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1話 1度目の婚約
しおりを挟む1度目の婚約者ハンケロウ伯爵家の次男アルフレッド様は、王立学園の騎士課を卒業すると、自分が護衛する王弟殿下が隣国へ留学することが決まり、一緒について行くこととなった。
「2年で帰国する予定だけど、護衛の任務だから… たぶんオレは、王弟殿下の留学期間が終わるまで、1度も帰国することができないと思うんだ」
騎士になるため幼い頃から剣の鍛錬を、毎日欠かさなかったアルフレッド様は、大きくて逞しい迫力のある体格をしていて… その大きな身体を小さく丸めて困った顔をする。
「では、アルフレッド様と2年もお会いできないのですか?」
「ああ、そうなるな… すまないマリオン」
「2年は長いわ……」
「うん。 本当にすまない」
顎が男らしく角ばっていて、鼻筋が通った彫りの深い顔だから、アルフレッド様は黙っていると『怒っているの?』と、よく人に誤解されるほど威圧感があった。
そんなアルフレッド様のことをよく知らない人が見ると、『何を考えているのかわからない怖い人』 …という印象を初対面で持つらしい。
でも私といる時は従順な大型犬のようで少しも怖くない。 むしろ物静かで穏やかな男性だと思っている。
「アルフレッド様と会えないなんて… さびしいわ… でも王族をお守りする、大切な役目ですもの。 アルフレッド様のために私も我慢します」
私はまだ結婚ができる年齢にたっしていないから、隣国へ行くアルフレッド様については行けない。
「ありがとう、マリオン」
「お手紙をたくさん… 書いても良いですか?」
「ああ、嬉しいよ。 でもオレは手紙を書くのが得意ではないから… 返事はあまり出せないかもしれない。 それでも良いか?」
「ええ!」
―――そして2年後。
隣国にいるアルフレッド様から、私のお父様スリンドン子爵に、手紙が届いた。
手紙を読んだ私の両親は……
「マリオン。 落ち着いてお父様のお話を聞いてね」
「そんなにあわててお母様… どうしたの?」
お父様に呼ばれて執務室へ行くと、お母様も一緒にいた。 来客用のソファセットに腰をおろすと、お母様は私と手をつなぎギュッとにぎる。
「アルフレッド卿が護衛する、王弟殿下の留学期間が数年のびるらしい」
「え? それだとお父様… アルフレッド様はいつごろ、隣国から帰国するの?」
先月届いた私への手紙には、王弟殿下が活発に外交活動をしているから、忙しくて眠るヒマもないと書いてあっただけなのに。
「うん。 その帰国の予定が立たなくなったから… マリオン、お前との婚約を解消したいとアルフレッド卿は、手紙に書いてきているんだ」
「…そんな、まさか!」
私はスリンドン子爵家の1人娘。 お父様が女相続人の私に婿養子として選んだのが、5歳年上のアルフレッド様。
(財産は相続できるけど、王国法で女性は爵位を継承できないため、1人娘の私の夫となる男性が、スリンドン子爵家を継ぐことになる)
「まだ学園に通う年齢の若いお前なら、次の婚約者も簡単に見つけられると、アルフレッド卿はスリンドン子爵家に配慮したのだろう」
「婚約解消なんて… 私は嫌です、お父様!」
「落ちついて、マリオン…」
理屈はわかるけど、気持ちのほうが納得できない。
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