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18話 婚姻無効
しおりを挟むアルフレッド様がいなくなった自分の部屋で、私はボンヤリと求婚について考えた。
「……」
彼の婚約者だったころ、私はなんとなく大切にされているということは感じていた。
普段から自分の気持ちを、あまり口に出す人ではなかったから… 婚約者として大切にされていても、愛されているとは思わなかった。
『これからも君以外の女性を愛すことはないよ』
アルフレッド様の告白を思い出して、私の顔がまた熱くなった。
「私を10年も前にすてた人から、愛の告白をされるなんて……」
嬉しいと思うよりも、戸惑いのほうが大きい… 今は受けとめきれないわ。
本当に好きだったからこそ、アルフレッド様を憎んでいたから。
胸の中がモヤモヤする。
数日がすぎ…… アルフレッド様がふたたび私をたずねて来た。
アルフレッド様は私の夫の診察をさせるため、王都からハンケロウ伯爵家の主治医をつれて来ていた。
「アルフレッド様… お医者様に旦那様を診察させて、何をするつもりですか?」
「診断書を作らせるんだよ」
「診断書?」
「それを添えて、マリオンとあの老人の婚姻無効を申し立てるのさ」
「離婚ではなくて婚姻無効…? そんなことができるのですか?!」
「できる。 …君の夫があの調子では意思を確認するのが難しいから、離婚するほうが困難だと弁護士は言っていた」
私のところに来る前にアルフレッド様は、なるべく私が傷つかない離婚のしかたを弁護士と話し合い、準備を進めて来たらしい。
「あの老人は君を前妻のイヴォンヌ夫人だと思っていて、君が新妻マリオンだと認識していない。 それはつまり、彼自身が認識していない君との結婚が正立するのはおかしいだろう?」
「ええ…」
実際、その通りだわ。 他人の名まえで呼ばれるのが嫌で、何度も教えたけど… 旦那様は私と結婚したことを、いまだに理解していない。
「診断書はそのことを証明するためのものなんだ」
私が付き添い、旦那様がハンケロウ伯爵家の主治医の診察を受けると… 診断結果はアルフレッド様の狙い通りとなった。
「間違いありません、ご主人は奥様を認識されていませんでした。 10人の医師が診察しても、同じ診断結果になるでしょうね」
「マリオン… このまま婚姻無効の申し立てを進めて良いか?」
「……はい」
アルフレッド様に私をつれ出したいと言われた日から、ずっと考え続けて来た。
何年も憎いと思っていた男性からの求婚に、胸の中がモヤモヤするけれど。
結局、アルフレッド様の求婚を受けいれることが、私にとって最良の選択だとわかっている。
診断書を添えて貴族管理局(貴族の婚姻、出生などを管理する機関)に提出した申し立てが受理され… 数ヶ月待たされた審議の結果、私と旦那様の婚姻無効が認められた。
私は晴れて未婚のスリンドン子爵令嬢にもどり… しばらくの間、ハンケロウ伯爵家に身を寄せることとなった。
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