必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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 鉛のように重い足を引きずるようにして、雪也は庵へ向かった。歩く度にボタボタと真っ赤な血が流れ落ち、腕も力を失ってガラガラと耳障りな音をたてながら刀を引きずる。今にも男達と同じように倒れ伏してしまいそうだ。だが、まだ倒れては駄目だ。もしもの時は逃げろと言ったけれど、きっと周のことだから庵の中で待っているだろう。だから、あの子を守るためにも庵に戻り、必要とあれば一緒に逃げなければならない。それに、男の言葉は雪也の隙を作るためのハッタリかもしれないのだから、それを鵜呑みにせず、由弦も探さなければ。
 崩れそうになる身体を支えるようにして扉を開く。その瞬間、雪也は声もなく目を見開いた。
 血の臭いがするのは、わかっていた。だがそれは、自分の身体から溢れ出るものからだと思っていた。男達の誰一人として、この庵には近づけていない。どれほど身を切り裂かれようと、庵を背に庇っていたのだから。なのに、なぜ――。
「あま、ね……?」
 視線の先に、周が倒れ伏している。彼を中心に広がる、あの赤黒いものは何だ。
「周ッ!」
 ボタボタと血が溢れ出るのも構わず、雪也は周に駆け寄る。慌てて周を抱き寄せれば、彼の身体は異様なほどに冷たかった。雪也にも余裕はなく、随分と乱暴な動きで抱き寄せたというのに、周の身体はピクリとも動かない。開かれたままの灰の瞳から、一すじ、雫が流れ落ちた。
「あまね……、あま、ね……」
 何度呼んでも、周の応えはない。彼の腹部が真っ赤に染まっているのを見て、雪也はここで何が起こったのかを察した。察して、しまった。
 ノロノロと視線を向ければ、裏口の戸が僅かに開いている。どうやら周の命を奪った者は、よほど慌てていたのだろう。だというのに、雪也はその物音にも、周の異変にも気づかなかった。誰よりも、そんな己自身が憎い。
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