってきた人影を見て再び村長は混乱。
 自分の娘トリナと、友人シーラが手枷をされて連行されていたからだ。

 「村長様。実はですね、トリナ様が邪石を保有していまして……単なる宝石と思ってネックレスにしたそうなので、その件に関しては不問とするのですが」
 「な、なんと……アイネロ殿! それはご迷惑をおかけしました」
 「ですが、あろうことか神の所有物であるフレーナ様に暴行を行ったようで。
 王国法に照らせば『神への不敬』は禁錮十年に値する重罪。然るべき処罰をせねばなりません」

 信じられない。
 父親の驚愕の視線を受けたトリナは身を縮こまらせる。

 そんな彼女を不憫に思ったのか、クレースが言葉を継ぐ。
 先の一件で大幅に信頼度が下がったとはいえ、一応は幼なじみだ。

 「だが、トリナは邪石によって精神が汚染されていた。その点も鑑みれば……まあ、数年は減刑されるんじゃないか。シーラの減刑は厳しいだろうが。
 しかし、俺が怒ってるのはそれだけではない!」
 「はいはい、クレース。そこも私から話しますので」

 アイネロは懐の魔道具を確認する。
 音を記録する魔道具だ。
 これより交わされる会話は後の証拠になる。

 「村長様、あなたはフレーナ・シヴの両親を処刑しましたね? 命神様にご協力いただいた際、彼女にまつわる過去を知ったのです」

 王国法において、正式な裁判を通さずに刑を執行することは禁じられている。
 いわゆる私刑は重犯罪だ。

 おまけに死刑ともなれば、相当に罪は重くなる。
 王国で死刑が敢行されたケースはほとんどない。
 アイネロの記憶によれば、シシロ村が死刑を執行した事例はなかった。

 「い、いや……アレは村人の総意で決めたことです。疫病をシヴ夫妻が持ち込んだことにより、村人たちも混乱状態にありましたから……」
 「なるほど。死刑が無断で執行されたことは事実と。
 村の意見は村長であるあなたに委ねられる。証拠として記録させていただきます」

 アイネロは淡々と事実の収集を進めていく。
 村長は自らの失言に青褪めた。

 「とりあえず、村長様は私刑を行った罪で、トリナ様とシーラ様は神への不敬で。
 王都まで連行させていただきます」
 「お、お待ちを! もうしばらく事実の精査を……」
 「申し開きならば王都で聞きましょう」

 アイネロが杖を振るうと同時、村長に魔力の枷が付与される。
 身動きを封じられた村長は言葉すら発することができない。

 トリナとシーラもまた、同様の状態にあった。

 「さて、シシロ村は行政から指導が入ります。新たな管理者として誰を命ずるか……悩むところではありますが、後で考えることにしましょう」

 一方、クレースは煮え切らない様子。
 アイネロは彼の表情を見て、これはまた面倒なことになりそうだと頭を抱えた。

 「アイネロ。俺は本当なら村人全員、逮捕してやりたい。
 フレーナの家族を処刑して、おまけにフレーナ自身も迫害して生贄に捧げて……俺の故郷の人間は血が通っていないのか!?」
 「ふむ。あなたの怒りはもっとも。
 しかし、肝心の被害者の心情を聞いていないのでは? フレーナ様が被害に対してどのような思いを持っているのか、話してみるべきだ。まともに彼女と話していないのでしょう?」

 その説得にクレースは頷いた。
 たしかにフレーナの心情を聞いていない。
 長らく虐められ、さぞ苦しかったことだろう。

 「近郊の詰所に三名の身柄は預け、私たちはひとまず神殿へ向かいましょう。命神様とフレーナ様の言葉を聴くために」
 「ああ。まったく……」

 クレースは去り際、拘束されたトリナとシーラを見る。
 村に帰ってきたばかりの喜びとは違う……軽蔑の感情がクレースの視線に籠められていた。

 「クレース、私は……」
 「本当に残念だよ。
 もうお前たちは……友達じゃない。シシロ村は俺の故郷じゃない」

 本音を吐き捨て、クレースは家を出て行った。
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