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14話 暴力
しおりを挟む使用人に呼ばれアルフレッド様との話を切り上げて、急いで夫の寝室へ行くと… 夫は大声で怒鳴りつけながら、メイドのエリーの腕をつかみ髪を引っぱり暴力をふるっていた。
「このわしをバカにして笑っていただろう?! この小娘が―――っ!!」
「バ… バカにして… いません! 旦那様、本当です! どうかお許しください、旦那様! どうか… どうか… お許しを! お許しを…!」
顔を夫に殴られて唇から出血したメイドのエリーは、泣きながら懇願している。
傷ついたエリーの姿を見て、私の身体は恐怖でブルブルと震えていたけど… 黙って見ているわけにもゆかず、恐る恐る夫に声をかけた。
「旦… 旦那様! お待たせいたしました… 私をお呼びでしょうか?」
ああ、かわいそうに… エリーは顔を殴られたのね。 これ以上、旦那様を興奮させないようにしないと。
私はエリーの腕をつかむ夫の手にふれて、なるべくおだやかに話しかけた。
「…イヴォンヌ! この尻軽が―――っ!!」
口から泡をふきながら怒鳴り散らす夫は、エリーの腕と髪をはなしたが… 今度は私の腕をつかみ引っ張った。
「旦那様… お腹が減っているのではありませんか?」
「尻軽女め! おまえにあの男が会いにきたのだろう? またあの男に媚びて誘ったのか!」
「いいえ、違います!」
ああ、もう! 旦那様はまた、前妻のイヴォンヌ様が浮気をした時の話をしているわ!
おそらく… 私に来客があったとエリーが旦那様に伝えたのね? それで旦那様は私が浮気相手と会っていると勘違いして怒っているのだわ。
「嘘をつくな、イヴォンヌ! ワシが知らないと思っているのか?!」
「いいえ、旦那様… 私は男性に媚びたことはありません」
「イヴォンヌ、お前など殺してやる! お前のような尻軽女などこのわしが殺してやる!!」
興奮した夫は私の腕を放し… 今度は私の首に手をかける。
「やめて…! 旦那様!! うくっ…!!」
まずいわ! 本当に殺されてしまう!!
夫の手に力が入り、グッと首を絞められる。
「旦那様! 落ち着いて下さい!!」
「奥様、逃げて!! キャアァァァァ―――ッ!!」
さけび声をあげる使用人たちの後ろから、ガツガツッ! …と荒々しい足音をたてて、誰かが私にかけよって来た。
かけよって来た人物は、私の首をしめていた夫の手をつかみ引きはなす。
「やめろ!! 女性に暴力をふるうなんて、恥かしくないのか?!」
「うるさい! わしの邪魔をするな!」
「あんたは自分の妻に何をしているんだ!」
「うるさい! お… お前もイヴォンヌと寝たのか?!」
「イヴォンヌ…? 誰だそれは?」
興奮した夫から私を助けたのは、アルフレッド様だった。
「……っ?!」
アルフレッド様? なぜ、ここにいるの?!
剣をふるうゴツゴツとした大きな手で夫の腕をつかんだまま、アルフレッド様は心配そうに私を見下ろす。
「大丈夫かマリオン?!」
「……っ」
私はあまりのことに動揺し、コクリとうなずくことしかできなかった。
「マリオン… 手をはなすから、君はこの老人から離れるんだ」
私はあわてて夫がいるベッドから離れると、アルフレッド様は夫の手をはなし、自分も後ろに下がる。
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